利根沼田の清酒は、総じて透明感のある味わいの中に、適度な旨味を感じることができる酒質である。
口当たりには、爽やかな酸味や旨味を伴ったコクを与える苦みを感じながらも、その後に、この地域で収穫された原料米特有のまろやかな旨味や甘みが膨らむとともに、アルコール感の切れが良いためアルコール度数に比してアルコール感を感じないことから、透明感がある味わいであると言える。
また、余韻には雑味の無い旨味や甘みに加え、締まりを与えるほのかな苦みが感じられることから、苦み、旨味や酸味を中心とする味の食材との相性がよい。
香りはつきたての餅のような米由来の香りの他、酵母により形成されるグレープフルーツ、白桃、黄色いリンゴ、バナナ、メロンやライチを中心とする果実様の香りに加え、杏仁豆腐様の風味を感じることができる。さらに、味わいの余韻と一体となって、青草や新緑を連想させる香りも感じることができる。
色調は、総じて透明感のある淡いゴールドがかったクリスタルを基調とする。
余韻で感じる苦みが春野菜を連想させ、この地域で収穫される蕗のとう及びタラの芽等の山菜並びに青物野菜が持つ苦みとの相性がとても良い。また、利根沼田の清酒由来のアミノ酸は、この地域の特産品である畜産物(豚肉、牛肉、鶏肉)を用いた料理の動物性タンパク質由来の旨味と相まって料理の味を引き立てる。
イ 自然的要因
(イ) 水質
(ロ) 気候
ロ 人的要因
利根沼田地域において本格的な清酒造りが行われるようになったのは江戸時代に入ってからと言われている。文化6年(1809年)には酒造屋が26軒あった事が記録されており、「酒師仲間」を結成して、醸造や販売の基本的事項等の規定遵守に関する取決めを行うなど、この頃から今に続く地域の酒蔵同士の緊密な交流があったことが伺える。
古くは越後杜氏を中心として酒造が行われており、その醸造技術は杜氏固有のものとして酒蔵間で共有されることは稀であった。しかし、現在では、全ての酒蔵において蔵元杜氏・社員杜氏の体制に移行したことにより、酒師仲間の結成以来の伝統である酒蔵同士の緊密な交流の一環として、地域内の杜氏同士での定期的な情報交換等や研究が行われるようになり、利根沼田の清酒の特性が一層明瞭になってきたといえる。
特に、この地域特有の酵母の開発や、その酵母に適した米作りや酒造りのノウハウの研究・蓄積を通じて、この地域特有の酒質の維持・向上に努めている。
また、地域内の全ての酒蔵が、この地域の自然環境の保全が酒質を維持する上で重要と考えていることから、環境保全への取組も積極的に行っている。
さらに、ワインやビールの製造事業者も参画する「利根沼田酒蔵ツーリズム連絡協議会」の活動を通じて、酒造りを基軸とする地域の活性化も行っている。
イ 米及び米こうじには、産地の範囲内において収穫された次の商標又は品種の米のみを用いること。
ロ 水には、産地の範囲内で採水し、沈殿及び濾過以外の物理的及び化学的処理を行っていない水のみを用いること。
ハ 発酵に用いる酵母には、次のもののみを用いること。
ニ 酒税法第3条第7号ロに規定する「清酒」の原料については、「清酒」以外は用いることができないものとする。
ホ 水の代わりに清酒を用いる場合には、上記イ、ロ、ハの原料によってのみ製造された清酒を用いること。
イ 酒税法第3条第7号イ及びロに規定する清酒の製造方法により、産地の範囲内において製造したものであること。
ロ 製造工程上、貯蔵する場合は産地の範囲内で行うこと。
ハ 消費者に引き渡すことを予定した容器に産地の範囲内で詰めること。
(1) 「管理機関」の役割と所在
(2) 「発酵に用いる酵母」の管理
(3) 「醸造年度」の表示
清酒