日時: 平成26年6月23日 13時27分〜16時02分
場所: 国税庁不服審判所会議室
出席者: 税理士分科会委員 さき分科会長 尾原委員
木村委員 山田委員
懲戒審査委員会議座長
国税庁(事務局) 山崎税理士監理室長
尾部課長補佐
花島課長補佐
稲野税理士係チーフ
分科会長
ただいまから国税審議会 税理士分科会を開催いたします。
本日の税理士分科会には、委員5名のうち4名の御出席をいただいておりまして、国税審議会令第8条第1項に規定する「過半数」の出席がありますことから、本会は有効に成立いたしております。
それでは、早速、審議に入りたいと思います。
本日、国税審議会議事規則第3条の規定に基づき、去る4月8日付で税理士分科会に付託された「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」の改正について、御審議をお願いしたいと存じます。
また、当税理士分科会での審議に先立ちまして、5月29日に懲戒審査委員会議において御審議いただいております。
本日は、懲戒審査委員会議座長に御出席いただいております。お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
それでは、早速、審議に入りたいと思いますが、審議の進め方としましては、まず初めに、事務局から資料1「『税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方』の改正の概要」に基づきまして改正の全体像について説明していただきたいと思います。
続いて、資料2に基づきまして、事務局から告示の改正箇所について説明をいただき、その後、懲戒審査委員会議座長から懲戒審査委員会議における審議結果の御報告をしていただき、それぞれ議論していきますが、量が多いものですから、個別に区分しまして、その都度、その内容について審議を行うという流れで進めたいと思います。
それでは、まず、資料1に基づき、「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」の改正案の全体像について、事務局から御説明をお願いします。
事務局
では、説明させていただきます。まず、今日御審議していただきますのは財務省告示第104号ですが、元々平成20年3月に官報公告されたものです。税理士を含む業務独占資格につきまして、懲戒処分の基準を規定し、これを公表しなければならないとの閣議決定がなされまして、それを踏まえて作られたものでございます。
今回これをなぜ改正する必要があるのかといいますと、お手元の資料3の「平成26年度税制改正の大綱」を御覧いただきたいと思いますが、この平成26年度の税制改正の大綱におきまして、12項目の税理士制度の見直しが行われております。この項目の中で下線部を引いておりますところが、今回の告示の改正に関係するところでございます。申し上げますと、一つは「業務停止期間の見直し」、これは業務停止の上限が1年以内だったところ、2年以内になったということでございます。これは法律の改正でございます。
次に、名義貸しの禁止規定と罰則の創設でございまして、これも法律の改正でございます。
また、大綱では一番最後に書かれておりますけれども、「会費滞納者に対する処分の明確化」。これは法律での対応ではなく、告示で対応する必要があるというものでございまして、以上3点が、今回の税理士法の改正に伴って告示を改正する必要があるものでございます。
資料1に戻っていただきまして、告示の全体像を把握する為に現行基準と新基準案を対比した一覧表を整理させていただきました。
まず、業務停止期間の改正に伴う見直しでございます。従来、業務停止期間の上限が1年だったのですけれども、過去の処分事例の中に業務停止1年ちょうどのところで高止まりしている事例が多く見られること、他の士業法のほとんどが業務停止の上限が2年であることから見直されたものでございます。したがいまして、基本的な考え方としましては、現行基準の標準の量定が、「業務禁止」と「業務停止」の両方が設定されている場合は、その間を埋めるような形で業務停止の期間を設定します。また、標準の量定で「業務禁止」が無い、つまり「業務停止」が上限となっているものにつきましては、それぞれの不正行為の態様、類型ごとに、過去の適用状況や他の不正行為とのバランスを見ながら、個別に考えていくということが基本的な考え方です。その辺は、後ほど資料2でも説明させていただきます。
また、先ほど申し上げましたように、新たに不正行為の類型が付け加わっております。左側の「対象行為」のところを見ていただきますと、(3)に「法第37条の2(名義貸し)」とあります。今までは(2)(信用失墜行為)の中で対応していたのですけれども、法律で禁止規定が入ったので、告示でも新しく付け加える必要が出てきたということでございます。ただ、この(3)は、税理士でない人に対する名義貸しですので、税理士だけれども税理士業務ができない「業務停止中の税理士」につきましては、引き続き(2)で処分しますので、「ニ 名義貸し」が残っております。
次に、「会費滞納者への懲戒処分の明確化」については、大綱に書かれたということもありまして、新しく不正行為の類型として設けております。
また、(8)の「業務停止処分違反」でございますが、これまでの運用上やってきているものです。業務停止処分を受けているにも関わらず相変わらず税理士業務をしている者には、業務禁止以外の対応はなかろうということで、新しく付け加えております。
その他所要の見直しとしまして、後ほど資料2でも詳しく説明させていただきますが、今回の告示の見直しの機会を捉えまして、これまで懲戒審査委員会議や税理士分科会の審議の中で御指摘をいただいたいくつかの点にも対応して、総則や、量定を決める際の要素等につきまして、見直しを行っているところでございます。
以上が今回の見直しの全体像の御説明でございます。
分科会長
ただいまの事務局の説明について、何か御質問あるいは御意見がございましたら、お願いいたします。
無いようでしたら、続きまして、告示案(「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」)の改正項目を個々に審議したいと思います。
まず、「T総則」について、事務局から改正案の説明をしていただき、続いて懲戒審査委員会議における審査結果の御報告をお願いいたします。
事務局
それでは、資料2を御覧ください。新旧対照表でございますが、備考を含めて三段表になっております。変わったところについてはアンダーラインを引いております。
まず、「T総則」の「第1」の1行目のところですが、「税理士法(…以下『法』という。)」ところ。これは文章整理でございます。次の3行目の「不正行為の類型」は、現行で「違反行為」となっているものを変えたところでございます。これは税理士法の中を見ますと、税理士法45条の脱税相談等をした場合の懲戒や、税理士法48条の20の税理士法人の運営が著しく不当と認められる場合の処分のように、具体的に税理士法の第何条に義務規定や禁止規定があって、それに違反したという理由ではなくて、直接、懲戒処分の対象となる行為が書いてあるものがあり、厳密には税理士法違反だと言えないのではないかという指摘がありまして、事務局の中で整理させていただいたものでございます。中身が変わっているということではありません。それから懲戒処分の「処分歴」と書かれていたものを「前歴」と直しております。4の「懲戒処分等」は、元々は「処分」と書いてあったのですが、税理士法上、税理士には「懲戒処分」、税理士法人には「処分」と書き分けられておりますので、それに合わせたということでございます。次に「また書き」のところでございますが、これは第2のところと合わせて説明させていただきます。
今回、「第2」として「税理士の使用人等が不正行為を行った場合の使用者である税理士等に対する懲戒処分等」の考え方を新設しております。現行規定の「また書き」のところに「…税理士法人に対する処分の量定の判断に当たっては、上記の事項に加え、内部規律、内部管理の内容等を勘案する。」といった規定がありますが、個人の税理士にはそういう記載がありません。その結果、個人の税理士が使用人の不正行為に気付いた場合は、これまでも故意による不真正税務書類の作成など重い処分をしておりますが、気付かなかった場合は基本的には不問になっております。ただし、査察事案のような重大な事件が起きて、そこで使用人が共犯として処分されているような場合は別ですが、それでも軽い量定になっております。そうしますと、内部管理をしっかりして使用人の不正を見抜いた税理士よりも何もしていない税理士の処分が結果として軽くなるので、不合理ではないかというのがこれまでの審議の中で指摘されていたことでございます。
まず、使用人の不正行為に対して使用者税理士等に認識があった場合と無かった場合で大きく分けております。認識があった場合は、故意による不真正税務代理とか書類の作成となります。認識が無かった場合は、認識できなかったことに相当の責任が有るかどうかが問われることになります。例えば内部管理体制が全くない、極めて不十分であるといった場合もあれば、反対に内部管理体制が完璧で、認識できなかったことについて使用者税理士に全く責任を問えないような場合ということも考えられます。相当の責任が有る場合は、過失による不真正税務書類の作成と見て、責任が全く無い場合は基本的には何も問わないと整理するわけですが、問題はその中間の形でございまして、相当の責任は無いということで行為者としての責任は問わないけれども、使用人の不正行為が重大な結果を招いているような場合に、これは見過ごした使用者にも管理監督責任を問うべきではないかということで、使用人監督義務違反の規定に違反したものとすることにいたしました。それを文章にするとこうなるということです。
また、税理士法人につきましては、税理士法人の社員とその他の社員の関係を整理させていただきました。
