日時: 平成16年5月31日 15:00〜17:00

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

懇談会メンバー 奥村 洋彦 座長
  井岸 松根
  須磨佳津江
  田嶼 尚子
  寺沢 利雄
  本間千枝子
  水谷 研治
  矢島 正見
説明者 国税庁 村上次長
  寺内酒税課長
  若尾酒税企画官
  初谷酒税課課長補佐
  小森酒税課課長補佐
  前田酒税課課長補佐
  亀井酒税課課長補佐
  土屋酒税課課長補佐
  本宮酒税課課長補佐
  濱田鑑定企画官

奥村座長
 時間になりましたので始めさせていただきます。本日は第17回目の懇談会でございます。
 このところいろいろな分野の御専門の方からお教えいただいて御議論いただいていますが、本日も4名の方からお話を承らせていただき、いろいろ御議論いただきたいと思います。
 早速ですが、最初に公正取引委員会の事務総局取引部取引企画課長の野口様から「不当廉売等に対する取組」についてのお話をいただきたいと思います。野口課長様からは大体15分ぐらいお話いただいた後、15分くらい御議論させていただけたらありがたく思います。よろしゅうございますでしょうか。よろしくお願いいたします。

野口取引企画課長
 ただいま御紹介いただきました野口でございます。常日ごろ、私どもの活動に対しまして御理解、御協力を賜りまして、この場をお借りしまして厚くお礼申し上げます。また、本日はその活動の一端をお話する機会をいただきまして、本当にありがとうございます。それでは、着席して説明させていただきたいと思います。
 まず、「不当廉売等に対する取組」とあるペーパーを開いていただきたいと思います。独占禁止法での考え方ということでございますけれども、カルテルであるとか談合であるとかといったことを取り締まって、企業の間で自由で公正な競争をしていただこうというのが基本でございます。そういう意味では、価格競争自体は消費者にとっても、経済全体にとっても非常にプラスな訳です。しかし、中にはいろいろな理由から採算を度外視したような低価格での販売が行われることがございます。こういったものは正常な競争手段とは言えませんし、ほかの競争業者からしてみますと、まともには対抗し得ないものでございますので、そういうものは不当廉売として禁止されております。
 考え方の明確化でございますけれども、こういった行為についてどういった行為が問題になるのかといったことについて、「一般論としての不当廉売についての考え方」というものも出しているんですけれども、その中で特にそういう問題が多く見られる業者については、個別に状態に即した形でガイドラインをさらに細かに書いております。酒類、ガソリン、最近ですと情報システムの調達といったものもございます。
 こういう考え方を示す一方で、たくさんの申告、情報をいただきますので、そういったものに対して事件としての調査というものも行っております。ここに警告して公表したものの件数を書いております。酒で申しますと、不当廉売について5件、警告・公表しております。それから、ビールメーカーによる差別取り扱いということで、昨年12月にやはり警告・公表しております。我々としては、この警告・公表というものを、やはり重たいものとして行っているわけですけれども、更に重い措置としましては、独占禁止法に基づく排除勧告という法的な措置がございます。その排除勧告の立証には至らなかったが、違反のおそれがあるということで警告を行ったものです。仮に法的措置ということですと、その後、審決が出て場合によっては審判、取消請求訴訟ということで進んでいくわけですけれども、そういうのに耐えるまでの立証が得られなかったということです。しかし、警告して名前を公表するわけですから、損害賠償等に対しての立証はもちろん必要となるわけですけれども、そういった案件がございます。
 それから2ページ目を御覧いただきますと、お酒の関係が圧倒的に多うございます。特に13年度は2,500件ほどの注意を行ったというものでございます。件数は少しずつ減っているわけですけれども、過去のことを思い出してみますと、二十数年前には牛乳の不当廉売が非常にすごい件数になりました。それまでは宅配であったものが、パック牛乳という形でスーパーで売られるようになって、しかもその牛乳というのは非常に目玉になりやすい、つまり、安いということが比較しやすい商品なものですから、牛乳だけを安売りするということで、牛乳の事件がかなりの件数で頻発しました。中には、1リットル100円というような対抗廉売まで進んだ例もございまして、その際には法的措置をとったケースもございます。後で聞きますと、スーパーの方は公取が来てくれてよかったというふうに言っていたということです。やはり消費者にアピールしなければいけない、アピールすることはいいんですけれども、それがそういう目玉商品的な安さを強調しやすい商品ですと、どうしても行き過ぎになりやすいということだと思います。そういう意味では、ビール・発泡酒もみんなが値ごろ感を分かっている商品ですから、これが安ければみんな安いのではないかというふうに思わせやすい商品ですので、酒類についても不当廉売が同じように多いのかと思います。
 非常に多くの申告が寄せられて、相手の事業者からしますと何が悪いんだと言われるところもございますが、もちろん安いからいけないということではなくて、行き過ぎたものを指導するわけですけれども、私どもの担当者それから国税からおいでいただいている担当者が、そういうものを繰り返しているうちに大分事業者の側にも「やり過ぎてはいけないな」ということが少しずつ浸透してきているという感じがいたします。それでもなお、ほかよりもかなりの件数がございます。
 そのほか、なぜそういう安売りが起きるのかといった流通実態調査も行っております。
 それから、安売りはその値段が安いだけではなくて、表示面でも問題を起こす場合がございます。すごく安いように見せかけて、実際にはそうではないということがないようにということで表示についての考え方を出して、そういう考え方に基づきまして不当な価格表示を行った者に対しては警告も行っております。
 3ページ以下が実際に警告した内容でございます。非常に安く売っていたということです。アサヒビールの件は、メーカーの差別的取り扱いを問題にしたケースでございます。資料が重複しますけれども、資料の4ページは、それをもう少し詳しく書いたものでございます。
 5ページ目は実際の値段でございますけれども、24本入りですからビールですと1本150円ちょっとぐらいの値段、発泡酒ですと100円を切るような値段という例でございます。
 それから、これはちょっと廉売の関係とは違いますが、せっかくのお酒の関連ということで8ページ目の資料を紹介だけしたいと思います。ノンアルコール飲料ということで酒税法上1%未満であれば税金がかからない、つまり、ビールではなくなるわけです。しかし実際には、0.5%であるとか、ある一定量入っていて、特にお酒のだめな人なんかにとってみますと、入っているか入っていないかが非常に重要な違いになるし、そういうビールでもある程度飲んで運転したりしますと、道路交通法上の問題も出てくるというようなことで、ノンアルコールと言っていても実際にはアルコールが入っているのではないのかということで、きちんと表示させてほしいと、特に消費者団体からも強い要請がございまして、業界を指導してきちんと書き分けるように指導した旨を公表したものでございます。
 そのほか、最近の動きで申しますと、消費税の総額表示のことがございますけれども、これに関しましてももう既に価格は込みだという感じが広く浸透してきたと思うんですけれども、そういう中で何の断りもなく抜き価格で表示したりしますと、当然、不当表示ということで問題になるわけです。そういう考え方は導入前の3月に既に公表しているところでございますけれども、過渡期ということもございまして、実際にそういう事例もございまして、全国では数十件、こちらの方から注意申し上げたという例がございます。特に酒だけについてということでは、ちょっと全国から情報をそこまで詳細に集めていなかったものですから、はっきりしたものではないんですけれども、担当者に聞いてみますと、お酒について直接そういう表示が問題になったということは聞いていないということです。もう少ししっかりと精査すれば分かるんですけれども、とりあえず酒についてということではなくて、スーパー全体だとか、そういうことでは問題が見られているようでございます。
 若干、時刻よりちょっと早くなりましたけれども、何か御質問等があれば。

