総務課長の吉井でございます。よろしくお願い申し上げます。
それでは、行政側のメンバーの紹介をさせていただきます。
佐川国税庁長官でございます。
増田国税不服審判所長でございます。
藤井国税庁次長でございます。
有働国税不服審判所次長でございます。
並木審議官でございます。
山名課税部長でございます。
山崎徴収部長でございます。
金井調査査察部長でございます。
星屋人事課長でございます。
田村酒税課長でございます。
中島国際企画官でございます。
渡辺国税企画官でございます。
また、本日は議題にもございますとおり、財務省主税局にも御出席いただき、政府税制調査会に関する説明をさせていただくこととなりますので、引き続き紹介させていただきます。
財務省主税局調査課長、吉沢課長でございます。
同じく、主税局税制第一課、大柳企画官でございます。
以上になります。よろしくお願い申し上げます。
会長
ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入る前に、佐川長官より一言御挨拶をいただきたいと思います。
佐川長官、よろしくお願いします。
国税庁長官
本日は、委員の皆様方におかれましては大変お忙しい中、御出席を賜りまして、ありがとうございます。
また、委員の皆様方には日頃より税務行政全般にわたりまして、深い御理解と多大な御協力を賜っておりまして、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
それでは、一言御挨拶をさせていただきます。
国税庁は、その使命であります納税者の自発的な納税義務の履行を適切かつ円滑に実現するため、納税者サービスの充実に向けた施策の実施に努めるとともに、適正な申告を行った納税者に不公平感を与えないよう、悪質な納税者に厳正な姿勢で臨むなど、適正・公平な課税・徴収の実現に日々努めているところでございます。
近年、経済活動の国際化あるいは高度情報化が急速に進展するなど、私ども税務行政を取り巻く環境は、大変大きく変化をしてございます。
引き続き、私どもの使命を果たしていくためには、税務行政の現場におきましても、この世の中の変化に合わせました我々の柔軟な対応が必要であるというふうに考えております。
その一部を御紹介しますが、まず、第一に、納税者の利便性の向上への取組であります。
納税者の皆様が、自ら適正な申告、納税を行える環境を整備する観点から、e-Taxあるいは確定申告書作成コーナーなどICTを活用した利便性の高い申告手段の充実のほか、電子納税、コンビニ納付、ダイレクト納付、クレジットカード納付といった多様な納付手段も順次導入しております。また、来年になりますが、平成31年1月からは個人納税者の方が、より一層e-Taxを利用しやすくなるように認証方式の簡便化を行う予定としておりまして、今後とも更なる納税者利便の向上に努めてまいりたいと思います。
第二に、適正・公平な課税・徴収の実現への取組であります。
近年、個人・企業によります海外投資、海外取引が増加するなど、経済社会は、ますます国際化・複雑化してございます。こうした中、いわゆるパナマ文書やパラダイス文書の公開、BEPSプロジェクトの進展などがありまして、富裕層あるいは海外取引のある企業によります海外への資産隠しのほか、国外で設立した法人あるいは各国の税制の違いを利用して税負担を軽減するなどの国際的な租税回避行為に対しましては、国民の関心が大変高まっている状況であります。
国税庁といたしましても、こうした動きも十分に視野に入れて適正・公平な課税・徴収を実現していくことが、国民からの信頼の確保につながるものと考えてございます。こうした観点から、国際課税への取組を重要な課題と位置付け、専門体制の設置拡充を図った上で、租税条約に基づく情報交換などをはじめとした資料及び情報の収集に努め、課税上問題があると認められる場合には、積極的に調査を行っております。
こうした取組によりまして、引き続き富裕層あるいは海外取引のある企業による海外への資産隠しや国際的租税回避行為に対しまして、適切に対処してまいりたいと考えております。
さて、本日の国税審議会におきましては、国税庁の現状や課題と併せまして、ただいまその一部を御紹介させていただきました最近の主な取組などについて、後ほど総務課長のほうから説明をさせていただきます。特に、昨年の国税審議会では、田近会長のほうから近年のICT、データ活用技術が進展する中で、長期的な税務行政のあるべき姿について国税庁としてどのように考えているのか、という大変貴重な問題提起をいただきまして、それを受けて私の前任の迫田のほうから、国税組織の将来像について整理をし、国税審議会の委員の皆様にも御披露しながら、対外的に公表することも含めて考えたいと、その場で回答させていただきました。
その後、一部の委員の皆様方からの御指導も賜り、昨年6月に「税務行政の将来像」を国税庁として取りまとめ、公表させていただきました。
さらに、昨年秋に開催されました政府税調におきましても、経済社会のICT化等により税務行政を取り巻く環境が変化する中、納税者利便の向上、適正・公平な課税の実現といった観点から、税務手続の電子化を中心に議論を進められたところでございます。
そして、その過程において国税庁より、この「税務行政の将来像」について紹介をさせていただき、その後、昨年末に平成30年度税制改正大綱の納税環境整備として取りまとめられたところでございます。
本日は、財務省主税局からその内容などにつきましても御説明させていただきます。
私どもとしましては、税務行政の将来像でお示ししたとおり、ICT化の活用による税務行政のデジタル化を推進するなど、納税者の利便性の向上を図るとともに、課税・徴収事務の効率化・高度化、内部事務の集中処理をするなど、国税組織内部における業務改革を一層推進することによりまして、創出したマンパワーを活用し、国際的租税回避といった重要課題に的確に対応する必要があります。この大きな方向に沿って、着実に必要な施策に取り組んでいくことが重要であると考えております。
委員の皆様方におかれましては、本日、広い御見地からきたんのない御意見、御指導を賜りますように、何とぞよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
会長
佐川長官、どうも御挨拶ありがとうございました。
それでは、議事次第に従い進行させていただきます。
まず、本日の会議議事要旨及び議事録の公開について伺います。
議事要旨及び議事録につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項にのっとり、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第、公表させていただきたいと思います。
なお、議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思います。
まず、議事要旨を公表し、皆さんの御確認を踏まえて議事録を作成するというところで、この議事要旨の内容につきましては、会長一任ということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
会長
では、議事要旨については、まず私がチェックさせていただきまして公表と、その後に議事録の公表ということで進めさせていただきたいと思います。
いよいよ今日の議事ですけれども、本日の議題はお手元の議事次第、資料、紙で配付されていると思いますけれども、「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」、それが第1。それから、「税務行政の現状と課題」、そして、先ほど佐川長官からも御説明がありましたように、昨年来ICTの活用、長期的な税務行政の在り方等で国税庁がおまとめになったことが財源の1つになって、政府税調でも議論がされましたけれども、それに伴い、第3の議題としては「政府税制調査会における議論及び関連する平成30年度税制改革について」を取り上げたいと思っています。