なお、「内部管理体制に不備があり」と事務方案ではなっていたのですけれども、懲戒審査委員会議で「内部管理体制に不備があること等の事由により」と修正されております。この点は審査委員会議座長から御説明いただきたいと思います。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議での議論の概要を御報告申し上げます。本件につきましては、第2の二つ目のパラグラフの「…内部規律や内部管理体制に不備があり、認識できなかったことについて当該使用者税理士等に相当の責任があると認められる場合…」という、この点についてかなり議論がございました。
委員からの意見は、「税理士は、申告書作成時に決算書と実際の内容が正しいかは、必ずチェックしていると思うが、職員がやっている月々の仕事までチェックしないと完全に管理していることにならない、ということになると厳しい。個人の税理士事務所では、一定のルールや暗黙の了解でやっているのが大半。『内部管理体制の不備があること』や『内部管理体制が整備されていること』の判断は、実務的には難しいのではないか。」というのが一つ目です。
これに対しましては、二つ目の意見として「過去の処分事例を見ても、別の税理士から引き継いだ使用人だから全く放置していたとか、出勤しているかさえ見ていなかったとか、酷いケースを事実認定してきたのであり、今後、内部管理体制をしっかり整備していくために、全体としては厳しく見ていく方向になるのかもしれないが、そんなに無茶なことにはならないのではないか。」との意見がございました。
当初の事務局案の記載では、「内部管理体制の不備」と「税理士に相当の責任があること」の両方を認定しなければならないように読めますが、事務局の御説明では、「不備があり」というのは例示であるということでありましたので、「内部管理体制に不備があり」のところを、例示とわかるように「不備があること等の事由により」と修文をなすべきであるという意見が三つ目としてありました。
結論といたしましては、原案である「内部管理体制に不備があり」のところを、例示とわかるように「不備があること等の事由により」と修文を加えることとした上で、事務局案を承認いたしました。
分科会長
それでは、ただいまの点につきまして、御意見又は御質問がある方がいらっしゃいましたら、お願いいたします。
事務局
本日欠席されております、辻山先生の御意見を御紹介させていただきます。
2点ございまして、1点目は事務局案の「内部規律・内部管理体制」という言葉についてでございます。これは、当初からの表現でございますが、辻山先生がおっしゃるには現在では「内部統制」という表現を使用することが一般的であり、またグローバルスタンダードである、ということなので、「内部統制」という表現に修正した方がいいのではないかという御意見です。
もう1点は、内部統制が完璧でも使用人が使用者に見つからないように巧妙に不正行為を行う場合がある。実行者を処分するのは当然ですけれども、必ずしも使用者や税理士法人本体を処分すべきではない場合があるのではないかということでございます。個人の税理士の場合は使用人の不正行為があっても使用人監督責任を問われない場合がある、これは現行でもそうなのですけれども、ただ税理士法人の場合は、10ページにありますように、運営が著しく不当と認められる場合の懲戒処分がありまして、(1)で「社員税理士に法第45条又は第46条に規定する行為があったとき…」と書いてありまして、この場合は「運営が著しく不当と認められるとき」に当たります。今回、「T総則」の「第2」を作ったことによって、「第1」の「また書き」を削除しておりますが、これによって、社員税理士が不正行為をしたときには、必ず法人が処分されることになってしまうのではないかという御意見が出されております。
まず1点目の「内部統制」につきまして、事務局の方で、現行案の「内部規律や内部管理体制」という言葉を他の法令で使っていることがあるのかなというところで調べさせていただきましたが、この告示を除いて用例はなかったということでございます。一方、辻山先生がおっしゃる「内部統制」につきましては、これは他に用例がございまして、平成19年2月15日の企業会計審議会で決定された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」に、「内部統制」の言葉の定義がなされており、省令レベルでの用例もあるということでございます。
税務当局としては、税理士事務所や法人には、内部規律を整備するだけではなくて、それが適切に運営されている状況であるという、この二つが必要であると考えております。(今配付した)この資料を見ますと、「内部統制」について、「…4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセス…」とあり、下の方に「…プロセスを整備し、そのプロセスを適切に運用していく必要がある。」ということがありますので、そういう意味では、規律を整備するだけではなく、それが適切に運営されている状況であることが必要であるという、求めている意味にも合っているのかなということでございます。税務当局としては、平成20年3月のこの告示以降、「内部規律・内部管理体制」という言葉を使ってきており、非常に愛着があるということはありますが、「内部統制」に置き換えることで、現行の事務運営に何か支障が生じるというわけではないので、そういう点も踏まえて御審議いただければと思います。
2点目は、「T総則」の「第2」は、使用人又は社員税理士に不正行為があったときに使用者責任又はその他の社員税理士の責任を問うということが書いてございますが、そういう場合に、税理士法人の運営管理責任をどう問うのかにつきましては、ここには書いていません。どこに書いてあるかと言うと、先ほども触れたように、社員税理士の不正行為であれば、10ページで「運営が著しく不当」ということで(法人の)責任を問いますし、使用人の不正ということであれば、10ページの(4)の使用人監督義務違反を問うことになります。
税理士法人の使用人が不正行為をした場合には、個人の場合と同じように考えればいいということだろうと思うのですが、社員税理士が不正行為をした場合には、先ほども説明しましたが、即運営不当と認められる場合になってしまうということで、「T総則第1」の「また書き」を削除されると、内部統制の整備の有無に関わらず処分の対象になるから、削除すべきでないというのが辻山先生の意見だろうと思います。
ただ、内部統制と言うのは、使用者と使用人の関係だけではなくて、エグゼクティブ同士の関係でも適切に機能しないと、それは内部統制があると言わないと思いますので、税理士法人の構成員である社員税理士が不正しているのに、内部統制が完璧だと言えるような状況が実際にあるのかなという疑問があるのも確かなのですけれども、仮にそのような状況があれば、社員税理士が不正行為をした場合にも、場合によっては運営不当の責任などを税理士法人が負わなくてよいという場合があるのではないかということかと思いますので、そういった観点から御議論いただければと思います。
分科会長
辻山先生の御意見ですけれども、2点ありまして、1点はこれまで「内部規律」や「内部管理体制」という言葉を使ってきましたけれども、財務会計で一般的に使われる「内部統制」という、これは会社法でも使うようになっていますので、会計学の先生だからということもあるかと思いますが、そちらの言葉に変えたらどうかという点でございますが、これについてはいかがでしょうか。
事務局からも説明をいただきましたが、「内部統制」という言葉に置き換えた場合、その分野において使われている用語が当方の意味になりますので、それで不都合が生ずるかということが一番重要なのですね。そこは不都合が生じないということですので、変えても特段当方のこれまでの運用に変更は無いという前提で、一般的な用語と言われている「内部統制」を使うか、当方で使ってきた「内部規律・内部管理体制」ということでこれまでどおり通していくかということでございます。
山田委員
従来どおりやる方が我々一般人にはイメージは湧きやすいですね。「内部統制」というより「内部規律・内部管理体制」という方が。
分科会長
より具体的ということですね。他の御意見はいかがですか。
尾原委員
分かりやすさからいけば、前の方が分かりやすいですけどね。
分科会長
これまでずっと実務もこれで定着していたわけだから、「内部統制」と同じ意味であれば変える必要は無いということですね。
木村委員
会社経営に関してはマネジメントやガバナンスという言葉かもしれませんが、こういう税法や懲戒対象ということで言えば、「内部規律・内部管理体制」と言った方が分かりやすい気はしますけれども。
分科会長
大勢はどちらかというと従来通りということなのですけれども、会計学でいう「内部統制」というのは、お配りいただいた「…計算に関する書類その他…」の2条に「財務報告に係る内部統制」とありまして、範囲が狭くて、会社法でいう内部統制、コーポレートガバナンスというのはあるわけですが、それは財務だけじゃなくて、もうちょっと広い様々な会社法上の規律に関する「内部統制」を引いている。それぞれの分野において使われ方は若干は違っているのかなと。租税法と言うか、税理士の業務に関しては、今までどおり「内部規律・内部管理体制」という言葉を生かしたいというのが大勢ですけれども、それでいかがでしょうか。
山田委員
承知しました。
分科会長
辻山先生がいらっしゃらないので、これ以上の反応は無いのですけれども。とりあえずこういう意見だということでお伝えいただければと思います。それで、異存が無いのであれば今までどおりとさせていただきたいと思います。
次に2番目なのですけれども、社員税理士が何か悪いことをしたときに、法人自体を連座的に懲戒処分の対象にしてしまうことは、おかしいということなのですけれども、この規定って裁量規定ですか。社員税理士が不正行為をしたら、税理士法人自体も懲戒処分を「しなければいけない」ということなのですか。それとも「することができる」ということなのでしょうか。
事務局
運営不当と認められるときの懲戒処分については税理士法第48条の20にございます。
