白山の清酒は総じて、米の旨みを活かした豊かなこくを有している。
その中でも、純米吟醸酒・吟醸酒は、穏やかな果実様の香りとほどよい酸味を有し、豊かな味わいとこくが相まって、飲み手に品格を感じさせる。
イ 自然的要因
石川県白山市では、1300年以上も前から信仰の対象となっている霊峰白山を水源とする手取川扇状地にあり、豊かな伏流水に恵まれている。この水はカルシウムを多く含み、カリウムが少ないことから、酒造りの過程において穏やかな発酵をさせる一方で、米の溶解が促されることにより、米の旨みが引き出され、豊かなこくのある白山特有の酒質が形成されてきた。
ロ 人的要因
白山の清酒は、古くから「菊酒」の伝統と歴史に培われている。「菊酒」とは、古来は菊の花びらを酒盃に浮かべたものであり、平安時代に編纂された格式の一つである「延喜式」によると、平安期の宮廷では重陽の節句に菊酒を飲む風習があったとされるほか、「菊酒」の一説には、濃醇な酒を飲み干した後にできる酒の滴りが菊の紋の様相に見えたからともいわれている。
また、山科言継の著書である「言継卿記」(1527年)には、白山の「菊酒」を京に持参したとの記述がみられるなど、この地域では古くから酒造りが行われていた。
更に、貝原益軒の著書である「扶桑記勝」(1700年頃)には、白山地域で造られた清酒について、「加州鶴来(現白山市)は金澤より三里、白山より下る川あり。手取川という大河なり。その水にて酒を造る。雪水にて造る。甚だ好き酒にして、色すめり。或る者、天下を巡りて、酒の高下を試む。この酒をもって、天下第一とする。」と評価する記述がみられるなど、古くからその品質に高い評価を受けていた。
このような背景を基に、白山地域の清酒製造業者は、こくと味わいが豊かで、飲み手に品格を感じさせるような清酒造りのための技術研さん・山廃仕込み等による商品開発に努めており、また、平成17年からは地域ブランド「白山菊酒」を立ち上げるなど、その特性の維持と品質の向上を図っている。
地理的表示「白山」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。
(1) 原料
イ 米及び米こうじに国内産米(農産物検査法(昭和26年法律第144号)により醸造用玄米の1等以上に格付けされたものであって、精米歩合70%以下のものに限る。)のみを用いたものであること。
ロ 水に石川県白山市内で採水した水のみを用いたものであること。
ハ 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。ただし、酒税法施行令第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。
(注)精米歩合とは、「清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)」第1項第1号に掲げるところによる。
(2) 製法
イ 酒税法第3条第7号(同号ハに係る部分を除く。)に規定する清酒の製造方法により、石川県白山市内において製造されたものであること。ただし、もろみの製造に当たっては、液化仕込みを行わないこと。
ロ 酒母を用いた製造であること。
ハ こうじ米の使用割合は、20%以上であること。
ニ 製造工程上、貯蔵する場合は石川県白山市内で行うこと。
ホ 消費者に引き渡すことを予定した容器に石川県白山市内で詰めること。
地理的表示「白山」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
管理機関の名称:GI白山清酒管理機構
住所:石川県白山市東新町12番地 白山酒造組合内
電話番号:076-276-4888
ウェブサイトアドレス:www.sake-hakusan.info/
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