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医政発第0608002号
平成16年6月8日

国税庁課税部長 西江 章 殿

厚生労働省医政局長 岩尾 總一郎

持分の定めのある医療法人が出資額限度法人に移行した場合等の課税関係について(照会)

 医療法人は、医療法(昭和23年法律第205号)第39条の規定により、病院、診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする財団又は社団が、都道府県知事(二以上の都道府県の区域において病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する場合にあっては、厚生労働大臣)の認可を受けて設立される非営利の法人である。医療法においては、営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、開設許可を与えないこととされている(医療法第7条)ところであり、医療法人制度(医療法第4章)においては、剰余金の配当の禁止が明示されている(医療法第54条)など、非営利の法人であることが規定されている。
 この医療法人のうち、社団であるもの(以下「社団医療法人」という。)には、出資持分の定めのないものと、出資持分の定めのあるものとがある(財団医療法人には出資の概念がない。)。さらに、社団医療法人のうち、持分の定めのあるものは、定款を変更して、持分の定めのないものに移行することができるが、逆に、持分の定めのないものから持分の定めのあるものに移行することはできないとされている(医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の36)。
 この社団医療法人については、厚生労働省では、社団の医療法人定款例(医療法人制度の改正及び都道府県医療審議会について(昭和61年健政発第410号)別添4)を示してきたところであるが、「これからの医業経営の在り方に関する検討会」最終報告(平成15年3月26日)の指摘を踏まえ、出資持分の定めのある社団医療法人の一類型として、出資持分を残したまま、社員の退社時における出資払戻請求権及び医療法人の解散時における残余財産分配請求権に関し、その法人財産に及ぶ範囲を実際の払込出資額を限度とすることを定款上明らかにした医療法人(以下「出資額限度法人」という。)の新規設立認可や既存の出資持分のある社団医療法人からの定款変更の認可が円滑に行われるよう、次の内容を盛り込んだ「モデル定款」を示すことを考えている。

 ○「出資額限度法人」のモデル定款の内容等

出資持分の定めのある社団医療法人のうち、定款により、次のような定めを設けているものを、「出資額限度法人」ということとする。

(1) 社員資格を喪失したものは、払込出資額を限度として払戻しを請求することができる。

(2) 本社団が解散した場合の残余財産は、払込出資額を限度として分配するものとする。

(3) 解散したときの払込出資額を超える残余財産は、社員総会の議決により、都道府県知事の認可を経て、国若しくは地方公共団体又は租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第67条の2に定める特定医療法人若しくは医療法第42条第2項に定める特別医療法人に帰属させるものとする。

(4) (1)から(3)までの定めは変更することができないものとする。ただし、特定医療法人又は特別医療法人に移行する場合はこの限りではない。

 この出資額限度法人については、定款を変更して出資額限度法人へ移行する時点、変更後の定款の下で社員(出資者)の退社等が生じた時点等の課税上の取扱いについても、これを明確にする必要があるところ、現行の定款の定めによる出資額限度法人については、下記のとおり取り扱われるものと解して差し支えないか、貴庁の見解を承りたく照会する。
 なお、照会に当たっては、平成16年3月31日現在の医療法及び同関係法令を前提としており、出資持分の定めのある社団医療法人において、社員(出資者)の社員資格の喪失や、法人の解散時に、当該法人の財産に対し出資持分の払戻請求権の及ぶ範囲を定款上如何に定めるかについては、当該法人の自治の範囲内であり、移行後の定款を変更することも医療法第4章及び同関係法令において特段制限されているものではないことを申し添える。

