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ホーム税務大学校研究活動税務大学校論叢(ろんそう)仮想通貨の税務上の取扱い−現状と課題−

仮想通貨の税務上の取扱い−現状と課題−

安河内 誠
税務大学校
研究部教育官


要約

1 研究の目的(問題の所在)

ビットコインに代表される仮想通貨は、2009年の登場以来、少しずつひろがりをみせていたが、ここ数年で大きな話題になり、2016年末から2017年にかけて利用者が急激に増えている。その過程で、仮想通貨の持つ利便性が認められる一方で、その特徴である匿名性の高さゆえに、犯罪や脱税に利用されやすいという点や、仮想通貨の販売・仲介業者に対する規制がないために業者が破綻したときの利用者の保護が十分でない、といった点が指摘されていた。
 日本では2016年(平成28年)6月に資金決済に関する法律(資金決済法)の改正により仮想通貨が法律に定められた。しかし、この改正は利用者保護等を目的として仮想通貨交換業者を規制するものであり、仮想通貨の性質や私法上の取扱いが明らかになったわけではない。諸外国においても、仮想通貨を金銭として捉える国、外貨として捉える国、財産・モノ(property)として捉える国など様々であり、その定義や位置付け、税務上の取扱いは一様ではない。
 仮想通貨の取引に関しては様々な場面で税務上の取扱いの問題が生ずると考えられる。消費税に関しては、平成29年度税制改正によりその取引に係る消費税が非課税とされたが、そのほかにも様々な論点がある。本研究は、ビットコインを中心として仮想通貨の意義、仕組み、性質等を確認し、これを基礎として、課税上、執行上の論点を挙げるとともに、その論点の解決への考え方、又はそのヒントを提示することを目的とする。

2 研究の概要

(1)仮想通貨の意義、実態、法的性質

イ 仮想通貨の意義等
 仮想通貨は、財やサービスの対価として使用できるほか、法定通貨との交換(法定通貨による売買)の対象とされる。そして、紙幣や貨幣などの実物は存在せず、インターネットの中だけで移転・流通する。また、法律による強制通用力がない(法定通貨ではない)、といった特徴がある。
 日本では、資金決済法において、仮想通貨は1不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手方として法定通貨と相互に交換できる、2電子的に記録され、移転できる、3法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない、との性質を有する財産的価値、と規定された。
 資金決済法における仮想通貨の定義はFATF(金融活動作業部会)のガイダンスを踏まえたものとされている。同ガイダンスにおいて、仮想通貨(virtual currency)は、「電子的に記録された財産的価値であって電子的な方法で取引可能であり、支払手段、計測単位、価値貯蔵の機能を果たすが、どの法域においても法定通貨の地位を有しないもの」と定義されている。

ロ 実態等

(イ) 仮想通貨(ビットコイン)の取引のしくみ

(1) ビットコインの移転
 ビットコインの大きな特徴は、特定の発行者がおらず、その移転・流通の記録を管理する特定の者も存在しない、という点、そして、特定の管理者は存在しないが、ネットワークに参加する多数の管理者が、同一の内容が記録されている台帳をそれぞれ独立して記録・管理している点である。
 ビットコインは、他と識別できる特定の英数字の羅列(ビットコインアドレス)に関連付けられているデータに一定の数量を観念し、この一定の数量のデータが他のビットコインアドレスに関連付けられる(同時に、元のビットコインアドレスへの関連付けが解消される)ことにより、価値の移転を観念している。
 ビットコインの価値の移転は、次の手順で行われる。まず、利用者はビットコインを送る指示(トランザクション)を作成し、電子署名を付して、ビットコインのネットワークに参加する台帳記録管理者に送る。台帳記録管理者は、送られてきた複数のトランザクションを、一定の数で一つの単位(ブロック)にまとめ、新たな台帳記録としてこれまでの台帳に追加するため、難しい計算問題を解く早さを競う。最初にその計算問題を解くことができた一の台帳記録管理者が、自分がまとめたブロックを他の台帳記録管理者に送り、他の台帳記録参加者がその結果を検証して、自身の台帳を同期する。これによって、新たなブロックに含まれる複数のトランザクションがブロックチェーンにおける記録の一部になる。

(2) ビットコインの生成(新規発行)
 ビットコインは法定通貨のように特定の者が発行するものでなく、プログラムによって、ある要件をクリアした者に一定の時間ごとに与えられる。具体的には、ビットコインのネットワークに参加する多数の台帳記録管理者がトランザクションを承認するためにブロックを積む作業をし、計算の競争によって一の台帳記録管理者が特定され、その者に報酬として新たなビットコインを与えるプログラムとなっている。この作業はおおむね10分ごとに行われ、その都度、新たにビットコインが生成される。

