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- 第18回 国税審議会 議事録
日時: |
平成29年3月14日 13時29分から14時47分 |
場所: |
国税庁第一会議室 |
出席者: |
国税審議会委員 |
田近会長 |
山田会長代理 |
石田委員 |
遠藤委員 |
小川委員 |
河村委員 |
神津委員 |
佐藤(和)委員 |
佐藤(英)委員 |
篠原委員 |
須磨委員 |
辻山委員 |
手島委員 |
橋本委員 |
福田委員 |
三村委員 |
吉村委員 |
渡辺委員 |
説明者 国税庁 |
迫田長官 |
飯塚次長 |
栗原審議官 |
山名審議官 |
川嶋課税部長 |
田中徴収部長 |
柴調査査察部長 |
吉井総務課長 |
星屋人事課長 |
田村酒税課長 |
平井国税企画官 |
国税不服審判所 |
増田所長 |
小鞠次長 |
総務課長
それでは、定刻より若干早うございますが、メンバーがそろいましたので、第18回国税審議会を開催いたします。
国税庁総務課長の吉井と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、委員の皆様方には、大変御多忙中のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございます。
本年1月付で当審議会委員の発令がございました関係上、後ほど会長をお決めいただく必要がございます。それまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。
本日は委員の過半の方々が御出席でございますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立しております。
まず、本日御出席をいただいております委員の方々を、国税審査分科会、税理士分科会、酒類分科会の順に御紹介させていただきます。
まず、石田千委員。
遠藤みどり委員。
河村小百合委員。
神津信一委員。
佐藤英明委員。
田近栄治委員。
手島麻記子委員。
山田洋委員。
吉村典久委員。
小川令持委員。
辻山栄子委員。
福田進委員。
佐藤和夫委員。
篠原成行委員。
須磨佳津江委員。
橋本佳与委員。
三村優美子委員。
渡辺哲委員。
なお、中村豊明委員、広重美希委員におかれましては、御都合により御欠席でございます。
続きまして、行政側の出席者につきまして紹介させていただきます。
迫田国税庁長官でございます。
増田国税不服審判所長でございます。
飯塚国税庁次長でございます。
小鞠国税不服審判所次長でございます。
栗原審議官でございます。
山名審議官でございます。
川嶋課税部長でございます。
田中徴収部長でございます。
柴ア調査査察部長でございます。
星屋人事課長でございます。
田村酒税課長でございます。
平井国税企画官でございます。
以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
それでは、委員の皆様方で国税審議会会長の選任をお願いしたいと存じます。国税審議会令第5条第1項により、会長は委員の皆様の互選により選任していただくこととなっております。どなたか御推薦等ございますでしょうか。
渡辺委員
これまで会長の代理をされていました田近委員が会長にふさわしいと思いますので、御推薦したいと思います。
総務課長
ありがとうございました。
ただいま田近委員を会長にとの御意見がございました。田近委員に会長をお願いするということでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
総務課長
ありがとうございました。
御異議なしということでございますので、田近委員に会長をお願いしたいと存じます。それでは、田近会長には会長席にお移りいただければと存じます。
では、会長から一言御挨拶いただき、その後に議事を取り進めていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
会長
今、皆さんから推薦していただきました田近です。よろしくお願いします。
これまで私は税や社会保障、そして地方財政など幅広く研究してまいりました。この税の執行ではマイナンバーを含めたICTの活用、そして経済のグローバル化の中での資金移動への対応等、重要な問題が山積していると思います。皆さんの御意見をしっかり踏まえて議論を重ねてまいりたいと思います。よろしくお願いします。
それでは国税審議会令第5条第3項により、会長がその職務を代理する委員をあらかじめ指名することになっておりますので、会長代理の指名を行いたいと思います。山田洋委員にお願いしたいと思いますけれども、山田委員、いかがでしょうか。
山田委員
山田でございます。御指名でございますので、務めさせていただきます。
会長
ありがとうございました。よろしくお願いします。
それでは、これから本日の議題に入りますけれども、その前に迫田長官より御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。
国税庁長官
改めまして、国税庁長官の迫田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
国税審議会の開催に当たり、一言お話をさせていただきたいと思います。まずは、委員の皆様方、大変御多忙のところ、またお足元の悪い中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。感謝申し上げます。また、今回の委員の就任に際しましては、快くお引き受けをいただきました。この点も重ねて御礼を申し上げます。
国税審議会では税理士業務の適正な運営、酒類業の健全な発達、国税当局が行います行政処分、あるいは不服審査に関わる事項といった大変重要な事項を御審議いただくことになるわけでございます。是非今後の御審議の際には、忌憚のない御意見をお寄せいただきまして、いろいろと御指導いただきたいと改めて思うわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私ども国税組織のミッションについては、適正・公平な課税と徴収というような言い方や、あるいは納税者の自発的な納税義務履行を適正かつ円滑に実現するといったような言い方もするわけでございますが、こうした私どものミッションというのは、いつの時代になっても変わることがないわけであります。一方、こうした変わることのないミッションを確実に達成していくためには、経済社会の変化に適切に対応して我々自身が変わっていかなくてはいけない部分があると、常に私どもは考えているわけでございます。
ただいまの田近会長のお話にありましたように、例えばICT化であるとか、国際化の進展といったような経済社会の変化に我々が遅れることなく、先ほど申し上げたようなミッションを達成していくことが、何より大切であると思っておりまして、この点からもいろいろな形で御指導いただければと思っているわけでございます。
