この度の東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
 この震災により被害を受けた財産の相続税又は贈与税における評価方法等は、次のとおりです。

1-1 震災前(平成23年3月10日以前)に取得した特定土地等

 次により取得した特定土地等で、平成23年3月11日において所有していたものの価額は、その取得の時の時価によらず、「震災の発生直後の価額(震災後を基準とした価額)」によることができます。

  1. 丸1 平成22年5月11日から平成23年3月10日までの間に相続等により取得
  2. 丸2 平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得

 「震災の発生直後の価額」は、原則として、指定地域内の一定の地域ごとに定めた「調整率」を平成23年分の路線価及び評価倍率に乗じて計算することができます。

「調整率」は、国税庁ホームページに掲載しています(財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(www.rosenka.nta.go.jp))。

(注)

  1. 「特定土地等」とは、東日本大震災により相当な被害を受けた地域として財務大臣の指定する地域(以下「指定地域」といいます。)内にある土地等をいいます。
  2. 「指定地域」とは、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県の全域並びに埼玉県加須市(旧北川辺町及び旧大利根町の区域に限ります。)、埼玉県久喜市、新潟県十日町市、新潟県中魚沼郡津南町及び長野県下水内郡栄村をいいます。
  3. 平成22年中に相続等又は贈与により取得した特定土地等を倍率方式により評価する場合の固定資産税評価額は、平成22年度のものではなく、平成23年度のものによります。
  4. 原子力発電所の事故に関する「警戒区域」、「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」内にある特定土地等については、評価しないこととします。なお、申告書には、その価額を「0」として記載することになります。

【参考:災害減免措置(土地等の場合)の計算方法について】

 震災前に相続等又は贈与により取得した土地等(特定土地等に限りません。)が、申告期限前に被害を受けた場合には、一定の要件に該当すれば、被害を受けた土地等の価額から次表のとおり計算した被害を受けた部分の価額を控除して相続税又は贈与税を計算することができます。

被害の区分 被害を受けた部分の価額の計算方法
地割れなどの被害 地割れなどの被害が生じた場合は、その原状回復費用の見積額の80%相当額をその土地等の被害を受けた部分の価額とすることができます。
津波などによる水没の被害 土地等が海面下に没した場合(その状態が一時的なものである場合を除きます。)は、その土地等の価額の全額を被害を受けた部分の価額とすることができます。
液状化現象による被害
  1. 丸1 家屋が傾くなどの被害が生じた場合は、家屋の被害として減免措置の計算を行います(1-3を参照してください。)。
  2. 丸2 丸1以外の庭の陥没などの被害が生じた場合は、その原状回復費用の見積額の80%相当額をその土地等の被害を受けた部分の価額とすることができます。

(注) 一定の要件に該当する場合とは、次の丸1又は丸2のいずれかに該当する場合をいいます。

  1. 丸1 相続税又は贈与税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税については債務控除後の価額)のうちに被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること。
  2. 丸2 相続税又は贈与税の課税価格の計算の基礎となった動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産(土地及び土地の上に存する権利を除きます。)及び立木(以下この(注)において「動産等」といいます。)の価額のうちに動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること。

1-2 震災前(平成23年3月10日以前)に取得した特定株式等

次により取得した特定株式等で、平成23年3月11日において所有していたものの価額は、その取得の時の時価によらず、「震災の発生直後の価額(震災後を基準とした価額)」によることができます。

  1. 丸1 平成22年5月11日から平成23年3月10日までの間に相続等により取得
  2. 丸2 平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得

「震災の発生直後の価額」については、次のとおり評価することができます。

(注) 「特定株式等」とは、指定地域内にあった動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産、不動産の上に存する権利及び立木(以下「動産等」といいます。)の価額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等(上場株式等を除きます。)をいいます(10分の3以上であるかどうかの判定は、その株式等を取得した時の相続税評価額により行います。)。

(1) 類似業種比準方式

 特定株式等を類似業種比準方式により評価する場合には、その法人の見積利益金額を比準要素(配当金額、利益金額、純資産価額)に反映させて計算することができます。

(注) 「見積利益金額」とは、震災の発生直後の状況に基づいて合理的に見積もった震災の発生日を含む事業年度の所得金額を基として計算した利益金額の見積額をいいます。

(2) 純資産価額方式

 特定株式等を純資産価額方式により評価する場合には、相続等又は贈与により株式等を取得した時において法人が保有していた各資産のうち、平成23年3月11日において保有していた指定地域内にあった動産等について、その動産等の状況が震災の発生直後の現況にあったものとみなして評価した価額により総資産価額を計算することができます。

(3) 配当還元方式

 特定株式等を配当還元方式により評価する場合には、「その株式に係る年配当金額」を上記(1)の見積利益金額を反映させた配当金額(その金額が2円50銭未満のものにあっては、2円50銭とします。)によって計算することができます。