(3) ビットコインの移転に伴う手数料
 上述(1)によってビットコインが送られる際に、手数料が支払われる。支払うのはビットコインを送る者であり、トランザクションごとに支払われ、その量はビットコインを送る者が決めることができる。手数料を受け取るのはブロック連結のための計算競争に勝った台帳記録管理者であり、新たに連結したブロックに含まれるトランザクションにつき支払われる手数料を、報酬とともにすべて受け取ることとなる。

(ロ) 仮想通貨の移転等の原因となる取引
 仮想通貨は、なんらかの行為を原因として移転等がなされる。仮想通貨の移転等の原因となる取引の主なものとして、法定通貨による仮想通貨の売買、財やサービスの対価の決済手段としての利用、新規に発行される仮想通貨の取得(マイニング)、送金手数料の受取りや支払、寄付などに利用される。その他の仮想通貨の移転に関連する取引として、仮想通貨の先物取引等の差金決済、仮想通貨による預入・貸付け、仮想通貨取引所が受ける売買仲介手数料、仮想通貨決済代行サービス、ICO(Initial Coin Offering:運用開始前仮想通貨の事前販売)、アフィリエイト報酬、会員獲得報酬、詐欺的行為による金銭の詐取などがある。

(ハ) 仮想通貨(ビットコイン)の保有の形態
 ビットコインは、ブロックチェーンに記録されたビットコインアドレスに紐付けられている数字が数量として観念されている。この数量は、ウォレットによって把握される。ウォレットは、ビットコインの送信に必要な電子署名を作るため秘密鍵と、その秘密鍵に対応する公開鍵(及び公開鍵から作られるビットコインアドレス)を管理するアプリケーションである。ウォレットには、ウェブ・ウォレット、PC・モバイルウォレット、ハードウェアウォレット、ペーパーウォレットなどがある。このほか、交換所(取引所)のアカウントにおいてビットコインを保有することもできる。

(ニ) ビットコイン以外の仮想通貨の類例
 ビットコイン以外にも仮想通貨は多数存在する。その数は700以上といわれている。Ripple,Ethereum,Dash,Moneroなどがある。特定の管理者が存在するとされているもの、通貨のような利用に限られないもの、匿名性が高いとされているものなど、様々な特徴がある。

ハ 仮想通貨の経緯
 ビットコインは、2008年にSatoshi Nakamoto氏の論文が公開され、2009年にその運用が始まった。その後、2013年のキプロス危機、ギリシャ危機で資金の逃避先として注目され、中国における規制等の影響を受けた価格の乱高下等を経て、現在に至っている。ビットコイン以外の仮想通貨も、その種類及び取引量ともに広がっている。

ニ 仮想通貨の性質

(イ) 通貨との類似性
 法令用語としての通貨とは、強制通用力を認められた支払手段をいい、鋳造貨幣・紙幣及び銀行券がある。また、経済学的には、通貨には、価値の交換、価値の尺度、価値の貯蔵の機能を有するものとされる。
 仮想通貨は、強制通用力が認められたものではないが、支払手段として利用できることは法定されており、また、実態として、いくつかの仮想通貨が支払手段として利用されていることから、これらの機能を果たしている、と言える。

(ロ) 仮想通貨の法的性質
 わが国におけるビットコインを巡る裁判として、破綻した仮想通貨交換所に対するビットコイン引渡請求事件(東京地判平成27年8月5日)がある。この事件では、原告は、仮想通貨交換所に預けていたビットコインの所有権を主張して、破産法に定める取戻権に基づきビットコインの引渡しを求めた。判決は、ビットコインは有体物ではないので所有権を主張することはできない、したがって請求は認められない、とした。
 また、外国におけるフロリダ州マイアミ地方裁判所は、被告人が行ったビットコインの売買取引がマネーロンダリングの罪にあたるかどうかが争われた事件において、ビットコインは金銭代替物(monetary instrument)に該当せず、マネーロンダリングの構成要件を満たさない、とした。

