日時: 令和4年 11月 18日 14:30〜15:27
場所: 国税庁第一会議室
出席者: 国税審議会委員 山田会長 佐藤会長代理
秋葉委員 遠藤委員
大倉委員 小川委員
鹿取委員 川北委員
河村委員 木村委員
神津委員 小関委員
手島委員 土居委員
中空委員 吉村委員
説明者 国税庁 阪田国税庁長官
伊藤国税不服審判所長
星屋国税庁次長
牧田国税不服審判所次長
中村審議官
植松審議官
堀内課税部長
永田徴収部長
木村調査査察部長
杉山総務課長
郷人事課長
田島企画課長
中田酒税課長
鈴木国税企画官
会長
それでは定刻になりましたので、第24回国税審議会を開催いたします。
本日の進行役を務めさせていただきます会長の山田でございます。よろしくお願いいたします。
委員の皆様方には大変御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の審議会につきましては、委員の過半数の方々に御出席をいただいておりますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づきまして、本会は有効に成立しております。
御出席いただいております委員の方々につきましては、お手元に座席表がございますので、御覧いただきたいと存じます。
なお、木村純子委員につきましては、ウェブでの御参加ということになります。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入りたいと思いますが、資料1の議事次第、御覧いただきたいと存じます。
まず、最初に阪田長官に御挨拶をいただきたいと思います。
それでは、阪田長官、よろしくお願いいたします。
国税庁長官
この6月から国税庁長官を拝命しております阪田でございます。皆さま、どうぞよろしくお願いします。
国税審議会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
委員の皆様方には、大変お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。また、委員の皆様方には、日頃から税務行政全般にわたり深い御理解と多大な御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
まず、国税庁の最近の主な取組について私から4点申し上げます。詳細については、後ほど議題、税務行政の現状と課題の中で説明申し上げます。
1点目は、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについてです。近年、経済取引のデジタル化やグローバル化の進展、働き方の多様化などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、税務行政を取り巻く環境は急速に変化しております。国税庁はこうした変化に柔軟な対応をしつつ、与えられた使命を的確に果たしていくためには、デジタル技術を活用し、納税者の利便性の向上を図るとともに、データ活用により課税・徴収の高度化に取り組む必要があると考えております。また、企業活動に深く結びつく税務手続をデジタル化していくことで、社会全体のデジタル化の推進にも貢献できるものと考えております。
このため国税庁としては昨年6月に、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの取組方針を策定し、税務手続や国税庁の事務運営の抜本的な見直しを進めることを明確化するとともに、昨年12月にはこうした構想の実現に向けて具体的な工程表を公表したところでございます。
この取組方針は2つの柱から構成されており、第1の柱である納税者の利便性向上については、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指して取り組んでまいります。また、第2の柱である課税・徴収の効率化・高度化については、AIの活用も見据え、幅広いデータの分析により申告漏れの可能性が高い納税者の判定を行う取組などを進めております。今後とも税務行政のデジタル・トランスフォーメーションに向け、必要な施策を着実に実施してまいりたいと思います。
2点目はインボイス制度の円滑な開始に向けてについてでございます。消費税の計算を行う上で要件となる適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が令和5年10月から開始されます。事業者がインボイスを交付するためには税務署長の登録を受ける必要があり、原則的な申請期限である令和5年3月末まで、残り5か月を切りました。これまでの申請登録状況等を踏まえ、事業者が制度の理解を深めた上で、それぞれの事業実態に応じた対応や準備を進めていただくことができるよう、日税連をはじめとする関係民間団体の協力も得ながら、関係省庁と緊密に連携の上、周知広報などに取り組んでまいりたいと考えております。