若干、最近の税務行政について申し上げますと、まず足元ではまさに確定申告の時期でございまして、明日が最終日になります。今日、明日と現場の税務署では大変な繁忙を極める時期になっています。私も確定申告期間になりまして、いろいろな局・署に足を運びまして、視察をしてまいりましたが、これまでのところ、確定申告事務はおおむね順調に推移をしていると思っています。
特に今年の確定申告は、マイナンバーを申告書に記載していただく、その本格化の初年度でございましたので、その点を非常に私どもは注目をしていました。私が現場でいろいろと聞いてみた限りにおいては、相当多くの納税者の方にきちんとマイナンバーを書いていただいているというふうに感じました。大変ありがたいことだと思っています。
是非、引き続き、社会保障・税の観点での国民生活のインフラのようなものでありますので、こうしたマイナンバー制度が今まで以上に定着をしていくように、普及・啓発に我々も取り組んでいきたいと思います。また、我々自身、その番号の利活用機関という位置づけもありますので、こうした点でもいろいろな意味での活用を図っていきたいと考えています。
それから、もう1点申し上げたいのは、いわゆる経済社会の国際化が言われて久しいわけですが、我々の税務行政についても、大きな変化が生じています。1年近く前に、いわゆるパナマ文書の公開がありまして、まさに国際的な租税回避といったものが、大きな国民の関心を呼んだということも事実あるわけでございます。
我々はややもすると、先ほど申し上げた適正・公平な課税を国内の課題として捉えがちであったというのが、今までの通弊であったかと思いますが、これだけ経済社会が国際化をして、まさに国民の関心がそういうところまで広がっているということですと、我々自身が国際的な動きも視野に入れた適正・公平な課税を考えていかざるを得ないという立場にあるわけであります。
そういう意味で、昨年の10月、国際戦略トータルプランを国税庁として取りまとめて公表したわけであります。これは国際課税に我々はどう取り組んでいるかという現状と、今後こういう方向でやりたいということを、改めて整理をして公表したものでございます。これに基づいて、国際課税の問題に我々自身、積極的に対応して、国民の信頼を勝ち取っていきたいというふうに思っています。
いずれにしましても、税務行政を取り巻く環境が大変大きく変化をしているわけであります。伺いますと、税制調査会でも、納税実務等をめぐる近年の環境変化への対応についてということで、税務手続の利便性の向上、あるいは適正・公平な課税の実現といったようなものに向けての議論が、まさに始まっているわけであります。
私ども、先ほど申し上げましたけれども、そういった環境の変化に遅れることなく、適切に対応していって、今まで以上にクオリティーの高い仕事をすることで、国民の信頼を勝ち取っていきたいと思っているわけでございます。是非私どもの基本的な考え方を御理解の上、是非こうした国税審議会の場でも、幅広い見地からいろいろな御指導をいただきまして、いろいろな形での御意見も頂戴したいと思っております。是非よろしくお願いしたいと思っております。
以上であります。
会長
迫田長官、御挨拶、ありがとうございました。
それでは、議事次第に従い、進行していきたいと思います。本日の会議議事要旨及び議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項に則り、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第公表させていただきたいと思います。
なお、議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思います。議事要旨の内容につきましては、会長一任ということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
会長
加えて、明日15日になりますけれども、事務局から情報発信の一環として、審議会本会の概要を発言者名を伏せた形で、記者クラブでブリーフィングを行うこととしておりますが、これも御異議ありますか。よろしいですね。
(「異議なし」の声あり)
会長
では、国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況、これが1つのテーマです。次に税務行政の現状と課題の各議題について、事務局から一通り説明をいただいた後、御質問または御意見をお伺いしたいと思います。
それでは、事務局からこの国税審議会の概要及び各分科会の活動状況、続いて税務行政の現状と課題の御説明をお願いします。
国税企画官
国税企画官の平井でございます。
それでは、私から国税審議会の概要と、3つの分科会のうち国税審査分科会・税理士分科会の活動状況につきまして、お手元の資料3、国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況に基づき、御説明をさせていただきます。
再任の委員の先生方におかれましては、既に御承知の内容かと思いますが、どうか御容赦のほど、よろしくお願いいたします。
まず、1ページ、国税審議会の概要について御説明申し上げます。国税審議会は平成13年に3つありました審議会を統合して発足をいたしました。本審議会の下に国税審査分科会、税理士分科会、酒類分科会の3つの分科会が設置されております。
本審議会の所掌事務は、2番、所掌事務に記載のとおりでございます。前回は一番下の3番のとおり、平成28年3月に開催をいたしました。
次に2ページをお開きください。国税審査分科会は国税不服審判所長が国税庁長官通達と異なる法令解釈による裁決を行う場合、また、法令解釈の重要な先例となる裁決を行う場合において、国税庁長官が国税不服審判所長の意見を相当と認めない場合等に審議を行うこととされております。
国税審議会に諮問される場合の流れは、フロー図に掲げているとおりでございます。国税審査分科会は、前回は平成27年3月に開催をいたしました。
続きまして、3ページを御覧ください。税理士分科会は、税理士試験の執行及び税理士に対する懲戒処分等の審議を行うこととされております。
最近の活動状況といたしましては、4ページに記載のとおり、平成28年3月の国税審議会以降、5回の分科会を開催しております。税理士試験関係で3回、税理士の懲戒処分関係で2回開催をいたしました。税理士試験関係では、試験問題、試験の実施結果、指定研修の実施結果などについて御審議をいただきました。また、税理士の懲戒処分関係では、懲戒処分等の可否及び処分内容について御審議をいただきました。
私からは以上です。
酒税課長
引き続きまして、酒類分科会の活動状況につきましては、私、酒税課長の田村より説明させていただきます。同じ資料3の5ページを御覧いただきたいと存じます。
酒類分科会におきましては、酒税の保全のために酒類業者に対して命令を行う場合、酒類の表示基準等について制定を行う場合、さらには、エネルギーや環境関連の法律に基づきまして、酒類業者に命令を行う場合などにつきまして、審議を行うこととされております。