(2)仮想通貨に係る課税の現状等

イ 日本
 2014年、日本で活動していた大手の仮想通貨交換所が破綻した際、参議院において質問主意書が提出され、政府は消費税の課税関係等について答弁した。
 2015年、自民党IT戦略特命委員会は仮想通貨を「価値記録」としてその取引に係る課税を明らかにした。通貨又は財・サービスと価値記録の交換は、消費行為なので消費税の対象(仕入税額控除可)、価値記録のキャピタルゲインは課税としている。
 金融審議会の審議・報告を経て、2016年に資金決済法が改正された。その国会審議において、課税上の取扱いに関する質問があり、麻生財務大臣から、消費税の課税関係、所得税又は法人税の課税関係について答弁している。
 2017年度税制改正大綱において「資金決済に関する法律の改正により仮想通貨が支払の手段として位置づけられることや、諸外国における課税関係等を踏まえ、仮想通貨の取引について、消費税を非課税とする」ことが決定された。

ロ 諸外国

(イ) 米国
 米国では、2014年に仮想通貨の所得課税上の取扱いが明らかにされた。仮想通貨は資産(property)として扱われ、課税関係が処理される。ビットコインのブロックを承認(マイニング)した場合、マイニングの時点で時価により収益を認識する。

(ロ) 英国
ビットコインの取引により得た利益には所得税、法人税又はキャピタルゲイン税が課税されるが、ビットコイン自体は付加価値税の課税物件にあたらないものとされている。

(ハ) オーストラリア
 2014年に取扱いが公表されている。ビットコインは金銭でも外貨でもないとされる。ビットコインの譲渡は、goods and service tax(GST)上非課税となる金融取引には当たらないとされていたが、2017年7月1日以後は非課税とされた。Capital gain tax(CGT)上は資産として扱われる。個人の取引であれば、原則としてGSTの対象にならず、ビットコインの原価が1万ドル以下であればCGTの対象にもならない。マイニングによって得たビットコインは、売却するまで所得を認識しない。

(3)仮想通貨に係る課税の考察

イ 所得税・法人税

(イ) 仮想通貨の移転
 保有していた仮想通貨を提供する場合に、その時点での円換算額とその仮想通貨を取得した時点での円換算額とが異なることにより差額が発生する。
 法定通貨で売買される場合には、仮想通貨を提供したときの円換算額とその仮想通貨を取得したときの円換算額との差額が、仮想通貨を提供した者の所得となる。複数回にわたって取得した仮想通貨を提供した場合の簿価は、外貨の例に倣い、仮想通貨の同じ種類ごとに、総平均法に準ずる方法によって計算することになると考えられる。これが事業として行われる場合には、棚卸資産として取り扱うという考えもあり、会計処理について企業会計基準委員会で議論されており、これを踏まえつつ検討していく必要もある。
 財やサービスとの交換(決済)の場合(他の仮想通貨との交換の場合も含む。)には、収益計上の要否、得た財やサービスの評価、評価の額と手放した仮想通貨の円換算額とが異なる場合の取扱いも論点となる。まず、対価を金銭以外のものによって収入した場合も収入金額を構成するから(所36、法22)、交換のときの財やサービスの価格で収益を計上する。収益に計上する額は、財やサービスの価格が円で表示されている場合はその価格とし、円で表示されていない場合には提供した仮想通貨のその時点での価格を参照するのが妥当と考えられる。

(ロ) 仮想通貨の生成(マイニング)
 台帳記録管理者がトランザクションの承認のためのブロック連結作業に成功し新たに生成される仮想通貨を取得すること(マイニング報酬)は、外からの経済的価値の流入として所得を構成すると考えられる。その所得の原因は、その仮想通貨の安全性や確実性を確保するための役務の提供であり、ネットワークの参加者のすべてが便益を得るものと考えられ、その対価に対応する役務を提供して対価を取得したときの所得と考えるべきであろう。

(ハ) その他
 仮想通貨で給与を支払うことに関しては、労働基準法その他による要件を満たす必要があるが、円建ての給与を仮想通貨で支払う場合には、円で示された給与の額を基準に源泉徴収を行うこととなる。労働の対価を現物給与として仮想通貨で支払うことになった場合には、その評価が論点となり得る。給与のみならず、源泉徴収の対象となる報酬や不動産の対価等を仮想通貨で支払う場合についても、同様である。
 国際課税の面では、仮想通貨のトレーディングやマイニングを行うことにより得られる所得について、国内源泉所得の判定等が論点となり得る。仮想通貨の取引はすべてインターネットの中での取引であり、資産の所在地によって国内・国外を観念することは困難であるが、なんらかの基準で判定する必要が生じうる。

