1. 日時

平成16年5月12日(水) 10:00〜12:00

2. 場所

国税庁第一会議室

3. 出席者

  • (懇談会メンバー)
    • 岡本 勝、奥村洋彦、神崎宣武、小宮信夫、田中利見、寺沢利雄、本間千枝子、 御船美智子、矢島正見(敬称略)
  • (国税庁)
    • 村上次長、寺内酒税課長、若尾酒税企画官、 初谷、小森、亀井、本宮、土屋(以上酒税課課長補佐)

4. 議事概要

 東京都生活文化局都民生活部青少年対策室松原課長補佐、社団法人流通問題研究協会三浦副会長及び立正大学文学部小宮助教授から、「酒類業とコミュニティのあり方」等に関する説明を受けた後、メンバーとの間で質疑応答等が行われた。概要は以下のとおり。

(1) 東京都生活文化局都民生活部青少年対策室 松原課長補佐

○東京都の青少年健全育成条例について

<説明>

  • ・ 東京都青少年健全育成条例の目的・理念は、大人(事業者)の行為を規制し、子供が健全に育つ環境の整備を図ることである。
  • ・ 平成16年には、有害な情報の氾濫や青少年が凶悪な犯罪に巻き込まれる事件の発生など、青少年を取り巻く環境は、ますます悪化したことから、効果的な規制を図るため、心身ともに成長過程にある青少年の世界と大人の世界とを区分けすること(ゾーニング)を基本として、成人向け図書類の自動販売機への年齢識別機等の設置の義務付け、深夜立入制限施設へのカラオケボックス等の追加、危険な刃物の販売規制等を行った。
  • ・ なお、成人向け図書類の自動販売機は、営業の自由に抵触する問題もあるが、小・中学校、高等学校の敷地の周囲100メートルの区域内には設置しないよう努力義務を課した。
  • ・ 今回の条例改正は、これが特効薬として有害情報や有害環境の浄化は難しいが、保護者の責任感の低下に対する監護責任を明確にするとともに、青少年自身の自覚を促すなど規範意識の回復を図ることにもある。

<質疑>

  • ○ 成人向け図書類の自動販売機での販売について、年齢識別装置の設置を義務付けた理由。
    • ⇒ 書店等における対面販売に対応し、自動車運転免許証を挿入しないと図書類が購入できない年齢識別機等を設置することとした。

(2) 社団法人流通問題研究協会 三浦副会長

○地域社会における酒販店、商店街の役割

<説明>

  • ・ 小売店舗等の減少は、消費者自身の拒絶によるものと理解する必要がある。中小店は、スキルの提供という店内加工機能と、近隣ならではの専門性という2つのポイントがある。
  • ・ 対面販売は単なる物の売り買いだけでなく、価値伝達・価値創造の役割を果たしている。酒販店には、メーカーではできない小売店ならではの消費者への価値の伝達機能がある。
  • ・ 酒販店は、様々な可能性がある一方で、青少年に対するものなど様々な要請もあり、今後も免許制を維持するのであれば、義務として酒販店としての役割を発揮させるような要求をしていくべきである。
  • ・ お互いの長所をほめあうことが大事である。国税庁も規制だけでなく、表彰など何らかの制度的なものを考えていく必要があるのではないか。

<質疑応答等>

  • ○ 商店街の運営では、消費者のための活性化とは異なる結論が出かねないという問題点がある。
    • ⇒ 商店街の良さというのは、小さな地域の文化、歴史、人間関係といったものであることから、そこは残しながら、きちんとした責任体制をどう作るかということをやらなければいけない。
  • ○ 商店街の良いところは地域の住人であるという点である。商店街は人の集まれる場所であり、非常に強い武器である。コミュニティということで環境犯罪の面からも期待ができる。
    • ⇒ 商店街は、競争的単位としての弱さを強さへ転換していくという点で重要である。

(3) 立正大学文学部 小宮助教授

○欧米の犯罪機会論と日本の安全・安心まちづくり

<説明>

  • ・ 欧米の犯罪対策は、1980年代に入り、犯罪の機会を与えないことによって犯罪を未然に防止しようとする犯罪機会論が登場し、原因論から機会論へのパラダイムシフト(発想の転換)があった。
  • ・ イギリスのアルコールに関連する秩序違反を防止する法律として、刑事司法及び警察法では、お酒を飲んではいけない地域(場所)を地方自治体が指定できる。また、1964年免許法では、未成年者に酒類を販売した場合、未成年者であることを知らなければ処罰されなかったが、その後、挙証責任が転換されて、免許者が年齢確認をしたことを証明しないと処罰されることとなった。更に、2003年免許法では、免許の目的として「犯罪と秩序違反の防止」が明記されるとともに、特定の駅や列車内での酒類販売を禁止する命令を裁判所が出せる、あるいは、営業日や営業時間に関して、以前は法律で一律に規制をしていたが、それを撤廃して、申請に基づき個別に許可ないし制限することとなった。
  • ・ 欧米では、酒類の売買そのものというよりは、特定の場所(犯罪を起こしてはいけない場所)ではきちんときびしく処罰する、あとは自由にやってくださいということでバランスを取っている。

<質疑応答等>

  • ○ 日本では、特定の場所で一時的にお酒を売ってはいけないということを誰かが命令するというようなことはできる仕組みになっているのか。
    • ⇒ 日本は、営業の自由や個人の自由(購買の自由、移動の自由)を最優先しており、「場所を軸にして犯罪機会を減らす」という発想はなくそこまで至っていない。
  • ○ 現在、酒類販売業に関しては、犯罪の防止を目的として、特定の場所で一時的に酒類の販売を制限できる仕組は規定されていない。営業の自由・職業選択の自由を考慮してもなお、犯罪の防止のために免許制により参入規制をすることが必要であるとの国民的合意が形成され、そのことが免許の目的に明確に位置付けるという手順が踏まれた上で初めて可能となるものではないか。
  • ○ 犯罪機会論のソフトの要素は、「お酒」に関して言えば、「買いづらい」、「飲みづらい」という状況を作っていくことになる。日本では、商店街がその役割を果たし得るのではと考えるがどうか。
    • ⇒ イギリスでは、これまでは地域の絆が弱かったが、日本が、地域の絆を弱めていった同時期に、意図的に地域の絆を強めようとして行政が側面から支援し、商店街等を取り込んで地域全体で犯罪防止対策等に取り組んでいる。現在では逆転現象になっているといえる。
  • ○ 監視や縄張りというと文明的には昔に返るというニュアンスが非常に感じられ、アルコールの対策としては万全である一方、管理社会になるのではないかと心配である。
    • ⇒ 従来型の狭い地域では今の情報化社会では成り立っていかない。コミュニティ横断的な組織を作ることにより、コミュニティの行き過ぎた監視をチェックできるのではないか。

(注) ⇒は、メンバーからの質疑に対する説明者からの回答である。

(以上)