それでは、最初の議題に入らせていただきます。
まず、「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」についてですが、国税審査分科会については昨年3月14日の国税審議会以降開催しておりませんので、税理士分科会及び酒類分科会からの報告となります。
それではまず、税理士分科会につきましては辻山税理士分科会長から報告をお願いしたいと思います。
辻山先生、お願いします。
辻山委員
ありがとうございます。
税理士分科会長の辻山でございます。
税理士分科会の活動状況につきまして、お手元の資料3「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」に基づき、御報告させていただきます。
3ページを御覧いただきたいと思います。
税理士分科会は、税理士試験の執行及び税理士に対する懲戒処分等の審議を行うこととされております。
最近の活動状況といたしましては、昨年3月14日の国税審議会以降5回の分科会を開催しております。
税理士試験関係で2回、懲戒処分の関係で2回、懲戒審査委員の推薦で1回開催しております。
税理士試験の関係でございますが、税理士試験問題、税理士試験の実施結果、指定研修の実施結果などについて御審議いただきました。
また、懲戒処分の関係につきましては、懲戒処分等の可否及び処分内容について御審議いただきました。
税理士分科会については、以上でございます。
会長
ありがとうございました。
続きまして、酒類分科会について、三村酒類分科会長から御報告をお願いします。
三村委員
酒類分科会長の三村でございます。
酒類分科会の活動状況につきましては、お手元の同じ資料3「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」に基づき、報告させていただきます。
5ページを御覧ください。
酒類分科会は、酒税の保全のために、酒類業者に対して命令を行う場合、酒類の製法及び品質等の表示基準等について制定を行う場合、更には、エネルギーや環境関連の法律に基づき酒類業者に命令を行う場合などにつきまして審議を行うこととされております。
最近の活動状況といたしましては、昨年3月14日に開催しており、酒税行政の現状及びビール業界におけるCO2排出量削減取組について審議いただきました。
酒類分科会につきましては、以上でございます。
会長
ありがとうございました。
ということで、各分科会の最近の活動状況の報告をいただきました。
引き続いて、次の議題であります「税務行政の現状と課題」に入らせていただきます。
では、吉井総務課長から説明をお願いします。
吉井総務課長
それでは、お手数ですが、タブレットの第19回国税審議会のフォルダー内にあります資料4−1「税務行政の現状と課題」を開いていただければと思います。
タブレットの一番画面の上の欄の項目の中に19分の1というのが現在表示されていると思いますが、その隣の矢印を下に下ろしますと次のページに移ってまいります。このページを引用しながら説明を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、タブレットの2ページを御覧いただければと思います。
目次にありますこのT番からW番の内容につきまして、資料に沿って順次説明させていただきます。
例年、やや分厚い資料で進めさせていただいているのですが、最近のトピックスを中心に「税務行政の現状と課題」の資料につきまして少し絞り込んで、今年は説明させていただければと思います。
参考計数となります資料につきましては、参考資料として別途お手元に配付しておりますので、後ほど御覧いただければと存じます。
タブレットの3ページをよろしくお願いします。
この表は、国税庁の定員と所得税の申告件数、法人の数につきまして、平成元年と平成29年を比べた資料でございます。
この3つの指標を比較すると、国税当局の業務量と国税当局のマンパワーには、ギャップが生じてきているのではないかと認識しているところでございます。
続きまして、タブレットの4ページをお開きいただければと思います。
このグラフは、個人と法人の実地調査率、実調率の推移を示している資料でございます。この実調率は、1年間に税務調査を実施した件数を納税者数ないしは法人数で割り算したものでございます。
先ほど申し上げた申告件数の増加等によります業務量の大幅な増加とか、国税当局のマンパワーのギャップ、それから経済取引の国際化・高度情報化の進展などによりまして、業務の質的困難化が進んでおります。
こうしたことがありまして、実調率はすう勢的に低下傾向にあると認識しております。単純計算いたしますと、法人は30年に1回、個人は100年に1回という状況でございます。
税務調査は、適正・公平な課税の実現を図るための有効な手段の1つでありまして、調査事務量を確保するというのは当庁における重要な課題と認識しております。
その上で、タブレットの5ページをお開けいただければと思います。
こうした状況、足元でこうした実調率が低下傾向にあるという中での我々の足元の取組を、以降簡単に御紹介させていただきます。
このタブレットの5ページは、昨年11月に公表いたしました28事務年度における法人税、所得税、消費税の調査事績でございます。
私どもも様々な事務運営の見直しを進めることにより、実地調査件数、追徴税額とも前年度よりも上昇しているところでございます。
続きまして、タブレットの6ページをお開けいただければと思います。
次は、滞納残高の推移でございます。
28年度末における滞納整理中のものの額は、8,971億円ということでございまして、平成11年度以降、18年連続での減少となっています。滞納につきましては、発生後できるだけ早期に滞納者への接触を図るということが速やかな納付につながり、処理を促進する上で有効でございます。
こうした考え方から、国税庁では各国税局に納税コールセンターを設置いたしまして、各税務署において新たに発生した滞納事案を集中的に所掌し、システム、それから非常勤の職員を活用いたしまして、早期かつ反復的に電話催告を行うことにより、効果的・効率的な滞納整理を実施しているところでございます。
続きまして、課税の事務運営に移りたいと思います。
タブレットの7ページでございます。
国税庁では、効果的・効率的な事務運営を行うという考え方の下、悪質な納税者に対しては厳正な調査、その他の納税者に対しては簡易な接触を行うなど、事案に応じたメリハリを付けていくという接触を行っています。
また、こうした取組の下、重点的に取り組んでいる事項ということで3つの柱があります。
経済社会の国際化、富裕層への対応が1つ目の柱。
それから、消費税の不正還付の防止が2つ目の柱。
それから、3つ目の柱が無申告の把握でございます。
続きまして、タブレットの8ページに移っていただきますと、このうちの国際化への対応ということでございます。
国税庁は、一昨年の5月にいわゆるパナマ文書の報道がありました。
そして、国際課税に対する問題意識が大変社会的にも高まってまいりましたので、国際課税の取組の現状と今後の方向性について、平成28年10月25日に国際戦略トータルプランとして取りまとめ、公表したところでございます。
その後も、昨年11月にはパラダイス文書が更に公開されるなど一連の動きもございました。このようなこともありまして、昨年12月19日に国際戦略トータルプランのフォローアップとして、その後の具体的な取組状況を取りまとめて公表いたしました。
このタブレットの8ページが、その資料でございます。