奥村座長
 ありがとうございました。
 それでは、御意見を交わしていただきたいと思います。
 口火を切って申しわけございませんが、資料2ページに酒類で平成13年度2,494というすごく大きな数字が載っているんですが、この1件1件について、現地へどなたかが行ってお調べになられるようなことが行われるのでしょうか。

野口取引企画課長
 すべて行くということではございません。多くの場合は電話で仕入れ価格等も教えていただけます。調査票をお送りしたりするということもやっておりますけれども、現地で帳簿を見てということでなくても、かなり正直に御説明いただいていますので、それに基づいて指導しているということでございます。

奥村座長
 そうしますと4ページの秋田市で幾つかの件がありまして、概要というところで、「各店舗の周辺地域に所在する酒類小売業の事業活動を困難にさせるおそれ」とこう書いてありますが、こういう表現をお使いになられるときはどなたかやっぱり現地で聞き込みをなさるわけですか。

野口取引企画課長
 警告・公表であっても、注意であっても現地に行く場合があるわけですけれども、この2,400件、2,500件のすべてには行けません。こういう案件になりますと、周辺業者にアンケートを出したりという場合もございますし、聞いて回ったりという形で、情報・証拠を収集する作業をしております。
 ですから、同じ1件でも仕事量は相当違います。

