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- 第26回 国税審議会 議事録
日時: |
令和5年12月5日 10:28〜11:39 |
場所: |
国税庁第一会議室/オンライン |
出席者: |
国税審議会委員 |
佐藤会長 |
土居会長代理 |
秋葉委員 |
遠藤委員 |
大倉委員 |
太田委員 |
鹿取委員 |
川北委員 |
河村委員 |
木村委員 |
小関委員 |
小林委員 |
立道委員 |
手島委員 |
中空委員 |
廣重委員 |
説明者 国税庁 |
住澤国税庁長官 |
伊藤国税不服審判所長 |
星屋国税庁次長 |
山西国税不服審判所次長 |
中村審議官 |
植松審議官 |
田原課税部長 |
上良徴収部長 |
武田調査査察部長 |
原田総務課長 |
郷人事課長 |
菅企画課長 |
三浦酒税課長 |
松井総務課室長 |
会長
定刻より少し早いようですが、第26回国税審議会を開催いたします。
大変御多用のところ御参集、あるいはウェブ参加いただきありがとうございます。本日、議事進行役を務めます会長の佐藤です。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日の国税審議会につきましては、委員の過半数の方々に御出席をいただいておりますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立しております。この場に御出席いただいておられます委員の方々につきましては、お手元の座席表のとおりでございます。
なお、遠藤みどり委員、太田直樹委員、鹿取みゆき委員、木村純子委員、中空麻奈委員はウェブで御参加されます。どうぞよろしくお願いいたします。
また、既に文書で通知されているところですが、9月1日付で、日本税理士会連合会から任命されておられました神津委員が国税審議会委員を辞任されまして、その後任として日本税理士会連合会の太田委員が新たに委員に任命されましたことを御報告申し上げます。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります。資料1、議事次第のファイルを御覧ください。
まず、住澤長官より御挨拶を頂戴したいと思います。
長官、よろしくお願いいたします。
国税庁長官
国税審議会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、本日は御出席いただき、また、リモートで御参加いただきまして誠にありがとうございます。
また、委員の皆様方には、日頃より税務行政全般にわたりまして、深い御理解と多大なる御協力をいただいておりますことにこの場をお借りしまして厚く御礼申し上げる次第でございます。
この後、議題の3番目で税務行政の現状と課題について御議論いただきますけれども、私のほうから最初に5点ほど最近の国税庁の取組について申し上げておきたいと思います。
まず、1点目は、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについてでございます。
御承知のとおり、本年6月に税務行政のデジタル・トランスフォーメーション税務行政の将来像2023というものを取りまとめたところでございます。従来から取り組んできておりました2つの柱、納税者の利便性の向上と課税・徴収事務の効率化・高度化、これに加えまして、3番目の新たな柱といたしまして、事業者のデジタル化促進という柱を加えたところで取りまとめたものでございます。
事業者のデジタル化促進に関連するものといたしましては、3年前に政府税調でも御議論いただきまして電帳法の改正を行ったわけでありますが、来年の1月からこの電帳法の電子取引のデータ保存の部分も含めて本格的に今、施行がなされるという状況にございます。
こうした中で、事業者のデジタル化を進めていくことは、単に納税の分野に限られることなく、事業者の経営力の向上でありますとか経営の可視化、そして正確性の向上など、様々なメリットがあるものと考えております。
国税庁といたしましては、関係省庁や関係団体、そして民間の方々とも連携しながら、将来的にはデジタルインボイスも視野に入れたところで、まずは身近な地に足のついた取組も含めて事業者の皆様にデジタル化のメリットを感じていただくところから始めるということで、デジタル化に向けた機運の醸成に努めて、社会全体のデジタル化にも貢献していきたいと考えているところでございますので、本日も御意見をいただきたいと思っております。
2番目でございますけれども、本年10月から施行されたインボイスの定着に向けた取組についてでございます。
本年10月、インボイス制度が施行されまして、10月末時点の状況で見ますと、新たにインボイス発行事業者として登録いただいた方々、課税事業者、免税事業者含めまして約407万事業者に上っております。免税事業者に関しても、90万を超える事業者が登録いただいている状況にございます。
今後の課題といたしましては、現在でも引き続きこの登録するかどうかお考えになっておられる免税事業者も多々おられる状況にございますので、国税庁といたしましては、4月から登録要否相談会ということで、そういった方々の個別の事業の状況などもお伺いして、登録要否の判断材料を提供する取組を進めておりますが、これを引き続き丁寧に進めていきたいと考えております。
また、90万を超える事業者の方々が、免税事業者から課税事業に転換されている状況にございまして、来年の確定申告期には新たに消費税の申告が行われるということになってまいりますので、今後この申告の必要性でありますとか、令和5年度の税制改正で手当をされましたいわゆる2割特例といった関連法の周知、広報にも取り組むということで、こういった新たな納税義務者の方々が円滑にこの申告に対応できるように様々な施策を展開してまいりたいと考えております。
インボイス制度は、今後の消費税制度を支える非常に重要な柱になってまいりますので、是非この円滑な定着を図れるように丁寧かつ柔軟な対応を心がけていきたいと考えているところでございます。
3点目は、適正・公平な課税の観点からの重点課題への取組についてでございます。
経済社会がデジタル化・グローバル化する中で、税務行政を取り巻く環境も非常に困難なものになってきておりますが、こうした中で国税庁といたしましては、限られた定員事情の下で納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現するという、本来の使命を確実に果たしていく必要があります。
そのための取組といたしまして、データ活用の高度化を含め、納税者のコンプライアンスリスクを的確に把握するということを前提にした上で、消費税の不正受還付でありますとか国際的な租税回避、そして富裕層など調査必要度の高い納税者や事案に対しては重点的に深度ある調査を展開するとともに、それ以外の多くの誠実な納税者の皆様に対しては、納税相談でありますとか、様々な事前の予防的な手当も講じていきたいということで、様々な相談ツールの高度化ということももちろんですし、また、適正な申告を促すための文書や電話による行政指導を含めて、適切な方法により接触を行って、適正な申告を確保するという取組もまた力を入れて進めていきたいと考えているところでございます。