山田委員
法律の規定は「命ずることができる」ですね。だとすると、そもそも告示は税理士法人に関する量定の基準だし、例外が出てくることもあるということだから。
分科会長
社員税理士が悪ければ税理士法人も両罰規定が適用されますが、それほど法人には過失がないのであれば、社員税理士への処分だけでいいってことなるのでしょうか、できる規定だったら。となれば、あまり厳密に考えなくてもいいのではないかとも思いますが。
山田委員
社員税理士の場合は、法人がこれを監督するとかいう感覚ではないと思うので、ある意味連座なのではないかと思います。まさにそれは一蓮托生のものという話なのではないでしょうか。
分科会長
言いたいお気持ちは良く分かります。ただ、辻山先生が問題にしておられるのは、複数いる社員税理士の中の一人が不正行為をして、他の社員税理士はその不正を知らなくても、連座ということで税理士法人を業務停止の処分にしてしまうと、他の社員税理士の顧客に対しても何もできなくなってしまう。不正行為をした税理士の顧客は迷惑を被ったとしても、その他の社員税理士のところまで懲戒処分の影響が及ぶというのはやりすぎではないかということではないでしょうか。
そもそもそういうことが起こらないように、社員税理士が相互に監督し合うことなのですから、当然それが不十分であった以上は全体として処分を受けなければいけないという考え方もあるということです。ただ、「できる」規定だから、別に法人自体に処分が及ばないようにすればよいということではないかと思います。
木村委員
新しく補助税理士が所属税理士に変わって、所属税理士は開業税理士に報告義務はありますが、自分の責任で使用人でありながら税理士業務をすることができます。所属税理士が不正をした場合に、所属税理士は当然責任を問われますが、親方税理士にも責任が及ぶのかという質問をしようと思っていたところです。社員税理士が税理士法人に虚偽報告するなどして、税理士法人が知らないこともあるわけですが、その場合、監督責任はどうなるのでしょうか。個別事案によって事実認定だと思うので、自動的に連座というのは、おかしいのではないかと思います。
分科会長
所属税理士については後でまた審議することとなります。
事務局
今議論になっているので、説明させていただくと、資料2の1ページ目の「第2」に「…使用人その他の従業者(自ら委嘱を受けて税理士業務に従事する場合の所属税理士を除く)…」とあります。これまでの補助税理士制度では、補助税理士は100%開業税理士の業務補助しかできなかったので、使用人と同じ立場であると考えていたところですが、今回の改正で所属税理士制度が設けられ、所属税理士は業務補助もできますが、一定の手続きを経れば自ら委嘱を受けることもできるようになりました。
その手続きについては、資料4の「改正税理士法等」7ページから8ページに記載しておりますが、(省令第1条の2第)3項の4号に「自らの責任において委嘱を受けて…」とあるように、所属税理士が直接受任した事案については、所属税理士の責任であって、親方税理士は責任を取らないということになっています。つまり、所属税理士は親方の使用人ではなく、一人前の税理士として、言うなれば親方から見れば隣の事務所の税理士として事案を扱うことになるというわけです。
直接受任をするのに煩雑な手続きが必要なように見えますが、これは何故かというと、所属税理士が親方に黙って不正行為をしてしまう、逆に親方が制度を悪用し、所属税理士を隠れ蓑にして不正行為をしてしまう、これを防がないといけないためです。
したがって、直接受任事案については、原則、親方は責任を負わないのですが、事実関係をよく見ると実は所属税理士を隠れ蓑として使っているという場合は、親方税理士も共犯と言う形で当然責任を負わなければならないということでございます。
木村委員
親方税理士はやはり広い意味の監督義務があります。しかし、親方税理士が所属税理士を隠れ蓑にするということではなく、逆に所属税理士が親方税理士を隠れ蓑にして、信用を借りて不正をしようとした場合には、親方税理士の責任は範囲外ではないかと思います。社員税理士も同じではないかと思います。事案によって判断するのでしょうが、社員税理士の不正と税理士法人の関係は、当然に連座ということは、何というか、行き過ぎなのではないかと思います。
事務局
現行法では、補助税理士は親方の指示のもとに動くとなっていますが、補助税理士が勝手に不真正税務書類を作成する場合はあります。その場合、親方税理士側は補助税理士がやっていたことについて、知らなかったからということで、査察事案のような重大なものについてのみ、使用人監督義務違反を問えていたものの、そうでなければ不問になっておりました。でも、本来は、親方は補助税理士の業務をきちっと管理しなければならない。社員税理士同士も同じことです。今回はそれを、内部管理体制が全くなかった場合は、過失により補助税理士なり社員税理士が勝手に動くことを放置していたとして、ある程度不正行為者としての責任を取ってもらうという形に変えたものであります。
木村委員
使用人の不正行為を許していた場合は、当然責任はあると思いますが、所属税理士が親方税理士を利用して、勝手に信用を借りて個人的に不正を犯した場合の話。そういった場合は親方の責任はどうなるかという話です。
分科会長
辻山委員も税理士法人が常に両罰で処分されるのではちょっと可哀そうじゃないかということだと思います。ただ、読み方としては、この規定は、どんな場合でも両罰で「処分できる」ですよね。
事務局
告示では、社員税理士が不正行為をした場合、著しく運営不当であると認められると書いてありますので、いったん運営が著しく不当と認められるときに該当するけれども、法48条の20は「できる」規定ということですから、結果として運営不当の責任を問わない場合は法律上有り得るということだろうと思います。
山田委員
量定の基準ですから、元々責任が無いということになれば、どうしようもない話で、その税理士に責任がある場合には、告示のその部分に該当するものとしてその量定を適用するというだけの話だから、元々責任がないのだったら、責任の無い人に処分基準を適用していいわけはないと、それだけしかないのではないですか。
分科会長
元々の規定が「できる」規定になっているのであれば、それは実態に合わせて、両罰が必要な時には処分するし、そうでないときは不正実行者本人だけ処分する、ということであれば、辻山先生の御意見にも適合するし、結果の妥当性という点でもそれでいいのではないかと思います。
事務局
辻山先生は「運営が著しく不当とは認められない場合もあるだろう」という言い方でおっしゃっておられるので、その点を審議していただければ。
分科会長
そうしたら、そういう風に制裁がない場合があるということでいいのではないでしょうか。違法事実が無いということになれば。
木村委員
所属税理士は懲戒処分になって、税理士法人には及ばなかったとしたら、税理士法人が解散するなどして悪用したりはしないのでしょうか。
事務局
これまでの事例は、大体、社員税理士2人だけという場合で、しかも代表が不正行為をしており、むしろ法人が組織的にやっていると認定できる場合が多かったと思います。ただ、税理士法人に所属していた税理士が不正行為をして懲戒処分の対象となったものの、所属していた税理士法人は自主的に解散したため、法人には責任を問えなかったという事例もありました。
尾原委員
税理士法人制度ができて13年経つけれど、これまでは歴史が浅いので、あるべき管理体制に向けて、これからきちっと指導していくというようなことだったでしょう。また、大きい税理士法人と小さい税理士法人でも実態は違うのではないかという話もあったし、そういう中で、懲戒の審査をする場合に、内部管理体制の整備状況として、どのようなものを不十分とするか、事例は相当積み上がってきているのでしょうか。
事務局
税理士法人も数自体は増えてきております。今、税理士に対しては、まず実態を確認して、その中で税理士法に違反していると思われるものについて、税理士法上の調査をするという体制になっておりますが、税理士法人については、まだまだ実態が不明な点が多いので、まずは、どういう実態なのかを知ることを目的で接触するよう指示しています。そのときは、特に税理士法人の内部規律・内部管理体制をきちんと見るよう指示しておりますし、そのためのチェックシートも作っております。
尾原委員
結果的に「できる」規定になっているわけだし、実態が分からないとするなら、告示を変えていくというような状況には、まだ無いような気がしますね。
分科会長
税理士法人の場合、内部管理体制がしっかりしているということが前提であって、普通の公開法人であれば株主総会というチェックの場があるのに、税理士法人の場合は第三者的チェックが入らないからこそ厳しく不正行為を処分すべきだという考え方もあります。社員税理士が悪いことをしたら当然法人も同じだけの懲戒処分を受けたって構わない、それが法人制度だという考え方もあり得ると思います。その方が法人形式を採ることの客観的な内容の正当性を持たせることになるし、個人の税理士が個人で責任をとることと変わらないわけですからね。だから連座制を採用して構わないという考え方も有り得ると思うけれども、まだそこまでの事案は実際に無いので、原案のままでも、内容が酷ければ法人にも懲戒することもできるし、法人の非がそこまで酷くなければ、社員税理士だけの責任ということになります。
原案のままでいった方が結果的にいいのではないかということで、今までの意見を集約できると思いますので、辻山先生は必ず両罰になるのではないかと御疑問を提示されていますが、原案でもそうなっていないのではないかと税理士分科会の方で整理したと伝えていただきたいと思います。必ず両罰になるわけではないというのは税理士法第48条の20ということでいいですか。
事務局
はい。税理士法第48条の20第1項は資料の「改正税理士法等」の29ページに書いてございます。
分科会長
「…できる」という規定ですから。
山田委員
運営不当と認められない時にはそもそも要件に該当しないわけで、告示は要件に該当するときの量定を決めるというだけの話なわけですから。