最近の活動状況、開催状況でございますけれども、前回の分科会は昨年12月に開催されております。酒類の公正な取引の基準を定める件につきまして、御審議いただいているところでございます。
簡単ではございますけれども、以上でございます。
総務課長
では、続きまして、税務行政の現状と課題について、私から説明させていただきます。タブレットで御説明させていただきます。使い方を少し説明させていただきますと、一番上の欄に29分の1というのがあると思います。それで、下の矢印にいくとページの数が増えていくということになりますので、29分の何ページでページを御紹介させていただければと思います。
では、目次の29分の2ページをあけていただければと思います。
まず、1つの柱としては、税務行政の現状ということでございます。それから、次の柱といたしまして、我々が取り組まなければいけない新しい課題として、国際課税・富裕層への対応がある。その一方で、社会保障・マイナンバー制度を活用したり、中長期的な課題への対応、これは今いる国税庁のマンパワーの中で事務の合理化を図っていく文脈の課題でございます。それから、最後に酒税及び酒類行政という柱立てになっております。
次に3ページの国税庁の任務ということでございます。内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達、税理士業務の適正な運営の確保を図ることを任務としております。これを踏まえまして、国税庁の使命でございますが、納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現するということでございます。この使命を果たしていくためには、納税環境の整備と適正かつ公平な税務行政の推進というのが両立することが、大変重要だと思っております。
次に4ページの国税庁の機構についてでございます。国税庁は全国に524の税務署を設置して業務を展開しています。そして、この地域を統括する地域本部としての機能を果たしているのが、全国に12ある国税局、沖縄については国税事務所です。そして、国税庁はこれらの組織全体のヘッドクオーターとしての役割を担っています。
次に、29分の5ページをおあけください。国税庁の定員の推移です。赤の棒グラフが国税庁の定員を示しています。国税庁の定員は平成元年度に消費税が導入され、また、4年度には地価税が導入され、平成9年度がピークになり、定員は5万7,202名でした。その後、政府全体の方針として、定員削減が示されて実施してきたところでございまして、国税庁においても平成18年度までの間に、9年間に1,000人を超える定員が減少しました。
一方、その後平成19年度から23年度までは経済取引の国際化・広域化・ICT化、それから不正手口の巧妙化などによりまして、税務行政が一層複雑化・困難化しているということで、定員が5年間で100名ほど増加したところでございます。しかしながら、その後厳しい行財政事情によりまして、24年度からは再び減少に転じました。28年度までの5年間に597名の減少ということで、この棒グラフに記載のとおりです。
一方、現在、国会で御審議いただいている予算案、29年度予算案の定員につきましては、グラフ上はございませんけれども、国際的な租税回避への対応や、富裕層・海外取引を行っている法人などの税務コンプライアンスの維持・向上のための体制整備を、いろいろ訴えかけましたところ、6年ぶりに1名の純増員となったところでございます。増加要因を申し上げますと、こうした新しい所要で1,059人の増員。一方で、システムなどの合理化を進めることによる定員削減が1,058名ということでございます。
では、業務量を指し示すようなデータを少し、御紹介させていただければと思います。タブレットの29分の6ページをおあけください。所得税の申告件数です。平成11年以降2,000万件を超えまして、20年には過去最高の2,369万件ということでございます。その後、23年分からほぼ横ばいで推移しまして、27年分の申告件数は2,151万件で、平成元年と比べると約1.3倍ということでございます。
そのうち、3つの色塗りがしてありますが、真ん中のピンク色が還付申告です。1,247万件ということで、半分以上を占めています。また、元年と比べると1.9倍です。自宅から郵送、またはe-Taxをされる方の件数もこの中に入っています。一方で、税務署に相談に来られる方、来署者ベースで見ると、約7割が還付申告の方となっています。
次に、タブレットの29分の7ページです。相続税の申告件数の推移です。25年度税制改正によりまして、27年1月の相続等から基礎控除額が引き下げられました。改正前は5,000万円プラス1,000万円掛ける法定相続人数となりますが、3,000万円プラス600万円掛ける法定相続人の人数、つまり5分の3に引き下げたということになりますので、その分課税となる方が多くなるということでございます。
27年分については、この棒グラフのとおり、課税対象となった被相続人の件数が約10万3,000人でして、平成26年分の約5万6,000件の1.8倍ということです。
次に、29分の8ページの法人数の推移です。平成元年と比較いたしますと1.3倍に増えて、現状305万法人です。その間、商法の改正で、会社設立手続の緩和がありまして、法人数が増えてきました。申告件数が約280万件、そのうち黒字法人が91万件、32.1%ということです。
それから、法人数も増加していますが、その中でも連結法人の数が増加しているということの資料が、29分の9ページの連結法人のグラフです。これは国税局で連結法人を多く所管しておりますので、その状況をまとめたものです。原則として資本金が1億円以上の法人の姿と思っていただければと思います。連結法人は、平成14年度に制度が創設して以来、徐々に増えてきています。グラフの真ん中に青い点線がありますが、平成22年度に税制改正が行われまして、ちょっと技術的な話で恐縮ですが、連結子法人の欠損金の持ち込み制限が緩和されたことなどによりまして、連結納税制度を採用されるグループ企業が増えてきたということでございます。平成27年度末には、国税局で所管する法人の約3割を超えております。
連結法人に対する調査は、連結グループ内での複数の法人を国税局や税務署をまたがって調査する必要があります。また、複数の法人の所得金額を加減算するという制度ですので、単体の法人に対する調査に比べまして、関係部署との調整に手間暇がかかることとなります。例えば、グループ内の1社の所得金額に増減がありますと、グループ内の他の法人の所得計算に影響を及ぼすので、全てやり直す必要があり、その意味で事務量がかかるということでございます。
それから、29分の10ページ、租税滞納の状況でございます。平成27年度末における滞納整理中の額の合計は、9,774億円で、平成11年度以降17年連続で減少しています。
次に、29分の11ページをおあけください。実地調査率の推移という折れ線グラフです。実地調査率とは、1年間に実地調査をした件数を納税者数、または法人税については法人数で除したものです。青の折れ線グラフが法人実調率、それから、赤っぽい色が個人の実地調査率です。平成元年と比較しまして、法人・個人とも半分以下に低下しています。法人につきましては、元年が8.5%、それが27年には3.1%。それから、個人については元年が2.3%、それが27年では1.1%です。