3点目は重点課題の取組についてです。適正・公平な課税・徴収の実現に向け、国税庁では消費税の不正還付や国際的な租税回避への対応などの重要課題に積極的に取り組んでおります。消費税不正還付は国庫金の詐取とも言える極めて悪質な行為であるとともに、近年事案が複雑・巧妙化しているため、特に厳正な態度で臨んでいるところでございます。また、増加する海外への投資や海外取引に対しては、外国税務当局との連携・協調などにより、深度ある調査・徴収を実施しております。適正な申告を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、引き続き限られたリソースを効果的・効率的に活用する事務運営に取り組んでまいります。
4点目は酒類業の振興についてです。国税庁では酒類業の健全な発達に向け、酒類業の振興に向けた取組を進めており、特に日本産酒類の輸出促進につきましては、政府全体の方針を踏まえ積極的に取り組んでいるところでございます。日本産酒類の輸出については、清酒、日本酒やウイスキーを中心として、国際的な評価の高まり等を背景に近年は大きく伸長し、輸出金額は令和3年に初めて1,000億円を超え、本年においても好調に推移しております。今後とも酒類のより一層の輸出拡大に向けて関係機関とも連携しつつ販路拡大や認知度向上、さらには高付加価値化に取り組んでまいります。
最後になりますが、本年6月に報道されました職員の不祥事についてです。大変残念なことに高い倫理意識を求められる国税職員が持続化給付金詐欺事案などを引き起こしました。国税庁としては再発防止策の強化に取り組み、国民の皆様からの信頼回復に努めてまいりたいと考えております。
本日の国税審議会においては、委員の皆様から国税庁の取組に対しまして幅広い御見地からの忌憚のない御意見、御指導を賜りたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
会長
阪田長官、どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に入りますが、本日の会議の議事要旨及び議事録につきましては、国税審議会議事規則第7条第2項に基づきまして公表させていただきます。公表に当たっては、事前に委員の皆様方の発言内容に誤りがないかどうかを確認させていただきたく存じます。なお、議事要旨の内容につきましては、会長に一任ということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
会長
ありがとうございました。
それでは、次の議題、国税審議会各分科会の最近の活動状況についてですが、資料2のファイルを御覧ください。そこに昨年10月に開催しました国税審議会以降に実施しました税理士分科会及び酒類分科会について記載しております。各分科会の議題等につきましては、資料に記載しております。この点につきまして、何か質問等はございますでしょうか。
特にないようでしたら、次に進ませていただきます。
次の議題、税務行政の現状と課題についてに入らせていただきたいと思います。資料3のファイルを御覧いただき、こちらについては、杉山総務課長から御説明をいただき、その後、委員の皆様方から御質問・御意見を頂戴したいと存じます。
それでは、杉山課長お願いいたします。
総務課長
総務課長の杉山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
資料3をお開きください。税務行政の現状と課題ということで御説明をさせていただきます。
では、早速ですが、右下のページ数で1ページの目次を御覧いただき、本日、こちらの4点について、御説明させていただきます。
まず、2、3ページについてです。国税庁では令和3年6月に税務行政の将来像2.0を公表いたしました。税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、すなわちデジタルを活用した国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直しを進めております。納税者の利便性の向上と課税・徴収の効率化・高度化を2本の柱といたしまして、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指しております。
4ページを御覧ください。税務行政の国際的な潮流といたしましても、2020年にOECD税務長官会合において税務行政3.0が取りまとめられております。序文において、納税者の自発的なコンプライアンスと税務調査に依存した現在のアプローチから大きく転換する必要性が共通の認識とされております。このうち、「1.納税者の日常の業務に組み込まれる」というところにございますように、納税者が日頃利用する業務システムとの連携により、負担感なく正確な納税が可能となることでノンコンプライアンスは意図的かつ手間暇がかかるものに収れんしていくといった大きな絵が描かれております。私ども国税庁のDXの取組もこうした国際的な方向性と軌を一にするものと考えております。
5ページを御覧ください。あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会という国税庁の将来構想におきましては、申告、申請などは数回のクリックやタップで完了する仕組み、納税者が自身の情報をオンラインでリアルタイムに確認できる仕組み、税務相談ではチャットボットを充実するとともに、プッシュ型の情報配信を行う仕組みを目指しております。