これによって国税組織全体として効率的、効果的な事務運営を推進し、また、納税者側における税務コンプライアンスの確保も目指していきたいと考えているところでございます。
4点目は、酒類業の振興についてでございます。
人口減少や国民のライフスタイルの変化など、酒類業を取り巻く環境は大きく変化しております。こうした中でコロナ禍を経て、酒類業も非常に厳しい状況に直面してまいりました。
国税庁としては酒類業の振興に向けて、今後とも酒類業者の方々の声に耳を傾けつつ、前向きな業者の取組をしっかりとサポートできるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。
特に日本産酒類の輸出の促進につきましては、政府全体として農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にするという目標の達成に向けて、日本産酒類についても個別の分野について目標を掲げているところでございますので、これの達成に向けて引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
5点目、税理士制度の現状についてでございます。
申告納税制度の適正かつ円滑な運営を図る上で、公共的な使命を帯びておられます税理士が果たすべき役割は極めて大きなものがございます。このため、国税庁におきましては、日本税理士会連合会や各地の税理士会と幅広い課題について協議や意見交換を行うなど、税理士会との連絡協調に努めているところでございます。
特に近年、令和4年度の税制改正におきまして、税理士法が改正されまして、税理士の皆様についても、ICT化を通じた納税義務者の利便性の向上を図るということが努力義務として規定されました。これに基づいて各税理士会におかれても、ICT化に向けた、あるいはDXに向けた様々な取組を展開されておられますが、先ほど申し上げました税務行政のDXの観点からも、特にこの事業者の方々のデジタル化を促進する上では、税理士の皆様との連携協調は欠かせないと考えておりますので、税理士会とも連携を行いつつ、このデジタル化の促進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
また、税理士業務の適正な運営を確保するということも国税庁の重要な任務でございますので、あらゆる機会を活用して注意喚起を行い、税理士等による税理士法違反行為などが起こらないように未然防止にも努めてまいりたいと考えているところでございます。
本日の国税審議会におきましては、委員の皆様方から国税庁の取組に対しまして、広い見地から忌憚のない御意見、御指導を賜りたいと考えておりまして、これを今後の事務運営に活かしてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
会長
ありがとうございました。
それでは、次の議題、国税審議会各分科会の最近の活動状況についてであります。資料2のファイルを御覧ください。
2ページ目に最近の活動状況が記載されております。令和5年3月に開催した国税審議会以降に実施した分科会について記載をしております。議題、内容等については記載のとおりでございます。御覧ください。
では、引き続きまして、次の議題、税務行政の現状と課題に入ります。
こちらの議題につきましては、原田総務課長から御説明を頂戴した後、委員の皆様方から御質問や御意見を頂戴したいと存じます。
それでは、原田総務課長、よろしくお願いいたします。
総務課長
総務課長の原田でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、税務行政の現状と、それから先ほど長官の申し上げた5つの課題ということになりまして、2ページの目次にありますとおり、合わせて大きく6つの論点に分けて御説明させていただきます。
4ページを御覧ください。
国税庁では、令和3年4月に新たな国税庁の組織理念を策定しており、国税庁が組織として目指す姿を実現し、その使命・任務を果たしていくために、職員一人一人が組織として目指す姿や行動規範を正しく理解して組織理念を実践していくこととしてございます。
次に、左下の国税庁の組織でございます。国税庁の定員は、平成元年の約5万4,000人から平成9年に平成元年以降のピークである約5万7,000人となりましたがその後減少し、現状では約5万6,000人となってございます。平成9年と比べますと、約2%の減少となってございます。
資料下段に各国税局ごとの主な計表を示してございますけれども、参考までに申し上げますと、全国に占める東京国税局の割合は、定員、法人数、確定申告者数ともに約3割、徴収決定済額に至っては約5割を占めてございます。経済の首都圏一極集中が顕著な状況となってございます。
資料右側は各税事務の概要として主要税目の申告状況等を掲載してございます。
御覧のとおり、平成元年と比較いたしますと、全税目ともに申告件数は大きく増加してございます。一方で定員自体はそれほど増加してございませんので、限られたマンパワーで増大する業務量に対応するという必要がございます。
申告件数の増加等による業務量の大幅な増加、経済社会のグローバル化・デジタル化等の進展に的確に対応しつつ、税務調査事務量を確保することが当庁の重要な課題の一つとなってございます。
また、滞納整理中の額につきましては、平成10年度に2兆8,000億円に達しましたけれども、組織を挙げて滞納の未然防止に取り組むなどして、現在は9,000億円程度まで減少してございます。
5ページを御覧ください。
ここからは税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについて御説明いたします。
6ページを御覧ください。
経済社会のデジタル化・グローバル化等の進展により税務を取り巻く環境の変化が著しい中で、国税庁として引き続き限られた人員、予算の下で納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現するという使命を的確に果たしていくためには、税務行政全体を俯瞰した上で、その時代に即した税務行政のあるべき姿を描き、デジタルを前提として、そのあるべき姿の実現に向けた取り組みを着実・迅速に進めていくことが不可欠だと考えてございます。
国税庁では、こうした税務行政のDXについて、目指すべき方向性や最新の取組内容を発信し、多くの方々と共有することで取組をさらに加速させるという観点から、令和5年6月に令和3年6月に公表した税務行政のデジタル・トランスフォーメーション税務行政の将来像2.0を改定いたしまして、税務行政の将来像2023を公表いたしました。
今回の改定におきましては、従前の納税者の利便性の向上、課税・徴収事務の効率化・高度化等に加え、新たに事業者のデジタル化の促進を大きな柱として、この3つの柱に基づいて施策を進めていくこととしました。
