日時: 平成23年3月3日 13時15分〜14時24分

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

国税審議会委員 小林会長 井堀会長代理
  青山委員 飯村委員
  さき委員 潮田委員
  尾原委員 角田委員
  河村委員 久野委員
  須磨委員 たか橋委員
  田嶼委員 辰馬委員
  中村委員 林委員
  水野委員  
説明者 国税庁 川北国税庁長官 国税不服審判所 孝橋国税不服審判所長
  田中国税庁次長   知原国税不服審判所次長
  杉江審議官
  富屋審議官
  西村課税部長
  さき徴収部長
  藤田調査査察部長
  刀禰総務課長
  藤田人事課長
  山名酒税課長

総務課長
 それでは定刻になりましたので、始めさせていただきたいと存じます。
 私、国税庁の総務課長をしております刀禰と申します。当審議会の事務局も務めております。よろしくお願いいたします。
 それでは、第12回国税審議会を開催させていただきます。
 本日は、委員の皆様方におかれましては大変御多忙なところ、御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 本年の1月6日付で当審議会委員の発令がございました関係上、後ほど、会長をお決めいただくまでの間、私が事務進行役を務めさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 本日は、委員20名中17名の委員の方々に御出席していただいております。委員の過半数の方々が御出席であるということで、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立をしているところでございます。
 まず、本日の議事進行につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。お手元に議事次第があると思いますが、資料1でございますけれども、御覧いただきたいと存じます。
 本日は最初に第12回国税審議会を行いますが、それが終了しました後、引き続きこの同じ会議室におきまして、第8回国税審査分科会、第46回税理士分科会及び第10回酒類分科会の順にそれぞれ開催をし、各分科会長の互選と分科会長代理の指名を行わせていただきたいと存じます。
 その際、他の分科会に所属の委員の方もこの場所におられるわけでございますが、短い時間でございますので、所属されていない分科会の議事進行中につきましては、恐縮でございますけれども、着席のままお待ちいただきたいということでお願いをいたします。
 また、酒類分科会の分科会長互選と、分科会長代理の指名が終了いたしました際には、酒類分科会委員の皆様は御休憩、酒類分科会委員以外の皆様は散会ということで、お帰りいただくという扱いとさせていただきたいと存じます。
 酒類分科会委員の皆様におかれましては、10分間の休憩後に分科会の議事を再開する予定でございます。よろしくお願いいたします。
 それではまず、本日、御出席いただいております委員の方々を、恐縮ではございますが、私の方から御紹介をさせていただきたいと存じます。御起立だけお願いできればと思います。
 まず順不同でございますけれども、中村豊明委員でございます。
 林菜つみ委員。
 角田光代委員。
 水野忠恒委員。
 久野峯一委員。
 尾原榮夫委員。
 井堀利宏委員。
 たか橋滋委員。
 岩ア政明委員。
 小林逸太委員。
 河村小百合委員。
 辰馬章夫委員。
 田嶼尚子委員。
 その次の席の須磨佳津江委員は、まだお見えになっておられません。
 潮田道夫委員。
 飯村穰委員。
 青山理恵子委員。
 なお、本日、~津十月委員、辻山栄子委員、池田隼啓臨時委員のお三方におかれましては、御都合により欠席という連絡をいただいているところでございます。
 引き続きまして、行政当局側の出席者につきまして御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、国税庁長官、川北でございます。
 国税不服審判所長、孝橋でございます。
 国税庁次長、田中でございます。
 国税不服審判所次長、知原でございます。
 審議官、杉江でございます。
 審議官、富屋でございます。
 課税部長、西村でございます。
 徴収部長、松アでございます。
 調査査察部長、藤田でございます。
 人事課長、藤田でございます。
 酒税課長、山名でございます。
 以上でございますが、よろしくお願いいたします。
 それでは、委員の皆様方で、まず国税審議会会長の選任をお願いしたいと存じます。国税審議会令第5条第1項によりまして、会長は委員の皆様方の互選により選任していただくということになっているところでございます。
 どなたか御推薦等はございますか。
 たか橋委員橋委員、お願いします。

たか橋委員
 小林先生に引き続き、会長をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

総務課長
 ただいま、小林委員を会長にという御意見がございました。それでは、小林委員に引き続き会長をお願いするということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

総務課長
 ありがとうございます。特に御異議がないようでございますので、小林委員に会長をお願いしたいと存じます。
 それでは、小林会長、隣の席でございますが、会長席の方に恐縮ですがお移りいただきたいと存じます。
 それでは、会長から一言ごあいさつをちょうだいいたしまして、その後は、議事の取り進めをよろしくお願いしたいと存じます。お願いいたします。

会長
 ただいまは、たか橋委員から御推薦のお言葉をいただき、恐縮に存じます。
 今回の委員の方々の中には、私よりもずっと会長にふさわしい方がたくさんいらっしゃるわけでございますが、引き続きやりなさいということでございますので、大変僭越ですが、会長の職務を全うしたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは会議に入る前に、国税審議会令第5条第3項に従いまして、会長がその職務を代理する委員をあらかじめ指名するということになっておりますので、会長代理の指名をさせていただきたいと思います。
 前回に引き続き井堀委員にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

井堀委員
 井堀です。それでは、会長から御指名いただきましたので、皆さん、御異存なければ引き続き会長代理をお受けしたいと思います。よろしくお願いします。

会長
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議題に入る前に、川北長官より一言、ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