6ページですが、特に確定申告の簡便化につきましては、将来的には確定申告に必要なデータ、例えば給与や年金の収入金額、医療費の支払額などのデータを申告データに自動的に取り込めるようにして、納税者にはそのデータを確認していただくことによって、入力の必要なく数回のクリックやタップで確定申告が完了するような仕組み、言わば日本版のプレプリント、記入済申告書といったようなものを目指したいと思っております。こうした観点から、後ほど御説明いたしますマイナポータル連携なども進めているところでございます。
7ページは、こうした税務行政の将来像2.0に基づく具体的な私どもの取組状況を一覧にしたものでございます。令和4年1月からは全ての国税関係手続はe-Taxで可能となっております。次のページ以降で、このうちの主な取組を御紹介してまいります。
8ページは、税務署に行かずにできる確定申告に向けまして、例えばスマホのカメラで給与所得の源泉徴収票を読み取って金額などを自動入力できる機能を提供するといったようにe-Taxなどの利便性の向上に取り組んでおります。直近、令和3年分の確定申告におきましては、自宅からのe-Tax利用件数が税務署が開設している確定申告会場で申告書を作成・提出した件数を初めて上回っております。既に85%以上の方は確定申告会場に来場せずに確定申告を行っていただいております。
9ページについて、来年の令和4年分の確定申告に向けましては、これまで申告書の作成から送信までの間に3回必要だったマイナンバーカードの読み取りが1回で済むようになるなど、引き続きe-Taxの利便性の向上に取り組んでおります。
10ページは、令和5年1月から個人の納税者の方を対象にe-Tax上の自己情報を確認できるマイページの運用を開始いたします。このマイページでは氏名や納税地などといった本人情報に加えまして、登録している金融機関、還付金の処理状況など、還付・納税に関する情報や青色・白色などの各税目に関する情報を確認することが可能となります。このマイページで確認できる情報につきましては、今後利用者のニーズや費用対効果なども踏まえて、さらに拡充をしていくこととしております。
次に11ページに記載しているマイナポータル連携につきましては、取得可能な控除証明書などを順次拡大をしてきたところでございます。
12ページにありますように、令和4年分の確定申告からは新たに1年分の医療費通知情報、公的年金等の源泉徴収票、国民年金保険料控除証明書がマイナポータルを通じて取得できるようになります。e-Taxの利便性がさらに向上いたします。こうしたマイナポータル連携の拡大については、データを交付する側の機関・事業者などの協力も必要となりますけれども、今後とも関係省庁などと連携をしてマイナポータル連携のさらなる拡大に取り組んでまいります。
13ページは、ここまで御説明した確定申告の簡便化の工程表をお示しをしております。給与データなどの自動取り込みにつきましては、今後さらに検討をしていくこととしております。
14ページに記載したe-Taxの利用状況につきましては、こうした利便性の向上などを通じた利用拡大の推進によりまして、利用割合は着実に上昇しております。所得税申告では、令和3年度の利用率は59%ということで、今後、令和5年度に65%まで引き上げる目標を掲げておりましたが、現在の上昇基調をさらに加速化すべく、利用率目標を1年前倒ししまして、令和4年度中に65%の達成を目指すこととしております。
15ページは、年末調整手続の電子化について、マイナポータル連携などによりまして、従業員は控除額の計算が不要となります。企業においても書類の確認、保管などに要する事務コストが削減されることになり、従業員・企業双方にメリットのあるものとなっております。
16ページは、国税の納付につきましても、納税者の利便性の向上と現金管理などに伴う社会全体の事務コストの縮減を図るため、キャッシュレス納付の推進に取り組んでおります。
17ページは、令和4年12月からはスマホアプリでの納付、○○Payというようなものを開始する予定としております。
18ページは、こうした取組によりまして、キャッシュレス納付の割合は令和3年度で32%まで上昇しております。令和7年度に40%とすることを目標としております。
19ページは、電子納税証明書につきましても、令和4年9月からスマホでも請求・取得を可能としております。
20ページは、各省庁への申請手続で納税証明書の添付が必要となる場合があります。こうした場合、申請者はあらかじめ税務署で納税証明書を取得する必要があるわけですが、こうした手続につきまして、令和5年1月から各省庁の申請システムと国税庁システムを連携させることによって、申請者が各省庁への申請時に自己の納税情報を自動で添付できる、そうした仕組みの運用を開始する予定でございます。
それから21ページには、タックスアンサー、22ページには、チャットボット、こうした利便性の向上にも取り組んでおります。