国税庁の本来任務である適正・公平な課税・徴収の実現といった観点に加えまして、事業者のデジタル化を促進していくということを通じまして、社会全体のDX推進の観点からも社会に貢献していくということを示してございます。
では、7ページを御覧ください。
税務行政のDX推進における国税当局の役割を示したイメージでございます。国税当局の役割は全体を俯瞰し、全体最適を実現する観点から、デジタルプラットフォームとしてのe−Tax等の提供、それからデジタルサポートツールとしてのホームページ、チャットボット等の充実、マイナポータルや会計ソフト等を念頭に置いた官民の関係機関との連携に取り組み、その結果として、デジタルの活用により、簡単・便利に、効率的で誤りのない申告・納税の実現を目指していくことであると考えてございます。
8ページを御覧ください。
税務行政の将来像2023に基づき、施策を推進するに当たっての基本的な指針を記載してございます。
おなじみの5点ではあるんですけれども、特に4つ目にある業務改革の徹底につきましては、既存の制度や業務を前提にそのデジタル化を図るのではなく、業務の在り方そのものや職員の働き方を不断に見直すことで、デジタルの利点を最大限に生かした業務改革に取り組んでいくこととしてございます。
では、9ページを御覧ください。
納税者の利便性の向上につきましては、納税者目線を大切に、各種施策を講じていくこととしてございまして、具体的には、納税者が申告要否や手続を調べ、相談し、申告・納税するといった一連の流れ全体を俯瞰し、最適なUI/UXの改善を図るため、想定される典型的な納税者像を設定いたしまして、その納税者像が税務手続を行う際のカスタマージャーニーを具体化することで現状の問題点を可視化し、改善策を検討してございます。
10ページを御覧ください。
確定申告に必要なデータ、例えば給与や年金の収入金額、医療費の支払額などがこれに当たりますけれども、こうしたデータを申告データに自動的に取り込み、確認することで、納税者の方が個々の金額を入力することなく、数回のクリックで確定申告が完了するといった仕組みの実現を目指してございます。
令和6年2月に開始する令和5年分の確定申告からは、税務署にオンラインで提出された給与所得の源泉徴収票に係る給与情報の自動入力が可能となってございます。この取組により、多くの納税者の方に、より簡単便利に申告していただくことができると考えてございまして、事業者などに対する給与所得の源泉徴収票のオンライン提出の勧奨などに力を入れていくこととしてございます。
11ページを御覧ください。
国税庁においては、政府全体のデジタル社会の実現に向けて、納税者利便の向上、税務行政の効率化を図る観点から、e−Taxの利用拡大を推進してございます。
グラフのとおり、e−Taxの利用率は、これまで着実に増加してございまして、今後も利用率の中期的な目標達成に向けて積極的に取り組んでまいります。
12ページを御覧ください。
国税庁では、納税者の利便性向上と現金管理に伴う社会全体の事務コスト縮減を図る観点から、令和7年度までに国税のキャッシュレス納付の割合を4割とすることを目指しまして、キャッシュレス納付の利用拡大に取り組んでございます。
国税は、キャッシュレス納付の手段として、ダイレクト納付、振替納税、インターネットバンキング等による電子納税、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、この5つが利用可能となってございます。
納税者の属性に応じて利用勧奨する手段に強弱をつけてございまして、特に毎月の源泉所得税など頻繁に納付手続を行う法人に対しましてはダイレクト納付を、毎年所得税の確定申告を行う個人に対しては振替納税を中心に、キャッシュレス納付の利用勧奨を行ってございます。
ダイレクト納付につきましては、令和6年4月1日以降、e−Taxによる電子申告と併せまして、ダイレクト納付を利用する意思表示を行うことで、法定納期限に自動で口座引落としができるようになりまして、申告から納税がシームレスに行えるようになっています。
また、令和4年分の確定申告からは公金受取口座を利用した還付金の受取りが可能となりまして、事前に公金受取口座を登録すると、納税者が還付申告を行う際、還付金の受取方法として、公金受取口座への振り込みを選択することで、口座情報を入力することなく、公金受取口座に還付金を振り込むことが可能となってございます。
では、13ページを御覧ください。
データは、智恵・価値・競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札と位置づけられておりまして、税務行政におきましてもデータを活用して、ないしデータの活用を前提として事務を効率化・高度化いたしまして、BPRにも取り組んでいくことが重要だと考えており、引き続き各種の施策に取り組んでまいります。
14ページをご覧ください。
国税庁においては、AIも活用しながら幅広いデータを分析することにより、申告漏れの可能性が高い納税者の判定、滞納者の状況に応じた対応の判別、これらを行うことなど、課税・徴収の効率化・高度化に取り組んでいます。
例えば、課税の分野では、納税者本人から提供される申告、決算情報等のデータを分析用に加工し、これらのデータをBAツールやプログラミング言語を用いて統計分析・機械学習の手法により分析することで、申告漏れの可能性が高い納税者を判定し、その分析結果を活用することで効率的な調査・行政指導を実施いたします。また、調査必要性の高い納税者には深度ある調査を行う取組を進めているということでございます。
また、徴収の分野では、滞納している納税者の方に連絡を取る必要がありますけれども、臨場や電話をしても様々な理由により接触できないといった場合の接触方法につきまして、電話催告、臨場催告及び文書催告のうち、接触できる可能性の高い方法を予測するモデルを構築いたしまして、効率的な滞納整理の実施を目指してございます。
また、集中電話催告センター室におきましては、滞納者の情報や過去の架電履歴等のデータとAIを活用いたしまして、滞納者が電話に応答する可能性の高い曜日・時間帯を予測するモデルを構築し、この応答予測モデルに基づきまして架電する取組を令和4年7月から行っているところでございます。
15ページを御覧ください。
情報のデータ化、データの整備等といったデータ活用の基盤の整備を担うものとして、申告書の入力・審査等の内部事務を業務センターで集約処理する内部事務のセンター化を全国で進めてございます。
対象の税務署は順次拡大しておりまして、令和8事務年度には、全税務署におきましてセンター化が完了する予定となってございます。
内部事務のセンター化は、今後の税務行政の大きな柱という意識で、事務処理の場ではなく、知恵の場として機能するよう取り組んでまいります。
16ページを御覧ください。
事業者の取引全体のデジタル化、会計・経理全体のデジタル化を推進することは、政府全体として取り組む重要な課題の一つとされてございまして、国税当局もその一員として取り組んでいく必要がございます。
経済取引と業務がデジタル化され、税務処理も含めて一貫して効率的にデジタル処理できる環境を整備することにより、事業者の業務の正確性や生産性が向上いたします。また、中小企業者等の経理等のデジタル化は、税務面の正確性の確保に資するとともに、事業者自身にとっても経営の効率化・高度化につながることが期待できます。