国税庁長官
 国税庁長官の川北でございます。一言、ごあいさつ申し上げます。
 今回、委員の御就任をお願いいたしましたところ、快くお引き受けいただきまして、改めて御礼を申し上げます。
 国税審議会におきましては、国税通則法などに定められた重要な事項につきまして、国税審査分科会、税理士分科会、酒類分科会の三つの分科会を置いて御審議を賜っているところでございます。
 これらの事項は、いずれも行政処分や不服審査など、納税者や国民の権利に関する事項、あるいは酒類業の健全な発達にかかわる重要な事項でございますので、忌憚のない御意見を賜りまして、御審議を賜りますよう、是非よろしくお願い申し上げる次第でございます。
 さて、御承知のとおり、現在、確定申告期の正にピークの時期でございます。私ども税務行政の使命は、納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現することでございますので、私ども国税庁といたしましては、主役である納税者の皆様が便利・簡単・円滑にその納税義務を果たしていただけますように、親切・丁寧なサービスを心掛けて、私たちに与えられた使命を着実に果たしていきたいと考えてございます。
 具体的には、御案内のe-Taxの普及拡大、あるいは内部事務一元化など、これまでも納税環境の整備に努めてきております。今後とも、こうした納税者サービスの充実に向けて努めてまいりたいと考えております。
 次に、適正・公平な税務行政を推進する観点から、悪質な納税者に対しては厳正な態度で臨んでいくこととしてございます。特に近年、経済が国際化してまいりましたので、国際的な租税回避行為ということもございます。これに対する取り組みを強化しております。特に、租税条約などに基づいた情報交換を積極的に行っておりまして、こうしたことなどによりまして、実態解明に取り組んで厳正に対処してまいりたいと考えております。
 また近年、私ども税務当局の国際的な会合におきましては、大企業のコーポレート・ガバナンスの充実を、税務のコンプライアンスの向上に結びつけるといった取組を議論しております。税務のコンプライアンスの向上は、企業あるいは税務当局の双方にとって有益であると思いますので、私どもといたしましても、税務分野におけるコーポレート・ガバナンスの充実に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 こうしたいろいろな取組を通じまして、質の高い税務行政を進めて、国民の信頼に応えていきたいと考えております。
 なお、平成23年度の税制改正におきましては、納税者権利憲章、税務調査手続、更正の請求期限の延長、処分の理由附記などが税制改正の大綱に盛り込まれておりまして、現在法案が国会で審議されているところでございます。私どもといたしましては、こうした新しい制度につきまして、よくその制度を理解して的確に対応をしていくとともに、これを機会にすべての事務の処理に当たって、法令や通達等に基づいた適切な事務の遂行、そうしたことを改めて組織に徹底したいと考えている次第でございます。
 委員の皆様方におかれましては、貴重な御意見、御指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。御就任につきまして重ねて御礼申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきます。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

会長
 ありがとうございました。それでは、会議に移りますが、まず皆様のお手元にある議事次第に従いまして、国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況、更には最近の税務行政の動向、こういったことにつきまして、事務局から一通り御説明をいただいた後、皆様から御質問、あるいは御意見をお伺いしたいというふうに思っております。
 それでは、まず国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

総務課長
 総務課長の刀禰でございます。今、会長からお話がありました議題に入ります前に、先ほど委員の紹介をさせていただいたところでございますが、須磨佳津江委員がお見えでございますので、御紹介させていただきます。
 それでは、私の方からまず国税審議会の概要と国税審査分科会及び税理士分科会の活動状況につきまして、お手元の資料3−1にそのタイトルの資料がございますが、これに基づいて説明をさせていただきたいと存じます。
 再任となった委員の皆様方におかれましては、既に御承知の点も多いかと思いますが、よろしくお願いをいたしたいと思います。
 まず、1枚めくっていただきまして、1ページが国税審議会の概要でございます。
 国税審議会は平成13年にそれまで三つありました審議会が統合されて発足をいたしました。現在、本審議会のもとに国税審査分科会、税理士分科会及び酒類分科会の三つの分科会が設置されているところでございます。
 本審議会の所掌事務というのは、2の所掌事務というところで(1)から(4)まで書いてあるとおりでございますが、前回21年3月に、そこにございますような形で開催をしたというところでございます。
 次に2ページをお開きいただきたいと存じます。
 国税審査分科会の概要でございます。国税審査分科会は、国税不服審判所長が国税庁長官通達の解釈と異なる解釈による裁決を行う場合、また、法令解釈の重要な先例となる裁決を行う場合におきまして、国税庁長官から意見を求められた事項に関する調査・審議を行うこととされているところでございます。
 最近の活動状況につきましては、下の3のところに書いてございますが、21年3月に国税通則法99条に基づく意見申出事案及び国税不服審判所における裁決事例について説明をさせていただいているところでございます。
 それでは引き続きまして、3ページを開けていただきたいと存じます。
 税理士分科会の概要でございます。税理士分科会は、税理士になるための試験であります税理士試験の執行及び税理士に対する懲戒処分等の審議を行うこととされているところでございます。
 最近の活動状況といたしましては、税理士試験の関係で毎年度2回程度、また懲戒処分の関係でも平成22年度に2回ということで開催をしているところでございまして、具体的には4ページに記載のとおりでございます。
 税理士試験の関係につきましては、試験問題または税理士試験の実施結果、指定研修の実施結果などについて御審議をいただいたところでございます。また、懲戒処分の関係では、懲戒処分の可否及び処分内容などについて御審議をいただいたというところでございます。
 私からの説明は以上でございます。

会長
 ありがとうございました。
 それでは酒類分科会の動向について、山名課長から御説明をお願いいたします。

酒税課長
 酒税課長の山名でございます。引き続きまして、酒類分科会の活動状況につきまして、私の方から御説明させていただきます。
 同じ資料3−1の5ページ目を御覧ください。
 酒類分科会は、酒税の保全のための酒類業者に対する命令、酒類の表示基準の制定、エネルギーの使用の合理化に関する命令などに関しまして、審議を行うこととされております。
 最近の活動状況といたしましては、資料に記載しておりますとおり、「酒類における有機等の表示基準」の一部改正、「地球温暖化対策に係るビール製造業の自主行動計画」などについて、御審議いただいております。
 簡単ではございますけれども、以上でございます。