ここまで主に納税者の利便性の向上のための取組を御説明してまいりましたが、23ページでは、もう一つの柱であります課税・徴収の効率化・高度化ということで、AI・データ分析の活用などにも取り組んでいるところでございます。納税者本人から提供される申告・決算情報のほか、調査事績や各種の資料情報、さらには租税条約に基づく情報交換によって、外国税務当局から提供される情報などを用いまして、AIなどにより多角的に分析をして申告漏れなどのリスクの高い対象の抽出を行うこととしております。
具体的には、右下の図にありますように、各種情報を組み合わせまして、その関係性をネットワーク化することで、単一の情報では把握できなかった高リスクの取引を抽出するといった取組を進めております。こうしたデータ分析の取組から得られましたリスクの高低に応じまして、リスクの高い者に対しては深度ある実地調査、その他の方々に対しては行政指導など適切な接触方法を選択していくこととしております。
このように、AIなどによるデータ活用の高度化を通じまして、言わばコンプライアンスリスクに応じた接触体系を確立し、効果的・効率的に全体の納税コンプライアンスの向上を図ることとしております。
24ページは、税務調査などの手続におきましても、この令和4年1月から書面に代えてe-Taxでの資料提出も可能としております。
25ページは、納税者の理解をいただくことを前提として、令和4年10月から一部の大規模法人を対象にリモート調査を試行的に実施しております。
26ページに移りまして、こうした税務行政のDXを進めていくには、より多くの理工・デジタル系の人材を確保するため、令和5年度の国税専門官採用試験から新たな試験区分(理工・デジタル系)を創設することとしております。
27ページには、今後の方向性・課題ということで改めて整理をしております。税務行政のDXを推進していくことの意義といたしましては、納税者の利便性を向上させるということに加えまして、単純誤りの防止、官民のコスト削減、企業生産性の向上、行政の効率化に資するといった効果も期待でき、さらには民間企業の経理事務のDXを通じて経済社会全体のDXに資する効果も期待できるのではないかと考えております。
表は昨年6月に閣議決定をされました包括的データ戦略で示されている我が国全体のデータ戦略のアーキテクチャーに国税庁の取組を当てはめたものであります。表の右側に掲げております国税庁の各層の取組、業務改革を精力的に推進していくことで、国税庁が目指すあらゆる手続が税務署に行かずにできる社会、課税・徴収の効率化・高度化といった価値の創造につながるものと考えております。
以上がDX関係の御説明になります。
次に、28ページからは、インボイス制度の円滑な開始に向けてでございます。
29ページは、インボイス制度が開始される令和5年10月まで残り1年を切ったところでございます。令和4年10月末現在の登録件数は、資料の下のほうに書いていますけれども、約143万件ということになっております。課税事業者について見ますと、約300万の課税事業者のうち134万、45%が登録済みということになってございます。売手の事業者が制度開始時からインボイスを交付するためには、原則として令和5年3月までに登録申請を行っていただく必要があります。国税庁としては、事業者の方々にスムーズに準備を進めていただくため、できる限り年内の登録申請を御案内しております。
そのため、29ページの下側、あるいは30ページ、31ページにありますような、周知広報などの取組を進めております。今後はテレビCMなども予定をしております。また、インボイス制度開始を契機として、政府全体としてインボイスのデジタル化の普及・定着を推進することとしております。
32ページには、標準化されたデジタルインボイスの活用によって、バックオフィス業務全体の効率化につながるものと考えております。このため、デジタル庁においてデジタルインボイス推進協議会と連携をして、日本のデジタルインボイスの標準仕様を公表しております。システムベンダーが具体的なサービス・プロダクトを開発中でございます。
また、中小企業庁のIT導入補助金におきましても、デジタルインボイスに対応するためのITツールなどの導入につきまして、優先的に支援を実施しております。
続いて、33ページから40ページにかけまして、課税上の重点課題ということで、消費税の不正還付、国際的な租税回避、富裕層への対応を挙げております。
34ページ、35ページに記載した架空の国内仕入れや架空の輸出売上げの計上による消費税の不正還付につきましては、国庫金の詐取とも言える極めて悪質な行為であります。さらに近年では、輸出貨物の商品を仮装するなど、事案が複雑・巧妙化しております。特に厳正に対処する必要があります。
令和元年10月から消費税率が引き上げられた中で、例えば、34ページに記載していますが、法人税申告件数の伸び率に比べて消費税還付申告件数の伸び率が大きくなっている状況にあります。国税当局におきましては、消費税不正還付を専門に担当する部署などを設置をしまして、法人・個人にかかわらず積極的な調査を実施しております。令和4年9月には東京国税局において、消費税不正還付対策本部を設置したところでございます。今後とも厳格な審査と的確な税務調査などを通じて厳正に対処してまいります。