これは申告件数が増大してきているということ、対象が増えているということ、それから、それに伴う業務量の増加に加えまして、経済取引の国際化・高度化による調査・徴収事務の困難・複雑化、税務調査手続の法定化などによる事務量の増加も影響していると考えております。
次に、29分の12ページにお移りください。いわば新しい課題ということで、2つ目の柱に入ってまいります。国際課税及び富裕層への対応です。いわゆるパナマ文書について御紹介させていただきます。
先ほど迫田長官の御挨拶にもありましたとおり、去年の4月にいわゆるパナマ文書を国際調査報道ジャーナリスト連合が入手し、その一部を公表いたしました。さらに、昨年の5月には、20万社以上のオフショア金融センターに設立された法人等の情報を追加的に公表したところでございます。このパナマ文書の流出、公表によりまして、国際的な租税回避や脱税、マネーロンダリングなどの問題が浮き彫りになったところでございます。
国税庁といたしましては、国際的な租税回避に対処するため、BEPSプロジェクトや情報交換といった国際的な取組を、各国と連携して進めているところでございます。それから、G20やOECDにおいて、税務当局間で非居住者に係る金融口座情報を自動的に交換することの実施が合意されていますが、日本におきましても、金融機関から非居住者の口座情報を報告させるための税制改正が行われているところであり、2018年に実施される初回の情報交換に向けて、国税庁でも準備作業を行っています。
次に、29分の13ページをおあけください。国際的な租税回避をめぐりましては、こうしていろいろ動きがあるものですから、これも先ほど迫田長官の御挨拶にありましたとおり、国税庁では、国際課税の取組の現状と今後の方向性につきまして、昨年の10月25日に国際戦略トータルプランを公表したところでございます。
柱立てといたしましては3つでございます。1つ目は情報リソースの充実ということでございます。国税庁では外国への送金に関して、金融機関から提出される資料である国外送金等調書や、条約による外国との情報交換による情報など、あらゆる機会を通じて情報交換を図っているところでございます。
2つ目は、調査マンパワーの充実です。それから、3つ目はグローバルネットワークの強化です。先ほどもお話ししましたが、条約による外国との情報交換を実施していくほか、OECDなどにおける取組にも積極的に参加をしています。
それから、29分の14ページ、BEPSプロジェクトです。BEPSプロジェクトとは、多国籍企業がその活動実態と各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用することで、課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題に対処するため、OECDに2012年に立ち上げられたところでございます。
現在、最終報告書で勧告された内容につきまして、各国で法整備、租税条約の改正作業など、勧告の実施に努めているところです。順次その実施状況のモニタリングが行われるところです。国税庁といたしましても必要な対応を確実に実施して、引き続き国際的な議論に積極的に参加してまいりたいと考えています。
次に、29分の15ページにお移りください。富裕層への対応です。いわゆる富裕層というのは増加傾向にあるということで、少しデータを御紹介させていただきます。
平成23年から27年にかけて申告された所得金額が5億円超の方というのは、731名から1,384名へ増加しています。それから、日本銀行調査統計局の資金循環勘定によりますと、家計部門における対外証券投資金額は、23年の15.5兆円から27年の19.9兆円ということで、このデータを見ましても、家計からも継続的な対外投資が行われていることが想定されます。
このように、いわゆる富裕層における対外証券投資が増加している状況にあると想像できるわけです。
その一方で、こうした個人保有資産や対外投資につきましては、その実態の把握が困難な面もありまして、場合によりましては、租税回避の対象となることがあり得るわけです。
29分の16ページに移りまして、国税庁としての対応です。1つ目は、富裕層に係る情報収集機能を強化する観点から、東京・大阪・名古屋国税局に富裕層プロジェクトチームを設置したところです。これにより情報収集・分析とか調査事案の企画などに取り組んでいるところでありまして、今年の7月以降は全国に拡大していくことを考えています。
それから、下の方の欄には、制度上の対応が書かれています。既に施行済みの制度を3つほど紹介させていただきますと、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例です。1億円以上の有価証券等を保有する場合には、国外転出をされる方について、転出時に有価証券等の譲渡等をしたものとみなして、未実現の含み益に課税するものです。
それから、国外財産調書です。年末時点において5,000万円を超える国外財産を保有する個人について、その保有する国外財産に係る調書の提出を求めるものです。
最後に、財産債務調書でございます。所得2,000万円を超え、年末時点で3億円以上の財産または1億円以上の有価証券等を保有する個人につきまして、その保有する財産及び債務の調書の提出を求めるというものです。
それから次、タブレットの29分の17ページです。相互協議についてです。企業が海外進出を図る場合に、この米印で「移転価格課税とは」と書いてありますけれども、ここに書いてあるような移転価格課税などが内外において受けることがございます。その場合には国際的な二重課税が生じますので、国内制度だけでは解決するのが難しくなるケースがございます。
国税庁では移転価格課税によりまして、国際的な二重課税が生じて納税者から申立てがあった場合や、納税者が二国間の事前確認を申し出た場合には、外国税務当局との相互協議を通じて、問題の解決を図っています。企業の海外進出や投資交流の促進など、あるいはその予見可能性を高めていくなどが大切な論点だというふうに考えております。
次に、29分の18ページです。事務の合理化の側面に光を当てた紹介をさせていただければと思います。1つ目が、マイナンバー制度を活用した効率的な資料情報の活用です。マイナンバーの利用事務実施者としての立場でございます。28年1月から制度が導入されまして、本年より番号の本格的な記載がスタートしています。利活用機関としてこの番号制度を用いることによりまして、いわゆる法定調書や申告書の突合を効率的・正確に行う、所得把握の効率化・適正化を目指しています。
次の29分の19ページは、マイナンバーを使った場合の納税者利便向上の一例ですが、申告時の添付書類、住民票の省略のようなことが可能になるということでございます。