国税庁といたしましては、情報リソースの充実、調査マンパワーの充実、グローバルネットワークの強化等の取組を今後も推進し、国際課税に係る課題に積極的に対応してまいりたいと考えております。
続きまして、タブレットの9ページ、富裕層への対応でございます。
富裕層の状況は、このタブレット9ページの上段のとおりでございますが、こうした富裕層への適正・公平な課税の確保は、非常に重要な課題であります。
国税庁では、国外財産調書や財産債務調書などの法定調書、外国税務当局との情報交換ネットワークを活用いたしまして、富裕層に係る情報を積極的に収集し、課税上、問題が認められる場合には調査を実施しております。
また、富裕層のうち、特に多額の資産を保有していると認められる納税者を管理する重点管理富裕層プロジェクトチームを平成26年7月から都市局である東京、大阪、名古屋の3国税局に設置しました。29年7月からは全国に拡大をしております。平成29事務年度におきましては、200名超の職員を富裕層PTのメンバーとして指名しているところでございます。
続きまして、消費税の不正還付防止でございます。
近年、国民の関心が高まっている分野だと私どもも認識しております。特に、消費税は税収の面で主要な税目の1つでありまして、国民の関心も極めて高いと思っております。
国税庁では、消費税調査を重点課題の1つと位置付けまして、適正課税の確保に努めております。特に、虚偽の申告により不正に還付金を得ようとする納税者については、的確に選定の上、調査を実施しております。
また、悪質な不正還付事案については、刑事告発を行うなど、国税当局として厳正に対応しているところでございます。
下のブルーと赤の棒グラフにありますとおり、ブルーが追徴税額、赤が不正計算による追徴税額になりますが、消費税還付申告法人につきましては、このとおり調査による追徴税額が年々増加しているところでございます。
続きまして、タブレットの11ページを御覧いただければと思います。
大企業の税務コンプライアンス向上と税務調査の効率化という施策でございます。
大企業の税務に関するコーポレートガバナンスの充実は、国際的な潮流となっており、国税庁においても、大企業に対してその充実を働き掛けているところでございます。
平成24年7月からは、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好で、調査必要度が低いと認められる法人については、一定の条件の下、次回の調査までの間隔を1年延長することとしております。
国税庁といたしましては、この取組により、企業の税務調査対応の負担を軽減するとともに、当局の調査事務量を調査必要度の高い法人へ重点的に配分することとしております。
以上が、私どもの足元の取組でございます。
次のページ、12ページをお開けいただければと思います。
次の事項は、税務行政のICT化ということになりますが、これまで税務調査等外部事務のパフォーマンス向上のための足元の取組をいろいろ御紹介してきたところでございますが、やはり中長期的な観点に立ちますと、それだけでは限りがあると認識しております。
先ほどの佐川長官からの御挨拶にもありましたとおり、昨年の国税審議会におきまして、近年の環境変化を踏まえ、長期的な税務行政のあるべき姿について、国税庁としてどのように考えているのかと田近会長から問題提起を頂いたことを受けまして、当時の迫田前長官から、国税組織の将来像について整理をし、委員の皆様方にも御披露しながら対外的に公表することも含めて考えたいと回答させていただきました。
その後、一部の委員の皆様方からの御指導も賜りながら、昨年6月に国税庁として「税務行政の将来像」を取りまとめたところでございます。
この将来像では、まずICTの活用による税務手続のデジタル化、タブレットのオレンジ色の部分の左側の部分になるのですが、ICTの活用等によりまして、税務手続のデジタル化を推進しまして、税務相談や申告・納付の手続をスムーズかつスピーディにすることにより、納税者利便の向上を進めていくということが大きな柱になっております。
それから、次は右半分になるのですけれども、納税者から提出された申告書の申告内容の自動チェックなど、課税・徴収事務の効率化・高度化を進めるということが一つ。
それで、複数の税務署の内部事務や行政指導事務を集中処理するなどの業務改革を推進していく。
そして、事務運営の最適化を図っていくというのがもう一つの柱でございます。
そして、一番右端になってまいるのですが、こうした取組で創出いたしましたマンパワーも活用しながら、国際的租税回避への対応といった重点課題に的確に取り組むこととしております。
このオレンジ色の欄の下のほうに3つの事柄が書いてありますが、この内容は情報システムの高度化や外部機関の協力を前提としたものでありまして、現時点で考えられるおおむね10年後の姿をイメージしたものでございます。
この「税務行政の将来像」でお示しした方向性については、昨年の秋に開催された政府税制調査会において国税庁より説明させていただきました。
その後、取りまとめられた中間報告の中でも今後の税務手続のICT化に当たって参考とすべきものとして取り上げられているところでございます。
以上、紹介させていただきました。
それに関連するいろいろな施策の状況を御説明させていただきます。まず、現状を御説明させていただきます。
タブレットの13ページをお開けいただければと思います。
e-Taxの利用率でございます。
グリーンが法人申告の全体、ブルーがそのうちの大規模法人、それから黄色は所得税の申告でございます。参考資料で紙配付になって恐縮なのですが、諸外国と比べますと日本の電子申告の割合というのはまだ低調でありまして、国税庁としても今後ともe-Taxの普及・定着に向けた取組を強力に進めていく必要があると認識しております。
そのための施策を若干御紹介させていただきます。
タブレットの14ページをお開けいただければと思います。
これは、昨年3月の規制改革推進会議行政手続部会の取りまとめにおきまして、行政手続コストの削減というのが取り上げられました。
その重点分野として国税など9分野が設定されまして、行政手続コストを20%削減しようという方向性が示されました。ただ、国税につきましては、この行政手続コスト20%削減に代えまして、法人税及び消費税の電子申告利用率を数値目標とするということとされました。31年度末までに、大法人は電子申告の義務化を前提に利用率100%、中小法人は利用率85%といった目標が掲げられているところでございます。
これらを受けまして、昨年末に閣議決定された平成30年度の税制改正の大綱では、大法人の申告の電子申告の義務化について明記されております。
この点については、後ほど主税局から御説明があるかと思います。
それから、タブレットの15ページをお開けいただければと思います。
電子申告の普及に向けた主な取組についてでございます。
電子申告の普及促進のためには、大法人の電子申告の義務化などと併せまして、資料上段のように第三者作成書類の見直しやデータ形式の柔軟化、それから勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化やe-Taxの受付時間の更なる拡充など、納税者の利便性の向上に取り組むことが必要だと認識しております。そのような方向性で進めてまいりたいと考えております。
簡単に、主税局からの説明に先だって御紹介をさせていただきました。
次に、所得税をはじめとする個人納税者のe-Tax利用の認証の簡便化でございます。
タブレットの16ページでございます。
先ほど13ページで少し御覧いただきましたが、所得税のe-Taxの利用率は黄色の棒線ですけれども、伸び悩みという状況になっております。このような中、個人の納税者の方にもっとe-Taxを御利用いただける、新たに2つの方式を導入する予定でございます。