会長
 ありがとうございました。
 先ほどお話しいたしましたとおり、事務局から一通り御説明をいただいて、その後に御質問をお受けするということにしたいと思っております。
 ということで、引き続きまして、次は最近の税務行政の動向でございます。刀禰課長の方からお願いいたします。

総務課長
 それでは最近の税務行政の動向につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 お手元の資料の4以降でございます。資料4ということで、最近の税務行政の動向という、30ページちょっとある資料をお配りさせていただいておるところでございます。
 1枚めくっていただきまして、目次を見ていただくとおわかりかと存じますが、国税庁の組織、又は申告、調査、滞納の状況、国際化やIT化への対応、事務の効率化などにつきまして、基礎的な計数等を載せさせていただいているところでございます。
 一つ一つ御説明しますと、どうしても時間もかかりますので、本日は時間の関係上、説明は省略させていただきたいと思いますが、何かまた御質問等があればよろしくお願いしたいと思いますし、また本日の時間以外でも、何か御質問があれば、いつでも事務局にお寄せいただければというふうに存じておる次第でございます。
 引き続きまして、最近の税務行政の動向の中の各論のトピックでございますけれども、資料5を見ていただきたいと存じます。「生保年金最高裁判決への対応等について」という資料でございます。これは、昨年の7月に生保年金の最高裁判決というものがございまして、その対応について説明させていただいている資料でございます。
 まず最初に1ページ目が判決の要旨ということでございますが、やや細かい字でございますので概略を申し上げますと、生保年金問題といいますのは、遺族が年金形式で受け取る生命保険金につきましては、相続時に年金の受給権が相続税の課税対象となりますが、更にその相続人が年金受給権に基づいて支払いを個々に受けていくときは、その年金から被相続人が負担した掛金を控除した残額に対して、所得税を課税しているところでございます。
 これは、昭和38年の税制調査会答申で示されました、所得税と相続税は別個の体系の税目であるので、両者の二重課税の問題は理論的にはないものと考えるという、過去の税制調査会答申を踏まえまして、国税庁において統一的に長年取り扱ってきたというものでございます。
 しかしながら、この点につきまして裁判となりまして、昨年の7月6日に最高裁におきまして、遺族の方が年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分は所得税の課税対象とはならないという判決がございました。昨年の7月の初めのことでございますが、かなり報道もされましたので、御承知の方も多いかと存じます。その判決の概要が1ページ目でございますが、それに対してどのように対応したかというところでございます。
 3ページ目の取扱いの変更(イメージ図)というのを見ていただきたいと存じます。
 その最高裁判決というものを受けまして、当然我々の方で必要な見直しを行うわけですが、昨年10月に所得税法の施行令、政令でございますが、これを改正したほか、法令解釈通達というものを発遣いたしまして、取扱いの変更を行ったところでございます。具体的にこの3ページの絵で見ていただきますと、右側の変更後にありますように、各年の保険年金を所得税の課税部分と非課税部分に振り分けまして、その課税部分の所得金額にのみ所得税を課税するという形で改めさせていただきました。
 この取扱いの変更を踏まえまして、現行法の下で還付が可能な平成17年分から21年分までの過去5年分の所得税につきまして、更正の請求、又は還付申告というものの受付を開始したというところでございます。
 具体的にどのように手続を進めたかということでございますが、4ページを開けていただきたいと存じます。
 今回、かなり大勢の納税者の方が関係ある事例での解釈変更ということで、多数の納税者の方に税金の還付手続をとっていただくという、このようなケースは今回始めてのケースでもございました。このため、納税者の皆様に円滑かつ迅速に還付手続を行っていただけるよう、この絵にあるような対応を行ってきたところでございます。
 具体的には、当然のこととして各種広報をしっかりと行うとともに、納税者からの御相談に親切かつ丁寧な対応を心掛けるほか、生命保険会社等に御協力をいただきまして、還付の対象となる可能性のある納税者に、年金支払情報等の通知を行っていただいたところでございます。
 現在のところ、特段の混乱はなく、順調に納税者の方々への対応を行うことができているところでございます。
 5ページ目をお開きいただきたいと思いますが、この5ページの資料と同じ内容のものを今回の確定申告期前に広報をさせていただいたということでございます。現在も引き続き、この過去5年間の還付手続に対応しているということで、冒頭長官のあいさつにもございました今確定申告の期間中でございますが、この中でも併せて対応させていただいているというところでございます。
 最後に、先ほど過去5年分と申し上げましたが、現行法では対応できない5年を超える部分への対応ということでございますが、最高裁判決を踏まえまして、野田財務大臣から過去5年を超える年分にも対応するという発言がございました。これにつきまして、一定の考え方の下に特別還付金として支給するということが、現在、国会で審議されております税制改正法案に盛り込まれているところでございます。この税制改正法案が成立し施行されましたら、平成12年分まで、更に5年さかのぼって支給されるということになります。
 以上が生保年金の関係でございます。
 引き続きまして、資料6を開けていただきたいと存じます。納税者権利憲章の策定及び公表について、御説明をさせていただきます。
 納税者権利憲章といわれますものは、平成22年の税制改正大綱におきまして、国民主権にふさわしい税制を構築していくために、納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして早急に制定するということ。また制定について1年以内を目途に結論を出すという旨が、22年度の大綱で掲げられておりました。
 これを受けまして、お手元の1ページにございます昨年12月の23年度税制改正大綱におきまして、納税者権利憲章の制定等が納税環境整備の推進という項目の中で記載をされているということでございます。
 その資料にございますけれども、23年度の大綱におきまして、納税者権利憲章というものは、複雑な税務手続を納税者の目から見て分かり易い形でお知らせするために、納税者が受けられるサービス、納税者が求めることのできる内容、納税者に求められる内容、納税者に気をつけていただきたいことを一連の税務手続に沿って、一覧性のある形で、平易な言葉で簡潔・明瞭に示すとの考え方に沿って策定するとされております。
 これを踏まえまして、税務当局も納税者からより一層信頼される税務行政に向け、取り組むものとしますということが掲げられております。
 また、この憲章の策定を法律上義務付けることといたしまして、その策定根拠、憲章に記載すべき事項を法定する。その憲章は、行政文書として国税庁長官が作成し、公表するということが、閣議決定されました大綱の中に記載されているところでございます。
 資料の2ページ目をお開きいただきたいわけでございますが、この憲章の具体的な記載内容ということで記載してございますけれども、一つとしては納税者の自発的な申告・納税をサポートするため、納税者に提供される各種サービスですとか、税務手続の全体像、個々の税務手続に係る納税者の権利利益や納税者・国税庁に求められる役割・行動。納税者が国税庁の処分に不服がある場合の救済手続や税務行政全般に係る苦情等への対応。又は、国税庁の使命とか税務職員の行動規範といったものを記載することとされているところでございます。
 国税庁といたしましては、現在、国会で審議されております法案が成立・公布された段階で、速やかに憲章の作成・公表に向けて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 次に、資料7をお開きいただきたいと存じます。
 当審議会にも関係がございますが、国税不服審判所の改革という問題がございます。これについて、御説明をさせていただきます。
 国税不服審判所の改革というのは、一昨年の22年度税制改正大綱におきまして、行政不服審査制度全体の見直しの方向を勘案しつつ、納税者の立場に立って、適正な税務執行が行われていることが国民に明らかになるよう、必要な検討を行うという形で検討課題が掲げられておりました。
 これを受けまして、昨年末の23年度税制改正大綱では、不服申立前置主義の見直しや、国税不服審判所の組織・人事のあり方などについて検討され、記載されているということでございます。
 その資料の中にございますように、国税不服申立手続の見直しにつきましては、現在内閣府の行政救済制度検討チームで行われております「行政不服審査法の見直し」、また「不服申立前置の見直し」といったことの方向性を踏まえて検討を行う必要があるとされております。
 内閣府の行政救済制度検討チームの議論が来年以降と、すなわち本年以降本格化するということを踏まえまして、同検討チームの結論を踏まえまして改めて検討した上で、所要の見直しを図るとされているところでございます。
 その見直しの各論的なことでございますが、真ん中あたりにございますが、不服申立期間につきましては現行の期間制限(2月)を延長する方向で、証拠書類の閲覧・謄写の範囲については審査請求人と処分庁とのバランスを踏まえつつ拡大する方向で、それぞれ検討を行うこととされております。
 また、不服申立前置、不服申立てを先に行うこととしているというあり方につきましては、争訟手続における納税者の選択の自由度を増すことを基本に、原則として2段階となっている現行の仕組みを抜本的に見直す方向で検討を行うとされているところでございます。
 次の2ページ目をお開きいただきますと、国税審判官の外部登用者の拡大ということがございますけれども、国税不服審判所における審理の中立性・公正性を向上させる観点から、今後、国税審判官への外部登用を拡大することとし、その方針及び工程表を公表することとされており、具体的には民間からの公募により、年15名程度採用し、3年後の平成25年までに50名程度を民間から任用することにより、事件を担当する国税審判官の半数程度を外部登用者とすることとされているところでございます。
 この大綱を受けまして、国税不服審判所では、国税不服審判所のホームページ等におきまして、外部登用の方針と工程表というのを既に公表いたしております。現在、本年7月の採用に向けまして、特定任期付職員としての審判官の採用の準備を進めているところでございます。
 また、国税不服審判所の組織のあり方につきましては、そこの最後のところにございますが、内閣府・行政救済制度検討チームの検討状況を勘案しつつ、簡易・迅速な行政救済を図るとの観点も踏まえ、審理の中立性・公正性に配意して審判所の所管を含めた組織のあり方や人事のあり方の見直しについて検討を行うこととされているところでございます。
 国税不服審判所の改革についての説明は以上でございますが、私からの説明も以上とさせていただきたいと存じます。
 よろしくお願いいたします。

