「琉球」は、黒こうじ菌を用いた米こうじ及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機により蒸留した蒸留酒であり、原料の米こうじに由来する適度な油分による芳醇な味わいを感じることができる。
伝統的な常圧蒸留をしたものは、香ばしい香りがし、減圧蒸留をしたものはリンゴやバナナなどの果実様の香りを感じることができる。
特に、常圧蒸留をしたものの古酒(3年以上貯蔵したもの)は、黒こうじ菌の酵素により米から生じる成分に由来する甘いバニラ様の香りや松茸様の香り等が調和した、濃厚で奥の深い香りを有している。
「琉球」で使用されている黒こうじ菌(Aspergillus luchuensis)の学名は琉球に由来する名称となっており、「國菌」として指定されている。
「琉球」は、黒こうじ菌の生育した米こうじのみを原料としており、その米こうじに水と酵母を加えて発酵させる全こうじ仕込みは、沖縄県で引き継がれている琉球独自の伝統製法である。それにより、濃厚で奥の深い香りと芳醇な味わいという官能的要素を与えている。
沖縄県は、日本列島の南西に位置する琉球諸島にあり、古くから東アジアにおける重要な海上貿易拠点とされてきた。気候は、亜熱帯性の南西諸島気候に属するため、高温多湿で降水量も多い。このような気候での酒造りでは、もろみの発酵に際して雑菌による腐敗が生じる蓋然性が高いが、他のこうじ菌に比べクエン酸を多く生成する黒こうじ菌により健全な発酵が促されるとともに、その黒こうじ菌が生成する種々の成分により「琉球」らしい特性が形成されている。
また、沖縄県は琉球石灰岩地層が通っており、水は硬水でミネラル分が多く、地理的に気温が高いため、微生物(黒こうじ菌及び酵母)の働きが促進され、複雑で重厚な香味が形成される。
「琉球」の製法の歴史は古く諸説あるが、琉球王国当時の交易国の様々な蒸留酒の製法と類似する点があることから、500年以上前に東南アジアや大陸との文化交流を通じて様々な技術が伝来し、それが琉球の気候や風土に適合していく過程で独自の伝統ある製法が確立していったといえる。
「琉球」は、「琉球泡盛」又は「泡盛」とも呼称されている。この名称の由来は様々であるが、蒸留直後のアルコール度数が40%以上におよぶため、そのアルコール分の強さを測るために高い位置から酒を容器に注ぎ、その容器にできる泡の様子から「泡盛」となったという説もある。なお、特にアルコール度数の強い泡盛は、容器の中の泡が幾重にも積み重なり花が咲き誇るように見えることから「花酒」とも呼ばれている。
「琉球」には、蒸留後に年月をかけて熟成させる文化があり、3年以上貯蔵したものは「古酒(クース)」と呼ばれる。熟成は、ウイスキー等では一般的に樽に貯蔵され、樽から香りの成分を得て熟成されるが、「琉球」では甕や瓶に貯蔵され、酒自体に含まれる成分そのものの物理的・化学的変化により香味成分が変化することにより熟成される。よって、容器詰めされて市場に流通した後でも熟成が進むことが特徴である。産地ではこの特徴を利用し、「仕次ぎ」と呼ばれる消費者等が自ら「琉球」を古酒に育てる文化や技術も定着している。
地理的表示「琉球」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。
地理的表示「琉球」を使用するためには、当該使用する酒類が「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
管理機関の名称:GI琉球管理委員会
住所:沖縄県那覇市港町二丁目8番9号 沖縄県酒造組合内
電話番号:098-868-3727
メールアドレス:info@okinawa-awamori.or.jp
ウェブサイトアドレス:www.okinawa-awamori.or.jp
単式蒸留焼酎、原料用アルコール