36ページからは、国際的な租税回避への対応ということですが、36ページ、37ページに記載していますが、国外送金調書といった各種の法定調書、あるいはOECDの共通報告基準に基づく非居住者の金融口座情報、CRS情報の交換といった制度を活用しまして、情報リソースの充実に努めております。
その上で38ページに記載していますが、外国税務当局との連携・協調によりまして、海外預金などの申告漏れの把握・是正、徴収共助による海外資産の差押え・取立てなどを積極的に進めております。
また、39ページ、40ページに記載した、富裕層、有価証券・不動産などの大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人などの富裕層に対しても積極的に対応しているところでございます。
最後に、41ページからは酒類業の振興でございます。
42ページに記載しておりますが、酒類の国内市場は足元では回復をしつつありますが、依然コロナ前の水準には戻っていない状況でございます。
他方で、43ページに記載したように、輸出は令和3年に初めて1,000億円を突破して、今年も9月までの累計で既に1,000億円を超えており、対前年同期比で24%と好調に推移をしております。清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛、この3品目につきましては、政府全体の農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の重点品目に指定をしております。
こうした中、44ページに記載した、フロンティア補助金によりまして、経営改革、構造転換を促す支援、それから45ページにあるブランド化・酒蔵ツーリズム補助金によって、海外展開向けの支援などを行っております。引き続き、事業者の意欲的な取組を支援してまいります。
最後になりますけれども、46ページには、日本酒などのユネスコ無形文化遺産登録に向けて文化庁などと連携をして、令和4年3月にユネスコに提案書を提出したところでございます。令和6年11月頃にユネスコで審議をされる見込みとなっております。
時間の関係で駆け足の御説明になりましたけれども、国税庁からの説明は以上でございます。
会長
ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、何か御質問あるいは御意見等ございますでしょうか。御発言のある方は挙手でお知らせいただきたいと存じます。
鹿取委員お願いします。
鹿取委員
インボイス制度について、既にここに来るまでに数件のワイナリーからいろいろと意見をいただいております。今日に至るまで日本のワイン産業はかなりの割合で、農家が作るブドウによって支えられて参りましたが、こうした農家はほとんどが小規模な零細農家になります。ついては、これらの事業が課税事業者として登録してくれるかどうかは、非常に大きな問題です。もしそうした農業者が課税事業者にならない場合、更に、ワイナリーから依頼があって事業主にならない場合は、買主であるワイナリーが、それらの事業者つまり農業者からのブドウの購入を中止する可能性も生じます。現在日本では、農家は高齢化が進んでいますが、これを機に栽培を中止する農家が出てきたり、耕作放棄地の更なる増加も招いてしまうことも考えられます。こうした問題は、小規模ワイナリーから大規模ワイナリー全てにおいて言えるところで、例えば、年間生産量70万本とか80万本とか、あるいは100万本という中規模・大規模のワイナリーの場合、これらのワイナリーが負担する金額はかなりの額になります。こうして発生した費用が事業を圧迫するという発言ももらっています。
それから、最近では、ワイナリーを持たない前に農業者のまま委託醸造によりワインを造って販売する生産者が増えています。こうした生産者が、例えば酒類業者、酒販店にワインを販売する場合、こうした事業者たちも零細農家であり、彼らも免税事業者であるケースが多く見られます。その場合、結局ワイナリーを設立する前、つまりワインを販売するまでは収入も限定され、経済的にもかなり厳しい状況の中、酒販店に委託醸造で製造したワインを購入してもらおうと思っても、今まで成立していた取引が成立しない可能性があります。そうすると、現在まで、日本のワイナリーが増加傾向を続け、間もなく500軒に届こうとする勢いを削ぐことも懸念されます。この件については何軒かのワイナリーから意見もいただいておりましたので、ご報告させていただきました。何らかの特例措置があり得るのかも伺いたいと思っております。またインボイス制度の導入はさらに周知する必要があります。ワイナリー協会などでの講演もしていただいているようですが、実はそういったワイナリー協会に入っていない小規模ワイナリーさんもたくさんいますし、正直言って全く認知されていないというのが実情だと思います。その点、今後、ぜひ御考慮いただきたいなと思っております。
会長
ありがとうございました。今の御発言について、国税庁のほうから何かございますでしょうか。
課税部長
課税部長をしております堀内です。鹿取委員、様々な御指摘ありがとうございます。