事務局
現行の告示では、「社員税理士に、法第45条又は第46条に規定する行為があった場合」に内部規律や内部管理体制を見て量定を判断していくわけですが、今回の告示では内部管理体制等々を全部「T総則」に持ってきたという認識でここを削り、「当該行為を行った社員税理士の量定に応じて」としております。
従って、2(1)で「社員税理士の法第45条又は第46条に規定する行為があったとき」には、「運営が著しく不当」と認められることになってしまうのではないか、というのが辻山先生の御意見だろうと思います。ただ、運営不当と認められるときでも、法律上は処分が「できる」ということなので、結局は処分しない場合もあるのですが、辻山先生は、「そもそも運営が著しく不当と認められないという場合があるのではないか」、「原案でそれが読めるのか」ということでございます。
山田委員
それは読めるのではないでしょうか。告示は要件に該当した時はその量定にするということであり、元々量定の基準なのであって、別に法律の解釈基準ではないわけですから。
分科会長
「社員税理士の量定に応じて」ということなので、法人に違反事実があると認められる場合には社員税理士の量定に応じて法人もそれ相応に懲戒処分を受ける。そもそも、法人には違反事実がないのであれば、社員税理士だけが処分を受ける、法人には量定を適用しない、ということであれば分けられますね。
木村委員
「できる」規定ですからね。辻山先生はその辺のところをきちっと教えてくださいということだったのかもしれませんね。
分科会長
告示の方だけを見ると、社員税理士の量定に応じて法人の責任も必ず問われるように読めるとお感じになったということなのでしょうか。
そもそも、法律の規定で法人に違反事実が無いということになれば、量定までこない、ということでこちらの点について整理したいと思います。
事務局
そうすると、原案では「総則第1」の「また書き」を削っていますが、これを復活はさせないということでよいでしょうか。
分科会長
辻山先生には懸念しているような結果にはならない、必ず連座制になるようにはなっていないと説明していただければよいと思います。
尾原委員
税理士法人ができてからこれだけ時間が経つのだから、どれだけ当局側が内部規律のための指導あるいはレベルアップのための努力をしてきたか、これからしていくかということがこれから一番求められるような気がします。それがあって初めて懲戒処分の判断基準がより明確になるのであって、いつまで経ってもレベルが上がらないということにならないようにはしていただきたいですね。
木村委員
税理士法人制度ができてから13年ですが、税理士法人の実態は、税理士会としてもあまり調査できているわけでもありません。税理士法人というのは、従来、税理士は自然人格なので、死亡とか事故で、急に税理士事務所が崩壊した場合の税理士関与の不安定性や職員の雇用の安定確保をどう解決するかということで生まれた制度だと思います。しかし、今では、ある大きな税理士法人が、全国チェーン的な組織となっているものもあります。私が心配しているのは、そのような税理士法人が名義貸しをしていないかということです。前から言ってはいたことですが。
分科会長
色々な意見がありますが、とりあえず「T総則」についてはこれでよろしいですか。
山田委員
一つだけ確認させてください。「T総則第2」の「また書き」の部分と「なお書き」の部分の関係が実はよく分からないのですが、内部規律や内部管理体制がいい加減で使用人の不正を見落としたという場合は重く処分するというのが2段落目の「また書き」の部分で、3段落目の「なお書き」のところはそれ以外にも監督義務違反があるから処分するという制度なのだろうと思ったのですが、これは先ほどの御説明でもあったように、2段落目の「また書き」の「内部規律」や「内部管理体制」の不備というのは、相当の責任があると認められる場合の例示だという理解でよいでしょうか。そうだとすると2段落目と3段落目の違いとは何なのでしょうか。
2段落目は相当に責任がある場合で、3段落目は使用人監督義務違反だということになると、3段落目も懲戒対象になる以上、相当の責任がある場合に違いないので、2段落目と3段落目はどう違うのか、このことはこの間から疑問に思っているのですが。
懲戒審査委員会議座長
2段落目の「また書き」は、認識できなかったことについて相当の責任があるから「過失」なのです。1段落目が「故意」、2段落目が「過失」ときて、「なお書き」の3段落目は、これは限りなく「結果責任」なのです。したがって、通常は「上記に該当しない場合」、責任はないので懲戒はしない、それが原則であるということです。
ただ、使用人の不正行為が極めて重大な結果を引き起こしている、というような場合には、結果からみて使用者税理士の監督が適切でなかったと認められるので、使用人監督義務違反を問うという非常に例外的な場合を想定しているわけです。非常に重大な事案を見落としていて、見落としていること自体に「過失」はないとしても、これだけの結果を引き起こして世間様に御迷惑をかけている以上、監督責任が不備であったと認められるという意味での「結果責任」という理解で懲戒審査委員会議は了承しました。
山田委員
しかし、本来、「結果責任」とはいかないはずではないのですか。
懲戒審査委員会議座長
結果からみて、使用人がこれほど重大な結果を引き起こしてしまった以上、その使用者である税理士には、管理者としての責任があるという思考手順です。過失を見つけて追いかけるというのとは逆方向になっているわけです。
山田委員
そもそも認定の仕方が違うわけですか。
事務局
2段落目と3段落目で大きく違うのは、3段落目では、我々が事案を見ていくに当たって、この人はこの書類を作成していない、作成していないと思われる、というのとは異なり、その先生が作成したとまでは言えないというような状態のときを想定しています。その先生は(使用人の不正を)全く知らないわけですね。要は監督者としての責任を問うか、問わないかということです。例えば、内部管理体制が完璧だったとして、このような状態をすり抜けるような不正は、他の約74,000人のどの税理士であっても見つけることができないようなものだったら、これまでは結論が非常に重大であってもそれは責任を問えないということでした。ただ、そういう事案はほとんど無い。大体グレーゾーンです。そういうグレーの状態で、査察事案で、かつ、使用人が共同正犯として捕まっているような事案が起きたとします。これは内部管理体制がきちっとしているとは言えませんよと。何らかの内部管理が不十分だった点があるのではないですか、ということ。結論からの話になるわけです。
ということで、税理士が使用人の不正を知らなかったかどうかは外から見て分かると。だから、行為責任は問えないですけれども、内部管理体制のどこかに何か問題があったのではないかと推認できますよということで、使用人監督義務違反を問いますよということではないかと思うのです。さらに、内部管理体制を全くしていない、使用人が好き勝手にやっていいですよといったような状態になっているような場合までいくと、これはもう完全に、税理士が過失で不正行為をしたのと同じくらい、行為責任を問われるくらいの「相当な責任」がありますよというのが2段目になるということです。
懲戒審査委員会議座長
1段落目と3段落目が今までどおりなのであって、2段落目の過失責任を問うところが新しくなっていると、理解しております。1段落目、3段落目は今までもそれでやってきていたものだが、2段落目のところはこれまで曖昧だったので今回明確にしたという認識です。
山田委員
なるほど。そう言われれば、そういうものかというしかないですね。
分科会長
「なお」とか「また」とかいっぱい出てくるので非常に読みにくいのですよね。1、2、3段落目と来ると連携がまずくなるなあと思いながら、しかし、この1個の文章の中で、「また」がきて「なお」がきて、そのあと一つ空いてまた「また」がくるというのは、どうも内容的に違うものが積み重なっていて読みにくいなという印象を受けたのですけども。
山田委員
まあ、そう読むものだとおっしゃるのであれば、そうですかと言うしかないので、こだわりませんが。
事務局
この部分は3段落目と4段落目の間で大きく分かれております。例えば(1)と(2)と分けるといったことがよいでしょうか。
分科会長
最初の第1段落は全部に係ることになるのでしたか。
事務局
使用人が不正行為を行った場合の使用者である税理士又は社員税理士の責任を書いてある1〜3段落で1セット、4と5段落は税理士法人の社員同士の責任について書いてあります。その上で、更にそれぞれ、不正行為を認識していた場合としていない場合に分かれています。
分科会長
とりあえず、3段落目と4段落目の間を一行空けるだけでもわかりやすくなるのかな。
懲戒審査委員会議座長
今、岩ア先生がおっしゃったことに対応して、例えば、「1税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者…が不正を行った場合における、使用者である税理士等の責任」として「(1)使用者税理士等がその不正を認識していたときは…とする。」、「(2)当該不正を認識していなかった場合でも…過失により…とする。」、「(3)(1)、(2)に該当しないときでも…」というような形でまとめて、3段落目以降は、「2 税理士法人の社員税理士が不正行為を行った場合における税理士法人の他の社員税理士の責任」とかいう形にして、(1)認識していた場合、(2)認識のない場合という、書き分けの修文にしてはいかがでしょうか。この方が読みやすいのではないですかね。中身はこれでいいとおっしゃるのであれば表現は任せていただければと思うのですが。
分科会長
では、そうしましょうか。「T総則」で時間を取ってしまって、これからが沢山あります。それでは、続きまして「U量定の考え方」、3ページにまいります。
事務局
