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別紙

上場会社の自己株式の公開買付けに応じて受け取る金銭の額の全額が配当とみなされる場合の個人株主の課税関係について

1 事前照会の趣旨

当社は、上場会社であるA株式会社(以下「A社」といいます。)による自己株式の公開買付け(以下「本件公開買付け」といいます。)の買付決済をする金融商品取引業者です。
 本件公開買付けの直前におけるA社の資本金等の額(法人税法第2条《定義》第16号に規定する資本金等の額をいいます。以下同じです。)が零以下の場合、本件公開買付けに応じたA社の個人株主がA社から交付を受ける金銭の額(以下「本件買付価格」といいます。)の全額が配当等の額とみなされることになり、A社株式に係る譲渡所得等の収入金額は零円ということになります。
 この場合の本件公開買付けに応じることにより金銭の交付を受けたA社の個人株主(居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者をいいます。以下同じです。)のA社株式の譲渡に係る課税関係は下記のとおりと解してよろしいかお伺いします。

  • (1) A社株式の取得価額は、本件公開買付けに係るA社株式の譲渡所得等の金額の計算上、取得費又は必要経費として控除することができます(この結果、譲渡損失が生じることになります。)。
  • (2) 上記(1)のA社株式の譲渡所得等の金額の計算上生じた譲渡損失の金額について、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除》の適用があり、確定申告により、上場株式等に係る配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限ります。以下同じです。)と損益通算ができるとともに、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額について、翌年以後3年間にわたり、株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除できます。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  • (1) A社株式の上場
      東京証券取引所 上場
  • (2) 公開買付時期
      平成23年
  • (3) 買付価格(本件買付価格)
      普通株式1株につき「1,000円」
  • (4) A社の資本金等の額
      本件公開買付けの直前におけるA社の資本金等の額はマイナス

3 事前照会者の求める見解となることの理由

  • (1) 照会事項(1)について
     個人株主の所有する株式の発行法人による自己の株式の取得により、個人株主が金銭の交付を受けた場合、交付を受けた金銭の額のうち、その法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式に対応する部分の金額を超える部分の金額に係る金銭は配当等の額とみなされ(所法251四)、配当等の額とみなされる金額を除く部分の金額は、株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされます(措法37の103四)。
     そして、自己の株式の取得をする法人の自己の株式の取得の直前における資本金等の額が零以下の場合、資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式に対応する部分の金額は「零」とされていることから(所令612四)、交付を受けた金銭の額の全部が、配当等の額とみなされることになり、株式等に係る譲渡所得等の収入金額は零円となります。
     しかしながら、上場会社の自己株式の公開買付けは、そもそも公開買付価格に相当する価値がある株式として取引が行われる上場株式の譲渡であることから、措置法第37条の10第3項第4号の規定により、当該株式に係る譲渡所得等の収入金額が零円とされる場合であっても、当該上場会社の個人株主においては、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、当該株式の取得価額を取得費又は必要経費として控除することになるものと考えます(この結果、譲渡損失が生じることになります。)。
     したがって、本件公開買付けの場合、本件公開買付けに応じたA社の個人株主のA社株式に係る譲渡所得等の金額の計算上、A社株式の取得価額は、取得費又は必要経費として控除することができるものと考えます(この結果、譲渡損失が生じることになります。)。
  • (2) 照会事項(2)について
     措置法第37条の10第3項第4号の事由による上場株式等の譲渡により生じた譲渡損失の金額については、措置法第37条の12の2の適用があります(措法37の12の22四)。
      上記(1)のとおり、上場会社の自己株式の公開買付けは、措置法第37条の10第3項第4号の規定により、当該株式に係る譲渡所得等の収入金額が零円とされる場合であっても、当該株式の取得価額を控除することによって上場株式等に係る譲渡損失の金額を認識することになりますので、その譲渡損失の金額については、措置法第37条の12の2の適用があり、確定申告により、上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算ができるとともに、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除できることになるものと考えます。
     この点については、上場会社の自己の株式の取得の場合、譲渡損失が生じていながら配当に課税が行われることによって、結果としてその株主が公開買付けに応じないことがあるという事情等に配慮し、みなし配当課税(所法251四)を行わず、株式等に係る譲渡所得等として課税することとしていた旧措置法第9条の6《上場会社等の自己の株式の公開買付けの場合のみなし配当課税の特例》が、平成21年分から上場株式等に係る譲渡損失と配当所得の損益通算が可能となったことによって(措法37の12の212四)、平成22年度税制改正により廃止されたことからも明らかと考えます。
     したがって、本件公開買付けに応じることにより金銭の交付を受けたA社の個人株主のA社株式の譲渡所得等の金額の計算上生じた譲渡損失の金額について、措置法第37条の12の2の適用があるものと考えます。