1つが、マイナンバーカードを利用することにより、e-TaxのID・パスワードの入力が不要になるマイナンバーカード方式でございます。
もう1つは、税務署において本人確認を行うことが前提となりますが、税務署の払い出すID・パスワードだけでe-Taxの手続が行えるID・パスワード方式でございます。
それから、この認証手続の簡便化に併せまして納税者利便向上の観点から、医療費控除やふるさと納税などから始めてまいることになりますが、スマートフォンによる電子申告を実現するための検討も順次進めているところでございます。
続きまして、タブレットの17ページ、納付手段の多様化でございます。
タブレットの左側の下のほうの欄を御覧いただきますと、窓口での現金納付というのが大変多い状況です。
金融機関、税務署窓口などで多い状況でございます。
この窓口での現金納付は、納税者の方々が窓口に赴いていただくという手間が掛かりますし、受け取る側の現金管理のコストも生じるところでございます。
諸外国では、オーストラリアのように税務署での現金納付を廃止した国もあると聞いております。
国税庁におきましては、口座振替、コンビニ納付など多様な納付手段の整備に努めてまいりました。29年1月からはインターネット上でのクレジットカード納付を新たに導入したところでございます。
右側の棒グラフを見ていただきますと、これは税金の納付ではなくて個人消費の決済手段の状況でございますけれども、このように銀色が現金取引ですが、キャッシュレス化が進んでいるところでございまして、今後とも納付手段の利便性向上というのが重要な課題であると認識しております。
タブレットの18ページに移ります。最後の柱でございます。
酒税及び酒類行政についてでございます。
国税庁が担う税務行政において、酒税及び酒類行政には他の行政にはない特徴があります。
1つ目が免許制度でございます。
酒税は、間接税として納税義務者である酒類製造者が、出荷移出した酒類の価格に織り込まれて、最終的に消費者にその負担を転嫁するという仕組みでございます。酒税の確実な徴収や消費者への円滑な転嫁を確保するという酒税の保全を図る観点から、業としての酒類の製造及び販売について免許制を採用しています。
2つ目の特徴は、この酒税の保全を図るためには税収の確保、酒類の売上が確保されるということが不可欠でございますので、酒類業の所管官庁として産業行政を担っているという点でございます。
このため、国税庁では消費者や酒類産業全体を展望した総合的な取組を行っているところでございます。
主な取組としては、資料にありますとおり、日本産酒類の振興、酒類の公正取引環境の整備、適正飲酒や環境への配慮など社会的要請への対応、酒類表示の適正化、酒類の安全性の確保と品質水準の向上に取り組んでおります。
このうち、酒類の公正な取引環境の整備につきましては、昨年6月から施行されている酒類の公正な取引に関する基準などに照らし、問題があると考えられる酒類業者に対し、取引状況等の実態調査を実施いたしまして、調査結果に基づく行政指導を行っているところでございます。
最後に、タブレットの19ページをお開けください。
日本産酒類の輸出振興に向けた国税庁の取組の資料でございます。例えば、国内外における情報発信の強化では、リオオリンピック・パラリンピックなど各国の要人やプレスが集まる機会にあわせPRブースを出展するなど情報発信を行っております。輸出環境の整備としては、日EU・EPA交渉の結果、単式蒸留焼酎の容量規制の緩和、地理的表示の相互保護を行うこととなりました。
このような取組を重ねてきた結果、平成28年の日本産酒類の全体の輸出金額は、前年比110%の430億円ということで、これは参考資料に載っておりますので、後ほど御覧いただければと思いますが、5年連続で過去最高となっております。
以上で私の説明を終わります。ありがとうございました。
会長
吉井課長、どうもありがとうございました。
今、御説明いただいた税務行政の現状と課題について、御意見、御質問があると思いますけれども、後ほど質疑の時間を設けておりますので、その際にお願いいたします。
続いて、次の議題であります「政府税制調査会における議論及び関連する平成30年度税制改革について」に入らせていただきます。
冒頭、佐川長官からの御挨拶や、先ほど吉井課長からの御説明にもありましたとおり、昨年の国税審議会で迫田さんの時ですけれども、近年のICTやデータ活用技術が進展する中で、長期的に税務行政のあるべき姿について、国税庁としてどのように考えているかという問題を提起させていただきました。
その後、一部の皆様から御意見も賜りながら国税庁として、先ほど吉井課長の説明の中にもありましたけれども、「税務行政の将来像」を取りまとめ、昨年6月に公表させていただきました。公表したというのは国税庁から公表いたしました。
さらに、昨年の秋に開催された政府税制調査会におきまして、税務手続の電子化の推進を中心とした議論の中でも、国税庁からこの「税務行政の将来像」について紹介があり、その後昨年末に平成30年度税制改正大綱の納税環境整備として取りまとめられました。
本日は、財務省主税局からこの納税環境整備の内容につきまして御説明いただく機会を設けさせていただきました。
それでは、財務省主税局、吉沢調査課長、同じく主税局の大柳企画官からこの間の御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
財務省主税局(吉沢調査課長)
ありがとうございます。
それでは、お手数ですが、タブレットの第19回国税審議会のフォルダーの中にございます資料5−1「政府税制調査会における議論及び関連する平成30年度税制改正について」をお開きいただければと思います。
会長から御紹介がありましたとおり、政府税調におきましては近年の経済社会の変化を踏まえまして、個人所得課税の在り方に加え、納税者利便の向上、あるいは適正・公平な課税の実現といった観点から、税務手続の電子化を中心に議論を行ってきておりまして、昨年11月に「経済社会の構造変化を踏まえた税制の在り方に関する中間報告A」というものを取りまとめたところでございます。
資料3ページをお開きいただければと思います。
中間報告の考え方の概要を取りまとめたものでございます。
近年、ICTが発展・普及する中で、資料の右側のほうを御覧いただきますと、民間経済活動におきましては、事業者間の取引、いわゆるBtoBあるいはBtoC取引においてICTの活用が進むだけではなくて、近年はインターネット上で商品やサービスの提供側の個人とそれから消費・利用側の個人が結びつく形での経済活動、いわゆるCtoC取引ですとかCtoB取引が拡大しております。
これによりまして、例えば、クラウドソーシングによりインターネットを通じて仕事を請け負う働き方が増加するなど、働き方の多様化が進展しているかと思います。
このような働き方の多様化に対応するため、個人所得課税の在り方を見直していく必要があり、その中で所得計算の在り方、控除方式の在り方、所得把握の在り方といったような論点が提起されております。
また、資料の左側を御覧いただきますと、企業活動におけるICTの利用が広がり、マイナンバー制度などのインフラが整備されていく中で、税務手続におきましてもICTやデータの活用を進め、全ての納税者が簡便・正確に手続を行うことができる環境を整備し、官民合わせたコストの削減、企業の生産性向上を図るといったことが、ますます重要になってきております。
その中で、報告書におきましては、個人では確定申告、年末調整がスマートフォンで完結する仕組みの整備、また法人では提出書類の見直しなどと併せまして大法人の電子申告の義務化、それから、個人・法人共通のものといたしまして、認証手続の簡便化、行政機関間のデータ連携、電子帳簿の普及といったような論点が提起されております。