すみません。第3と第4を説明しておりませんでした。ここは、元々第2、第3とあったところが、今回、第2を第3、第3を第4にしたということと、「違反行為の異なるもの」としておりましたところを、実際は不正行為の類型ごとに行っていますので、「不正行為の類型の異なるもの」とさせていただきました。それから、個人の税理士の場合は「税理士業務」、税理士法人の場合は「税理士法人の業務」と、税理士法の規定の表現に合わせたということです。すべて内容は変わらないのですけれども、文書整理させていただきました。
(休憩)
懲戒審査委員会議座長
事務局の理解は、告示は量定の目安だけではなく、構成要件規定も書いてあるという理解に近いのだと思います。山田先生と岩ア先生は、構成要件そのものは法律に書いてあって、非違行為があると認められた時に初めて量定の問題になる。内部統制がしっかりしている場合には、法律でいう「運営が著しく不当と認められるとき」に当たらないので、懲戒の問題は生じないという御理解なのです。一方で、構成要件規定と考えると、何らかの宥恕規定がないと必ず非違行為に当たってしまうという理解になるので、そこが違っているのです。事務局と。
社員税理士がすごく悪いことをやったが、税理士法人の内部統制がしっかりしていて著しく運営不当と思えないときには、そもそも税理士法第48条の20に当たらないから、懲戒の問題にならないというのがお二人の意見。事務局は、税理士法第48条の20を告示で類型化したのだから、そこに当たれば必ず当たるというふうに読んでいらっしゃる。社員税理士が不正行為をやっていれば、即法人も懲戒処分の対象となるという理解です。類型化している以上そこに当たれば必ず当たる。
山田委員
ある種、みなし規定みたいなものですか。
懲戒審査委員会議座長
みなし規定ではなく、そこは連座になるという意味です。税理士法第48条の20の類型というのは、資料1の左側の類型が構成要件という発想なのです。ですから、告示の類型のどれかに当たるものについて懲戒対象となる、不正行為の類型に当たらないとしたら、告示上でも宥恕規定が必要だという発想で「また書き」がいるのではないか、とおっしゃっているので、結局、当たる場合でも最後は処分しない余地があるのなら、「また書き」があっても全体に齟齬はないから入れてもいいかなと思うのですけど。
分科会長
読み方としては、今までどおり、税理士法第48条の20の「運営が著しく不当と認められるとき」というのは、本法で規定されている。告示は、単に本法の要件に該当する事実があったときだけ、適用すると考えます。
山田委員
我々は多分そう考えるけど、実務的には、多分、告示は告示で自己完結的なものとしているからではないのでしょうか。
懲戒審査委員会議座長
資料2のこの部分には、構成要件が書いてあるという意見だと、どれかにぴったり当てはまったものを非違行為でないと読むには、その理由となる根拠規定がいる。宥恕規定が必要である、ということになると思います。
事務局
私どもとしては、例えば、言い方は悪いですけど、懲戒基準の適用下限未満みたいなものが、構成要件には当てはまるけれど懲戒処分まではする必要はないものと、理解しております。構成要件である「運営が著しく不当と認められるとき」に該当するかしないかは、ここでは、「社員税理士が不正行為をしたこと」であり、これが認められた時点で、「運営が著しく不当と認められるとき」に該当すると読んでいます。
分科会長
自動的に社員税理士の量定に応じて法人の方も当然に同じ懲戒処分を受けると、こういうふうに読むということですか。
事務局
もちろん最終的には「T総則」があるので、「U量定の考え方」により量定を決めるのが適切ではない場合には、加算減算があると思うのですけれど。
分科会長
そもそも、不正行為は、社員税理士にある場合とそれから法人にある場合と両方とも本法に書いてあります。社員税理士に不正行為があり、法人の方には不正行為がないと認定できたならば、社員税理士の方に不正行為があって懲戒処分を受けたとき、自動的に法人の方にかかってこないように読めるのだけど。
山田委員
法律自体はそうなのだけれども、多分、告示が法律の解釈基準を兼ねているという理解なのでしょう。
懲戒審査委員会議座長
そうすると、「また書き」を復活させたら、(社員税理士が不正行為をしたら)法人も不正行為には当たるけれども、処分をするまでのことはしないという理解で、結局処分しないことになるということですね。
事務局
はい。ただ、事務局の方でも、この問題を議論したのですが、使用人とは違って、社員税理士の場合は法人の一部であるので、同じ扱いでよいのだろうか、例えば、悪いことをした人が、悪いことをしたのはこの右手だから、右手だけ切って、こっち(胴体)には責任がないとは言えないのではないか、というものでした。
山田委員
私も気分としてはよくわかって、だから、最初に申し上げたのはそういうこと(連座)を申し上げたわけだけども、どうもそうじゃないとおっしゃるから。
懲戒審査委員会議座長
そうじゃない場合もあるのではないか、というのが辻山委員の御意見なのではないでしょうか。
分科会長
そうじゃない場合が認められるように規定をつくっておきたい。必ず両罰じゃないとすると。
山田委員
そうだとするとやっぱり。
分科会長
従来通りの規定(削除した「また書き」の復活)にしておくという手も一つあると思うのですが。
懲戒審査委員会議座長
従来は、「内部管理・内部規律」と書いていましたから、例えば、「総則」の削った「また書き」の2行を復活させればオールマイティで読めると思います。他方、社員税理士の自己脱税のところは、従来は、そこにも書き込んでいたのですが、すっきりさせるとすると、一番上の「総則」で書いておけば、不正行為があっても懲戒処分を必要としないという解釈を素直に読みやすいことになりますね。
分科会長
やっぱり、処分の一貫性とか、統一性というのが必要ですから、従来やってきたことをここだけ違う取扱いを我々の提案でするというのは、望ましいやり方ではない。やろうとしていることは同じで、目的は、必ず両罰とは限らないという方向で認める余地を作りたい。そうするための手法が違うだけですね。
事務局
事務局としては、社員が不正行為をした場合は、当然、法人も両罰に決まっているだろうというもので、辻山先生は必ずしもそうではない場合があるとおっしゃっておられます。ただ、「T総則」の「なお書き」がありますので、最終的には法人を処分しない場合もあるということでは、結論は同じになるのですけれど、ここに「また書き」をもう一度今の状態で復活させると、それはもう、処罰しない場合がありますよというのを外に言うのと一緒になるので、あまり復活させたくないというのが、部内の議論としてはありました。
山田委員
そりゃそうだろうな。
事務局
また、いくら巧妙にやっていると言っても、使用人と使用者の関係と違って、法人の構成員である社員税理士が不正行為をしたことを、同じ法人の構成員である他の社員税理士が認識できないような状態が、内部管理体制が完備されて何ら問題ないというように言えるのかと、そもそも完備されていると言えないのではないか、というところで部内では議論になったところです。
分科会長
法人論から言えばそうなのですよ。そのために作ったのですから。ちゃんと、しっかりしてねというために、法人形式にして、内部で相互にけんせいする仕組みが作られたのだから。
山田委員
社員税理士というのはそういうものですね。
分科会長
取締役ですから。ただそれだと、一人の社員税理士が悪いことをしたときに、正しい社員税理士の顧客も税理士さんからサービスを受けられなくなる。法人が懲戒処分を受けるということは、代表社員が、例えば「1年間停止」と言われれば、法人も1年間活動できないという結果になる。悪くなかった社員税理士の顧客についてみると、なんか一蓮托生で阻害された形になって、きっとお客さんは離れてしまいますよね。
懲戒審査委員会議座長
内部管理体制がおかしかったという前提の理論とすれば、税理士法人自体が悪いとも言えるわけですよね。この議論をどっちに落ち着けるか、税理士分科会の先生方のうち、山田先生は、懲戒審査委員会議や事務局よりで、他の先生方は、(法人を処罰しない)余地は認めていいのではないかという御趣旨だったように承ったのですが。
分科会長
そういう意見があるということですが、数から言うと、そちらの方が多いから。なるべく条文等を動かさない形で、解釈でいくとするならば、本法の方が「できる」規定だから、懲戒処分することもできるし、しないこともできるということになるので、そこで「運営が著しく不当」に当たるかどうかの判断に裁量を利かすことはできる。当たるので処分するということになったら全部両罰になりますから、不正をした社員税理士と同じ懲戒、又はそれに応じて法人も処分することになるわけですから、最初の段階で法人を処罰するかどうか最初に決めるべきでしょう。
懲戒審査委員会議座長
告示の外で決まると考えるのですね。
分科会長
そういうふうに考えれば何も手を入れなくて、今のままでいけると思う。
懲戒審査委員会議座長
今のままで税理士分科会の先生方のお考えのとおり、どうしても読むのであれ ば、「総則第1」の「その他個別事情」で読む。
ずっと、こちらで運営されてきた方々の感覚からすれば、余程の個別事情がなければ、一蓮托生になっているはずだと思います。何かが特別にあるときに限って、そういう条件を満たされるとすると、処分しない場合があるのでしょうが、それは、わざわざこの「また書き」を復活させるのではなくて、読むときは5で読めば、先生方のおっしゃるようになるのではないでしょうか。
分科会長
そうすると、まずは事案として起こらないけれど、両罰をしないこともできるということですね。しかし、悪いことをした社員が、他の代表社員には秘密にして何もわからないようにしていた場合も、法人も懲戒処分となり、税理士業務ができなくなると、お客さん、クライアントが一番迷惑を被るのですが。
懲戒審査委員会議座長
でも、多分、そのような不正行為が他の社員に気づかれずに通るというのは、みんなその事案を当該社員に任せっぱなしにしているパターンですよね。