今、お話がありました中小事業者、特に小規模・零細で今、免税事業者が課税事業者になるか選択する際に、どういう点を考慮しなくてはいけないのか、これは御指摘のありましたワイナリーとかの関係のみならず、我々も今、周知広報に努めているところでございますけれども、今、特にこういう分野がまだ周知徹底できていないんじゃないかという御指摘ありましたので、我々も例えば日本ワイナリー協会とか、長野県のワイン協会とか、各地のワイン団体を含む酒類に係る事業者団体に依頼文書などを出して、そこから事業者団体を通じて会員の事業者の方々にインボイス制度に関わる周知広報、改めて徹底したいと思っております。また、そうした中で、事業者の方から説明会を開催してほしいというような要望がございましたら、我々のほうでも受け止めて説明会を開催して臨んでいきたいと思ってございます。今、ワインの関係でお話がございましたけれども、ワインに限らず免税事業者に対してきちっと周知徹底して御判断ができるような、そして、まだ周知広報が行き渡っていないというお話もございましたので、先ほど総務課長からも話がありましたように、例えばテレビの媒体なども通じて、より幅広く、今までアクセスできていなかったような事業者の方々にも目に触れるように努力していきたいというふうに思ってございます。
鹿取委員
あと、そのときにお願いしたいのが、ワイナリー協会に入っている事業者は比較的意識があるほうで、問題は委託醸造でワインを造っている本当に零細な農家レベルの人たちが今、膨大にいることです。日本各地に委託醸造を主たる目的にしているワイナリーもできているので、ワイナリー協会だけではなくて、その前段階として、協議会ができている地方自治体のようなところにも、ぜひ情報が届くようにしていただきたいなと思っています。
課税部長
分かりました。協議会のできている地方自治体という話ございましたので、インボイス制度に関しましては、関係府省庁とも様々な連携を取っているところでございますので、農家という面では農水省ですし、地方自治体というのは総務省ですけれども、委員の御発言を受けまして改めて協議して、これまでアクセスできていないところに対してアクセスしていきたいと思います。また、私どもの酒税課とも連携して取り組んでいきたいと思ってございます。
会長
鹿取委員、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、ほかに御発言ございますでしょうか。
佐藤委員
詳細な御説明をありがとうございました。私からは、国税庁と他の組織との連携について、少し伺いたいと考えております。
国税庁はもちろん極めて有能な組織でありますが、他の分野によって同じような働きをする組織とうまく連携することで、その能力をよりよく発揮できることは明らかだと思います。例えば、DX化に関して言いますと、地方税でeLTAXを担当している地方税共同機構は、KSKが令和8年度の更新になっていることから、令和8年度に合わせて向こうのシステムの更改をすることとしています。実は令和6年が予定だったんですが、2年延ばしてこちらを意識した更改の形にしておられると伺っております。そのような場合、同じ税を扱う両組織がどのような情報を共有し、交換して、より機能的な、より合理的なDXを実現するのか、十分考える余地のあることだと考えております。また、御説明にもありました消費税の不正受還付については、阪田長官の前で私が申し上げるようなことではありませんが、輸出免税制度を悪用した不正還付などに対しては、税関との連携が必要となるところであり、またこれまで輸入に重点を置いておられた税関が一定のリソースを輸出についても割いていただけるというような状況にあるように承知をしております。今日は、国際的租税回避につきまして、海外の税務当局との連携ということについてお話を伺いましたが、その他同種の組織との連携というようなことは当然なされているとは思いますが、もしお話を伺えるようなことがありましたら、何かお教えいただけると幸いです。
会長
佐藤委員、ありがとうございました。それでは、この御発言につきまして何か国税庁。
植松審議官
佐藤委員、ありがとうございます。
まず初めのDX関係でお答えしたいと思いますけれども、従来から国と地方公共団体との関係では、紙をベースに情報交換みたいなことをやっていたわけですけれども、順次できるものについては、データで交換していくということで、これによって飛躍的にデータの使い勝手がよくなるということもありますし、事務も効率化していくという観点で、順次広げていこうということで検討させていただいています。佐藤委員のおっしゃるとおり、相互のシステムがうまく連携しないといけないということで、よくその辺については、今後こちらのほうも、先ほど御指摘のあった次世代システムが令和8年から導入するということもございますので、そういうことも踏まえて、よく相談しながらやっていきたいと思っています。また、やはりデータで政府内部で連携することは非常に重要だと考えていますので、例えばマイナンバーをキーにするとかそういうことというのは、今後課題になっていくと思いますので、それについてもしっかりと検討してまいりたいと考えております。
課税部長
