[令和5年4月1日現在法令等]

対象税目

源泉所得税

概要

役員または使用人に退職手当等を支払うとき、同じ年に既に他の会社などから退職手当等を支払われていることがあります。また、一つの会社を退職するとき、会社のほかに企業年金基金などから退職手当等とみなす一時金が支払われることもあります。このように他の支払者からその年中に支払済の退職手当等がある場合には、支払者は他の支払者が支払った退職手当等も含めて源泉徴収税額を計算しなければなりません。

また、退職手当等の支払を受ける者は、その支払を受ける時までに、支払者に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要がありますが、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等がある場合には、申告書にその支払済の退職手当等の支払者の氏名(名称)、退職手当等の額、源泉徴収された税額、支払年月日および勤続年数などを記入し、その支払済の退職手当等の「退職所得の源泉徴収票」を添付して提出する必要があります。なお、複数の支払者に同時に申告書を提出する場合には、申告書にその提出の順位を記載することとされています。

計算方法・計算式

退職手当等の支払者が、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等が記載された退職所得の受給に関する申告書の提出を受けた場合には、次のとおり源泉徴収税額の算出を行います。

1 支払済の他の退職手当等の額と今回の退職手当等の額を合計し退職所得の収入金額とします。

2 支払済の他の退職手当等の勤続期間と今回の退職手当等の勤続期間のうち最も長い勤続期間により勤続年数を算出します。ただし、その最も長い期間以外の期間のうちにその最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その重複しない部分の期間を最も長い期間に加算して勤続年数を計算します。この勤続年数に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げます。

3 上記2の勤続年数を基にして退職所得控除額を算出します。なお、本年分の退職手当等が前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間を通算して計算されている場合や前年以前4年間(確定拠出年金の老齢給付金を受給した年分は前年以前14年間(令和4年4月1日以後に支払を受けるべきものは前年以前19年間))に他の支払者から支払われた退職手当等がある場合には、本年分の退職手当等の勤続期間と前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間とが重複する期間の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)に基づき計算した退職所得控除相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。

4 上記1の退職所得の収入金額から上記3の退職所得控除額を控除した残額に2分の1を乗じて課税退職所得金額(1,000円未満切捨て)を算出します。

なお、退職手当等の収入金額のうち、役員等としての勤続年数が5年以下の者が、役員等としての勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けたもの(特定役員退職手当等)については、計算過程で2分の1にしません。

(注) 令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等で、短期勤続年数(役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については、役員等として勤務した期間がある場合には、その期間を含めて計算します。)に対応する退職手当金等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの(短期退職手当等)については、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分の金額については、2分の1にしません。

5 上記4の課税退職所得金額に、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を適用し税額(1円未満切捨て)を算出します。

6 上記5の税額から支払済の他の退職手当等の源泉徴収税額を控除して、今回の退職手当等の源泉徴収税額を算出します。なお、控除後の額がマイナスとなる場合には源泉徴収税額はないことになります。この場合、マイナスの金額の還付を受けるためには、退職手当等の受給者本人が確定申告をする必要があります。

※ 同じ年に一般退職手当等(退職手当等のうち、特定役員退職手当等および短期退職手当等のいずれにも該当しないものをいいます。)、特定役員退職手当等または短期退職手当等のうち、2以上の退職手当等がある場合には、源泉徴収税額の計算方法が異なります。詳細については、コード2741「同じ年に一般退職手当等のほか、短期退職手当等や特定役員退職手当等がある場合」を参照してください。

具体的な源泉徴収税額の計算の仕方については、下記の「具体例」を参考にしてください。

具体例

甲さんは、令和3年にA社とB社を退職します。勤続期間および受給する退職手当は次のとおりです。

A社 就職日:平成24年4月1日 退職日:令和3年3月31日

退職手当支給月:令和3年5月

退職手当支給額:400万円

「退職所得の受給に関する申告書」を支払者へ提出します。

B社 就職日:平成26年4月1日 退職日:令和3年7月31日

退職手当支給月:令和3年9月

退職手当支給額:180万円

「退職所得の受給に関する申告書」およびA社から交付を受ける退職所得の源泉徴収票を支払者へ提出します。

<A社の場合>

甲さんにとって、その年最初の退職手当の受給となるので、A社は以下のとおり勤続年数(就職日から退職日)を計算し退職所得控除額を計算した上で、源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額を計算します。

イ 勤続期間の計算

勤続期間は平成24年4月1日から令和3年3月31日ですから、勤続年数は9年となります。

ロ 退職所得控除額の計算

退職所得控除額は、次の表のとおりです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

40万円×9年=360万円

退職所得控除額は、360万円になります。

ハ 課税退職所得金額の計算

退職手当支給額から、上記ロで計算した退職所得控除額を差し引いた金額を2分の1にします(2分の1にした金額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。)。

(400万円-360万円)×1/2=20万円

課税退職所得金額は、20万円になります。

ニ 源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額の計算

上記ハで求めた課税退職所得金額に応じて、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額を求めます(求めた税額に1円未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てます。)。

20万円×5%×102.1%=10,210円

A社が源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、10,210円となります。

<B社の場合>

甲さんにとって、その年2か所目の退職手当の受給となりますので、B社では既に支払を受けたA社からの退職手当も含めて源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額を計算します。

イ 勤続年数の計算

最も長い勤続期間はA社ですので、A社の勤続期間にA社と重複しないB社の勤続期間を加算します。これは、甲さんの最も古い就職の日から今回の退職の日までの期間と同じになりますので、最も古いA社の就職の日(平成24年4月1日)からB社の退職の日(令和3年7月31日)までの9年4か月となります。1年未満の端数は1年に切り上げますので、勤続年数は10年になります。

ロ 退職所得控除額の計算

上記退職所得控除額の表に基づき計算すると

40万円×10年=400万円

退職所得控除額は400万円になります。

ハ 課税退職所得金額の計算

A社とB社の退職金を合計した金額から、上記ロで計算した退職所得控除額を差し引いた金額を2分の1にします(2分の1にした金額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。)。

{(400万円+180万円)-400万円}×1/2=90万円

課税退職所得金額は、90万円になります。

ニ 源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額の計算

上記ハで求めた課税退職所得金額に応じて、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い所得税および復興特別所得税の額を求めます(求めた税額に1円未満の端数がある場合にはその端数を切り捨てます。)。

90万円×5%×102.1%=45,945円

A社の退職金について源泉徴収された所得税および復興特別所得税の額10,210円を差し引きます。

45,945円-10,210円=35,735円

B社が源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、35,735円になります。

根拠法令等

通法118、119、通令40、所法30、120、122、201、203、所令69、所規77、所基通201-2、復興財確法28、31

関連リンク

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退職所得の受給に関する申告書に支払済の退職手当を記載しないで提出した場合の是正方法

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