ロ 消費税

(イ) 仮想通貨の取引等
 平成29年度改正において仮想通貨の譲渡に係る消費税が非課税とされたことにより、仮想通貨の移転に係る消費税の論点は解消されたものと考える。
 仮想通貨のマイニングの報酬に関しては、その行為がネットワークの維持・管理を目的として機械の計算能力を提供するものであることから、役務の提供ととらえることができる。しかし、このマイニングの報酬が役務の提供による反対給付として対価性を有するかどうかについては、役務の提供を受ける者、反対給付をする者の個別・具体的な存在が特定されないことからすれば、対価性を認識することは困難であり、消費税の対象とならないと考えられる。
 取引の承認により台帳記録管理者が得る手数料については、マイニングに成功した者がマイニングの報酬と同時に受け取るものである。提供する役務の内容及び取得の原因はマイニングと同様であるが、マイニングの報酬と異なる点は、役務の反対給付として手数料を負担する者が具体的に存在することである。この点に着目すれば資産の譲渡等として消費税の対象となると考えることもできる。手数料を消費税の対象とした場合、手数料を払った者にとっては課税仕入れに該当すると考えられるが、支払先が明らかでないことから、仕入税額控除の適用はないこととなる。仮想通貨のシステム上は支払先の特定は困難であるが、システムの維持コストとして必須と考えると、なんらかの対応が必要とも考えられる。しかしながら、支払う手数料の量は支払者が決めることができ、この支払が必ずしも義務ではないことから対価性がないとする考えや、手数料の支払先を具体的に特定することが困難であること等を考慮すると、消費税の対象外とすることが妥当であると考えられる。

(ロ) 仮想通貨の範囲
 改正された資金決済法は仮想通貨交換業を行う者に対して登録を受けることを義務づけており、登録の判断基準として仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨の適切性も判断要素とすることとしている。非課税の対象とされるのは資金決済法における仮想通貨であるが、仮想通貨交換業者が取り扱うものとされる仮想通貨以外の仮想通貨も存在しうるため、消費税において非課税となる資金決済法の仮想通貨に該当するかどうかは、金融当局における判断を参照しながら判定することが必要となると考えられる。

ハ 相続税
 相続が発生して相続財産に仮想通貨が含まれていた場合、仮想通貨は財産的価値を有することから当然に相続財産となる。その際、被相続人のウォレットで管理されていた秘密鍵が相続人に承継されなければ、被相続人が保有していた仮想通貨は処分できなくなる。この場合、理論上は価値がなくなった資産を相続したものとしてその価値をゼロと評価する、又は相続財産としないとすることも考えられる。しかし、秘密鍵が承継されていないという事実を当局が把握することは困難であるから、例えば、納税者からの反証がない限り死亡時の価格で相続されたものと推定するといった対応も必要と考えられる。
 財産の所在地は、制限納税義務者の課税関係に影響を与える。相続財産に仮想通貨が含まれる場合は、現行では被相続人の住所によって仮想通貨の所在地が判定される。仮想通貨の性質上、このような判断が妥当か、検討を要する。相続財産の所在地は、日本以外の国で相続税に相当する税が課された場合の外国税額控除の計算にも関連する。
 仮想通貨の評価に関して、仮想通貨の取引は相対で行われることがほとんどであり、一時点の価格は、取引によって区々である。相続財産の評価について、財産の種類を特定し、その評価方法について検討する必要がある。

(4)仮想通貨に係る課税手続の考察

イ 資料情報

(イ) 本人からの情報提供
 仮想通貨を保有している場合、財産債務調書や国外財産調書については、法令に基づき仮想通貨に関する情報を記載する必要があるとしている。その所在については、現行では調書を提出する者の所在によることとなる。しかしながら、例えば国外で仮想通貨を取り扱う業者の口座で仮想通貨を保有しているものは居住者が保有していても国外財産とすべきと考えられ、所在の判定の見直しが必要となる。

(ロ) 第三者からの情報提供
 仮想通貨の取引による所得の発生や財産の保有の情報の把握に資するため、その取得及び譲渡に係る情報を収集する必要がある。仮想通貨と法定通貨の交換等を行う者が仮想通貨交換業者として金融当局による規制の対象となり、犯罪収益移転防止法による特定事業者として顧客の本人確認義務を負うこととされたことから、仮想通貨交換業者に対し、顧客の情報(取引に関する情報を含む)の提出を義務付けることが考えられる。
 一方で、仮想通貨と法定通貨との交換が仮想通貨交換業者を通じずに(分散取引所として)行われることもあるため、このような情報を把握する別の方法が必要になる。
 また、CRS(共通報告基準)に基づく自動的情報交換のための制度が実施される。現時点では仮想通貨及び仮想通貨交換業者はこの制度の対象とされていないが、外国の交換所を通じた取引も容易であることから、これを対象とすべきである。