消費税の不正還付、特に税関との連携ということで御意見がございました。消費税の不正還付問題、ここ数年、先ほども国庫金の詐取というような話もありましたし、我々も取り組んでいるところでございますけれども、税関のほうにも同様の問題意識を持っていただいております。現場レベルでは、例えば国税局と地区の税関は連携強化を図っているところでございますし、国税庁と関税局との間でも常日頃から意見交換をし、我々としては各局から上がってきた問題点、税関との関係でこういうところをもう少しできるようにしてほしいという要望も踏まえて、関税局とも協議しているところでございます。引き続き、連携を強化して取り組んでいきたいと思ってございます。
佐藤委員
審議官、どうもありがとうございました。現状よく分かりました。審議官がおっしゃった政府内部での情報共有という点について補足すると法務局の情報のデジタル化が飛躍的にこれから進むはずで、地方税を見ていると、法務局との連携をかなり考えておられるようですので、そういう点もあろうかと思います。
それから、税関に関しては何といっても情報化が非常に進んでいる部局でいらっしゃいますので、現場レベルと情報の両方で連携していただければと思っております。ありがとうございました。
会長
佐藤委員、ありがとうございました。
それでは、土居委員お願いします。
土居委員
土居でございます。御説明どうもありがとうございました。
先ほど鹿取委員からの御意見を承って、いろいろ考えさせられることが多いと思いました。それで、鹿取委員のおっしゃられた農家は農産物を作っておられるので、基本的には、軽減税率が適用されるはずの品物をお売りになられていると思いますが、それをお作りになられるときに使用する農機具とかは、軽減税率ではなく標準税率になると思います。そういうことになりますと、今は免税事業者ということで、しかもインボイスはないということなので、仕入税額控除を、大規模な事業者はなさっていらっしゃると思いますけれども、小規模な方はそこまで厳密にはなさっていらっしゃらない。
厳密にインボイスをつけて、かつ御自身も仕入税額控除をきちっとお使いになられるとすると、消費税は還付される可能性が高いことが、標準税率と軽減税率が違うがゆえに、農業に関しては一部そういうことが知られています。それは知っておられる方は知っておられるんですが、そこで何を思ったかというと、鹿取委員が御懸念の点については、きちんと帳簿をお付けになってインボイスを発行なさるということであれば、還付が受けられるかもしれないという説明の仕方があるかもしれません。特に農業に従事されている事業者の方は、適正に帳簿をお付けになって仕入税額控除をお使いになられるということだとすると、還付が受けられるかもしれないという、そういう意味でインボイスにはそれなりの利点があるという説明の仕方は、もしかしたらうまくインボイスを導入していただくきっかけになるかもしれません。

そういうことでありまして、逆に学校法人は授業料が非課税になっていることで、しばしば逆に仕入税額控除が行使できないという、そういう話がよく言われる話であります。けれども、そこはある種、これを機会に消費税の仕組みをより知っていただくということもありますし、さらにはデジタル化を通じて消費税の納税以外でも各事業者の経営実態を経営者の方がリアルタイムできちんと把握することにもつながりますし、さらには所得税なり法人税なりの納税をするときにも一から紙の書類を遡って計算しなきゃいけないというようなことにならないで済むという意味においても、非常に相乗効果が大きいことだと思います。一つのきっかけとしてデジタル化がさらに進むといいかなと思います。これは私の意見でございます。

会長
土居委員、ありがとうございました。国税庁のほうで何か御発言ございますか。
課税部長、お願いします。
課税部長
土居委員、ありがとうございました。おっしゃるように、今、委員のお話を伺いまして、一般論としましては売上げにかかる消費税よりも仕入れにかかる消費税が多ければ還付ということで還付を受ける方も本来ならばいるのに、制度を知らなくてできていないという方もいらっしゃるのかなという気もしております。
それで、まさにインボイスの絡みで、やはり免税事業者、どうしても消費税に馴染みがないと思われますので、今回もインボイスの導入のタイミングということで、特に免税者の方には、消費税の基礎から分かるというような説明のタイトルで、きちっと消費税の基礎から説明を行う免税者向けの説明会というものを対面とか、あるいはオンライン形式でやっているところでございます。
いずれにしましても、消費税の仕組みをまずきちっと分かっていただくということも委員からの御指摘がありましたように、基本だと思ってございますので、この点も引き続き力を入れてやっていきたいというふうに思ってございます。
会長
ありがとうございました。土居委員、よろしいでしょうか。
それでは、他にどなたか御発言ございますでしょうか。
御発言も尽きましたようなので、これで質疑応答を終了させていただきたいと思います。
それでは、引き続きまして、次の議題、国税審議会議事規則及び税理士分科会議事規則の改正に入りたいと思います。
こちらの議題につきましては、鈴木国税企画官から御説明をいただくことになります。それでは鈴木企画官、よろしくお願いいたします。
国税企画官