会長
 ありがとうございました。大分スピードアップして御説明いただきましたものですから、ここで若干、復習いたしますと、まず国税審議会の概要についてと、それから各分科会につきまして刀禰課長からお話がございました。それから山名課長からは酒類分科会の御説明がございました。それから今、刀禰課長からのお話は三つございまして、生保年金の最高裁判決への対応、それから納税者権利憲章の策定、そして国税不服審判所の改革という三つの話がございました。
 どれも大変難しい問題でございまして、個人的な感想を言わせていただきますと、最初の御説明の中にあった国税庁の組織図を見ますと、総定員5万6,261人と、大変な大規模組織で、改めて驚かされました。政府の行政組織の中で、こんなに大きな組織は他にないのではないかと思います。それにもかかわらず、御説明にあったようないろいろな問題が起こってきておりますので、その対応が大変だと思いますけれども、今後とも頑張っていただければと思っております。
 それでは、早速今の御説明について、何でも構いませんので、御質問、あるいは御意見をいただきたいと思いますが、どなたかいかがでございましょうか。
 あいにく私の席からですと、委員の方々がちょっと見えにくいので、もし、私が気が付かなかったらお声を掛けていただきたいと思います。何かございませんか。
 たか橋先生、お願いします。

たか橋委員
 一番最後の方の納税者権利憲章と国税不服審判所の改革の話なのですが、確かに事前の手続を慎重にするというのは非常にいいことだろうと思います。ただ、行政手続法の制定のときに、課税行政について適用除外にしたという経緯のときも、ある意味では手続を整備しますと、かなり実務に対して新しい負担が発生するということがあるわけです。
 今回そういう意味で、かなり手続を整理、事前の手続を厚くするというと、かなり徴税行政に対する負担も増えると思うのですが、その辺、人的な手当の問題とか、そういうものも含めていろいろ御検討になったかどうかということを少し、お聞かせ願えればと思います。