こうした背景から、国税庁としても主体的に事業者のデジタル化を促進していくこととしておりまして、具体的な取組としては、電子帳簿等保存制度やデジタルインボイスへの対応を契機としたクラウド会計ソフト等の導入メリットのPR、それから関係省庁・関係団体と連携したデジタル化に関する説明会を開催いたします。補助金や各種デジタル関係施策の効果的な広報を実施していくということも行いまして、事業者のデジタル化を後押ししていきます。
ここまでが税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについての説明ということでございます。
次に、17ページを御覧ください。ここからはインボイス制度の定着に向けた取組について御説明いたします。
18ページをお開きください。
本年10月1日からインボイス制度が開始いたしました。令和5年10月末日時点のインボイス発行事業者の登録件数、約407万件となってございます。
国税庁におきましては、制度の円滑な定着に向けて、引き続き登録するか否か検討している事業者に向けて、個々の事業者の実態を踏まえた個別相談、インボイスコールセンターによる相談を継続するとともに、新たに課税事業者となった方が適正に消費税申告することができるよう、ダイレクトメールや各種説明会等を通じまして注意喚起・周知していくこととしてございます。
なお、制度開始後の税務調査の運用につきましては、従来どおり、大口・悪質など、必要度の高い納税者を重点的に調査することとしておりまして、仮にインボイスの記載事項の不足など軽微なミスを把握しても、ほかの書類で確認するなど、柔軟に対応することとしてございます。
19ページを御覧ください。
これまで国税庁におきましては、インボイス制度の導入に当たり、制度概要や登録申請、補助金等の支援策につきまして、国税庁ホームページのインボイス特設サイト、Web-Tax-TV、YouTube国税庁動画チャンネルやテレビCM等を活用して周知広報に取り組んでまいりました。
また、制度施行後には、インボイスの記載方法など、実務的な御質問が多く寄せられてございまして、今後も引き続きこうした御質問が寄せられるものと考えているため、これらの論点につきまして、事業者自身におきまして簡便に疑問点が解決できますよう、制度実施後に多く寄せられた御質問とその回答を取りまとめ、公表しましたところでございます。
20ページを御覧ください。
デジタルインボイスの普及、定着に向けた政府全体の取組について御紹介いたします。
グローバルスタンダードなPeppolに対応したデジタルインボイスを活用することによりまして、今まで事業者が入力等に要していた手作業の負担が大幅に軽減されることが期待されてございます。
現在、デジタル庁が、デジタルインボイス推進協議会と連携し、Peppolに対応した日本版の電子インボイスの標準仕様JP PINTを公表するなど、デジタルインボイスの普及に取り組んでおり、また、中小企業庁におきましても、生産性の向上やインボイスの制度への対応を見据えた企業間の取引のデジタル化を強力に推進するため、会計ソフト、受発注システム等のITツールやPC・レジ等のハードウェアを導入する中小企業、小規模事業者等に対し、デジタル化基盤導入枠を設けまして、通常枠よりも補助率を引き上げるなど、優先的に支援を実施している状況でございます。
ここまでがインボイス制度の定着に向けた取組についての御説明であります。
21ページを御覧ください。
ここからは重点課題への取組ということです。課税を中心とした重点課題の取組について御説明いたします。
22ページをお開きください。
消費税は、税目別で最大の税収を占めてございまして、また、令和元年10月の税率引上げや本年10月のインボイス制度導入等、国民の関心も極めて高いことから、一層の適正な執行に努めているところでございます。
右下の消費税還付申告法人に対する調査の状況を見ていただくと、令和3事務年度は約4,200件の実地調査を行い、そのうち791件で不正計算を把握、それらの追徴税額は約111億円に上ってございます。
23ページを御覧ください。
消費税の仕組みを悪用し、下の絵にあるように、国内の仕入れと国外への売上げを架空計上することで、不正に消費税の還付を受けようとする事例が把握されています。
消費税の不正還付は、国庫金の詐取といえる極めて悪質な行為であるため、特に厳正に対処しているところでございます。
24ページを御覧ください。
近年、経済社会のグローバル化が進展する中で、BEPSプロジェクトやCRSに基づく非居住者の金融口座情報の自動的情報交換など、各国で国際的な租税回避への対応に取り組んでいるところでございます。
国税庁といたしましても、国際的な租税回避に適切に対応するために、積極的に調査等を実施しているところでございます。
25ページを御覧ください。
例えば、情報リソースの活用につきましては、国境を越えた経済活動から生じる所得を補捉し、適正・公平な課税を実現するため、国外送金等調書、国外財産調書、それから財産債務調書といった各種法定調書に加えまして、CRS情報、それから租税条約等に基づく情報交換といった制度を用いまして、情報把握に努めているところでございます。
引き続きこのように収集、受領した資料情報を総合的に分析することで、国際的な租税回避に的確に対応してまいります。
26ページを御覧ください。
現在、国際的に議論されている2つの柱の議論の現状について御説明いたします。
まず、左下にお示しした第1の柱は、新たな多国間条約を締結して、グローバル企業グループがビジネスを行う市場国に対して、PEの有無にかかわらず、新たに課税権、いわゆる利益Aを配分するものでございます。この多国間条約につきましては、2023年末までに署名を行い、2025年中に発行することが目標とされておりまして、10月には条文案が公表されてございます。
右下の第2の柱でございますけれども、ここに示した所得合算ルールを基本のルールとする制度でございます。日本におきましては、令和5年度の税制改正におきまして、所得合算ルールが導入されております。本制度は、2024年4月1日以後に開始する対象会計年度におきまして適用されることとなってございます。
27ページを御覧ください。
今度は富裕層への対応でございます。有価証券・不動産等の大口所有者、それから経常的な所得が特に高額な方、海外投資を行っている方などに対しまして、国外送金等調書など、各種資料情報を効果的に活用いたしまして、積極的に調査を実施しているところでございます。
28ページを御覧ください。
近年、経済活動のデジタル化の更なる発展によりまして、デジタルコンテンツ配信、暗号資産、シェアリングビジネス・サービスなど、新分野の経済活動が広がりを見せているところでございます。
国税庁といたしましては、こうした新分野の経済活動に関しましても、適正申告のための環境づくりに取り組むほか、情報収集、分析の充実に努め、課税上問題があると見込まれる納税者を的確に把握し、行政指導や税務調査を行うことで適正課税の確保に取り組んでまいります。