次に、29分の20ページに進めさせてください。マイナポータルの活用です。マイナポータルは政府が中心となって運営するオンラインサービスでございまして、行政からのお知らせが確認できるポータルサイトです。1月16日からその運用が開始されまして、国税庁においてはe-Taxとの間の認証連携がスタートしています。現在、関係省庁との間では、医療費の通知を医療費控除の申告に手軽に利用できる仕組みの導入に向けて、調整を行っているところです。
今後、各行政機関からのマイナポータル上の申告に必要な情報が掲載されるようになりますと、申告手続が便利になるということでございまして、マイナンバー制度の円滑な導入、それから、マイナポータルの利用拡大により、e-Taxの利用も増大していくということでございます。国税分野のIT化も進めていくということでございます。
29分の21ページの国税組織の中長期的課題への対応です。先ほど申し上げたように、国税組織の職員数が減少傾向にある中、調査・徴収事務は困難化している状況です。こうした中、内部事務の効率化により調査・徴収事務量を確保するとともに、調査・徴収事務の効率化・高度化に取り組んでいくことが重要であると考えており、e-Taxの更なる普及や地方税当局とのデータ連携、それから、内部事務や滞納整理事務の署を越えて集中化する施策を実施しています。
次の29分の22ページのe-Taxの利用率の推移ですが、オレンジの線が法人税、グリーンの線が所得税です。制度導入以来、利用・普及に努めてきたところでして、法人税が75.4%、所得税が52.1%です。
次に、29分の23ページ、ICTやデータの更なる活用を進めていく必要性があるということでございます。民間においてもICTやデータを活用した取組が行われておりますが、国税においても利用可能な電子データの拡充、データ分析・活用を可能とするシステムの構築に取り組んでまいりまして、納税者手続・事務処理のICT化を進めていくということが大事だと思っております。納税者サービスの向上が図られますとともに、調査・徴収事務の効率化・高度化が実現し、限られたマンパワーを大口・悪質事案へ重点的に投入することで、適正・公平な課税の実現を行っていきたいと考えております。
それから、24ページの調査事務のメリハリ付けといった施策です。24年7月から税務に関するコーポレートガバナンスが良好で、調査の必要度が低いと認められる大企業について、税務リスクの高い取引を自主的に当局に開示していただき、その適正処理を確認させていただくことを条件に、調査の間隔を延長する試行をしておりました。昨年の7月から本格実施を開始しております。企業の税務調査への負担を軽減するとともに、当局といたしましても、調査事務量をより調査の必要度が高い法人に重点配分することが可能となる取組です。
それから、25ページの納付手段の多様化ということでございます。国税庁では納付手段を多様化することにより、納税者の方々が納付しやすい環境の整備に努めていまして、口座振替納付から始まりまして、e-Taxにおけるダイレクト納付など、さまざまな納付手段の導入に努めてきたところです。一番新しい取組について紹介いたしますと、インターネット上でのクレジットカード納付を導入したところです。クレジットカードをインターネットで御利用されている方にとっては、馴染みもある手段であり、事前申請手続も必要ございませんので、納税者利便の向上に寄与するものと考えております。
それから、29分の26ページに移ります。今度は最後のテーマの酒税及び酒類行政です。他の分野にない特徴がこの分野にはございまして、1つ目が免許制度です。酒税の保全を図るという観点から、酒類の製造及び販売業について免許制度を採用しています。
2つ目の特徴といたしましては、所管官庁として産業行政を担っているということです。酒類業の健全な発達を図るということでございまして、日本産酒類の振興、酒類の公正な取引の環境整備、適正飲酒や環境への配慮など、社会的な要請への対応などの取組を行っています。
次に、29分の27ページの酒類の課税数量の推移を示したものです。酒類製造場から出荷された酒類の数量は平成11年をピークに減少ということでございます。
特に、そのうちビールの占める割合は、平成6年は74%でしたが、27年は31%ということでございます。一方、発泡酒やいわゆる第三のビールについては、その合計値は増加しています。その結果、ビール・発泡酒・第三のビールといったビール系飲料全体の課税数量は、ほぼ横ばいというか、さほどの減少にはなっていません。
それから、清酒につきましては、課税数量は近年は横ばいですが、少しさかのぼって10年前と比べますと、24%の減少になっております。
タブレットの29分の28ページ、日本産酒類の輸出、産業行政の取組ということでございまして、日本産酒類の輸出促進に向けた取組です。国税庁の取組が幾つか書いてありますが、情報発信の強化としましては、伊勢志摩サミットやリオオリンピック・パラリンピックなど、各国要人やプレスが集まる場を活用して、PRブースを出展するとか、国税庁の職員を派遣して、情報発信・PRを行っています。
最後に、29分の29ページ、日本産酒類の輸出動向について御紹介させていただければと存じます。酒類全体の輸出金額が棒グラフで、数量が折れ線グラフです。輸出金額は28年は日本産酒類全体で見ますと、対前年比110.2%の約430億円ということで過去最高となっております。
ちょっと時間帯がオーバーしまして、また、雑駁な説明になりまして申し訳ありませんが、以上でございます。
会長
ありがとうございました。
総務課長から、その前に企画官から、国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況、そして、今日のメインテーマの1つである税務行政の現状と課題について今、説明いただきました。
これからいろいろ議論いただきますけれども、このスライドの目次を出してくれますか、2ページ。御説明いただいたのは最近の税務行政、そして国際課税・富裕層への対応、それから、社会保障・税番号(マイナンバー)の制度、そして中長期的課題、そして最後は酒税ということで、包括的な説明をいただきました。
時間は比較的たっぷりとってありますので、せっかくの機会ですから、どんな論点でも結構ですから、是非御意見、御質問を承りたいと思います。どんどん発言いただければと思います。
吉村委員
吉村です。お答えいただけるかどうか、ちょっと現段階ではまだわからないですけれども、OECDでMLI(多数国間協定)に対する日本の税務当局の今後の方針というのはどうなるのかということを、是非伺いたいですね。MLIが採用されれば、既存の租税条約が書きかえられる可能性がありますし、そのことによって、税務の実際の課税実務に大きな影響があると思うんですけれども、日本の税務当局のMLIに対する方針といいますか、分かる範囲で結構、あるいは開示できる範囲で結構ですので、誰かお分かりでしたら、是非お教え願えればありがたく存じます。
栗原審議官
MLIは、BEPSの行動15に入っておりまして、委員御案内のように、昨年、文面には合意しまして、今年の6月に署名式を開催しようということで、今、これに参加している国は100を少し超えるオーダーになっておりますが、その中から6月に署名する国が選ばれます。