この中間報告書におきましては、左側の税務手続の電子化と右側の課税制度の在り方は相互に連関するものでありまして、官民のデータのやりとりが進むことにより、様々な情報を活用した制度の設計が可能となる一方で、制度を適切に運営し、その下で国民の利便性を高めるためにも税務手続の電子化が重要であるといったような考え方が示されております。
続きまして、資料4ページ目、5ページ目はそれぞれ税務手続の電子化に係る考え方ですとか、個人所得課税の見直しに係る考え方について御紹介しているものですが、時間の関係で御説明は省略させていただきたいと思います。
後ほど、税務手続の電子化の推進につきましては、大柳企画官より補足説明をさせていただきます。
続きまして、資料の7ページをお開きいただければと思います。
平成30年度税制改正の概要でございます。
平成30年度改正におきましては、大きな柱が4つございまして、1つ目が個人所得課税の見直し、それから2つ目がデフレ脱却・経済再生に向けた取組、3つ目が経済社会の国際化・ICT化等への対応、4つ目がたばこ税の見直しといった内容になってございます。
続きまして、資料8ページから10ページ目までが個人所得課税の見直しの概要でございます。
こちらは、政府税調の中間報告の方向性に沿った改正でございまして、大きく分けて4つの改正項目があります。
1つ目が、8ページにございます給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替といった内容でございます。
それから、2つ目が、9ページ目を御覧いただきますと、給与所得控除の適正化ということで、控除額が頭打ちとなる給与収入を850万円超に引き下げると、一方で子育て世帯、介護世帯には負担増が生じないような措置を講ずるというものでございます。
続きまして、10ページ目を御覧いただきますと、3つ目の公的年金等控除の適正化というものと、それから4つ目の基礎控除の適正化といったような内容が盛り込まれております。
続きまして、資料の11ページを御覧いただきますと、ここ以降がデフレ脱却・経済再生に向けた改正でございまして、11ページ目は賃上げ・生産性向上のための税制でございます。
それから、12ページ目を御覧いただきますと、事業承継税制の拡充、それから、事業再編のための環境整備のための税制改正といった内容でございます。
それから、13ページ目が観光財源の確保、それから消費税免税制度の利便性向上、それから地方拠点強化税制の見直しといった内容でございます。
それから、14ページ目をお開きいただきますと、経済社会の国際化・ICT化等への対応といたしまして、1つは国際課税に関する制度の見直し、それから外国人の出国後の相続税納税義務の見直しといったことに加えまして、資料の一番下でございますが、納税環境整備といたしまして、政府税調での御議論を踏まえまして、大法人の電子申告の義務化と、それから所得税の確定申告・年末調整手続の電子化の推進といったような内容が盛り込まれております。
資料15ページ目はたばこ税の見直しでございます。
駆け足となりまして恐縮でございますが、私からの説明は以上です。
大柳企画官より、税務手続の電子化について補足説明させていただきたいと思います。
財務省主税局(大柳企画官)
続きまして、税務手続の電子化等につきまして補足説明をさせていただきます。
政府税調の議論、それから30年度改正案につきまして説明をさせていただきます。
資料5−2というものを御覧ください。
また別のファイルになろうかと思いますが、補足資料というものを御覧ください。
今、吉沢調査課長から説明がありましたが、政府税調ではこれまで経済社会の構造変化を踏まえ、所得課税の見直しについて議論するとともに、一昨年の秋からは、納税者利便の向上や適正・公平な課税といった観点から税務手続の見直しの議論が開始されていたところでございます。
政府全体におきましても、昨年の成長戦略においてIT技術や法人番号、マイナンバーなどを活用して行政手続の簡素化、IT化を一体的に推進し、国民、事業者の利便性向上、それから事業者、行政双方にとって効率的・効果的な制度、手続を構築すべきということとされ、また、規制改革推進会議の答申におきましては、具体的に法人税等の電子化、電子申告の利用率向上ですとか、年末調整手続の電子化、簡素化などが掲げられていたところです。
また、こうした中で先ほどから御説明がありましたとおり、国税庁においても「税務行政の将来像」が策定されていたというところでございます。
政府税調におきましては、こうしたことを踏まえ、今般、税務手続の見直しについて、主として電子化について議論が行われたというところでございます。
3ページを御覧ください。
上の囲み、少しごちゃごちゃしておりますけれども、税務手続の電子化につきましては、まず@として、働き方の多様化が進み、税務手続を行っていただく方の増加・多様化が見込まれる中で、ICTの活用などを通じて全ての納税者が簡便・正確に申告を行える納税環境を整備するという必要があるとともに、官民を含めた多様な当事者がデータをデータのまま活用・円滑にやりとりする姿を実現し、官民合わせたコスト削減と企業の生産性向上につなげるといったことがまず重要という指摘をされております。
なお、先ほどの説明にありましたとおり、税務手続の電子化の意義を課税制度の関係で言いますと、非常に密接な関係を有しておりまして、官民がデータをデータのままやりとりする環境整備することを通じて、より正確な課税情報の活用が可能となり、それによって税制、社会保障の面で個人の所得水準ですとか負担能力に応じた制度を設計することが可能となるほか、そうした制度の適正かつ効率的な運用と納税者利便を支えるというインフラとしての側面を電子化というものが有しているといったところも指摘をされているところでございます。
以上が総論でございます。
次に説明します各施策の検討に当たりましては、規制改革推進会議における行政手続の簡素化の3原則というものがございます。
まず、デジタルファースト原則、それから、必要な情報は1回だけ出すというワンスオンリー原則、そして書式・様式の統一といったものですけれども、こうしたことを踏まえつつ、納税者の側におけるデータの作成、保存、活用、提出、そして行政機関間の情報連携といった一連の流れに沿いまして、国税、地方税当局でまず実施できる施策と、実施に当たって省庁横断的な検討作業やマイナポータルの整備・活用などが必要となる施策に分けまして議論が行われたというところでございます。
具体的な施策についてですが、まず1番というところ、所得税関係でございます。
先ほどもありましたが、現在は対応できていないスマートフォンによる電子申告につきましては、国税庁において平成31年1月から対応できるように取り組むということとされております。
政府税調の中間報告におきましては、スマホが様々な手続、決済手段として活用されているということを踏まえて、今後も着実に対応していく必要があるという指摘をされているところでございます。
2点目がe-Taxの認証手続の簡素化でございます。
現在、ID・パスワードに加えまして、マイナンバーカード、それからカードリーダが必要というところでございます。これがどうもあい路になっているという指摘が多くございます。
そこで、来年、31年1月から本人確認に基づき発行されたID・パスワードのみでのe-Tax利用を可能とするというふうになっております。本報告におきましては、ICT技術の進展や情報セキュリティに係る政府方針などを踏まえて、今後とも一層の利便性向上に取り組むことが重要というふうにされております。
次に4ページでございます。
確定申告・年末調整の電子化でございます。
