平成21年6月
大阪国税局

 脱税はいわば公共社会の敵というべきものであり、大口・悪質な脱税者の刑事責任を追及することなどを目的として、厳正な査察調査を実施しています。
 平成20年度(平成20年4月〜平成21年3月)においては、従来からの所得税・法人税事案に加え、社会・経済状況の変化を踏まえつつ、国際取引事案をはじめとする社会的に意義のある波及効果の高い事案の摘発に取り組んできました。
 今般、平成20年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

主要ポイント

  • 平成20年度に査察に着手した件数は46件です。
  • 平成20年度以前に着手した査察事案について、平成20年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は47件、そのうち検察庁に告発した件数は34件であり、その結果、告発率は72.3%となっています。
年度
項目
平成
16

17

18

19

20
着手件数
45

45

46

46

46
処理件数(A) 40 44 47 46 47
告発件数(B) 28 32 34 34 34
告発率(B/A)
70.0

72.7

72.3

73.9

72.3
平成16年度から平成20年度の着手・処理・告発件数、告発率の状況を表した図

2 脱税額の状況

主要ポイント

  • 平成20年度に処理した事件に係る脱税額は、総額で45億円、そのうち告発分は33億円です。
  • 告発した事件1件当たりの脱税額は、平均で9,800万円となっています。
年度
項目
平成
16

17

18

19

20
脱税額 総額 百万円
6,855
百万円
7,846
百万円
8,522
百万円
11,250
百万円
4,542
同上1件当たり 171 178 181 245 97
告発分 6,512 7,302 8,188 10,784 3,344
同上1件当たり 233 228 241 317 98

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

平成16年度から平成20年度の脱税額を表した図 平成16年度から平成20年度の1件当たりの脱税額を表した図

(参考1)大口事件の推移

年度
区分
平成
16

17

18

19

20
告発件数
28

32

34

34

34
うち脱税額が3億円以上 2 2 4 4 2

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事件の推移

主要ポイント

  • 平成20年度の税目別の告発事件数及び脱税額は、所得税事件が9件で8億1,600万円、法人税事件が22件で24億7,300万円であり、平成17年度以降、減少傾向にあった法人税事件が増加しました。一方、消費税事件については、平成19年度に比べ減少しましたが、依然として悪質な事案がみられます。

(参考2)税目別の件数

年度
区分
平成16 17 18 19 20
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
18

64

12

38

19

56

13

38

9

26
法人税 8 29 17 53 11 32 8 24 22 65
消費税 2 7 1 3 4 12 10 29 3 9
その他 2 6 3 9
合計 28 100 32 100 34 100 34 100 34 100

平成16年度から平成20年度の税目別告発事件の推移を表した図
(注) その他は、相続税及び源泉所得税である。

(参考3)税目別の脱税額

年度
区分
平成16 17 18 19 20
脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
1,992

31
百万円
1,313

18
百万円
6,089

74
百万円
1,521

14
百万円
816

24
法人税 4,223 65 2,310 32 1,777 22 1,323 12 2,473 74
消費税 297 4 273 3 322 4 930 9 55 2
その他 3,406 47 7,010 65
合計 6,512 100 7,302 100 8,188 100 10,784 100 3,344 100
平成16年度から平成20年度の税目別脱税額の推移を表した図

(注)

  • 1 その他は、相続税及び源泉所得税である。
  • 2 脱税額には、加算税額を含む。

4 国際取引事案等への取組状況

主要ポイント

  • 近年、国際取引事案、無申告事案、金融・証券関連事案など、最近の社会・経済状況を反映した事案について適切に処理を進めています。

(参考4)国際取引事案に係る脱税の手段・方法

  • (1) A社は、海外の仕入先に対する注文書を改ざんする方法で仕入代金を水増し、水増し分については、帳簿上、いったん、架空の買掛金として計上した後、現金で決済し、代表者が現金や預金として保管していました。
  • (2) B社は、海外の自社工場において製造過程で発生した鉄くず等の副産物の売上代金を除外するとともに、その代金を海外の金融機関の預金口座で管理するほか、海外の不動産の取得費用などに充てていました。

5 告発の多かった業種・取引と脱税の手段・方法等

主要ポイント

  • 平成20年度においては、不動産業、鉱物、金属材料卸が、平成19年度に引き続き、上位を占めています。

(参考5)告発の多かった業種・取引(2者以上)

18年度 19年度 20年度
業種 者数 業種 者数 業種 者数
パチンコ 5 人材派遣業 6 不動産業 5
鉱物・金属材料卸 5 鉱物、金属材料卸 5 鉱物、金属材料卸 3
建築材料卸 3 不動産業 5 介護サービス 3
建設業 2 商品、株式取引 4 電気機械器具製造 2
ソフトウェア業 2
人材派遣業 2

(注)同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(参考6)脱税の手段・方法等

告発の多かった業種・取引で見られた脱税の手口としては、1現金決済での売上げや特定の売上げを帳簿に計上しない方法、2取引先と通謀して仕入や経費を架空計上する方法、3架空の輸出免税売上げとそれに見合う架空の課税仕入れを計上することによる消費税の不正受還付が多く見られました。
 このほか、昨年に引き続き、実際の収支に基づかないいい加減な所得金額による申告が見られました。

6 不正資金の留保状況及び隠匿場所

主要ポイント

  • 脱税によって得た利益の多くは、現金、預貯金又は有価証券として所有・管理されていました。
  • 脱税により取得した簿外資産の特異な隠匿場所としては、居宅の納戸や鏡台などがありました。
  • (1) 脱税によって得た利益の多くは、現金、預貯金又は有価証券として所有・管理されていたほか、個人的遊興費として費消されているものも見受けられました。また、高級外車や不動産の購入に充てられているもののほか、海外の預金として留保されているケースも見受けられました。
  • (2) 脱税により取得した簿外資産等の隠匿場所は様々でしたが、
    • ○ 銀行の貸金庫(現金)
    • ○ 居宅の木箱内(現金)
    • ○ 居宅のスーツケース内(現金)
     に隠していたケースなどがありました。