基本的にこれは、今、世界で租税条約は約3,000本以上あると言われている中で、それを二国間の協議でやっておりますと非効率なので、BEPSの行動計画、特にミニマムスタンダードと言われております租税条約の内容に係る行動6とか、あるいは行動5にあります有害税制への対応、あるいは相互協議についての行動14、それから国別報告書については行動13、この4つがミニマムスタンダードですけれども、このうちの行動6の濫用防止についての租税条約のパーツなどを、一括してこれで入れ込みつつ、ただ、さはさりながら、二国間のネットワークも残っておりますので、この国との間ではこの部分を改正というのを、同時に一括してやっていく、そういうふうに承知をしております。
それで、日本の目から見ますと、既にBEPSの義務的な部分も、基本的にはもう今の租税条約ポリシーとなっておりますので、むしろ他の国との、今回BEPSに参加しまして、ミニマムなスタンダードを実施していこうという国との相場観を合わせていくということでございます。私自身の認識といたしましては、恐らく日本にとっては、今やっていることがより世界とグローバルにやっていけるということであって、日本自身として今回のMLIで何か新しいことをやるというふうな理解はしていない状況でございます。
ただ、いずれにせよ多数、日本も100ほどの国が対象になる租税条約のネットワークを持っていますので、それぞれ相手が変わっていくということでありますので、これからその変更後、もちろん署名後、国会の承認を経ていくというプロセスがありますけれども、やはり実際これが実行される場合には、租税条約の内容がいろいろな国との関係でよりモダンになる、あるいはBEPSを踏まえたものになるということなので、実務レベルでもきっちりとそしゃくをしていかないといけないなというものだと思っております。
吉村委員
アメリカは入らないというそうなんですけれども、つまりヨーロッパ諸国との関係で、日本の租税条約のレベルが同じになっていく、そういうことですかね。
さらにもう1つ言うと、日本はコンソリデートバージョンを作るんでしょうか。それとも、それは全く作らず、MLIと既存の租税条約というのはそのまま存置をして、そして、それぞれ読みかえていく、そういう方針なんでしょうか。
栗原審議官
そこは主税局が今、具体的に検討していると思いますので、私の方からはちょっと不正確なお答えは差し控えたいと思います。
会長
辻山委員
せっかく御指名いただきましたので。
今日、先ほど見せていただいた資料の中で、相続税の申告件数の推移というところがありまして、平成26年分と比較して、かなり跳ね上がっているのを見てとれるわけですけれども、まず、徴税の現場の職員の方の対応がどうなっているのかということ。それから、更に跳ね上がったときに足元、オリンピックを控えて地価等が上がっていて、都心の一戸建てなんかも、かなり価格が上がっているというふうに承知しているんですけれども、この辺の納税者の方の重税感というんですか、その辺に関する感触がもし分かれば、教えていただきたいと思います。
会長
課税部長
今、2点お尋ねがあったと思います。それで、1つ目の相続税の申告件数が飛躍的に増えていることに対し、現場がどう対応しているかということでございますけれども、現場の定員がそれに見合うだけ増えているかというと、必ずしもそういう現状ではないというのは、先ほど総務課長がお話ししたとおりでございます。
そこで、まずは納税者の方の意識を高めてもらおうということで、国税庁のホームページに相続税の特集ページを開設しまして、相続税の仕組みを分かりやすく解説した「相続税のあらまし」でありますとか、相続した財産が基礎控除額を超えなければ申告義務がありませんけれども、基礎控除額を超えると申告義務が出てくるということで、簡単に申告義務があるかないかを判定できる「相続税の申告要否判定コーナー」というものも作りまして、それでとりあえずは納税者の方に、相続した財産に相続税がかかるかどうかというのを判断していただくというような仕組みを設けております。また、当然のことながら、一般的な広報も、機会を捉えてやっているということでございます。
それで、申告件数が増えて実際問題として、税務調査などにどういう影響が出てくるのかというお話でございますけれども、これは申告が出てきたばかりでございますので、これから対応を検討していきたいと思っております。
定員が増えていない中で、どれだけ適正・公平課税というのを実現していくかという課題がございます。申告件数が倍近く増えているわけですが、そういった中でも少額とはいえ、無申告の方に対応しないわけにもいきませんので、申告をしていない方についてどういうふうに申告してもらうかといったことも含めて、今後は検討課題になってこようかと思っております。
2つ目の、納税者の方の重税感という点についてですが、まだ27年分の相続税を納税した方がどういうことをおっしゃっているか、把握しておりませんので、何とも正確なことは申し上げ難いかなというふうに思っております。
会長
神津委員
今のに関連しまして、実務家の立場から大分増えたということは実感として分かりますけれども、私ども実務をやっている中で、小規模宅地等を利用すれば税金はかからないという申告が、大分多いんですね。その割合がもしお分かりになったら、ちょっと教えていただきたいなと思いますけれども。
課税部長
すみません、今、手元にデータがありませんけれども、小規模宅地等の特例を適用したことによって、税金が発生しなくなった件数がどのぐらいあるかということでございますか。データはありますので、もし分かりましたら。
会長
ほかに。せっかくの機会なのでどんなことでも。
辻山さん。
辻山委員
今のことに関係して、先ほど質問した趣旨が少し分かりづらかったと思いますが、今回、基礎控除額が低くなって相続税が変わりまして、これそのものに対する異論はないのですけれども、現場で今まで起こらなかったことというのは当然予想されて、例えば家を出ていくとか、そういう、ただ、きちんとした知識があれば小規模宅地等の特例とかを使って、かなり救済されると思うのですけれども、その辺の納税者の受けとめ方というのがもし分かればと思って御質問したのですけれども、それはちょっとまだ分からないということで、今後注視していくというか、慎重に対応していくということだと思うのですけれども、ちょっとその辺の感想も含めて御質問申し上げました。
課税部長
我々は執行官庁でございますので、現行制度の下で、確実に適正・公平な課税を実現していかなければいけないし、適正な申告をしていただかなければいけないということはございます。
そういった中で今おっしゃった点についてですが、例えば基礎控除額が引き下がって、それで都心に土地を持っている方々が、今までなら課税にならなかったけれども、課税になってくるという方々がおそらく出てくるであろう、そういう方々が家を出ていかなければいけない、納税資金を捻出するために家を売るとか、そういったことが起こるであろう、というような御心配かと思います。例えば小規模宅地等の特例を適用するなどして、推測ベースの話で恐縮ですけれども、そういった方々の負担が軽減される仕組みになっているのではないかというふうには考えております。