会長
 いかがでございますか。

総務課長
 今の点につきましては、手続の見直しが行われ、法律となれば、我々はそれを執行する立場でございますので、その手続に則っていくことは当然でございますし、また手続の関係で、今日は時間の関係で省略しておりますが、幾つか事前の通知だとか、理由附記だとか、いろいろな制度的な内容が盛り込まれております。理由附記等につきましては、一部行政手続法との関係も、そちらのほうに入ってくるような部分もございまして、一応見直しが行われているところでございます。
 今ございました実務的な負担とか、それから人的な問題という点は、当然重要な論点というふうに考えているところでございます。実務面で、どのような対応が必要になるかということにつきましては、法律のみならず、政令等に入ってくる部分もございますけれども、そういった全体の法令を見まして、国税庁、先ほど会長からお話がありました5万6,000人という大きな組織でございますので、現場の方できちんと実行できるように、準備をしていくということが基本だろうと思っております。
 その中で、当然、手続の中では多少これまでよりも必要になってくる手続は出てくるだろうと思いますので、そこは我々与えられた中で、前提としてやっていかなければならないという部分はあろうかと思います。
 また、そういった手続が変わりました際に、どのような定員等に影響があるかどうかという点につきましては、一定のものが定性的には想定される部分はございますけれども、具体的には現在この法案につきましては、施行のほうが、主な手続の部分は24年1月からとなっているところでございます。法案が通ればそういうことになるわけでございますけれども、そうなりますと、主に24年度に入って影響が出てくるかということで、必要な部分については、また今度の24年度の機構定員要求等でどういう対応が必要になるかということは、現在検討中ということでございます。

たか橋委員
 どうもありがとうございました。

会長
 今の納税者権利憲章の件ですが、ひとつお聞きしてよろしゅうございますか。
 私の印象では、急にこのところ、この話が出てきたような印象を受けているのですが、外国と比較してどうなのか、杉江審議官にお聞きしたいのですが。例えば、日本のこういった納税者の権利というのは、どの程度守られていると言えるのか。お答えになるのは難しいでしょうけれども。

杉江審議官
 すみません、ちょっと今、手元に資料がありませんけれども、欧米の主要国でも納税者憲章のようなものを作っている国が多いと思います。各国でもそれぞれ納税者の税務行政をするに当たって、納税者の意見をきちんと聞いて行政をするというようなことが、その納税者憲章の中でうたわれていると承知をしております。

総務課長
 少し補足させていただきますと、納税者権利憲章とか、納税者憲章という題名等は国によって多少違いますけれども、大体OECDに入っているような国では、かなり多くの国で既にそういったものが制定されております。そういう意味では、今回日本にはなぜないんだというお話もありまして、一つは多分、政権交代も関係があったかもしれませんが、そういった中で議論が出てきたというものだと承知をしております。
 納税者の権利につきましては、当然、国税のいろいろな法律の中でも既に記載されている部分もございますし、我々もいろいろな説明資料でやっておりますけれども、今回はわかりやすい形で、一覧性のあるものを作りなさいという御趣旨かと受け止めまして、法律が制定されれば、そういうものをできるだけわかりやすく作らなければいけませんので、手続等、細かい部分を含めると幾らでもあるわけでございますけれども、そういった点をわかりやすく一定の要領でまとめることが必要になるというふうに考えているところでございますし、その際には外国の例もいろいろな例がございますので、参考にできるものは参考にしたいというふうに考えているところでございます。

会長
 ありがとうございました。
 何かほかにございませんでしょうか。

井堀委員
 資料5の生保年金最高裁判決ですけれども、私は法律の専門家ではないので、判決がどのくらいもっともらしいのかわかりませんが、とにかく最高裁で判決が出た以上は対応しなければいけないということなのですけれども、これと似たようなものがほかにあり得るのかどうか。
 それと、これは二重課税がだめだということで、この二重課税的なものはほかにもあり得るのではないかと思うのですけれども、要するに、この判決が今回の生保年金以外の課税に関して及ぼす影響について、何かあれば教えていただきたいと思います。

課税部長
 生保年金以外に、例えば預金利子等についても二重課税が同様に発生しているのではないかという意見もあるのですが、これは実は実務上もかなり従来から整理をされておりまして、それでこの生保年金判決を受けまして、主税局の方で改めて検討いたしまして、二重課税には該当しないという整理がされ、今国会で御審議中の23年度の税制改正におきまして、明確化のための法的な規定を設けるという方向で従来の実務をある程度追認したような形で手当がなされているというふうに聞いております。
 一方、生保年金につきましては、政令を手当いたしまして、それに基づく通達も直しまして、いわゆる解釈の変更ということによりまして、事後的に還付を行っているというところでございます。

会長
 ありがとうございました。青山委員、どうぞ。

青山委員
 すみません、今の点に関してですけれども、あくまでも素人的判断ということでお聞きいただきたいのですが。
 現在、要するに最高裁判決で国が負けてしまった。きっと38年にはそれなりの理屈があって、二重課税にはならないよという判断をなさって決めたものが、今回、最高裁判決でこうなってしまったということなのですが、それは社会のいろいろな環境の変化等々によって、こういうこともあり得るんだろうなというふうに理解します。
 しかしながらその実、5年前にさかのぼってそれを救済する。そしてまた、野田財務大臣の、ごめんなさい、言葉がちょっと悪いですが、ツルの一声で、もしかしてまたもう5年間、12年からになるというのは、何かちょっと割り切れないというか、超法規的な感じがしないでもないのですね。それは国民が納得する形の政策展開をしなければならないと思いますし、もちろん国会で御審議なさる法律の問題なのでしょうけれども、そういうことは致し方ないあり得ることだ、というふうに考えざるを得ないのでしょうか。
 意図が伝わりにくい説明ですみませんでした。回答しづらい問いでしょうがお願いします。