1-3 震災前(平成23年3月10日以前)に取得した家屋

 震災前に相続等又は贈与により取得した家屋が、申告期限前に被害を受けた場合には、一定の要件に該当すれば、災害減免措置の対象になります。
 詳しくは、「東日本大震災により家屋や自動車などに被害を受けられた方の相続税又は贈与税の災害減免措置のあらまし」相02をご覧ください。

2-1 震災後(平成23年3月11日以後)に取得した土地等

 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に相続等又は贈与により取得した土地等の評価方法は、次の「表1」、「表2」のとおりです。

【表1】

指定地域内にある土地等 指定地域外にある土地等
平成23年分の路線価及び評価倍率に「調整率」を乗じて計算することができます。 平成23年分の路線価及び評価倍率により計算します。

(注) 「指定地域」については、1-1(注)2を参照してください。

 「調整率」は、国税庁ホームページに掲載しています(財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(www.rosenka.nta.go.jp))。

矢印

更に、被害の区分に応じて、次の「表2」のとおり評価することができます。

【表2】

被害の区分 評価方法等
地割れなどの被害 地割れなどの被害が生じた場合は、その原状回復費用相当額(原状回復費用の見積額の80%相当額又は市街地農地等の評価に係る宅地造成費相当額から算定した金額)をその土地等の価額から控除することができます。
津波などによる水没の被害 海面下に没した場合(その状態が一時的なものである場合を除きます。)の土地等については、評価しないこととします。なお、申告書には、その価額を「0」として記載することになります。
液状化現象による被害
  • 丸1 家屋が傾くなどの被害が生じた場合は、原則として、家屋の価額から減額します(2-3を参照してください。)。
  • 丸2 丸1以外に庭の陥没などの被害が生じた場合は、その原状回復費用相当額(原状回復費用の見積額の80%相当額又は市街地農地等の評価に係る宅地造成費相当額から算定した金額)をその土地等の価額から控除することができます。

(注) 原子力発電所の事故に関する「警戒区域」、「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」内にある土地等については、評価しないこととします。なお、申告書には、その価額を「0」として記載することになります。

2-2 震災後(平成23年3月11日以後)に取得した株式等

 平成23年3月11日から同日を含むその法人の事業年度末までの間に相続等又は贈与により取得した指定地域内に保有する資産の割合が高い法人の株式等(平成23年3月11日において、指定地域内にあった動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産、不動産の上に存する権利及び立木の価額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等(上場株式等を除きます。))を類似業種比準方式及び配当還元方式により評価する場合には、1-2に準じて計算することができます。

2-3 震災後(平成23年3月11日以後)に取得した家屋

 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に相続等又は贈与により取得した家屋の評価方法は、次のとおりです。

(1) 被災した家屋の評価方法

 震災後に相続等又は贈与により取得した被災した家屋について、被災後の現況に応じて固定資産税評価額が改定されていない場合には、次の算式のとおり計算することができます。

【被災した家屋の評価についての算式】

(平成23年度の固定資産税評価額×1.0倍)-(平成23年度の固定資産税評価額×市町村の条例等に基づく、被災家屋に係る固定資産税の軽減または免除の割合)

(2) 被災した家屋について、修理、改良等を行っている場合の評価方法

 上記(1)の家屋について、震災の発生直後から課税時期までの間に修理、改良等を行っている場合は、次の算式のとおり計算します。

【被災した家屋の評価について、修理、改良等を行っている場合の算式】

上記(1)により計算した金額+(震災の発生直後から課税時期までの間に投下したその修理、改良などに係る費用×70%)

(注)

  1. 上記(1)により計算した金額と修理、改良等(増改築等を除きます。)に係る費用の70%相当額の合計額が、平成23年度の固定資産税評価額を超える場合は、平成23年度の固定資産税評価額により評価して差し支えありません。
  2. 震災により被災した家屋の修理に併せて、増改築等を行っている場合については、その工事の費用の70%相当額を上記((注)1を含みます。)により計算した価額に加算します。

3 「調整率」を用いた評価方法の具体的な計算例

(1) 路線価方式

【所在:○○市△△町】(宅地)

平成23年分の路線価×調整率=調整率適用後の路線価、調整率適用後の路線価×(奥行25メートルに応ずる奥行価格補正率)=(1平方メートル当たりの価格)、(1平方メートル当たりの価格)×(地積)=(自用地の価格)

(2) 倍率方式

【所在:○○市◇◇町】(宅地)

(平成23年分の評価倍率)1.1×(調整率)0.75=(超背率適用後の評価倍率)0.825、(平成23年度の固定資産税評価額)5,000,000円×(調整率適用後の評価倍率)0.825=(自用地の価格)4,125,000円

 この情報は、平成23年11月1日現在の法令に基づいて作成しています。