いずれにしても申し訳ありませんけれども、今は確たる、どういった納税者の方々が重税感を持っているとか、御不満をお持ちかというのは把握しておりませんので、そこは御容赦いただきたいと思います。
小川委員
相続税に関してですが、データ表で課税対象被相続人数とありますが、これは実際に申告をされた数でしょうか。皆さん、先ほどおっしゃったように、無申告のおそれというのがあるわけですが、課税対象として把握された中で、これだけきちんと申告をされているということと受けとめればよろしいのか。
課税部長
約10万3,000人という数字は、相続税額のある申告書に係る被相続人の数ということでございます。約129万人の方がお亡くなりになって、それが被相続人になられるわけですけれども、そうした方々のうち、相続税額のある申告書が出てきた人が約10万3,000人であったということでございます。
小川委員
ありがとうございます。ということは、さらに無申告もありうるということですね。
課税部長
この数字がどうかということは別にいたしまして、これまでの経験からいいますと、やはり申告義務がある方で無申告の方という方はいらっしゃるものですから、今後の調査の過程でこれは増えていく可能性はございます。
小川委員
やはり小規模宅地等の特例を使うと納税額がゼロになる方が結構多いんですよね。そうすると、ゼロなので申告しなくていいのではないかと誤解をしてしまっている。
また、納税額があると認識される方は申告されるんですが、今まで申告が必要でなかったレベルの方が、申告が必要かもしれないと認識を切替えていただけるかと、非常に我々も心配していたんですが、現実には申告してみえるんだなと、少し安心をしたんですけれどもね。
課税部長
今の点に関しまして、若干データ的に補足いたしますと、約10万3,000人の方に係る相続税額のある申告書が出てきたわけでございますけれども、このほかに相続税額のない申告、まさにおっしゃったように小規模宅地等の特例、あるいは配偶者の税額軽減等を使って、相続税額が出ない申告書というのも約3万件出てきております。そういう状況なので、ある程度は税額は出ないけれども、申告をしていただいていると思っております。
小川委員
まさに今、所得税の確定申告時期なので感じる所ですが、今年から年金の源泉徴収票の表示が変わりましたが、全体に字が小さくなりました。年金をもらっている方は高齢の方が多いせいか、様式が変わったり、見にくかったりするともらってないとか、分からないからもう捨てちゃったとかおっしゃる方がありました。
これはマイナンバー制度のマイナポータルがうまく機能すれば多分、解決されることかもしれません。
また、申告に必要な、マイナンバーを教えていただく場合でも、大事なものはしまっておいて、どこにいったか分からないと言われたこともあります。制度が機能するまでなかなか大変ではないかなといった気もします。
会長
ありがとうございました。
そのほか、お酒のこととかも、もし御意見とかあれば。
1つ、議長をしながら僭越ですけれども、やっぱり納税者と国税庁をつなぐ審議会をしているということで、意見というか考えを手短に述べさせていただきたいんですけれども、22ページ、これが今日、先ほど報告いただいた中で、重要なページの1つかなと思ったんですけれども、納税者としてはマイナンバーをもらって、確定申告書にも番号を振らなきゃいけない、配偶者の番号も振らなきゃいけない。それで何がよくなったんだというのは、納税者サービスの向上の部分だと思うんですけれども、もちろん課税庁としては適正・公平な課税・徴収の実現ということである、その2つが両輪だということで、非常によく描けた図だと思うんですけれども。これから特に左の方で、納税者の方に目に見える形で、これだけやっぱり番号を提供すれば、これだけ利便性があるんだと。
例えば、これからいろいろな人がいろいろな仕事を、1つの仕事じゃなくて2つ、3つ仕事に就いていくこともある。そういう時に、このマイナポータルにいけば、自分の働いた所得がこうなっているんだなというところで、やはり大切なところは、納税者と課税する方が情報を共有するということだと思うんですよね。スウェーデンに行った時もやっぱりそういうことで、マイナポータルにいけば自分が1年稼いだ所得が分かる。
つまり、僕が思うのは、キーワードをやはり納税者と課税当局が情報を共有しているんだということで、逆に言えば、緑のところと赤いところがやはりきっちり絡むということがポイントだと思って、是非これから、適正の方はお仕事としてやっていかれるんでしょうけれども、左の方も同じように力を入れてやっていっていただきたいと思います。感想ですけれども。
まだ少し時間がありますから。
須磨さん、お願いします。
須磨委員
便利なものほどリスクがあると思っておりまして、電子的なICの関係のリスク管理について、御説明いただければと思います。
会長
多分、今の御質問は個人がマイナポータルに入った時の個人情報でのことですよね。
総務課長
マイナポータルにつきましては、認証強度といたしましては、カードを使った上で情報をとるときには、4桁の暗証番号をとるということでございまして、いわゆる二要素認証を採用していまして、個人情報を扱うものとしては、一応認証強度というのは確保されていると考えております。
さらに、その先の御質問として、じゃあこれをe-Taxにどうやって対応するのかということになると思うのですが、現在e-Taxも二要素認証を採用していまして、マイナポータルも二要素認証ですから、わかりやすく言うと認証強度は一緒なので、認証連携ということをスタートいたしました。
その先でございますけれども、まだこれは予算案が審議中ですが、片や少しe-Taxの個人の方の伸び率が、52%にとどまっているという説明をさせていただきました。これを上げていくのは、実は大変重要な課題でございまして、e-Taxの認証手続の簡素化を進めていくことになります。
その場合におきましても、申告手続そのものについては、マイナンバーカードを活用した二要素認証による認証手続きの簡素化を進めるとともに、場合によると一要素認証を採用していくことも考えておりますけれども、情報開示機能、要するに情報セキュリティーの部分については、なるべく二要素認証を導入していくことによりまして、一定程度のセキュリティーは確保していきたい、このように考えております。
ただ、これはちょっとまだ先の話でございまして、30年分の確定申告からシステムとして出していくことになると思います。
会長
もう1つ、2つ、御質問、意見があれば承りたいと思いますけれども。
お願いします。
橋本委員
先ほどのe-Taxの浸透率が課題というふうなことをおっしゃっていたと思うんですが、特に高齢者にとっては、なかなかパソコン自体を使わないというような、そういう世帯もあるかと思います。高齢者対策としては、どういうふうに浸透させていこうとお考えなんでしょうか。
総務課長
御指摘に十分答えられるものかどうか、自信のない部分でもあるんですが、現状はパソコンでいろいろな申告書を打っているところでございます。それから、今タブレットを使って作成コーナーから所得税及び復興特別所得税の申告書を作れるというところまできております。じゃあ、これが今スマホでできるかといいますと、字が余りに小さくなってしまいます。