国税庁次長
 基本的には政治の判断ですので、私どもがそれを解説するのはあまり適当ではないかもしれませんけれども、伺っていますのは、まずこの生保年金というのは、ほかのいろんな商品の中でも特にかなり広範な人に影響が及ぶというのと、それから商品の特性上、最初の年に幾らもらい、翌年に幾らもらいという連続性を持った商品ですので連続した是正が必要となりますので、税制の現行制度で言うと5年ということなのですけれども、そこはそういう特性にかんがみて、ある種特別な制度として、さらに5年間という御判断をなさったというふうに伺っております。
 それから、ついでの話でちょっと蛇足でございますけれども、先ほど申し上げましたように、昭和38年のときには正に二重課税の議論が、当時昭和40年だったと思いますけれども、所得税の大改正がございまして、そこへ向けてさまざまな世の中で議論されている議論を整理する、そういう税制調査会だったらしいのですが、そのときに既にもう二重課税の議論を学者の先生方、あるいは実務者の方々でもおっしゃっている方がいて、それを整理するという意味で、ほかにも幾つかあるのですが、そういう整理を税制調査会でなさったということです。国税庁はそれに従って対応せざるを得なかったというか、それが当然だということで対応してきて、それが司法上、ちょっと別の判断が今回、最高裁で下ったという経緯でございます。

会長
 ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 そのほかに何かございますか。

水野委員
 先ほど御説明いただいた国税不服審判所、今いろいろ議論が出されて、弁護士会からもそれに関連したような話が提案されているということですが、実は私、数年前にちょうど新司法試験で弁護士登録した人がなかなか就職先がないということもございまして、審判所のほうで、審判官などで採用することは可能ではないだろうかというお話をしましたところ、その当時の長官や審判所の次長さんから非常に反発を受けまして、「これは公務員の守秘義務がありますので、とてもそれは大変な話です」とか、もう一つは「主な仕事は事実認定ですから、そういう経験がない人は困ります」と言って、実は廊下まで追いかけられて言われたことがあるのです。それから二、三年後ですが、民間登用ということで最初3名の方をということで、採用されたのがだんだん広がって、最近では15名程度採用しますということを、先ほど伺いました。
 これは、考えてみれば非常に難しい問題で、審判所の審判官の方はもともと税務署の職員の方がなって、それでまた税務署に戻ると。これでは審判所と国税組織とが切り離されないのではないかと、こういうこともありますけれども、他方で考えて、昔協議団という制度があって、いったん協議団に入ってしまうともう出られないので鉄砲玉人事だと。これをやると、非常に活性化がなくなってしまうので、それもなかなか難しいのでやはりローテーションしなければいけないと。
 といって、外から採ってくると、主に税理士・弁護士の方になると思いますが、今まで集めてきた依頼者の方を、これをほかの方に移してこざるを得ないと、そういうような問題があって、民間任用というのは実際には非常に難しいようですが、若い人だったら幾らでも余っているのですけれども、年配で依頼者を抱えたような事務所を持っておられる方になると、非常に難しいと思いますが、このあたり少し今現状はどうなっているか、補足的に御説明いただけますでしょうか。

審判所次長
 ありがとうございます。
 先ほど水野先生からも少しお話がありましたように、平成19年からまず初めに税理士さんを4人、民間登用というのを始めまして、その後20年にも税理士さんを1名、21年から弁護士さんを採用するようになりました。それで、昨年は13名、弁護士さん、税理士さん、会計士さんの採用をさせていただきまして、現在18人国税審判官として活動していただいております。
 今事件を担当している審判官が99人おりまして、そのうちのこれまで採用してきております者で在任されている方が18人おられます。ということで、まだ全体の中ではこのような比率になっておりますけれども、3年間の間に半分ぐらい、50名ぐらいまでもっていきたいと考えているところであります。
 国税出身の審判官とは、かなり異なる専門知識を持っていらっしゃる方々というふうに、これまでの中での御活躍ぶりを見ております。そういう意味では、非常に、中での合議の議論というのは活性化してきていると思っておりますが、事実関係の認定のための調査などについては、水野先生御指摘のとおり、なかなか不慣れというようなことでございますけれども、部内から出身の職員と協力をしながら業務を遂行することによって、基本的にはカバーされて、全体として効果が出てきているのかなと思っているのが、私が今見ております現状、実情でございます。
 以上でございます。

会長
 今の御説明で、よろしゅうございますか。

林委員
 ちょっとそれに関しましてよろしいでしょうか。
 私、いろいろ審判所の審判官もしたことはあるのですが、現在は札幌で弁護士をしております。それで、日弁連の方から、こういう公務員の期限付の募集があるというようなメールが各単位弁護士会を通して入っておりまして、その中に審判所の審判官というのもございました。
 私も北大のロースクールで教えていたこともあるのですけれども、最近皆さんたちも御承知と思いますけれども、就職難で、司法試験合格者が年間2,500人ぐらいになっていると。当初の閣議では3,000名ということだったようなのですが、それはとてもとても就職難だということで、もう少し合格者数を抑えるという傾向にあるのです。それでもなおかつ、毎年毎年2,500人というのは、相当な数です。若い弁護士が就職できないというのが、非常に大きな問題になっております。
 その中で、各公務員の方に期限付の採用ということも非常に魅力的なお話ではないかなと思うのですが、その募集を見ますと、どうしても修習生からストレートの弁護士採用ということではなくて、ある程度の経験を踏んだ方というようなことで採用基準があったように思うのですが、いきなりその修習生から採用するということはやはり難しいことなのでしょうか。そこら辺をちょっと確認したかったのですが。