先生方の御意見も良く分かっていますし、私も懲戒審査委員会議に伝えますから、こういう案件があったときにどうするかということ自体は別の問題だけれども、中に入れば、総則の5などで動くという理解で、原案には手を加えないということでよろしいのではないでしょうか。
分科会長
続きまして、「U量定の考え方」に参りますが、まず「第1税理士に対する量定」のうち、2の(1)までの改正案、それから懲戒審査委員会議における審議内容について報告をお願いいたします。
事務局
1は文章整理でございます。「1項及び2項」を「1項又は2項」に改めております。(1)の量定につきましては、先ほど基本的な考え方で申し上げましたように、税理士業務の停止と禁止が両方設定されている場合は間をとって、2年の業務停止としております。(2)はたくさん線が引いてあるように見えますけれども、括弧の中にある括弧を外に出しただけで内容は変わっておりません。量定については、現行は「1年以内の税理士業務の停止」となっていますが、「総則」の「第2」で、「故意」と「過失」、「使用人監督」の関係を整理しましたので、1年のところを2年に変えております。
2(1)は、税理士が税務書類に添付する書面の虚偽記載の場合ですが、基本となる行為は、不真正税務書類の作成であって、添付書面の虚偽記載はこれに付随して行われるため、大もとの不真正書類の作成の方の量定の上限が上がっておりますので、こちらの方は変えなくてよかろうということで1年のままにしております。
懲戒審査委員会議座長
今、御説明があったとおりです。ただ、「停止と禁止があるときは間をとって」とおっしゃっていましたが、「間を埋める形で」アップさせたということになります。ポイントは1(2)の過失による不真正税務代理等の場合と1(1)の故意による不真正税務代理等の場合との量定のバランスということであります。そこで故意の方には「禁止」がありますが、「過失」の方は上限を2年に上げて、しかし「禁止」までは設けないという点、ここがポイントになると思います。それから2(1)の添付書類の虚偽記載は現行1年の上限をそのまま据え置くこと。これは、不真正税務代理等に付加する処分であるからということで、この2点が実質的なポイントになると思います。懲戒審査委員会議では、特に大きな異論はなく、事務局案通りとすることといたしました。
分科会長
これについてはよろしいかと思います。続きまして4ページの(2)のイとロをお願いします。
事務局
はい。自己脱税と自己申告漏れについて、でございます。現行は、自分の申告だけではなくて、自分が代表者である法人の申告で脱税を行っている場合も該当します。「代表者等」の「等」がわかりにくいということで「又は実質的に支配していると認められる」という言葉に直させていただきました。ここは文章整理でございます。
その後ろに「(上記1に掲げる行為に該当する場合を除く。)」を追加しております。これは税理士が、自分が代表者である法人の申告書を作る場合、通常は社長として作るのですが、顧問税理士として作ったと認められる場合があるかもしれない、その場合は、1の不真正税務書類の作成の方で見るという趣旨で書いております。
量定については、(2)のイの自己脱税につきましては、「停止」と「禁止」の間を埋めて2年に変えており、自己申告漏れについては、現行は6か月の停止が上限なのですが、過去に相当多額の申告漏れがございましたし、無申告とか、帳簿を一切付けていないで概算で経費計上しているというものもあるので、上限6か月ではまずいだろうということで2年以内に量定を引き上げたものでございます。
懲戒審査委員会議座長
上限の引き上げのところは、御説明の通りです。懲戒審査委員会議では、(2)のイで「(上記1に掲げる行為に該当する場合を除く)」となっている点について、(2)のイは、自己脱税で重加算税が課せられている場合ですから、1(1)の故意による不真正税務書類の作成にのみ対応させるべきではないか、ところが「(上記1に掲げる行為…)」と書きますと、1(2)の過失による不真正税務書類の作成まで含まれますので、そこが齟齬を来たしていないかという質問がありました。
事務局からの答えは、税理士として自分の会社の申告書作成に関わったときは、まず大きな括りで「不真正税務書類の作成」として捉える、その際会社に重加算税が賦課されたとしても、その場合、会社としては脱税になるわけですが、税理士の書類作成としては、作成時の認識によっては「過失」による作成という場合もありえなくはないので、この自己脱税のところも、上記1(1)(2)両方含む表現になっているという御説明でありました。これを了承しましたので懲戒審査委員会議では事務局案の承認となりました。
分科会長
今の説明について何か御質問等はございませんか。
それでは、ハについて御説明願います。
事務局
「調査妨害」ということでございますけども、文章整理させていただきました。現行告示は、表題は「調査妨害」ですが、括弧書きは「(税務職員の検査を妨げる行為等)」となっています。この「等」は、告示制定当時の議論では、検査を妨げる行為以外の行為、つまり質問不答弁を読むということでございました。質問不答弁も検査を妨げる行為も、いずれの場合も、調査を妨げる行為なので、税理士法第2条の税務代理、調査の立会いに使っている「調査」と言う言葉を使わせていただいたということでございます。
懲戒審査委員会議座長
この部分については、懲戒審査委員会議では、「調査を妨げる行為」という言葉で新しい告示案ができていますが、国税通則法第127条では「答弁せず若しくは偽りの答弁を…」と、構成要件を個別具体的に書いてあるので、告示でも調査を妨げる行為を具体的に書く必要があるのではないかという意見がありました。他方、税理士の現場では、調査の妨害というのがどういう意味を持つのか、どのような行為なのかについて、既に十分認識がいきわたっている、逆に具体的に記載するとそれ以外の行為が許されるということになりかねないので、調査の妨害という言葉で十分に意を尽くしているとの御意見がありました。両論ありましたが、後者の御意見を了として、懲戒審査委員会議におきましては、事務局案どおりの承認としました。
分科会長
ただいまの「ハ調査妨害」につきまして、何か御意見はありますでしょうか。現行告示は「検査を妨げる行為等」と「等」が付いていて、今回は「調査を妨げる行為」と「等」がついていません。現行告示の「等」とは何が想定されるということでしたか。
事務局
現行告示の「等」というのは、質問に答弁しないことなど、を想定して付けております。今回は質問不答弁と検査を妨げる行為の両方を含めて「調査を妨げる行為」としておりますので、「等」を付けておりません。
分科会長
質問検査権の行使には、質問と検査の2つの要素があり、それを妨げる行為が調査妨害ということですね。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議では、税理士の先生方からは、あえてそれ以上書く必要はないということでした。国税通則法第127条でいうと、2項の「当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」と、3項の「物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件を提示し、若しくは提出した者」の両方ともこれに入っているので、特に分けて書く必要はないという意見でした。
分科会長
裁量的な規定になってしまうとちょっと、税務調査は法律用語じゃないですよね、「調査」というのは。ここで使っているから法律用語かもしれないですが、国税通則法第127条に書いてあるものを全部含めて「調査」ということで、法律的にそれでよいのでしょうか。
山田委員
「所得税、法人税又は消費税に関する調査」と国税通則法(74条の2)には書いてあるよね。
事務局
税理士法第2条第1項の「税務代理」のところで出てくる、税務官公署の調査の立会いをする、その段階での妨害行為をすれば、それが対象となると考えておりますので。
分科会長
調査とは、という定義規定はないですね。
山田委員
「検査」なんかより広い使い方をするみたいですね。
分科会長
「検査」という言い方では、質問検査権の「検査」しか指さないので、前の規定の書き方の方がまずいとは思うけど、「調査」だけというのもどうなのか。かといって「〜等」と書けば、その等は何というふうになってしまうし、そもそも「調査」が何なのかということになってしまう。しかし「調査」には定義規定はないわけで、結局、現場の税理士さんが意味を分かればそれでよいとも考えられますが。
山田委員
例えば信用失墜行為というのも包括的な条文だから、それ以上詳しく書けないのはしょうがないと言えば、そのとおりですからね。
分科会長
とはいえ、懲戒処分される方は大変な不利益を受けるわけだから、構成要件はちゃんとしなればならない。
木村委員
税理士業界では「調査」の用語の方が一般的ですね。
分科会長
一応、これでよいということで、追加で御意見があれば最後にお願いします。先に進みたいと思います。
その次は、「ニ名義貸し」なのですが、6ページにも「(3)非税理士に対する名義貸しの禁止」がありますので、併せて御説明願います。
事務局
まず、6ページの(3)を先に見ていただきたいと思います。最初の全体像の中で説明しましたけれども、税理士でない者、非税理士に対する名義貸しの禁止規定が税理士法37条の2に新設されました。今までは税理士法37条の信用失墜行為のところで、名義貸しを処分していたのですが、今後は税理士法37条の2違反、税理士法上の明確な違反であるという形で位置付けられましたので、これを(3)に記載しました。
量定を判断する要素としましては、これまでは「名義貸しを受けた者の人数のほか、違反行為の期間、名義貸しを受けた者の関与件数等」となっていましたが、現在、懲戒審査委員会議、税理士分科会で議論しているように、「名義貸しを受けた者の数、名義貸しを受けた者が作成した税務書類の数、名義貸しをした期間」、さらに最近では「名義貸しにより受けた対価の額」も勘案してその量定を考えておりますので、それらを書いたということでございます。