ここまでが課税上の重点課題への取組についての説明でございます。
それでは、29ページをお開きください。ここからは酒類業の振興ということでございます。
酒類は、酒税が課される財政上重要な物品でございまして、安定した税収が見込まれることから、国家財政において重要な役割を果たしてございます。
国税庁では、酒税の適正、公平な課税の実現はもとより、酒類業の健全な発達に向けて積極的な取組を実施しているところでございます。
30ページをお開きください。
まず、最近の酒類市場の状況を御覧ください。上段左側の酒類の出荷金額は、長期的には減少しているものの、ここ10年くらいは横ばいを維持してございます。例えば、清酒では出荷単価は平成24年から増加基調にあり、こういった要因もあるということでございます。
上段右側の最近の酒類の消費動向は、総務省の家計調査のデータを基に、酒類へ支出した金額の前年同期比増減率を示したものでございます。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、飲食店消費を中心に、令和2年、3年ともに大幅に減少する厳しい状況でございましたが、令和4年は回復の兆しが見え始めたところでございます。しかし、コロナ前の状況には戻っていませんでしたが、最近令和5年になりまして、足元の消費動向は回復の傾向が望めるということでございます。
こうした状況を踏まえまして、補助金により酒類事業者による新商品の開発など、経営改革、構造転換を促す取組を支援しているほか、日本産酒類のインバウンドによる海外需要の開拓のための酒蔵ツーリズムの取組を支援したところでございます。
では、31ページを御覧ください。
令和4年の日本産酒類の輸出金額は1,392億円となりまして、令和3年に引き続き1,000億円を超えました。
下段右側の農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円とする政府目標の達成に向けまして、輸出拡大実行戦略が策定され、酒類は清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛の3品目が重点品目となっております。これら重点3品目については、それぞれターゲット国、具体的な数値目標が定められてございます。
そのような状況の中、補助金による支援を含め、海外販路拡大といった海外展開の支援を行うことで輸出促進に取り組んでございます。
それでは、32ページをお開きください。
国税庁が実施している海外展開・酒蔵ツーリズム補助金におきましては、日本産酒類のブランディング、インバウンドによる海外需要の開拓といった日本産酒類の高付加価値化や認知度向上に取り組む酒類事業者を支援しているところでございます。
33ページを御覧ください。
フロンティア補助金におきましては、酒類業のポストコロナに向けた経営改革・構造転換を促すため、商品の差別化による新たなニーズの獲得、それから販売手法の多様化による新たなニーズの獲得などを通じまして、国内外の新市場を意欲的に開拓する事業者を支援してございます。
34ページを御覧ください。
日本酒、それから焼酎・泡盛等の日本のこうじ菌を使った伝統的な酒造り技術につきましては、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指しておりまして、日本の魅力の発信に向けた取組として、岸田総理の施政方針演説でも表明されてございます。
この技術は、令和3年12月に国の登録無形文化財に登録された後、令和5年3月にユネスコへ再提案されているところでございまして、令和6年11月頃、ユネスコで審議、決定見込みでございます。
国税庁では、酒造り技術の担い手からなる日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会と連携いたしまして、国内外でユネスコ無形文化遺産登録に向けた様々な広報活動を進めてございます。
ここまでが酒類業の振興についての御説明でございます。
35ページを御覧ください。ここからは税理士制度の現状について御説明いたします。
次のページを御覧ください。
令和4年度の税理士法改正におきまして、税理士の業務環境や納税環境の電子化や多様な人材の確保の観点から、税理士制度の見直しが行われました。
まず、税理士の業務におけるICT化推進の明確化についてでございます。資料の中ほどでございますけれども、税理士業務のICT化を通じまして、納税者の利便性向上などを図るものになります。
具体的な取組としては、納税者対応のデジタル化といたしまして、資料収受の電子化や税務相談のオンライン化のほか、行政対応のデジタル化、それから業務環境のデジタル化の取組が挙げられます。
資料の下のほうになりますけれども、日本税理士会連合会における対応といたしましては、現在、デジタル相談室の設置といった相談体制の構築についての検討などを行っていると聞いております。
37ページを御覧ください。
多様な人材の確保でございますが、税理士試験の受験資格の要件の緩和についてでございます。
税理士試験の受験者の減少に対処するとともに、若年層をはじめとした多様な人材の確保を図る観点から、税理士試験の受験資格の要件が中段の表のとおり緩和され、令和5年度の税理士試験から適用されてございます。
特に会計学科目につきまして、受験資格の要件が撤廃され、誰でも受験が可能となり、一番下の表のとおり、令和5年度の税理士試験の受験申込者数について、簿記論・財務諸表論がそれぞれ2割増、その影響で全体の受験申込者数の増加につながっているところでございます。
ここまでが税理士制度の現状についての説明でございます。
駆け足の説明となりましたが、以上が税務行政の現状と課題の説明でございます。
ありがとうございました。
会長
原田課長、どうも詳細な御説明をありがとうございました。
非常に多くの情報をいただきましたので、それに基づいて御質問、御意見を委員の皆様から頂戴したいと存じます。いかがでしょうか。
御発言御希望の方は、会場の方は挙手をお願いいたします。ウェブの方も挙手ボタンを押していただければ幸いです。
鹿取委員、お願いいたします。
鹿取委員
御報告ありがとうございました。日本産酒類の海外展開支援事業について、既にNHKのニュースでも放映されているんですが、先月初めてフランスのブルゴーニュで日本ワインの試飲会が開催されました。開催したのはブルゴーニュ大学で現在フランス国家認定の醸造士の資格を取ろうと勉強している方が中心になって、有志のグループで開催したんですけれども、予想を上回る450人のジャーナリストですとか、生産者、あるいは酒販店、飲食店の人が集まって大変好評だったと聞いています。
必ずしもそれが直接の輸出につながるかどうかは分かりませんが、こうした日本のワインに関しても海外でのアピールというのは今後、国税庁の方の御支援の下、進めていければよいと思っています。
以上です。
会長
貴重なコメントありがとうございました。
酒税課長、いかがですか。
酒税課長