審判所次長
 制度上、必ずしも不可能だということではないかと思いますけれども、この登用を始めましたのは専門的な知識、経験を踏まえられた方を、できるだけ中での業務に生かしていきたいということで始めましたので、現在、実際採用されている昨年13人のうち、弁護士さんは5人いらっしゃいますけれども、経験年数はそれなりにやられた方が採用されている現実でございます。
 でありますけれども、そこは業務の中で効果がどれぐらい出てくるのかというようなことを見ながら、今後は考えていきたいと思っているところでございます。
 直ちに司法修習を終えた方が来ていただけるかどうかというのは、そのほかの応募者の方との兼ね合いもあろうかと思いますので、何とも今の段階では申し上げられませんけれども、そういう方も大いに応募をしていただいて、挑戦をしていただけるのであれば、我々としてもありがたい話だと思っております。

会長
 お約束の終了時間までもうちょっと時間がございますが、今の御説明や御質問の中で、まだ幾つか、例えば国際化への対応とか御質問がございませんが、いかがでしょうか。
 今日は、ビジネスの世界から中村委員にお越しいただいておりますが、いかがでございますか。ここでは、移転価格税制の話が出てきておりますけれども。

中村委員
 そうですね、私どもの中でいきますと、移転価格の税制でいきますと、非常に海外との取引で今一番問題になっておりますのは、だんだんと海外で自立をしてきておりまして、国内との関係で言うと取引がない。
 それで、例えば私どもの会社が100%出資している、もしくは50数%出資しているとか、こういった形で海外展開を増やしてきているわけですが、成長していきますと、国内で市場が伸びない、人件費が高い、それから活動するコストも高いということで、国内ではなかなか利益が出ない。ところが、海外では市場が成長していて、優秀な人員も比較的国内に比べるとかなり安く採用ができて、非常に活発な研究開発もでき、いい製品もでき、地産地消で物が売れる。
 そうしたときに、海外で利益が出て、国内で利益が出ないという、こういう構造が徐々に徐々に長い年月の中で来ておりまして、そういったときに無形の価値があって、その無形の価値に対する対価を取っていないのではないかとか、こういったロイヤリティーは取るのですけれども、やっぱり新興国あたりからいきますと、いつまでもロイヤリティーをたくさん取っているのはおかしいということになりますので、だんだん下がって2%とか、1%に下がってくるのですね、自然と。
 そうすると、なかなか海外との間で、国内で利益が出なくて、海外で出たときに、これは移転価格上の問題がどこかにあるのではないかと。何かおかしいということがあって、その無形的な価値に対する所得を移転していないというところでの問題があって、これはかなり海外の側から見ると、自立しているんだから関係ないだろうというようなこともあったり、この辺が非常に難しい局面に来ているなというような実感が私どももしております。とはいえ私どももグループの中で活動しているメリットについては、応分の負担はしろということでやってはいるのですけれども、いかんせん、国内の市場がしぼんで、海外が自立的に拡大している中で言うと、この移転価格のところの問題がすごく難しいなと。
 それで、OECDのところで今度はルールを変えようとかというのがございますけれども、あれのところのルールをもうちょっときちんとマニュアル的にやらないと、決めていただかないと、実務で常に1件ごとにこちらに関係するような、不服審判のような問題が出てくるのかなというような最近感じをしておりますので、公平な取扱いが、海外の国と日本の国との間でどうやってやったらいいかというのは、私どももなかなか個別に言える立場ではないのですけれども、こういった点での整理というのは、やはりしていかないとあちこちでもめるかなというような気はしております。

会長
 やはり解釈の違いとか、そういうのがあるのでしょうか。

調査査察部長
 調査査察部長の藤田でございます。
 中村委員がおっしゃっているのは、資料4の16ページに地図をもって書いてある、正にこのことかと思います。
 ロイヤリティーとおっしゃっていましたけれども、「日本法人が保有する製造技術等の使用許諾や提供する役務の対価の回収状況についても調査対象」ということで書いていまして、ここが独立企業間価格になっているのかどうかが、執行でも非常に難しいところだと思います。
 資料に書いてございますように、こういったロイヤリティー等の認定や評価には非常に困難な問題がありますので、相互協議を行う部局、あるいは審理をする部局とも協議しつつ、一層的確な執行を行うように努力しているところでございます。
 また、無形資産に係る移転価格税制上の取扱いにつきましては事例集も公表いたしまして、明確化に努めているところでございます。
 それからお話がございましたように、OECDでも無形資産について議論がなされることになっておりますので、その議論に参画していきたいと思っております。これまでもやってきましたけれども、執行の明確化というのが非常に重要だと思っておりますので、OECDでは議論がまだ煮詰まっておりませんのでそこまでいっていませんけれども、OECDで一定の方向性、結論が出た段階で、事務運営指針等に反映していきたいと考えております。過去においてはパブリックコメント等も行いつつ明確化を図ってきておりますので、そういうふうに執行の適正化を図っていきたいと思っております。

中村委員
 よろしくお願いします。
 ついでに申し上げますと、日系の企業はやはり日本をベースにして、日本で培ったものを海外に展開していきたいと思っているのですけれども、海外に行くと、海外は海外で一生懸命、出てきたところから取ろうということでやるものですから、先ほどの二重課税のような問題、海外で取って国内でも取られるというのと、どちらかというと、何ていうのでしょうか、特に新興国の方へ出ると、何とかして取ろうと。FTAなんかに参画すると、なかなか関税が取れないので、何とか見つけて税金を取ろうということで、いろいろ理屈を付けたり、徴税者に対してインセンティブを付けたりして、何か理屈を付けて取ると。こういうのが結構アジアだとかああいうところで出てきていまして。
 我々としては日本の企業がなかなか元気が出ないというような状況で、やはり昔の日本の発展にもう一度寄与したいということでやっているつもりなのですけれども、何といいますか、日本の企業がグローバルに生き生きと仕事ができるようなそういうサポートといったら変になるのですけれども、御支援をいただいて、あちこちで日本が拡大できて、日本の経済が発展するというような方向へ、ルールと執行の方でサポートいただけると非常にありがたく、早くたくさん税金をお支払いするように頑張りたいと思っておりますので、よろしく御支援のほど、お願い申し上げたいと思います。