まず、確定申告・年末調整の電子化でございますが、現在、一番上でございますが、医療費控除の領収書を紙で管理・集計するという必要がございますけれども、今年1月から保険者の医療費通知データを活用し、簡便に医療費控除申告ができるという仕組みがスタートしたところでございます。
これにつきましては、本報告では本施策の着実な実施に向け、まず働き掛けを強化すべしという指摘がされております。
また、年末調整手続につきましては、規制改革実施計画の指摘も踏まえ、社会全体のコストの削減に資するよう、生命保険会社や銀行といった控除関係機関から被用者、そして雇用者へという情報の流れを全て電子化し、手続がオンラインで完結できるように取り組む必要があるという指摘をされております。
そして、☆印のところですけれども、将来的にはこれらの手続全体につきましてマイナポータル等において、必要な情報を一元的に確認し、確定申告・年末調整に活用できるそういう仕組みを目指すべきという指摘をされているところでございます。
次に5ページを御覧ください。
法人関係でございます。
法人関係では、電子申告の普及促進に向けて、企業側のニーズを踏まえ、e-Taxの機能改善を図るほか、提出書類の簡素化、それから電子署名の簡便化といった施策を実施しながら、大法人について電子申告を義務化すべきである。そして、中小法人については、規制改革実施計画を踏まえ、利用率を85%以上に引き上げるべく取組を強化する必要があるという指摘をされているところでございます。
そして、将来的にはICT環境を勘案しつつ、中小法人についても電子申告を義務化し、電子申告100%を目指す必要があるという指摘をされているところでございます。
それから、下の段ですけれども、法人設立手続のワンストップ化でございます。
現在、法人設立手続につきましては、下の絵にございますとおり、国・地方のそれぞれに類似の資料を提出していただいているという状況でございますけれども、事業者の手続コストを削減するという観点から、31年度には国税・地方税間で申請データの一括作成ですとか、電子的提出の一元化を可能とするよう今検討が進められております。
また、未来投資戦略2017を踏まえまして、社会保障・登記を含む全ての法人設立関係手続につきましてオンライン・ワンストップ化を実現すべく現在関係省庁間で協議が行われているというところでございます。
その他、6ページでございます。
これらのほか、個人、法人共通の施策といたしまして、ここに掲げておりますように行政機関間のデータ連携の拡大による情報提出の重複削減、ワンスオンリー化ですとか、電子帳簿の普及・促進による事業者の文書保存に係る負担の軽減、更には、納付のキャッシュレス化推進による現金納付に伴う手続負担の軽減といったことにも着実に取り組んでいく必要があるという指摘を受けておるところでございます。
7ページは今お話ししたようなことを一覧にしたものでございます。
青いほうが国税・地方税といった「税務当局」でまずはできるであろうという施策。それから、右側のほうが実施に当たり関係省庁間の協力などが必要な施策というところでございます。
今後の進め方につきましては上の囲みの中ですが、個人のプライバシーですとか情報流出リスクにも適切に対応しながら納税者利便の向上、官民全体のコスト削減に向けて、ここに掲げております工程表を踏まえまして、スピード感を持って取り組む必要があるというふうにされております。
その際、執行機関のシステム構築や体制の整備、関係民間団体との連携も重要であるという指摘をいただいております。
なお、マイナポータルにつきましては、政府として官民の複数の手続のワンストップサービスを実現するための基盤というふうに位置付けられておりまして、税務当局としてもこうした政府方針やマイナポータルの整備状況などを見ながら税務手続について一層の利便性向上策を検討していく必要があろうというふうに考えております。
続きまして、こうした中間整理を政府税調でいただいた上で、30年度改正においては税務当局として対応可能な部分から積極的な対応を実施するということとしております。
10ページでございますが、10ページは先ほどお示しした一覧表のうち30年度改正で対応することとした事項を赤字で掲げさせていただいております。
それぞれの施策を簡単に御説明いたします。法人のほうからになりますが、11ページでございます。
申告データを円滑に電子提出できる環境を整備しながら、大法人について法人税や消費税の電子申告を義務化という措置を講ずることとしております。これは、平成32年4月1日以降開始する事業年度について適用するということとしております。
次に12ページでございますが、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除に関する年末調整関係書類について電子提出を可能とする措置を講ずるというものでございます。
納税者、雇用主を含む社会全体のコストを削減する観点から、こういう保険会社、銀行、納税者、雇用主という情報の流れが基本的に電子で完結する仕組みを整備するというものでございます。
それから、配付資料にはお付けしておりませんが、所得税における控除見直しの一環としまして、個人の電子申告を推進するため、電子申告又は電子帳簿保存法に基づく記帳保存を行う青色申告者につきまして、従来と同様の65万円の青色特別控除が付与されることとされております。
次に、13ページ以降でございますが、13ページは法定調書の電子提出の推進。もともと前々年の提出枚数が1,000枚以上については電子的に提出をお願いするというものでしたけれども、今般100枚ということで基準が引き下げということでございます。
その次は、これは運用上の措置になりますけれども、ダイレクト納付の利便性向上ということで、これにより定期的な自主的予納も可能となる、自主的に定期的に予納しておこうということがこれで可能となるというものでございます。
15ページの最後でございますが、処分通知書の電子交付範囲の拡大といった施策も講じているというところでございます。
なお、資料には付けておりませんけれども、地方税におきましても地方法人2税、法人住民税や法人事業税について電子申告を義務化する。
それから、国・地方を通じた財務諸表の提出先の一元化、それからeLTAXを通じた共同収納の導入といった、そういう措置も地方税のほうで対応されるということでございます。
以上、簡単に御説明しましたが、今後とも税務手続の電子化につきましては、政府全体の電子化の方法ですとか、税制、税務行政の在り方、方向などを踏まえ、中期的な目標設定等を行った上で、税務当局が一体となって計画的かつスピード感を持って進めていく必要があろうかというふうに考えております。
以上でございます。
会長
吉沢さん、大柳さん、どうも御説明ありがとうございました。
ということで、非常に盛りだくさんでありましたけれども、国税審議会、各分科会、税理士及び酒税の分科会の最近の活動状況、それから税務行政の現状と課題、そして政府税制調査会においての議論、そして平成30年度税制改正と。その間にあって先ほど申し上げたように、また今の説明にもあったように、国税庁が昨年6月に取りまとめた税務行政の将来像が1つの重要なインプットになって、税務手続の電子化あるいは納税環境の整備が進められていると、そういう状況だと思います。
ということで、これからは全て皆様の御意見、御質問等の時間に充てたいと思います。
どの点からでも結構ですから、御自由に御発言ください。
議事進行の進め方で私のサイドなかなか見にくいので、挙手の上御発言をお願いしたいと思います。どちら様からでも結構ですから、積極的な御発言をお願いします。
中村委員
中村でございます。
今日いろいろと御説明いただき、また日頃税務行政の改善に努めていただきまして、誠にありがとうございます。
