令和2年9月7日指定

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

イ 官能的要素
 「梅酒」とは、酒類に梅の実を浸漬することにより、梅の実のエキスを酒類中に浸出させ、これに糖類等を加えることで味わいを調整したものをいう。
 「和歌山梅酒」の梅酒は、和歌山県内で収穫された新鮮な青梅又は完熟梅の豊かで厚みのある香りが、酒類中のアルコールの刺激的な香りを包み込むことにより、口に含む瞬間に爽やかな風味となって広がっていく。また、アルコールに溶け込んだ梅の濃厚なエキスは、酒類そのものが有する甘味や旨味と調和し、複雑で力強い味わいを感じることができる。さらに、適度な糖類の甘味と梅の酸味によるやや長めの心地よい余韻により口腔や鼻腔が整えられ、次に口に運ばれる食事の味わいを引き立てることができ、食前酒としても最適である。

ロ 化学的要素
 「和歌山梅酒」の梅酒は、アルコール分、総酸値及びエキス分が次の要件を満たすものをいい、発泡性を有するものも含む。

(イ) アルコール分は10.0%以上35.0%未満

(ロ) 総酸値は3.5g/L以上

(ハ) エキス分は100g/L以上

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 和歌山県は、紀伊半島の西側に位置し、その面積の約8割が山地である。西側は、瀬戸内海から太平洋に続く海に面しており、東側に北から南へ連なる紀伊山地は、海の間近まで迫っている場所も多く、高品質な梅の栽培に適したミネラル豊富な地層が山間地に広がっている。
 また、和歌山県は、海からの温かい風による温暖な気候で年間降水量が多く、夏には台風も頻繁に上陸するとともに、平地が少ないため稲作には不向きな場所が多いことから、果樹栽培が活発に行われてきた。特に梅は、傾斜地が多くやせた土地でも効率的に育ち、台風シーズン前の6月頃に収穫が可能で、大きく実が成長するためには降雨の多さが重要であることから、和歌山県に適した果樹として、和歌山県田辺市及びみなべ町を中心に栽培が広がっていった。

ロ 人的要因
 和歌山県では、金山寺味噌や湯浅醤油のように、古来より発酵食品の製造も盛んに行われており、清酒を始めとした酒類製造業者も多い。清酒製造業者は、原料となる米の収穫後、醸造に適した低い気温となる冬から春にかけて繁忙時期となるが、春から夏にかけては閑散時期であるため、この間に収益を確保し生産性を向上させることが課題であった。
 また、和歌山県で収穫した梅は、梅干しに加工して食用とすることが主用途であったが、し好の変化により梅干しの需要量が減少すると、新たな用途を開拓することが課題となっていった。
 このような環境の中、日本一の梅の実の産地を誇る和歌山県において、清酒製造業の閑散時期に収穫ができる梅を原料として梅酒を製造するという発想が生まれ、お互いの課題を解決していった結果として、和歌山県での梅酒の製造が盛んになっていき、更に、梅酒及び梅加工食品の原料となることを前提に梅の栽培方法を工夫し、梅の改良等が重ねられた。
 平成27年には世界農業遺産として認定された「みなべ・田辺の梅システム」(ミツバチによる受粉率の向上、整枝・剪定技術の改善、収穫ネットの利用など)を確立するなど、安定的に梅酒の原料である高品質な梅の栽培が行えるよう栽培技術の開発と蓄積も行っている。
 なお、平成20年には和歌山県田辺市及びみなべ町が梅酒の製造に係る構造改革特区として認定されるなど、和歌山県全域で梅酒製造の発展を図っており、国税局鑑定官による技術指導を通じて、梅酒製造方法や貯蔵方法などの技術力向上も図っている。
 このように、安定して梅を生産してきた和歌山県は、梅酒製造業者、梅栽培農家、和歌山県などが一体となり、梅酒に係る研究や取組を進め、「和歌山梅酒」の特性を維持形成している。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

(1)原料

イ 酒類に浸漬する梅の実には、和歌山県内で収穫された新鮮な青梅又は完熟梅のみを用いたものであること。

(注1)青梅とは、梅の木から梅の実を摘果した状態のもの(破砕、切断、圧搾及び濃縮したものは含まない。)をいい、果皮にハリと艶があってその色が青緑色から黄緑色のもの(品種によっては紫色や赤色を含む。)をいう。

(注2)完熟梅とは、果肉がやわらかくなり、果皮の色が黄色から橙色のもの(品種によっては紫色や赤色を含む。)をいう。

ロ 梅の実を浸漬する酒類に、酒税法第3条に規定する「清酒(第7号)」、「連続式蒸留焼酎(第9号)」、「単式蒸留焼酎(第10号)」、「ウイスキー(第15号)」、「ブランデー(第16号)」、「原料用アルコール(第17号)」又は「スピリッツ(第20号)」を用いたものであること(これらを混和させた酒類を含む。)。

ハ 酒類及び梅の実以外の原料は、次に掲げるもののみとする。
 梅の果肉、梅の果汁、糖類、含糖質物(合成甘味料を除く。)及び炭酸

(2)製法

イ 梅の実は浸漬する酒類1KL当たり300KG以上使用すること。

ロ 梅の実の酒類への浸漬は和歌山県内で行うこと。

ハ 梅の実の酒類への浸漬期間は少なくとも90日以上とすること。

ニ 梅の実を浸漬している酒類中で意図的に破砕や圧搾をしないこと。

ホ 浸漬している酒類から取り出した梅の実を再度仕込みに用いないこと。

ヘ 酒造工程上、貯蔵する場合は和歌山県内で行うこと。

ト 消費者に引き渡すことを予定した容器に和歌山県内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

(1) 地理的表示「和歌山梅酒」の使用要件

  地理的表示「和歌山梅酒」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「2 酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

(2) 管理機関の名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地及び連絡先

イ  名称
  GI和歌山梅酒管理委員会

ロ  代表者氏名
  中野 幸生

ハ  所在地
  和歌山県和歌山市雑賀屋町16

ニ  連絡先
  電話番号:073-431-8689
  メールアドレス:gi.wakayama.umeshu@gmail.com

(3) 「長期熟成」の用語使用要件

 地理的表示「和歌山梅酒」の使用と合わせて「長期熟成」の用語を使用する場合には、業務実施要領に基づき少なくとも7年以上熟成させたものでなければならないこととし、事前に管理機関の証明を受けなければならない。
 なお、複数の梅酒をブレンドする場合は、そのうち最も熟成期間が短いものが当該要件を満たしている必要がある。

4 酒類の品目に関する事項

 リキュール