酒税課長三浦です。鹿取委員からただいま御紹介くださいましたブルゴーニュにおける日本ワインの試飲会に450人の方々がお越しくださったということで、私どものほうでも今回補正予算におきまして10億5,000万円の措置を頂いて、1つは事業者の方々向けの補助金ということで、海外展開を支援するものが7億円、それから、海外における日本産酒類の認知度の向上に関する取組といたしまして、例えばですけれども食酒のイベントでありますとか、あるいはこうした試飲会のイベントなどについても詳細はこれからになってまいりますが、御支援をしてまいりたいと考えておりますので、引き続き委員各位の御指導をいただければと考えております。
以上です。
会長
ありがとうございました。
鹿取委員、今の御説明でよろしいですか。
鹿取委員
会長
ありがとうございます。
それから、中空委員、どうぞお待たせしました。
中空委員
ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
いくつか質問があります。4ページで御説明いただいた辺りで、最初のところですけれども、小口の支払い手が増えていると認識をしました。つまり徴収している税額は減っているのに取扱い申告額、申告者数は増えているということなので、小口の支払い手が増えていると読みましたが、この先はどうなるのでしょうか。申告者数が増えて1人当たり処理しなきゃいけない額が増えて大変なんですという説明があったと思いますが、この状態がずっと進むのであれば、やっぱり抜本的な手立てを取らないとずっと二極化が進んでいく、小口の支払い手が増えるということになるんであれば、と思いました。
なので、これからの支払い手の見通し、どう見ておられるかということと、現状の認識はそれでいいかというのが1点目です。
会長
今の点についてどなたがお答えくださいますか。徴収部長、どうぞ。
徴収部長
申告納税で納税額の話をされているところですが、徴収について申し上げますと、特段全体が小口化しているというようなデータはございません。ただ、ちょっと先ほど説明がありました、納税コールセンターというところを国税局は持っておりまして、そこについては電話の架電を行い大体8割ぐらい、おおむね納めていただくか、あるいは小口という形で、分納という形で進んでおります。
そこからさらに納付が進まない方については、この金額は多いものですけれども、国税局なり、あるいは税務署のほうで所管し、滞納整理に入っていくといった流れでして、1件当たりの滞納税額の多寡については明確な数字は出てございませんけれども、基本的にはそんな小口化がかなり進んでいるというような認識はございません。現場判断として。
以上です。
会長
中空委員、徴収部長からは特に小口化が進んでいるという認識はないということの御説明です。
調査査察部長、どうぞ。
調査査察部長
調査査察部長でございます。ちょっと所掌から離れますけれども、私の記憶では、足元で約6割が還付申告だったと思います。約6割が還付なものですから、申告件数の増加及び申告税額の減少が、規模の小さな申告者が増えていることを表している訳ではないと思います。
これは確定申告ですけれども、その効率化の対応といいますか、マンパワー不足にならないように先ほどデジタル部分でございましたけれども、自動的に確定申告の際に給与所得、その他の医療費控除に必要なデータなどが自動的にマイナポータルと連携することによって、加えて御自宅からe−Tax、もしくはスマホで申告いただく件数を増やすことによって我々もマンパワー不足に対応していく方針だと理解しております。
会長
ありがとうございました。申告件数の6割は還付なので、収納額等を単純に割るわけにはいかないという御説明と、マンパワーはDX化を用いて対応したいということのお返事でした。
中空委員、よろしければ次の質問をお願いいたします。
中空委員
ありがとうございます。デジタル化についても説明いただきました。大いに進めていただきたいと思います。
けれども、説明の中で割と不正の話とか、それをチェイスする話が結構あったと思うんですが、悪質な納税者の割合と、そこで徴収できる金額というのはざっくりでいいんですけれども把握しているでしょうか、というのが1点目。
同じデジタル化の中で2点目は、自動入力、これも大いに進めていただきたいと思いますが、医療費だとか、それから保険料とか、ああいうものが入力するだけで納税できますよという、便利だなと思って聞いていますけれど、証明を後で出すじゃないですか。あれ、どこかで必要なくなるんでしょうか。支払い手側から見ると、保険料とか医療費とかを発行している側が名前に紐づいてどんどん税金の控除のシステムにどんどん乗ってくれるといいなと将来的には思うんですけれども、そういう納税者側に残る作業というのはやっぱりあるものなんでしょうか。そこに関して何かブラッシュアップしていくということは考えておられますか、これが2点目です。お願いします。
会長
課税部長
課税部長ですけれども、悪質な人の割合ということですけれども、すみません、ちょっとそのお答えになっているかどうか分かりませんが、主要税目の調査状況というのがございますけれども、4ページ目ですけれども、調査件数、申告所得税で申しあげれば追徴税額の金額というのがございます。申告所得税では804億円、法人税で1,438億円とそれぞれ出ておりますが、人数の割合ということではございませんが、金額的なイメージということでございましたら、追徴税額というのが一つの指標になるんではないかなと思っております。
会長
植松審議官
審議官の植松です。御質問ありがとうございます。
自動入力につきましては、以前から進めてきてございまして、例えば生命保険料控除でありますと、普通ははがきがこれまで来て、それを添付したり、税務署に提出したりしていたわけですけれども、この連携の仕組みでありますと、そうしたものは要らないということになります。
また、医療費につきましては、社会保険診療については、国保連や支払基金からデータが来るということでございまして、e−Taxで申告される場合にはそれを自動入力させて出せばいい。その他、領収書等については保存いただいて、何かのときのためには確認をさせていただく場合もございますけれども、いずれにしても以前は、それも税務署のほうに出していただいていたわけでございまして、デジタル化に併せてそういうところをなるべく効率化していきたいと考えてございます。
会長
中空委員
分かりました、ありがとうございます。どんどん効率化していただけることをお願いしたいと思います。
以上です、ありがとうございます。
会長
ありがとうございました。
審議官、田近前会長のときにその話をしていて、ロードマップを確か作っていらっしゃいましたよね。協力してもらう行政が少ないところから取りあえず入ってもらいやすくて、支払調書が最後になるねというような話をしていた記憶があります。どうぞ取組をよろしくお願いいたします。
河村委員
河村です。
今のデジタル化の話を継いでということになると思いますけれども、今の入力のところだけじゃなくて、例の生成AIの問題がありまして、これ御案内のとおり、去年の11月にChatGPTがリリースされまして、1年でこれだけ入ってきたのかというぐらいになっております。我々、民間企業の現場でもホワイトカラーの仕事、それから工場のオペレーション、これ両方に甚大な影響が出ております。