私のほうから、今、御説明いただいた点からいきますと2点ほどございまして、先ほどの資料でございましたが、政府税制改正大綱にあるようなデフレ脱却ですとか経済再生、それから経済社会の国際化・ICT化への対応が織り込まれておりまして、時宜にかなった点であろうかなというふうに思っております。
日本の企業の場合、工場で経済活動の基本がなされてきたというような歴史が長かったわけでありまして、今のデジタル化の進展で事業そのものがグローバル化してくるというこの急速なスピード感の中で、やはり国境がなくなってきているという点があろうかと思います。企業活動がグローバル化をして、会計基準も国際会計基準が広がってきておりまして、企業会計自体が、国際化が進んでいるという中で、税務は当然ながら国ごとに異なっているわけですので、業務自体が非効率になっているということは事実だと思います。
そして、私どもも企業はかなり海外の企業を買収したりしておりますので、連結決算では各国ごとの拠点で会計実務がかなり異なっているという実感を持っております。
そこで、日本で言いますと確定決算主義を採っていますので、この国際化の中で言うとかなり会計処理が税務に引っ張られているという点がございまして、例えば、資産計上するかしないかですとか、それから減価償却方法ですとか耐用年数、それから製造原価なのか一般費なのかとか、こういった点がグローバル拠点の会計処理の統一をする上で、結構実務上弊害になってきているなというふうに感じております。日本企業そのもののビジネスモデルがガラパゴス化してきているという中に、1つには、こういうような確定決算主義の問題が結構根深いなという点です。米国のように例えば確定決算主義でなくて会計処理と税務を切り離すとか、若しくは会計士が認めた会計処理は原則として税務も受け入れるなど、ICTでいろいろと効率化するというものと同時に、もう一つの垣根を超えた、税理士ではないところの知見を活用して合理化していくというようなことがあってもいいのかなというようなことを感じております。そろそろ抜本的な変革をグローバルな世界で日本がリードしていく上では、少し変革が出てきてもいいのではないかなと感じた次第でありまして、この点が1つであります。
もう1点は、行政手続の簡素化や効率化が進められておりまして、私どもも高くこれは評価・期待しているところであります。
地方税自体は、税目が非常に多くて複雑で、課税ベースでも重複をしておりまして、更に超過課税が地方自治体ごとに異なっており、統一性を欠いておりますので、申告をする段階でも標準化ができると、私どもとしては効率的な事務ができると感じております。こうした点の抜本的な見直しも御検討いただけると、ICT化の活用に更に納税側の利便性も増すのではないかと感じております。この点を私どもとしては申し上げたいと思っています。
以上です。
会長
どうしましょうか、最初の御指摘は、確定決算主義に対して企業会計、税務会計をアメリカのようにその2つのものとして考える、それが機動的だろうと。
2番目は地方税に関する、ややそれが全都道府県、市町村にそれぞれ関わって税務行政が煩雑だという御指摘ですけれども、前者のほうはどうします。国税庁の審議にどこまで馴染むか分かりませんけれども、せっかく自由に発言・検討するということで、そちらのほうで何か一言。主税局。
財務省主税局(吉沢調査課長)
何と言いますか、非常に大所高所からの御意見ということで参考にさせていただきたいと思いますけれども。
いろいろと、国際的にはOECDなどの場で課税制度の調和ですとか、あとは税務執行についてもいろいろ議論の場がありますので、そういう場も活用しながら大所高所の御意見ということで受け止めさせていただきたいと思います。
会長
地方税については、納税環境整備で大分、今回あるいはこれから便利になっていくんじゃないのですか。
財務省主税局(大柳企画官)
地方税のことについて申し上げる立場にないですけれども、少なくとも書類の重複ですとかそういったことについては、手続的な負担を緩和できるように、国税当局としても頑張っていきたいというふうに考えております。
辻山委員
せっかく会計の話で私の専門ということなので少し発言させて頂きます。
アメリカの場合には確かに確定決算主義ではないのですけれども、例えば後入先出法、これはもう御存じだと思いますけれども、会計と税をリンクさせている部分は皆無ではないのですね。
またこれ、確定決算主義の話だけではなくて、連単分離、連単を連動させるのかどうかということで、そことも密接に関わりがあって、御承知のように、ドイツとかフランスは、連結は国際会計基準を導入していますけれども、単体については国内基準で、その単体が税のほうと結びついているという、諸外国を見ても様々です。
それから、確定決算主義についてはいろいろな説がありまして、利益を出していると言いたいのだったら税金も払えということになっている。これで助かってる部分があるのでかなり議論の多いところだと思います。
単なる確定決算主義の話だけではなくて、国際会計基準の話が出てきますと、この連単分離の問題、これをどうするのかということをまず片付けないとどうにもならないのかなというふうに思いました。
中村委員
ここで会計議論するつもりはありませんが、会計と税務が切り離されていると調整はすごくしやすい。
だから、全ての税務申告がスタートは単独の決算からスタートしていいと思うのです。
その中で決算に織り込まれていないとだめですよと、減価償却の問題ですとかね、それがどうであってもスタートは当然ながら会社の決算になると思うんですけれども、全てが、申告調整があっていいんじゃないかと、そうすれば税務に引っ張られないで会計はグローバルの中で考え、申告所得は申告所得で計算される。それが申告調整に馴染まない部分があるという部分を直せば、会計は会計、税務は税務というふうになって、ビジネスモデルの考え方もかなり変わってくると、海外の会社をM&Aして感じております。
連結で日本から全部横を見て指導するとか、若しくはロンドンからグローバルを見て指示するとかいうようなことをやるときに、かなり地域によって考え方が違います。
これを、今まではM&Aをやっていなかったときはこの差に気が付かなかったのですけれども、実際やってみると、そこにかなり差が出てきて、粗利益率がものすごく高いビジネスモデルができ上がる、これがなかなか発想ができなかったのが、海外の会社を買ってみると、こういうふうなやり方でやっているんだなというようなこともありました。
グローバルで国境がかなり無くなってきたものですから、デジタル化の進展でこの辺が随分変わってきた中でいうと、何でも申告調整があっていいのじゃないかというようなことがありまして申し上げた次第であります。
会長
そのほか、特に今回、今の御質問もそれに深く関係していたわけですけれども、税務行政の電子化あるいは納税環境の整備というのが今回の重要なテーマの1つになっていますから、それに関しても御遠慮なく御意見、御質問いただければと思います。
河村委員
恐れ入ります、河村でございます。いろいろ御説明くださりありがとうございました。
私のほうからは、そこに出ている「税務行政の現状と課題」の中の課税の公平性をいかに担保していくかというところをちょっと取組をお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
資料の4ページのところに実調率の推移、先ほど御説明くださったのがあって、ずっと下がっていると。参考資料のほうにも国税庁の定員の推移とかも出ていて、財政が厳しい中で随分と定員も減らされてきている中で大変な御苦労がおありなんだろうなと思うんですけれども、これぐらい実地調査サイクルってすごいですよね、法人は30年に1回とか個人は100年に1回とか、これは生きている間にはもしかしたらめったには回ってこないのかなという感じですけれども。
