法人の平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に終了する各事業年度又は平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において生じた繰戻対象震災損失金額がある場合には、その繰戻対象震災損失金額に係る事業年度又は中間期間(以下「震災欠損事業年度」といいます。)開始の日前2年以内に開始した事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)の法人税額のうちその繰戻対象震災損失金額に対応する部分の金額の還付を受けることができる制度が創設されました。
この制度の適用に関して、次のような事項を明らかにしています。
繰戻対象震災損失金額の基となる震災損失の額とは、被災した資産の原状回復のための修繕費用等のほか、震災による資産の滅失損や評価損をいうものとされています。
このため、東日本大震災(以下「災害」といいます。)により著しく損傷しその価値が減少した棚卸資産又は固定資産(以下「被災棚卸資産等」といいます。)をその災害のあった日を含む事業年度に譲渡した場合の譲渡損は、資産の滅失損や評価損のいずれにも当たらないため、震災損失の額には含まれないのではないかという疑義が生じます。
この点について、災害により著しく損傷しその価値が減少した被災棚卸資産等について生じた譲渡損失の額の中には、評価損に該当する金額が含まれていることも考えられます。
そこで、本通達においては、法人が、災害により被災棚卸資産等を譲渡したことにより生じた損失の額のうち被害を受けたことに起因する評価損に相当する金額を震災損失の額として処理している場合には、その処理が認められることを明らかにしています。
平成23年4月18日付「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)においては、被災棚卸資産等の修繕等のために要する費用を災害損失特別勘定として繰り入れることを認めています。
また、本制度の対象となる繰戻対象震災損失金額には、被災棚卸資産等の原状回復のために支出する修繕費等に係る損失の額が含まれることとされています。
このため、本制度の対象となる繰戻対象震災損失金額に災害損失特別勘定の繰入額が含まれるかどうかという疑義が生じます。
この点について、災害損失特別勘定は、被災棚卸資産等の修繕等のために要する費用で、災害のあった日から1年以内に支出すると見込まれるものとして適正に見積もることができるものを災害のあった日を含む事業年度の損金の額に算入するものであり、本制度の「被災棚卸資産等の原状回復のために支出する修繕費等」に該当します。
そこで、本通達においては、災害損失特別勘定への繰入額は、本制度における震災損失の額に含まれることを明らかにしています。
青色申告法人である中小法人等については、法人税法第80条第1項《欠損金の繰戻しによる還付》に規定する青色欠損金の繰戻し還付制度の適用を受けることができることとされています。
そこで、その中小法人等につき、震災欠損事業年度において、本制度の適用を受ける繰戻対象震災損失金額とそれ以外の青色欠損金額がある場合、その青色欠損金額について青色欠損金の繰戻し還付制度の適用を受けることができるかどうかという疑義が生じます。
この点について、法令上、本制度と青色欠損金の繰戻し還付制度はそれぞれ独立した制度であることから両方の適用を受けることができることとされており、本制度の適用を受ける繰戻対象震災損失金額以外の青色欠損金額については青色欠損金の繰戻し還付制度の適用を受けることができます。
本通達においてはこのことを明らかにしています。
還付所得事業年度が2以上ある場合、繰戻対象震災損失金額をいずれの還付所得事業年度に配分するかについては法人の任意なのか、それとも一定の定めがあるのかという疑義が生じます。
この点について、法令上、繰戻対象震災損失金額をいずれの還付所得事業年度に繰り戻すかについて特段の定めは置かれていないことから、その配分は法人が任意に決めることができることとされています。
本通達においてはこのことを明らかにしています。
法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの間に、災害により滅失若しくは損壊した建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具の代替資産の取得等をしてその事業の用に供した場合又は建物、構築物、機械及び装置の取得等をして被災区域内においてその事業の用に供した場合には、これらの減価償却資産の取得価額にその取得等の時期に応じた償却割合を乗じた金額の特別償却ができる制度が創設されました。
この制度の適用に関して、次のような事項を明らかにしています。
法人が、被災建物に代わるものとして同一の用途に供される建物(以下「被災代替建物」といいます。)を取得した場合、その被災代替建物の床面積が被災建物の床面積の1.5倍を超えるときには、その超える部分は特別償却の対象外とされます。
このため、一の被災建物に対して2以上の被災代替建物の取得をした場合において、その床面積の合計が当該被災建物の床面積の1.5倍を超えるとき、当該2以上の被災代替建物のどの部分を特別償却の対象としてよいかという疑義が生じます。
この点について、当該2以上の建物はいずれも被災代替建物であることから、その床面積のうちいずれを当該被災建物の床面積の1.5倍に相当する部分とするかは、法人が任意に決めることができます。
本通達においてはこのことを明らかにしています。
本制度の適用上、被災代替資産等に該当する機械及び装置、車両運搬具等については、自己の事業の用に供することを要し、他に貸し付けるような場合にはその適用がないこととされています。
このため、法人がその取得等をした機械及び装置を自己の下請業者に貸与した場合には、貸付けの用に供したものとして本制度の適用は受けられなくなるのかという疑義が生じます。
この点について、貸付けの用といっても、法人が専属の下請業者に対して、その製品の加工等をさせるために貸与する機械及び装置については、当該法人が自ら事業の用に供しているとみることができます。
そこで、本通達においては、法人が、機械及び装置を自己の下請業者に貸与した場合において、その機械及び装置が専ら当該法人のためにする製品の加工等の用に供されるものであるときは、自己の事業の用に供したものとして取り扱うこととすることを明らかにしています。
また、法人が、車両運搬具を自己の下請業者に貸与した場合においても、その車両運搬具が専ら当該法人のためにする商品、製品等の運送の用に供されるものであるときは、機械及び装置の場合と同様に取り扱われることを明らかにしています。
法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの期間(以下「対象期間」といいます。)内に、次の買換えを行った場合には、その買換えに係る対象期間内に資産の譲渡をして、その譲渡の日を含む事業年度において取得をし、かつ、その取得の日から1年以内にその事業の用に供する資産について、その譲渡をした資産に係る譲渡利益金額に相当する金額の範囲内で圧縮記帳ができる制度が創設されました。
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