1.定款を変更して出資額限度法人へ移行する場合

法人税、所得税及び贈与税等の課税は生じない。

(理由)
 出資持分の定めのある医療法人の出資額限度法人への移行とは、出資持分に応じて法人財産に対する権利を有していた出資者の権利に関して、社員の合意に基づく定款変更により、将来退社したときの出資払戻請求権又は当該医療法人が解散した場合の残余財産分配請求権について払込出資額を限度とする旨定めることをいう。
 このように出資額限度法人は、定款の変更により出資に係る権利を制限することとするものであるが、依然として出資持分の定めを有する社団医療法人であり、この定款変更をもって、医療法人の解散・設立があったとみることはできないから、医療法人の清算所得課税、出資者のみなし配当課税、出資払込みに伴うみなし譲渡所得課税等の問題は生じないものと解される。
 また、定款変更により出資額限度法人に移行したとしても、医療法上は、再び定款を変更して元の出資持分の定めのある医療法人に戻ることについての規制がなく、後戻りが可能であること等からすれば、出資額限度法人への移行により、従来出資者に帰属していた法人財産に対する持分のうち払込出資額を超える部分(評価益等の未実現利益を含む。以下「剰余金相当部分」という。)が確定的に他の者に移転したということもできない。

2.出資額限度法人の出資の評価を行う場合

 相続税・贈与税の計算における出資の価額は、通常の出資持分の定めのある医療法人と同様、財産評価基本通達(昭和39年直資第56号・直審(資)第17号)194−2の定めに基づき評価される。

(理由)
 出資額限度法人に移行しても、次のことから、その出資の価額は、通常の出資持分の定めのある医療法人の出資と同様に評価される。

1 出資額限度法人は、依然として、出資持分の定めを有する医療法人であり、出資者の権利についての制限は将来社員が退社した場合に生じる出資払戻請求権又は医療法人が解散した場合に生じる残余財産分配請求権について払込出資額の範囲に限定することであって、これらの出資払戻請求権等が行使されない限りにおいては、社員の医療法人に対する事実上の権限に影響を及ぼすものとはいえないこと

2 出資額限度法人においては、出資払戻請求権等が定款の定めにより払込出資額に制限されることとなるとしても、定款の後戻り禁止や医療法人の運営に関する特別利益供与の禁止が法令上担保されていないこと

3 他の通常の出資持分の定めのある医療法人との合併により、当該医療法人の出資者となることが可能であること

3.社員が出資払込額の払戻しを受けて退社した場合

 定款の後戻りが可能であるとしても、社員のうちの1名が退社し、定款の定めに従って出資払込額の払戻しを受けて当該退社社員の出資が消滅した場合には、その時点において、当該出資に対応する剰余金相当部分について払い戻さないことが確定することとなる。
 なお、株式会社等営利法人は医療法人の社員となることができないと解されていることから、個人社員が退社した場合の課税関係についてみると、以下のとおりとなる。

(1) 退社した個人社員の課税関係

 退社に伴い出資払込額を限度として持分の払戻しを受ける金額が、当該持分に対応する資本等の金額を超えない限りにおいては、課税関係は生じない。

(理由)
 法人からの退社により持分の払戻しを受けた場合において、当該払戻しを受けた金額が所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第61条第2項第6号の規定により計算した当該持分に対応する資本等の金額(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第16号)を超えるときのその超える部分の金額は、所得税法(昭和40年法律第33号)第25条の規定により、配当とみなすこととされているが、出資額限度法人において、個人社員が退社に伴い出資払込額を限度として持分の払戻しを受ける金額が、当該持分に対応する資本等の金額を超えない限りにおいては、同条の規定により配当とみなされる部分は生じない。
 また、社員が法人からの退社による持分の払戻しとして交付を受けた金額等は、配当とみなされる部分を除き、譲渡所得の収入金額とみなすこととされているが(租税特別措置法第37条の10第4項第6号)、その払戻しを受ける金額は払込出資額を限度とするものであるから、その額は通常、取得額(払込出資額)と同額となり、原則として、譲渡所得の課税は生じない。

(2) 医療法人に対する法人税(受贈益)の課税関係

課税関係は生じない。

(理由)
 医療法人にとっては、定款に従い退社社員に出資払込額を払い戻すという出資金額の減少を生ずる取引(資本等取引)に当たるため、一般の営利法人と同様、課税関係は生じない。