奥村座長
 そこで、後者のような地元の小売業者の方とのかかわりが出るようなときは、全体の2,500件の中で1割ぐらいなのか、半分ぐらいなのかというような目処は付くのでしょうか。どのくらいの割合でこういう地元の小売業の方とのかかわりが出ているのでしょうか。

野口取引企画課長
 やはり、価格である程度判断できると申しますか、特に担当者も値段を聞くと大体値ごろ感が分かる状況になっておりますので、原価割れの疑いが濃い場合にもう少し詳しく調べようということになりますので、こういうふうにやる案件というのは全体の1割には満たないかと思います。規模だとかいろいろな要素にもよるのですが、多くの場合は相手の話を聞いた段階で、少しの原価割れとか、少しの幅ですと注意を行い、相手がそういった行為を繰り返すことがないようにということでやっております。

奥村座長
 ありがとうございました。どうぞ。

本間氏
 資料の2ページを拝見しますと、平成13年の酒類の注意されたものというのは2,500件ぐらいありますけれども、14年度、15年度は半分以下になっております。この不当廉売というのは一体どういうふうにしてこう拾い上げられるのか、どういうふうな監視システムになっているのかということをお伺いしたいと思います。
 そして、それが組織的な手口なものと、ガイドラインに気づかなかった等の理由による組織的でない手口のものといろいろあると思うんですけれども、調査の方法によって変わってきたのかしらと思うのですが、その点、いかがでしょうか。

野口取引企画課長
 周辺の小売店からの、これは何とかしてほしいという情報が主力でございます。そのほかにも当方の非常勤職員みたいな形で、幾つかお店を回ってもらうということもやっておるんですけれども、やはり周辺のお店から見ますと非常に大変なこと、切実な問題でもありますので、そこからの情報というものが非常に多いです。
 推測になりますけれども、件数が減ってきた背景としては、やはりある程度軽微な段階で注意を申し上げるわけですけれども、そういうことが何回か繰り返されてきますと、業者の方もこのぐらいにいくと注意を受けるなという学習効果が働いているということが考えられるかもしれません。もう一つは、廉売をされている業者もほかとの競争において、ほかが出せばうちも負けてられないというところがあるわけですけれども、ほかがある程度やらなくなってくれば、自分たちもそれほど、原価を割ってまでやらなくていいかということになり、全体として少し減ってきたのかと思われます。
 指導の中でよく、「うちだけ言われても困る、ほかだってみんなやっている、うちだけやらないわけにいかないんだ」ということを当初は随分言われましたが、ほかにもちゃんと言っているということがだんだんと認識されるようになり、ほかにも言っているんだなというふうに業者の方が思うようになったのかなということだと思います。

井岸氏
 2点お尋ねします。1点はこの規制緩和、免許の取得の緩和とこの違反者の増減についての相関性及びそれに絡んで違反者の業界歴といいますか、どのくらいこの業に携わった者がどういうような違反を犯しやすいのかということです。
 もう一つは、ガイドラインということでございますけれども、ガイドラインにおいてはこの業者の差益、マージンの問題であるとか、あるいは必要な経費、コストの問題であるとか、あるいは他のライバルとの値つけの絶対額の問題であるとか、いろいろなことがあると思うのですが、それぞれについてどういうようなガイドラインをお示しになっていらっしゃるのか。それは、また全国統一的なものなのかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。

野口取引企画課長
 まず1点目の免許の取得が最近非常に増えているわけですけれども、それと廉売との関係ということになりますと、実証的に調べたわけではないので感覚的なことで恐縮ですが、やはり新しく免許を取得したところというのは、どちらかというと総合スーパーだとか、それからコンビニ的なところだとかというところが多くございます。スーパーもある程度安いのですけれども、別にビールでお客を呼ぼうという感じが少ないせいか、新しく免許を取得したところでどんどん廉売が起きているということよりは、むしろ従来からのディスカウンターやスーパーとかに押され気味のディスカウンターの方が廉売を行うことが多いのではないかと思われます。いわばお酒のディスカウントというのを大きく書いているようなところ、つまり、お客を呼ばないといけないというところがかなり無理をされているのではないかというふうに思われます。
 従来ですと、お酒をどこも同じ値段で売っている頃には非常に優位性があったわけですけれども、最近ではそういった店での競争も非常に厳しい、安売りをしていなくてもスーパーにお客さんがどんどん流れちゃうということで、以前からのディスカウンターに引き続きそういう例が多いのではないでしょうか。
 それから、違反者の違反歴みたいなことについてですが。

井岸氏
 違反歴ないしはこの業界でどのくらい商売をしているとか、それから重ねて何回も違反する可能性をお教えください。

  次ページへつづく→