資料4を御覧ください。特に真ん中の緑の枠囲みを見ていただければと思います。
今般、令和4年度の税理士法改正によりまして、税理士による懲戒処分逃れを抑止するために、自ら税理士登録の抹消を行った場合でありましても、税理士在職期間中に税理士法違反行為があると認められる場合には、新たに懲戒処分を受けるべきであったことについての決定処分を行うことができることとされました。これによりまして、税理士であった者、元税理士に対しましても、税理士に対する懲戒処分相当の決定処分というものができることとなります。この税理士法の改正を受けまして、これまでの税理士に対する懲戒処分に加え、元税理士に対する決定処分が新たに追加されるということから、国税審議会令において所要の改正が行われることとなりまして、税理士処分の審査を行います懲戒審査委員の所掌範囲が懲戒から決定を含めたものなりますので、結論から言いますと、懲戒だけではなく懲戒等という「等」が追加されるというところでございます。
これを受けて各規則、国税審議会議事規則と税理士分科会議事規則についても同様の改正を行うこととしておりますので、よろしくお願いをしたいというところでございます。
以上でございます。
会長
ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がございました規則改正につきまして、何か御質問、あるいは御意見ございますでしょうか。
それでは、ただいまの改正案につきまして、御了解をいただきたいと存じますが、御異議ございませんか。
(「異議なし」の声あり)
会長
異議がないようですので、事務局案のとおり了承いたしたいと存じます。なお、令和4年度の税理士法の改正に伴いまして、今後、税理士、税理士法人に対する懲戒処分の考え方という告示があるわけでございますが、これについても改正の審議を行う必要がございます。懲戒処分等の審議は税理士分科会で行っているところでありますので、この告示の改正につきましても税理士分科会において審議することとさせていただきたいと存じます。国税審議会の議事規則第5条におきまして、会長が分科会に調査・審議させることが適当と認めた事項について、これを分科会に付託することができると、こういう規定があるそうでございまして、本件につきましても税理士分科会に付託して、審議をお願いするということにさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
引き続きまして、次の議題でございますが、税理士試験における試験問題の誤りについて、こちらに入らせていただきます。こちらの議題につきましては、郷人事課長から御説明をいただいた後、御発言を伺いたいと存じます。
それでは、郷人事課長、お願いいたします。
人事課長
税理士試験の事務局を担当しております人事課長の郷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料5を御覧いただければと思います。
本年8月に実施いたしました令和4年度第72回税理士試験におきまして、固定資産税の試験問題の一部に誤りがあったことが、試験後判明いたしました。誤りのあった問いにつきましては、土地及び家屋の固定資産税額を算出するものでありましたが、土地の部分の固定資産税額を算出するために必要な係数が設定されておらず、解答を導くことができないものとなっておりました。 本件につきましては、受験者のことを第一に考え、試験問題の誤りの事実を早急に周知すべく、山田国税審議会会長及び佐藤税理士分科会長をはじめとする税理士分科会委員の先生方へ御説明の上、受験者への謝罪、問題に誤りがあった事実、採点に当たって不利にならないように配慮する旨を資料5のとおり、9月2日、国税庁ホームページに掲載をいたしました。国家試験である税理士試験において試験問題の誤りがあったことは、受験者の皆様からの信頼を失墜させるものであり、あってはならないものと考えております。事務局といたしまして、この場をお借りしてお詫び申し上げます。
事務局といたしましては、同様の事態が二度と発生することがないよう、再発防止の徹底に努めてまいります。
事務局からの御説明と御報告は以上でございます。
会長
ただいま御説明がございました試験問題の誤りの件につきまして、税理士分科会の方で今回の誤りの原因の分析でありますとか、今後の再発防止のための策の協議とかを行うことになるとは思いますが、この場で何か御発言がございましたら承りたいと存じます。
この税理士試験、本審議会の名前で行われている試験でございまして、国家試験でもある税理士試験で誤りがあるというのは誠に遺憾なこととしか申しようがないわけで、このような事態が発生することがないよう、事務局におきましては、特に再発防止に向けた取組を徹底していただくように、この場でもお願いをしておきたいと思います。
それでは、本日御用意いただきました議題は以上となりますが、会議全体を通じまして、何か御発言はございますでしょうか。
特に御発言がないようですので、本日の審議はこれにて終了させていただくことといたします。
第24回の国税審議会、これをもちまして閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

――了――