(3) 残存出資者又は医療法人に対する贈与税の課税関係

 残存する他の出資者の有する出資持分の価額の増加について、みなし贈与の課税(相続税法(昭和25年法律第73号)第9条)の問題が生じることとなるが、次のいずれにも該当しない出資額限度法人においては、原則として、他の出資者に対するみなし贈与の課税は生じないものと解される。

ア.当該出資額限度法人に係る出資、社員及び役員が、その親族、使用人など相互に特殊な関係をもつ特定の同族グループによって占められていること

イ.当該出資額限度法人において社員(退社社員を含む)、役員(理事・監事)又はこれらの親族等に対し特別な利益を与えると認められるものであること

 上記に該当するかどうかは、当該出資額限度法人の実態に即して個別に判断されるものである。
 その際、次に掲げるところに該当しない場合にあっては、上記ア又はイにそれぞれ該当しないものとされる。

 (アについて)

1 出資者の3人及びその者と法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第4条第1項又は第2項に定める特殊の関係を有する出資者の出資金額の合計額が、出資総額の50%を超えていること

2 社員の3人及びその者と法人税法施行令第4条第1項に定める特殊の関係を有する社員の数が総社員数の50%を超えていること

3 役員のそれぞれに占める親族関係を有する者及びこれらと租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第39条の25第1項第2号イからハまでに掲げる特殊な関係がある者の数の割合が3分の1以下であることが定款で定められていないこと

【参考条文】

○ 法人税法施行令(昭和40年政令第97号)(抄)
 (同族関係者の範囲)

第4条 法第2条第10号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。

一 株主等の親族

二 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

三 株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人

四 前3号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの

五 前3号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

2 法第2条第10号に規定する政令で定める特殊の関係のある法人は、次に掲げる会社とする。

一 同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等(当該会社が自己の株式又は出資を有する場合の当該会社を除く。以下この項及び次項において「判定会社株主等」という。)の1人(個人である判定会社株主等については、その1人及びこれと前項に規定する特殊の関係のある個人。以下この項において同じ。)が有する他の会社の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の会社の発行済株式の総数又は出資金額(その有する自己の株式又は出資を除く。次号及び第3号において同じ。)の100分の50を超える数の株式又は出資の金額に相当する場合における当該他の会社

二 判定会社株主等の1人及びこれと前号に規定する特殊の関係のある会社が有する他の会社の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50を超える数の株式又は出資の金額に相当する場合における当該他の会社

三 判定会社株主等の1人及びこれと前2号に規定する特殊の関係のある会社が有する他の会社の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50を超える数の株式又は出資の金額に相当する場合における当該他の会社

3 (略)

○ 租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)(抄)
 (法人税率の特例の適用を受ける医療法人の要件等)

第39条の25 法第67条の2第1項に規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件とする。

一 (略)

二 その運営組織が適正であるとともに、その理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(以下この項において「役員等」という。)のうち親族関係を有する者及びこれらと次に掲げる特殊の関係がある者(以下次号において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合が、いずれも3分の1以下であること。

イ 当該親族関係を有する役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ロ 当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持しているもの

ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

三から五まで (略)

2から6まで (略)

(イについて)

1 出資額限度法人の定款等において、次に掲げる者に対して、当該法人の財産を無償で利用させ、又は与えるなど特別の利益を与える旨の定めがある場合

1 当該法人の社員又は役員

2 当該法人の社員又は役員の親族

3 当該法人の社員又は役員と次に掲げる特殊の関係がある者(次の2において「特殊の関係がある者」という。)

(1)当該法人の社員又は役員とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの

(2)当該法人の社員又は役員の使用人及び使用人以外の者でその者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの並びにこれらの者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

(3)当該法人の社員又は役員が法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第15号に規定する役員(以下「会社役員」という。)となっている他の会社

(4)当該法人の社員又は役員、その親族、上記(1)及び(2)に掲げる者並びにこれらの者と法人税法第2条第10号に規定する政令で定める特殊の関係にある法人を判定の基礎とした場合に同号に規定する同族会社に該当する他の法人