こういう厳しい財政事情の中で、ただやはり公平に課税がされているということを国民みんなが思っている、そういう環境を作り出していくということがすごく大事なことなんじゃないかと思うんですけれども、その辺りどういった工夫をしてらっしゃるのかといったところを、先ほども少し御説明があったんですが、お伺いできればと思います。
もう一つ併せて御質問したいのは、ここで実調率ということで定義が、今出してくださったページに書いてあって、個人の場合には、分母が税額のある申告を行った納税者数というふうになっていますけれども、これは確定申告をした納税者数ということでいいんでしょうかね。
そこをお尋ねしたいのと、それで把握しきれるのかなというか、後のほうのページでも御説明くださっていたんですけれども、無申告への対応ということで重点的にということでもう既にお考えくださっていると思うんですけれども、先ほどCtoC取引、CtoB取引とかいろいろなことをみんなが手広くやるようになって、何に課税するか決まっているとおりに本当に課税ができているのか、申告できているのか、やはりそういうのは別にこれぐらいだったら何もしなくても大丈夫みたいよと割とこの世の中みんなに広がってしまいやすいので、そうじゃなくて、やはりきちんと決められているとおりに、課税されていれば多分みんなに広がるんですね、多分そんなことやってても、いや、実はそんなことすると税務署から手紙が来るよとかそういう世の中が作られるほうが私は望ましいと思うんですけれども。
そういうところをどう考えていらっしゃるのか、といったところをまず御質問できればと思います。
会長
課税部長
御質問、御指摘ありがとうございます。
確かに資料の4ページにありますとおり、調査の状況の指標の1つであります実調率低下傾向にあるのは事実でございます。
国税庁におきましては、できるだけ調査事務量の確保ということで先ほど来御説明しているわけですけれども、確定申告事務を含めた内部事務の効率化、これはICTの活用もありますし、いろいろな形での効率化を図ることで事務量の確保に努めているというのがまずございます。
それから、やはり先ほど総務課長からの説明にもありましたとおり、メリハリを付けるということで悪質な納税者に対しては適切な調査体制を編成して厳正な調査を実施する。
一方で、その他の納税者に対しては文書や電話での連絡などによる実地調査以外の簡易な接触を行うといった工夫によりまして、効果的・効率的な事務運営にも配意しているということでございます。
そういう意味では、この実調率というのは実際に調査にお邪魔した率でございまして、それ以外に私ども部内的な言葉で事後処理などと呼んでおりますけれども、申告をしていただき、実際に中身をチェックさせていただきまして、ちょっと添付書類が足りないなとか、数字が間違っているな、みたいなものについては、今申し上げましたような文書ですとか電話での御連絡で簡易な形で修正していただいたりといったような形でも、対応させていただいているところでございます。
いずれにいたしましても、先ほど申告件数の伸びなどに比べまして全体の定員の伸びが厳しい、あるいは定員事情、むしろここ数年減ってきてしまっているというような厳しい事情の中で、貴重な限られた人員をバランスよく配分して効率的・効果的な事務運営を行って適正な申告の確保を努めていきたいと思っております。
それから、個人の実調率の分母の部分でございますけれども、これは確定申告を行った納税者のうち、納税申告を行った納税者数でございます。
会長
河村委員
御説明ありがとうございます。
よく分かりました。
いろいろ本当に御苦労がおありで、その定員も大変な中で、5ページの資料とかを見ると実地の調査の件数は上がっていますし、追徴税額というのも上がっているし、これだけで評価できることではないとは思いますけれども、いろいろ御苦労がおありになることが、今の御説明を伺って分かりました。
ただ、今後の取組としてちょっと気になるのは、先ほどからスマートとか、スマート化とか、スマート税務行政ですか、12ページのところをいろいろ御説明くださって、いろいろな医療費の控除とかいろいろなところが電子化されてくれば、いろいろな情報が自動的に全部税務署にも集まるようになって、結果的に漏れがなくなるという意味で、すごく公平性も担保も、もちろんできると思うのですけれども、やはり、是非このスマート税務行政のところでも書いてくださっているんですけれども、私たちが納税するときにできるだけ電子化して便利に便利にと、そこだけじゃなくて、それももちろん大事なんですけれども、先ほどおっしゃられた限られたマンパワー、予算、定員の中でそんな全部調べるわけにももちろんいかないわけで、でも、やはりそういう中で効果的にやはりここはというところをピンポイントでパッと突いていただけるような、そういうところにこそ、このAIとかそういうものを活用していただける余地がないのかなというふうに思うんですね。
すごい膨大な件数やっていらして、先ほど法定調書の数を見てもこんなにたくさん紙が来るんだなと思ってびっくりしたんですけれども、本当に御苦労だと思うんですけれども、やはりそういうところでこそ、是非積極的にそういうのを使ってうまくピンポイントで割り出して、少ない人員でなさる中で効果的に見つけて、やはりこの国は公平に課税がされている国だということをみんなが思えるような、そんなような感じにしていただけるとありがたいなというふうに思います。
以上が意見でございます。
会長
並木審議官
先ほどの質問の続きのところについて、若干お答えしたいと思うんですけれども。
まず、メリハリを付けてということをする上で、7ページにあるんですけれども、その真ん中のところにございますとおり、資料の収集、活用ということをしておりまして、先ほどの法定調書も含めて4億枚もあるようなことで、そういう意味でまさに悪質な納税者かそうでないかということをまずそこで分析をして、悪いほうから限られた実調率で、実地調査で対応するというのが基本の仕組みになっております。
それで、将来的なお話ということが今あったんですけれども、まずそういう意味では資料収集自体を当然データでやるということも進めておりまして、先ほど説明の中にもあったんですけれども、法定調書を電子で出していただくその義務化の基準を、今1,000枚のところを100枚まで下げるというところまでやりまして、その情報が集まるところも電子でいただくと。
それから、国際関係につきましても本年からCRSと言いまして、共通報告基準に基づいて、外国の金融機関からも情報が来るんですけれども、その分もデータでいただくということが前提に当然なっております。
それで足元だけでも収集のところは、まずデータ化が進むわけでございます。それを分析して活用するところにつきましては、これはまだ勉強が始まったというぐらいでございますけれども、いろいろなコンピュータ会社などからそういう大量のデータを集約して分析いたしまして、いろいろな、うちで言えば悪質な納税者を抽出するような作業について、コンピュータ、いわゆるAIを活用できないかというようなことを、勉強を始めたというところでございます。将来像の世界、10年後の世界の中にもAIを選定等に活用するというようなことは当然ビジョンの中に入っておりまして、そういう作業も始めておるところでございます。
会長
他に、御意見、御質問が、もしないようでしたら、少し早めではありますけれども、これで第19回の国税審議会を閉会とさせていただきます。
今日、余りにも私も聞いていて盛りだくさん過ぎたのかなという感じで、少し聞き逃すとパッと先に行ってしまうような感じでしたけれども、御質問、御意見がございましたら御遠慮なく事務局のほうにメール等で御連絡ください。
ということで、本日はどうもありがとうございました。
これで一応閉会とさせていただきます。
――了――