量定でございますけれども、税理士法37条の2違反につきましては、罰則が税理士法59条1項2号に設けられております。同じ条文の中に守秘義務違反、また、税理士法52条違反のにせ税理士行為の罰則が書いてあります。この守秘義務違反の量定の上限が、次ページの(4)にあるように「税理士業務の禁止」までいくということでございますので、名義貸しの方も同じく、今まで「1年以内の税理士業務の停止」だったものを、場合によっては「税理士業務の禁止」までいくという形の量定とさせていただきました。
前に戻っていただきますと、5ページに「ニ」がございますけれど、こちらは、名義貸しの中から非税理士への名義貸しが抜けて残った部分ということです。税理士業務を停止されている税理士への名義貸し、非税理士ではないのですけれど、税理士業務を停止されている者に対する名義貸しも同じような法益侵害があるということで、こちらは信用失墜行為の一類型として記載したということでございます。量定の方も同様に「2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止」ということでございます。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議では、名義貸しが法律上分離されて明確な禁止規定ができた。これに伴って、今後、名義貸しに対する量定も厳しくなっているという姿勢が明確になればいいという意見がありまして、事務局案を量定の上限を上げるということについて案どおり承認いたしました。
分科会長
ただいま、御説明のあった名義貸しの規定についてですが、もし、御意見があれば。
無いようでしたら、次に「ホ業務け怠」につきまして説明をお願いします。
事務局
文章整理をしております。「正当な理由がなく」を、他のところが「正当な理由なく」となっているのでそれに合わせたということでございます。
また、量定の上限でございますけども、過去事例が少なく、一番重かった量定が数か月の停止でございますが、これからどういう事案が起こるかどうかわからないということもありましたので、6か月ではちょっと少なかろうということで1年以内の業務の停止とさせていただきました。
懲戒審査委員会議座長
「ホ」につきましては、他に比べますと「…の額に応じて」とか、「…の回数に応じて」という目安が全くなくて、「戒告」又は1年以内と書かれております。この点につきまして、会議では他の不正行為の類型とは異なって、「…に応じて」という目安がない、「戒告」から1年以内の税理士業務の停止まで量定にそれなりに幅があるので、何か手掛かりとなる目安を決めた方がよいのではないかという意見がありました。これにつきましては、他方で、今、御紹介がありましたように過去事例が僅かしかありません。そのときには一応、け怠件数が目安になったわけですが、具体的に考えてみると作成をけ怠した書類の件数だけでよいのか、あるいは、件数といっても、申告書と単なる(法定)調書は目安として違うのではないか、あるいは、そのけ怠した件数だけではなく、結果の重大性やクライアントの被った不利益の程度というようなものを勘案して、これからどういう事案が出てくるかによって対応する点が多くて固まらない部分がある。したがって、もう少し事案が溜まるのをみて判断していく必要があるのであり、現時点で具体的な目安を表記するのは時期尚早であるという意見が強く、結果として事務局案どおりの承認となりました。以上です。
分科会長
この点につきまして御意見はございますか。1年以内の業務停止、重くなったとしたら、内容を精査して明確にして類型化する。事例が少ないのであれば、類型化するにはまだ量的に足りないということで、これからの推移を見守るということにさせていただきます。
続きまして、6ページの「ヘ」について御説明願います。これについては、辻山先生から御意見があったということですが。
事務局
まず、この規定を作ったプロセスですが、先ほど御説明しましたとおり、平成26年度税制改正の大綱で、会費滞納が懲戒処分の対象となることを明確化するということになりました。元々は法律で税理士資格をはく奪したらいいのではないかというような意見も税理士会からあったようですけれど、あくまで会のことは会で解決すべきであり、むやみやたらに懲戒処分の対象とするものではないということで、告示で対応することになりました。
他の会則違反や、懲戒処分対象の不正行為とのバランスを考えて、特に悪質なものを信用失墜行為として一罰百戒的に懲戒処分の対象とすることとしました。
懲戒請求の手続きとして我々の方で想定しているのは、まず1点目は、この告示にあるように正当な理由がない滞納であるということが明確でなければいけないだろうということ。取立訴訟で税理士会の方が勝訴して債務名義を得ている、裁判上でも認められているのに従わないというような場合です。次に、会のことは会として解決すべきということでございますので、当然会としての処分がなされているということです。3点目は、所在不明とか、免除相当のような事案については、当然それに応じたふさわしい処分があるので、懲戒処分で対応するというのは違うでしょうということで、そのような事案は上げてこないで欲しいということです。当然、審議の対象に上げるかどうか判断する時点から全国統一基準が必要だと考えております。
更に、税理士会でないと会員が会費を滞納しているかどうか分かりませんので、まず、税理士会の方で今申し上げたような事実を示す証拠を揃えた上で、税理士法47条2項の懲戒処分の申立て通知といった手続きを用いて、そういう手続きを突破してきたものについて、信用失墜行為として処分するかどうか審議する、といったことを考えてございます。
量定につきましては、「帳簿作成義務違反」が「戒告」となっていますが、このような法律上の義務違反とのバランスとか、申告漏れや自己脱税などと比べましても、会費の滞納で「業務停止」は難しいのではないかということで、「戒告」という形の量定ということでございます。
なお、辻山先生からは「私は大反対であるときちんと伝えてほしい」という御意見がございました。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議でも、かなり時間をかけて議論をいたしました。悪質なものに絞らないとだめだというのは、そのとおりなのですが、絞れば絞るほど「戒告」で済ませてよいのかという問題がでてきて、悩ましい問題であります。各委員の御意見を御紹介します。
量定を「戒告」としているのは、常識的にはこれは会費滞納のみを対象とした懲戒処分はしないという了解でよいのではないか。ちょっと分かりにくいのですが、税理士法第41条の帳簿作成義務違反が「戒告」のみとなっていますが、通常税理士法第41条違反のみでは「戒告」をやっていませんから、それと同じで、「戒告」だけというのは、懲戒処分が独立して行われることはないのではないか、そういうものとして理解してはどうかという御意見であります。
他方、そうではなくて、「戒告」のみとなっているのは、先ほどありましたように、会費滞納は法律上の義務違反ではない。したがって、他の法律上の義務違反である記帳義務違反が「戒告」で済んでいる場合、バランスから見て「戒告」が精一杯であるとの御意見がありました。
懲戒処分の有無については、戒告のみであれば実際に処分しないというのでは何のための改正なのかわからないではないか。たとえ「戒告」であっても、大臣処分であって、その性質上、税理士会としての処分と比べて随分違う。ただし、税理士会でできないことを財務大臣に求めるというのはおかしいから、今後、税理士会がルールを作っていくのである。一罰百戒的なものに日税連の処分を付けて、財務大臣に請求するということを考えている。したがって、請求したものについては、「戒告」でも処分をすべきであるという御意見がありました。
実態として、税理士会による処分は会ごとにまちまちで統一されていない現状であるという御紹介があり、まずは、税理士会が正当な理由の有無など財務大臣が処分できるようなレベルに整えられるかどうかが問題であるため、まず、「戒告」のみという原案どおりでスタートして動かしていきつつ、将来必要に応じて見直せばよいという御意見がありました。
最後に、税理士会が自律的に対応すべき問題だということはもちろんですが、現在の会則では税理士会が退会処分、あるいは除名処分というような処分ができないと考えられているとの御紹介であり、この現状では、告示に書いて懲戒処分の対象とすることもやむをえないと考えられるという御意見がありました。
以上申し上げたような御意見を踏まえ議論いたしまして、処分するか否かということは具体的な事案が出てきた場合に検討するものとして、現時点では、告示については事務局案でよいという承認をいたしたところであります。以上です。
分科会長
「ヘ」につきまして御説明いただきましたが、辻山先生が反対の理由というのは何ですか。
事務局
こういう会費滞納に対しては、本来は税理士会が対応すべきである。それなのに大臣の処分である告示に書くということは、辻山先生いわく「税理士会は自主性とか自律性がない団体であるということを公に示すのと一緒だ。そういうものは告示になじまないので書くのは大反対だ」と伝えて欲しいということでございました。
分科会長
本来は、会則の問題、税理士会の問題だと思うので、会費を払わないで会の利益を受けるというのですから、弁護士会などのように退会処分をして、それなりの制裁をするのがいいと思うのですが、残念ながら弁護士法と税理士法では法律構造が違うので、退会処分はできないと御説明を事務局から受けています。元の法律を正さないとすると、告示の話でしかなくなるからしょうがないなと思います。
木村委員
税理士会として、退会処分とかできるのであればいいのですが、法律上できないのです。
ただ、収入がなくて会費滞納になってしまう人や病気の人には免除規定もあります。とはいえ、会としては(滞納処分をしようにも)限界があるということなのですね。強制力が働くようであれば「戒告」でもいいのではないかと思うわけです。会費を払わないからといって、現状は、退会をしてもらうことができなくなっているので。