そういう中で、国税業務の周辺におかれて、調査業務とか、あるいは事例の研究とか、あるいは文書の作成とか等々で、生成AIの活用というのはこれからどういうふうに御検討されているのか、あるいはもう使っていますよというお話であればそれで結構なんですけれども、何か状況がどうなっておられるか教えていただけるとありがたいと思います。
以上です。
会長
ありがとうございます。
生成AIの現状ですか。
どうぞ、お願いします。
植松審議官
ありがとうございます。
まず、データの活用の観点からは、生成AIではなくて、AIの活用については先ほどの資料で13ページのところにありましたけれども、そういうことを積極的に活用してやっていきたいと思ってございます。
いわゆる生成AIについては、世の中で言われているようになかなか取扱いが難しい面もございまして、世の中のデータを全て取り込んでいろんな作業をするとすれば、いろいろ紛れがあったり、あるいは我々の情報が外に出ていくリスクもあったりとか、そういうこともございます。
そうした観点も踏まえまして、今我々がまず取り組もうとしてございますのは、Q&Aみたいな形で、FAQをホームページに出していますけれども、そういうものをより効率的につくれないかということで、取り込む情報を国税庁の情報というか、ホームページに載せているFAQでありますとか、そういうものに限定した上で生成AIを回して、新たなよく質問されるような項目に対応していくようなことからまず活用できないかなということで、まさに取組を進めようとしているところでございます。
会長
河村委員
会長
小林委員
すみません、小林でございます。
御質問というよりも、多分お願いベースになるかと思うんですが、10月1日からインボイスが導入されまして、各企業、日々記帳または財務の入力等を使っていらっしゃるわけでございますが、非常に現場の感覚といたしまして、一般企業は大体市販のベンダーをお使いになって入力作業等を行っていらっしゃるわけです。その中で、最初の頃は6月、7月にはバージョンアップができてと、こういう話があったんですが、聞くところによりますと半数近くが9月に入ってからであったとお聞きしております。
バージョンアップして、当然我々のところにもそういう御相談、入力に対する御相談等あるんでございますが、余りにも時間がちょっとなさ過ぎたかなというきらいがございます。
お願いベースと申し上げましたのは、是非国税庁としても、ベンダーに広く御指導を頂ければありがたいというお願いでございます。よろしくお願いいたします。
会長
課税部長
ベンダーとの関係でございますけれども、国税庁におきまして、ベンダーと意見交換や情報交換をする枠組みに国税庁も参加しておりますので、そうしたインボイスだけでなくて、利用者の利便性に資するような取組については、我々だけではなくてベンダーの方にも協力をいただいてやっていただくように今後とも努めてまいりたいと考えてございます。
会長
廣重委員
廣重です。どうぞよろしくお願いいたします。
今、インボイスのお話が出たので、是非教えていただきたいところがあったんですが、この資料の19ページに制度開始後に多く寄せられた御質問というのがあるんですけれども、ちょっとこれを拡大して読もうと思ったんですが、読めなかったものですから、どういった御質問が多く寄せられたのか、上位3つぐらいを教えていただけたらありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
会長
課税部長
すみません、資料が十分でなくて失礼いたしました。
ここで載っているものが、ホームページに載っているわけですけれども、お問合せの多い御質問ということで、11月現在のものを載せさせていただいています。
1番に来ておりますのは、登録の手続についてでございます。適格請求書、発行事業者の登録はどのような手続で行うのかということでございます。
2番目でございますが、適格請求書に記載が必要な事項ということでございます。
3番目でございますが、支援に係る免税事業者からの支援に係る経過措置、8割の経過措置でございます。
4番目が、適格請求書と保存方式の概要を教えてくださいということでございます。以下、細かい質問が続いておりますが、大所としてはそういうことでございます。
会長
廣重委員
よく分かりました、ありがとうございます。
ホームページ確認させていただきます。ありがとうございました。
会長
ありがとうございます。他はいかがでしょうか。
手島委員、どうぞ。
手島委員
御説明ありがとうございます。
34ページの日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産登録に向けて、採択されることを多くの人たちが待ち望んでいるわけですが、すでに文化庁をはじめ、様々な取組が行われていると思います。このユネスコの採択の条件の項目の中に、国内機運の醸成という項目が入っているわけですが、国税庁としてはどんなことをこの来年度秋までに企画されていらっしゃるかどうか等を伺えればと思います。お願いいたします。
会長
酒税課長
御質問ありがとうございます。酒税課長、三浦です。
ユネスコ無形文化遺産登録に向けた取組ということで、端的には国内外における伝統的な酒造りに関しましてのシンポジウムの開催といったことを行ってきております。直近では、一番近くでは、9月とか11月にイギリスですとかスペインにおきまして日本大使公邸などを使わせていただいて、そこに作り手の方々ですとかジャーナリストの方々をお招きしまして、伝統的酒造りについて皆様に理解をしていただくようなシンポジウムを開催いたしております。今後もそうした活動をしてまいりたいと思っております。
会長
手島委員
ありがとうございます。では、新年度もいくつかそういった国内外での機運醸成の企画があるという認識でよろしいですか。
酒税課長
はい、結構です。まだ詳細というところまでは行っていないですが、関係機関ですとかと議論を引き続き行ってまいります。
手島委員
ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
会長
ありがとうございました。
ほかにはいかがですか。
土居委員、お願いします。
土居委員
御説明どうもありがとうございました。私から4点コメントさせていただきたいと思います。
まず、デジタル・トランスフォーメーション、それからインボイスの定着に向けた取組というのは大変よろしいんではないかと思っておりまして、引き続きこの取組を進めていただきたいと思います。