会長
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

杉江審議官
 先ほどのこの最近の税務行政の動向、資料4の18ページに事前確認という制度について御説明をしております。今、中村委員から御意見等、日本の企業が外国で生産活動、事業活動をする場合に外国等から課税を受けるリスクがあるわけですけれども、それは実際に課税された場合には相互協議という形で、日本の国税庁と先方の税務当局との間で協議をして、どちらの方に税金を納めるかというような協議をしております。
 そういうことで二重課税を解消しているわけですけれども、将来の課税については、事前確認、APAというふうに呼んでおりますけれども、将来例えば途上国で日本の企業が子会社を作って営業活動をする場合に、どのぐらいの例えばロイヤリティーを日本に払うかというような問題につきましては、この事前確認という形で先方の税務当局と、今現在協議をしております。
 具体的には、21ページにこの事前確認の申出件数、処理件数の推移をお示ししておりますけれども、平成21年度では149件の申し出があって、そのうち105件、先方の税務当局との間で合意をしているということで、なかなか処理が追いついておりませんが、今、私ども一生懸命定員も増やしまして、あと特に途上国との間では、なかなかそのAPAを結ぶための交渉というのは非常に難しいわけですけれども、今いろんな形で努力をしまして、できるだけ日本の企業が外国で税のことを気にしないで営業活動、製造活動、いろんな経済活動ができるような形でサポートをしていきたいというふうに考えているところでございます。

会長
 詳細な御説明、ありがとうございました。
 ほかに何かございませんか。もう一つか二つぐらいは、御意見、御質問をいただける時間がございますけれども。
 私の方から聞いてばかりいてはいけませんけれども、最近、例の入試問題の漏えいの問題がございましたけれども、e-Taxの御努力には大変敬服しておりますが、そのあたりのセキュリティのことについてはどんな対応を考えていらっしゃるのか、ちょっと御説明いただけますでしょうか。

富屋審議官
 突然の御質問でどのようなお答えをすれば、御質問に対して正確にお答えをしたことになるかわかりませんが、e-Taxというのは、基本的には申告の受付をするシステムです。最終的には私どものまた別のKSKという税務の仕事をするために、私ども内部の様々な事務のために使っているKSKのシステムに情報をつなぐための入り口のシステムでございまして、当然のことながら、機能に必要な程度のセキュリティというのは備えているつもりでございます。
 今、おっしゃった話との関係でいきますと、ちょっと話がそれますけれども、例えば携帯からe-Taxで申告ができるのかとか、できるようになったらいいではないかというような御意見もあるのですけれども、今のところまだそういった簡易な形で申告のところまでいけるというようなシステムまでは想定をしておりませんが、これはやはりセキュリティ面での問題も何がしかあろうかと思います。

会長
 ありがとうございました。
 何かほかに、委員の方々から御質問がございませんか。
 もし特段の御質問や御意見がなければ、このあたりで終わりにさせていただきますが。

国税庁長官
 一言、では最後にすみません。
 冒頭私どもの方から3点、御説明をあえて取り上げましたものは、国税庁は与えられた法制度のもとで最大限の適正・公平な課税に努めておりますけれども、御説明申し上げました3点は、あるいは司法の判断の変更によって、かなり大きな行政上の変化を私どもが行っていることですとか、あるいは与えられた法制度そのものの変更の議論が行われている残りの2点につきまして、御紹介させていただきました。
 とりわけ、納税者権利憲章について、二、三御質問がございましたけれども、これは国税庁長官が定める行政文書ということに法律上なっておりまして、法律が通りましたら私どもの方で文書を作って、5万6,000人の組織に徹底していくということになってまいります。この点、法律上の要請でございますので、しっかりやっていきたいと思っているところでございます。
 それから、国税不服審判所の件について、所長もいらっしゃっておりますけれども、先ほど民間人登用の件で御質問がございましたが、能力と経験を買ってお願いするという制度に全体としてなっておりますので、ある程度の経験年数ということを期待しているわけでございますけれども、今のところ私どもが採用しようとしている人数に比べまして、おそらく応募がかなりあって、そういう意味では、それなりの御経験を積んだ方から順次お願いをしているような形になっているということでございます。
 そのほか、いろいろ御説明が足りない点があろうかと思いますけれども、引き続き、どうぞまた何かの機会に御質問賜ればと思います。
 ありがとうございました。

会長
 長官からのまとめのお話、ありがとうございました。
 委員の方々も、もし質問事項がございましたら、また別の機会にでもぜひ率直にお聞きになっていただきたいというふうに思っております。
 今日は最初ですので、円滑な議事進行のため、私の方でいろいろ質問いたしまして、大変失礼いたしました。
 それでは、本日の議事内容の公表の件ですが、国税審議会議事規則第5条第2項によりまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第、公表させていただきます。このうち、議事録につきましては、公表する前に皆様の御発言の内容に誤りがないかどうかを、確認させていただきたいと思います。
 更に、議事要旨の方でございますが、これは簡単なものでございますので、できましたら、私、会長に一任させていただくということにしたいのですが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 ありがとうございます。本日は長時間、御議論いただきありがとうございました。
 それでは、第12回国税審議会を閉会させていただきます。
 ありがとうございました。

―― 了 ――