分科会長
税理士法は強制入会制度をとっており、税理士は会員にならないと税理士業務ができませんから、会としては、会から除名するのが一番の制裁になります。会費を払わないことで会に対する迷惑をかけているので会が制裁するのは正しい方向だと思うのですが、退会処分、除名処分はできないので、間接的に行うしかないということですね。「戒告」ということでよろしいでしょうか。それでは最後にまた御意見を伺います。
次は「ト」、(4)から(9)までについて、御説明お願いします。
事務局
「ト」はバスケット規定でございまして、間を埋める観点から1年を2年にしております。
(3)は先ほど御説明しましたので省略いたします。(4)、(5)、(6)、(7)までは番号整理でございます。量定については、(4)は「禁止」がある規定でございますので間を埋めて2年としました。
(5)の帳簿作成義務は、今までも「戒告」で、他の事案と併せて処分しているので、引き続き「戒告」にしたいということです。
(6)の使用人監督義務は、「T総則」で「故意」、「過失」、「使用人監督義務違反」の関係を整理しましたので、今後「使用人監督義務違反」として処分するものの中に、過失類似の事案は混じらないで純粋な「使用人監督義務違反」ばかりになると思われますので、ここは1年を伸ばす必要はないと思いまして量定は変えていません。
(7)の業務制限につきましては、元の告示が「違反行為に係る関与件数等」との表現では分かりにくいので、「税務代理」、「税務書類の作成」、「税務相談」の3つの税理士業務を税理士法第42条に違反して行った件数に応じてやると、具体的に書かせていただいたというものです。
(8)は新設規定でございます。「税理士業務の停止の懲戒処分を受け」と書いてありますが、懲戒審査委員会議で指摘を受けて修文されております。こちらは停止処分にも従わない者でございますので、業務の禁止以外の対応はなかろうということで、税理士業務の禁止としています。
(9)は番号整理と間を埋める形で2年にしたものでございます。
懲戒審査委員会議座長
今の御説明の中で、(6)は、「過失」は含まれていないだろうということで、1年のまま伸ばしていないということでしたが、「過失」の方が2年ですので、「使用人監督義務違反」はそれより軽いというバランスを勘案して1年のままでよいという説明を受けました。
懲戒審査委員会議での修文は、実質的なところはありません。税理士法の条文からみて税理士法第45条、46条、48条の20第1項の「戒告」、「業務の停止」、「禁止」といった処分を合せて懲戒処分という言葉を使っています。2(8)は「税理士業務の停止の」に続くのは「処分」が正しくて、「懲戒(処分)」というのは不要であろうという意見がありまして、そのとおりの修文となりました。以上です。
分科会長
今の説明について何か御質問等はございませんか。
それでは、「第2 税理士法人に対する量定」に進んで、まず、「1」につきまして説明をお願いします。
事務局
税理士法人の量定の(1)は、固有の手続のところでございました。こちらにつきましては、「等」が不明確であったということで、削除したということですけど、税理士法第48条の10、13、19以外の条文はなかろうということと、それらの条文中にもいろいろな規定が書いてあるのですけれど、ここで、違反したといえるようなものは、届出義務違反だけでございますので、これら3つの規定の届出をしなかったと整理したものでございます。
(2)は「法第48条の16において準用する」を追加するという文章整理でございます。その後にも出てきます。
「イ自己脱税」、「ロ自己申告漏れ」のところは、元の規定には「内部管理体制や内部規律の整備状況等」とありましたけれど、そもそも法人の自己脱税、自己申告漏れの場合は、これは、第2の1に書いてありますように税理士法人そのものがこの規定に違反したときということで、法人自体の行為責任を問うものでございまして、「2」の運営不当とういう管理的な責任を問うものとは異なるということでございます。また、小規模な法人が多いという実態を踏まえまして、現状、自己脱税とか、自己申告漏れの場合は、原則的に個人の税理士が行った場合と同様の不正所得金額等の額に応じて量定を勘案しておりますので、原則として、個人の税理士の場合の表現に合せて、「不正所得金額等の額に応じて」、また、「申告漏れ所得金額等の額に応じて」と見直したということでございます。量定は個人の場合と同じように間を埋める形で自己脱税の場合は2年とし、申告漏れの場合は上限2年という形にさせていただきました。
次、「ハ会費滞納」は、先ほど、御説明しましたとおり、信用失墜行為の一類型として個人の税理士と同じ量定になっています。(3)(4)も同じでございます。(5)の業務停止処分違反は新設ですけども、個人の税理士の場合と同じでございます。(6)はバスケット規定ということで、これも間を埋めて2年とさせていただきました。例えば、不真正税務書類の作成とか、名義貸しというのは、社員税理士が通常その不正行為を行うのですけども、これを法人が組織的に行った場合は、1の(6)に該当することになります。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議においては、特に大きな議論もなく事務局案どおりに承認しました。
分科会長
税理士法人は個人の税理士に合せた対応、御意見、御質問はありますでしょうか。
それでは、10ページの「2」の説明をお願いします。 
事務局
席上に一枚紙を配付しております。これは、2の柱書きについて、尾原委員から「量定の範囲は、次に掲げるところによる」とあるが、他のところは全部「次の区分に応じて、それぞれ(次に掲げるところによる)」と書いてある、ここだけ書いていないとの指摘を受けたものです。これは、誤植的な間違いであるので、よろしければ、今、お手元に配ってあるような形で修文させていただければと思っております。
 ≪事務局注:国税庁ホームページには、上記の修正後の資料2を掲載しています。≫
量定でございますが、「(上記1(2)及び(6)に該当する場合を除く。)」という括弧書きが入っております。先ほども申し上げましたが、通常、この2(1)というのは社員税理士が不正行為を行った場合の税理士法人の運営責任ということなのですが、不正行為をした社員税理士は当然処分されるとして、税理士法人がそれを組織的に行っていると認められる場合、例えば、複数の社員税理士が、1人は売上除外担当、1人は架空経費担当といった形で分担してやるとか、名義貸しの場合だと、処分されて税理士業務ができなくなった税理士に対して、分担して名前を貸すとか、税理士法人が組織的に行っていると認められるような場合は、2(1)ではなくて、1の(2)とか(6)でやりますよ、というために括弧書きを入れさせていただきました。
量定の判断要素のところは、元々は、「内部管理体制・内部規律の整備状況等」という文言がありましたけれど、今回の「総則」の「第2」の新設に伴い見直したものでございます。量定につきましては、間を埋める形で1年を2年とさせていただきました。「税理士業務」と書いてあるところが「業務」となっておりますが、税理士法の言い方ですと個人の場合は「税理士業務」、法人の場合は「税理士法人の業務」ですので、見直したということでございます。(2)は間を埋める形で1年を2年に直しました。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議では特に議論はなく、事務局案どおり承認いたしました。
分科会長
今の説明について何か御質問等はございませんか。
それでは、附則について説明お願いいたします。
事務局
附則については、元々平成20年3月の告示制定のときは、従来の考えを取りまとめたというもので附則がなかったのですが、今回は法改正に伴った改正ということですので、法律の施行日に合わせて、平成27年4月1日以後にした不正行為に係る懲戒処分等について適用し、平成27年3月31日以前にした不正行為に係る懲戒処分については、なお従前の例による、としました。
懲戒審査委員会議座長
懲戒審査委員会議では特に議論はなく、事務局案どおり承認いたしました。
分科会長
告示全体を通して御意見はございますか。
続きまして、今後のスケジュールにつきまして説明をお願いします。
事務局
本日、税理士分科会で御審議いただきましたので、先ほど御指摘いただきました「T 総則」の「第2」のところを番号を付すなどしてきちんと整理させていただきます。その成案をもって、パブリックコメントにかけたいと思います。パブリックコメントにおいて、いただいた意見を踏まえて、再度、税理士分科会、おそらく12月に懲戒処分に係る税理士分科会が開催されますので、その辺りで、もう一度御審議いただきまして、結論が得られれば、来年1月末までに改正した新しい告示を公表し、平成27年4月1日以後の適用に備えることとしたい、と考えております。
分科会長
ただいまのスケジュール関する説明について、何か御質問等はありますでしょうか。
本日予定しておりました審議内容が終わりましたが、色々と御意見がありましたけれど、最後にまとめて御意見等がありましたら仰っていただければと思います。 
それでは、本日の審議は、これで終わりにしたいと思います。
手続きについて簡単に説明したいと思います。井堀国税審議会会長への報告についてですが、本日の当税理士分科会における審議結果については、事務局から井堀会長に報告をしていただきます。
それでは、先ほど事務局から今後の告示公開までのスケジュールについて説明がありましたけど、予定通り、パブリックコメントを経て、再度、税理士分科会を開催して、審議させていただきますが、成案を得た後、来年1月に公表するということになっています。現時点では、この告示改正案は審議検討段階となりますので、国税審議会議事規則によりまして、今回の議事録、議事要旨につきましては非公開とさせていただきまして、開催日時、出席者、議題などについてのみ公開をしたいと思います。
本日の税理士分科会を終了したいと思います。

以上