それから、資料3の4ページで、先ほど中空委員からコメントがありました。申告所得税で医療費控除が多いというのは、ある意味でこの経年変化を見ると日本は高齢化したんだなということが浮き彫りになっているというか、高齢者が医療費控除をより多く使う方なので、高齢者が増えたということとパラレルになっている面があるのかなという認識を持ちましたというのがコメントで、それから、10ページの日本版記入済み申告書の取組を行う、これは是非進めていただきたいと思いますとともに、実際生命保険に加入しておられる方とか住宅ローンを借りておられる方がこの仕組みを御存じかどうかというところについてはもう少し浸透を図っていただいて、既に対応済みで御本人のお気持ちさえあればe−Taxでそれが手続できるんだということで、新規にお入りになった方だと比較的御案内があるかもしれませんけれども、かなり以前に生命保険に入った、ないしは住宅ローンをかなり以前に借りているという方だと、そもそもこのe−Taxでこの対応ができていなかった時期の記憶が非常に御本人には強くあって、e−Taxで手続ができるというところまで思いが馳せないという方々もいらっしゃるのではないかと思いますので、その対応しているということの認識の浸透を図っていただくといいのかなと思いました。
それから、最後はちょっと超越的な話なんですが、私も委員をさせていただいている財政制度審議会の財政制度分科会で先月、建議を出させていただきまして、その中ではまだ実現してないわけですけれども、社会保険料の賦課ベースに分離課税している金融所得、ただし、これはあくまでも特定口座のということで、銀行の保管されてない利子までを指しているわけじゃないということは建議でも明記してあるわけですけれども、これも賦課ベースに入れるべきではないかという提言を出させていただきました。
と申しますのは、既に総合課税されている金融所得は賦課ベースに入っている、合計所得金額とかですね、入っているんだけれども、分離課税されているとそれは含んでないということなので、不公平があるんじゃないかということを指摘させていただいていて、それをまだ全然実現の道筋はついてないんですけれども、行く行くは総合課税されていれば社会保険料の保険料率が掛け算される対象になるけれども、分離課税されていると社会保険料の賦課ベースから外れているというのは不公平じゃないかということを提言させていただいていたということがあって、あとはもちろんそれでいいという政治判断というのもあるんですけれども、実務的にそれができるのかという話が恐らく今後出てくる可能性があるというところで、それは主計局の手には負えないことというか、そういうところがあると私が勝手に思ったものですから、誰かに頼まれて申し上げているわけでは全然なくて、私個人の一経済学者としての思いとして、その不公平を是正するには事務手続的にも特定口座に関連する情報の御提供をいただかなければいけないということになるんじゃないかなと思いまして、ちょっと超越的ではありますけれどもコメントさせていただきまして、是非事務的な御支援をよろしくお願いいたしますということでございます。
以上です。
会長
ありがとうございました。
まず最初の3つについては、コメントということでよろしいですか。
最後の点、今年の税制改正で、総合課税のほかに申告不要分とか、特定口座とかを足して3億3,000万を超える部分に22.5%の税負担を求める制度が入ったので、そういう情報の整理というのは恐らく国税庁のほうでもなさるんだろうなという見通しかと思います。何かコメントありますか。
長官、どうぞ。
国税庁長官
土居先生のお話自体は、本体の部分は社会保険の話ですのでコメントはいたしませんが、今、佐藤会長からも御指摘がありましたように、令和5年度の税制改正において、今申告不要を選択できることとなっている分も含めて、トータルの所得を計算し、その金額が特別控除額で設定している3.3億円を超える方に関しては、特別控除を適用した上で、それに22.5%の最低税率を課すような仕組みが導入されております。
これの施行が令和7年分の所得からということになっておりまして、まだ再来年の所得からということになりますのでしばらく時間はございますが、それの施行に向けてその各種の所得をちゃんと名寄せして執行を可能にするための作業を当然していかなければいけないということでございますので、おっしゃっているようなことは論理的にはできるということだと思っております。
会長
ありがとうございました。
ほかに御発言希望はいかがですか。よろしいですか。
では、私から1点コメントと、1点質問があります。
コメントというのは、資料で言うと19ページで、先ほども議論になった制度開始後に多く寄せられた質問というところにも関わるんですが、国税庁がQ&Aというような形で納税者に分かりやすい発信をしておられるということはもちろん把握しております。
ただ、そのQ&Aというのが、一つには法人税法の34条関係が顕著ですけれども、改定をしながら相当な踏み込んだ内容になっている。今度のインボイス関係も非常に詳細ではありますけれども、膨大な量のQ&Aが公表されていて、それはもちろん実務には必要なことなので結構なんですけれども、それって本当に法律の解釈の範囲にとどまっているのか、それとも一定の内容のものは政令に移すべきではないのかというような精査をやはりどこかではしていただく必要があると思います。
通達、あるいはQ&Aでできるのは法令の解釈までですから、それが新しいルールを作っているようなことがもしあるならば、これはリスク通達なんて昔もやりましたからイメージはつかんでいただけると思いますが、解釈の範囲にとどまっているかという精査はいつもしていただきたいなと思っております。
これはお答えいただけるようなことではありませんので、コメントです。
もう一つの質問はシェアリングエコノミーの分野の28ページですね。これなんですけれども、先年導入した通則法の74条の7の2の報告というのは、これは実施されたことがあるんでしょうかという単純な質問です。伝家の宝刀ですから、まだないのかなと思いつつ、この中にも明記はされていないように思ったのでお伺いいたします。
課税部長
今、御質問いただきました74条の7の2、特定事業者等への報告の求めでございますけれども、詳細には回答を差し控えさせていただきますが、こうした事例というのはございます。それに至らなくても、それと同時に事業者への協力要請が明確化されておりますので、それも使いまして、様々な形で情報収集をやっているということであります。
会長
もちろん個人情報ですから詳細はお伺いできないことは分かっておりますが、せっかく作ったのでどうなったのかなと思っておりましたが、実施例があるということで心強く思います。ありがとうございました。
もう少し時間がありますが、いかがですか。よろしいですか。ウェブの方もよろしいですか。
それでは、御質問、御意見は一応これで終わったということにいたしまして、質疑応答を終了させていただきます。
本日の議題は以上となりますが、会議全体を通して御質問、御意見等あられましたらお願いいたします。よろしいですか。
それでは、本日の議事はこれにて終了したいと存じます。
なお、本日の会議の議事要旨及び議事録につきましては、国税審議会議事規則第7条第2項に基づき公表させていただきます。公表に当たっては、事前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
また、議事要旨の内容につきましては、会長一任ということでよろしいでしょうか。
会長
それでは、承ります、ありがとうございます。
それでは、本日の審議を終了することとし、これをもちまして、第26回国税審議会を閉会させていただきます。
ありがとうございました。
――了――