(5)上記(3)又は(4)に掲げる法人の会社役員又は使用人

2 当該出資額限度法人が社員、役員又はその親族その他特殊の関係がある者に対して、次に掲げるいずれかの行為をし、又は行為をすると認められる場合

1 当該法人の所有する財産をこれらの者に居住、担保その他の私事に利用させること。

2 当該法人の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付けをすること。

3 当該法人の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること。

4 これらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃借料で借り受けること。

5 これらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けること、又はこれらの者から公益を目的とする事業の用に供するとは認められない財産を取得すること。

6 これらの者に対して、当該法人の理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるものの地位にあることのみに基づき給与等(所得税法(昭和40年法律第33号)第28条第1項に規定する「給与等」をいう。以下同じ。)を支払い、又は当該法人の他の従業員に比し過大な給与等を支払うこと。

7 これらの者の債務に関して、保証、弁済、免除又は引受け(当該法人の設立のための財産の提供に伴う債務の引受けを除く。)をすること。

8 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること。

9 事業の遂行により供与する公益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えること。

 なお、剰余金相当部分に相当する利益は残存出資者へ移転されるものと解されるから、医療法人への贈与があったものとみる必要はないため、相続税法第66条第4項の規定に基づく医療法人に対する贈与税課税の問題は生じない。

(理由)
 個人社員が出資払込額の払戻しを受けて退社した場合には、当該出資に対応する剰余金相当部分が医療法人に留保され、残存出資者の出資割合が増加することから、結果として、その出資の評価額が増加することとなる。この場合の増加額は、社員の退社前の医療法人資産の状況及び出資額(口数)に基づいて財産評価基本通達194−2により評価した評価額と当該退社後の医療法人資産の状況及び出資額(口数)に基づく同評価額との差額により求められる。
 この評価額の増加は、社員相互の合意による定款変更の結果であるから、原則として、退社社員から残存出資者への利益の移転と捉えることができ、相続税法第9条に規定するみなし贈与の課税が生じることとなる。
 ただし、相続税法基本通達9−2の取扱いなどを踏まえれば、特定の同族グループによる同族支配の可能性がないと認められる医療法人については、一般的にはその利益を具体的に享受することがないと考えられるから、そのような法人にあっては、みなし贈与の課税は生じないものと解される。

4.社員が死亡により退社した場合

(1)相続税の課税関係

 社員が死亡により退社した場合において、定款の定めにより出資を社員の地位とともに相続等することができることとされている出資額限度法人の当該被相続人に係る出資を相続等したとき、また、出資払戻請求権を相続等により取得した相続人等がその払戻しに代えて出資を取得し、社員たる地位を取得することとなるときには、当該出資又は出資払戻請求権の価額は、出資としての評価額となり、上記2のとおり、財産評価基本通達194−2の定めに基づき評価した価額となる。
 一方、社員の死亡退社に伴い、その出資に関する出資払戻請求権を取得した相続人等が現実に出資払戻額の払戻しを受けたときには、当該出資払戻請求権については、出資払込額により評価する。

(2)他の出資者の課税関係

 上記(1)で、死亡した社員の相続人等が出資払込額の払戻しを受け、出資を相続しなかった場合であって、当該出資に係る剰余金相当額が残存する他の出資者に帰属するものとして前記3(3)の場合と同様の判定に基づき、他の出資者が退社した社員から出資の価額の増加額に相当する利益の贈与を受けたものとして取り扱われるときには、みなし贈与の課税が生じることとなる。
 なお、この場合において、当該残存する他の出資者が被相続人(死亡した退社社員)からの相続等により他の財産を取得しているときには、その利益は、当該他の相続財産に加算され相続税の課税対象となる(相続税法第19条)。

(3)その他の課税関系

 退社社員(被相続人)の所得税の課税関係及び医療法人の法人税の課税関係については、前記3(1)及び(2)の場合と同様となる。