ロ 収納

(イ) 滞納処分
 納税者が国税を完納しない場合には、税務署長は納税者に納付を督促し、督促状の発出から10日を経過しても完納しないときは、財産を差し押さえなければならない。仮想通貨は、財産の分類としては、第三債務者のない無体財産権等に該当すると考えられる。財産の差押えが可能かどうかは、1財産が滞納者に帰属すること、2財産が国内にあること、3金銭的価値を有すること、4譲渡等が可能であること、とされているが、仮想通貨は1及び2の判定が難しいと考えられる。
 仮想通貨の帰属は、秘密鍵がどのように管理されているか(ウォレットの形態)によって異なると考えられる。また、財産が国内にあることの判定(仮想通貨の所在)は、相続税法第10条に準じて判定することとされ、現行では納税者の住所の所在により判定する。
 これらの要件を満たし、仮想通貨が滞納処分の対象となる財産に該当したときに、実際にどうやって差し押さえるか、技術的な検討を要する。

(ロ) 仮想通貨による納付
 仮想通貨が広く普及した場合、仮想通貨により税を納付するという発想もあり、国が仮想通貨によって収納することは広範な影響を及ぼすためハードルは相当高いと考えるが、決済サービスの一環として業者が代行して納付をするという要望はあるかもしれない。

3 結論

仮想通貨の税務上の取扱いに関し、それぞれの税目や手続等において考えられる論点を洗い出し、対応策を提示した。課税すべきとした論点は、具体的な手続等についてさらに検討を進める必要がある。また、納税者の予測可能性を高める観点からは必要に応じて取扱いを明らかにしていくべき点も多いと思われる。その際、取引の場所や財産の所在の判定などは、異なる税目においても共通の論点があるものが多く、全体のバランス、整合性の考慮も必要である。
 また、本研究では仮想通貨のみを取り上げて税務上の取扱いの現状と課題を考察したが、仮想通貨の基礎となっているブロックチェーンは財産的価値の移転のみならずさまざまな情報を対象としてその記録等の実施のための研究や実験がなされている。さらに、決済手段として仮想通貨を見た場合、決済手段の多様化は著しいものがあり、これらとのバランスも考える必要がある。
 取引の多様化や技術の急激な進歩により、税当局の対応も困難化・複雑化していくが、実態を適切に把握して対応していかなければならない。大きな変化に直面しており、今後、さらに研究を進める必要がある。


目次

項目 ページ
はじめに374
第1章 仮想通貨の現状と経緯376
第1節 仮想通貨の現状376
1 仮想通貨の特徴・定義376
2 仮想通貨の価値の移転の仕組み382
3 仮想通貨の新規発行・送金手数料385
4 仮想通貨の保有の方法(ウォレットの種類等)386
5 仮想通貨の価値の移転の原因となる取引389
6 仮想通貨の類型392
第2節 仮想通貨(主にビットコイン)のこれまで393
1 ビットコインの誕生393
2 ビットコインのその後のあゆみ393
第3節 仮想通貨の法的性質等395
1 通貨の意義、機能395
2 私法上の性質の考察397
3 ビットコイン引渡し請求事件399
4 外国の裁判例からみた仮想通貨の性質400
5 小括401
第2章 仮想通貨の課税の現状・経緯403
第1節 日本での仮想通貨の課税上の取扱い403
1 質問主意書403
2 自民党IT戦略特命委員会405
3 国会における答弁406
4 平成29年度税制改正406
5 その他408
第2節 諸外国の扱い408
1 税務上の取扱い408
2 ECJのVAT判決413
3 その他415
第3章 仮想通貨の課税に関する考察417
第1節 所得課税417
1 仮想通貨の移転417
2 新たに生成された仮想通貨の取得(いわゆる「マイニング」)421
3 仮想通貨の移転に伴う手数料423
4 その他の論点423
第2節 消費税427
1 仮想通貨の移転428
2 新たに生成された仮想通貨の取得428
3 仮想通貨の移転に伴う手数料430
4 非課税となる仮想通貨の範囲431
第3節 相続税432
1 課税財産432
2 相続財産の所在・評価433
第4章 仮想通貨の税務上の手続きに関する考察435
第1節 情報収集435
1 本人からの情報提供435
2 第三者からの情報提供436
3 米国における情報収集の事例438
第2節 収納に係る論点440
1 滞納処分440
2 納付445
第3節 その他の問題446
1 電子帳簿保存法に係る問題446
2 税務調査447
結びに代えて449

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