それですので、今ちょっと課題として考えているのは、要は例えば高齢者の方について想定いたしますと、主として年金と医療費控除ができれば、相当程度いいのかなと思っていまして、スマホを使って、ある種手続を限定的に、一言で言うと、難しい申告はできないんですけれども、簡単な申告についてはスマホでできるような開発というのも検討課題だと思っていまして、今システムを開発している担当部署の間で、そういうことも議論を進めているところです。
これも早ければ30年分の確定申告に、間に合えばですけれども、そういうスケジュールで今、物事を考えているところです。30年分の確定申告、つまり31年1月からの確定申告を想定して考えておるところです。
会長
課税部長
先ほど神津委員から御質問のありました、27年分の相続税申告で小規模宅地等の特例を使って税額が出なかったものについて調べましたところ、1万9,493件ございました。
ちなみに、小規模宅地等の特例を適用した件数ですけれども、8万1,304件でございます。その内数として相続税額が出なかったのが1万9,493件、相続税額ありが6万1,811件になります。
会長
まだ御意見があるかもしれませんけれども、ここで事務局からの報告に対する質疑は終わらせていただいて、今の話の続きですけれども、ICTやデータ活用技術が進展する中で、今後10年、15年、長過ぎるかもしれませんけれども、やや長期に考えたときの税務行政のあるべき姿について、先ほどとの繰り返しには一部なりますけれども、国税庁でどのように考えているか、締めくくりのようですけれども、御説明いただければ。
総務課長
では、簡単に御紹介させていただきますと、御指摘のような環境変化がある中で適切に対応して、引き続き適正・公平な課税・徴収を実現していくということでありまして、執行当局としても、将来のあるべき税務行政の姿の検討が必要ではないかと考えておるところでございます。
今日も御議論いただきましたが、納税者サービスの一層の向上と負担の軽減のためにICTでありますとか、今お話しがありましたが、マイナポータルの活用をどう進めていけばいいのか、調査・徴収手続の事務においてはICT、更に先の姿としてはAIをどういうふうに活用していくのか、内部処理事務や軽微な事案に対する行政指導の効率化が、そういうことで図れるのではないのか、併せて、調査・徴収の手法自体も高度化していくとともに、富裕層や国際的な租税回避の調査などには、大変厳しい定員環境にもありますので、重点的にそういうところにマンパワーを投入していくというようなことについて、考えていく必要があると考えております。
それから、他方で、税制調査会においても、納税実務をめぐる近年の環境変化への対応についてということで、税務手続の利便性向上や適正・公平な課税の実現に向けての御議論が始まったと仄聞しております。こうした動きも踏まえまして、国税庁として今後、いわば税務行政の将来像をどうしていくのかという検討作業を行うことができればと考えておりまして、国税審議会の先生方に御意見をお伺いすることがあろうかとも思います。
いずれにいたしましても、検討して結果がまとまったということになりましたら、委員の先生方にも御報告を事前にさせていただければと思っておるところでございます。
国税庁長官
田近会長から非常に適切な問題提起をいただいたと思っておりまして、私ども国税の組織は、あまり今までまとまって外に対してものを言っていなかった組織であります。1年終わりますと、課税実績みたいなものは、きちんとデータで御報告をしておりましたけれども、どういう考え方に基づいて、どういう方向に向かっているのかということを、あまりまとまった形で御説明をしてこなかった組織であります。
先ほどちょっと申し上げましたし、この資料にも出ておりましたけれども、昨年10月に国際戦略トータルプランというのを公表したのも、今まであまりやったことのないようなことでございまして、要するに国際課税について現状どうであり、それを我々はどういうふうにこなしていくと思っているのかということを、世に問うような資料だったわけであります。
今の田近会長の御指摘というのは、ある意味では我々がいろいろ部内で考えております我々の組織のあり方論、将来像みたいなものについて、少し一回整理をして、世に問う必要があるのではないかというふうに、私は受けとめました。個別には議論しておりますけれども、それを1回整理をして、また必要に応じて委員の各位にも御披露しながら、対外的に公表することも考えてみたいなと思っております。
我々はいろいろ真面目に取り組んでいるんですけれども、なかなか世の中にきちんとアピールをしていない部分がありまして。こういう御時世でありますから、そういうわけにも参らないので、考えておることはきちんと外に言うべきだろうと思っております。
定員事情が非常に厳しい中で、やることはどんどん増えておりまして、どうしたらいいんだという話になるわけでありますけれども、資料でいいますと、29分の10ページに滞納整理中の額が減っているというグラフがございました。これは、別に定員の問題だけではなくて、いろいろなやり方があったわけであります。
私はたまたまこのピーク時の頃に、東京国税局で徴収部長をやっておりましたけれども、当時から17年も続けて滞納が減っているということは、やはり、いろいろな理由があるわけでありまして、一言で言うと民間企業と同じです。要するに、アウトソーシングとICT化です。それによって、本当に自分たちが手をかけなくてはいけない対象を限定して、そこに我々が力を集中していくという、ある意味では民間企業が普通にやっていることを、徴収部ではやってきた、それがあって、17年も続けて滞納が減っている。
要するに、滞納というのは民間企業で言うと、売掛金として帳簿には載っているけれども回収できていない、というものであり、それが約3兆円もあったわけです、当時は。今はそれは約3分の1にまで減っているということは、別に急に現場で職員が頑張り出したわけではないし、人員が増えたというだけでは必ずしもなくて、ポイントは、アウトソーシングできるところはアウトソーシングをして、できるだけICT化をする。
人手をかけるところにターゲットを絞るという、民間企業では普通にやっていたこと、こういうことをもう少し徴収の分野だけではなくて、組織全体でもやらなくてはいけないというのが、我々に今、課せられていることだろうと思って、繰り返しになりますが、その辺のいろいろな検討はしておるのですけれども、折角、会長から御示唆いただきましたので、全体像を整理して、またいろいろ御説明をしていきたいというように思っております。
会長
ありがとうございました。
というわけで、今後、税務行政のあり方について国民目線というんですか、見直せるものは見直していこうということで、委員の皆さんも御意見等あれば、遠慮なく事務方の方にお送りください。
以上で、今日用意した議題は終了しました。
本日の審議をこれで終わらせていただきたいと思います。
――了――