(参考)  経営相談における取組み事例等
 ここには、調査対象企業に対し実施した経営相談結果をまとめたレポートより、一部を抜粋して取組み事例等として整理している。

1.人材育成及び人事・組織管理事業

(1)人材育成

事業の実施状況

事業の効果

事業実施上の問題点

 経営幹部及び管理者の一部を中小企業大学校での経営管理講座へ派遣。また、管理者及び一般社員の一部は、所属する卸センター協同組合が主催する経営管理の研修プログラム及びパソコン教室へ参加している。  社員研修を毎年実施してきたことにより、経営幹部及び管理者においては基本的経営管理への理解が進んでいる。また、管理者及び一般社員が参加しているパソコン教室を通して、社内での情報技術活用の意識、知識の統一化が図られつつある。特に営業社員では、取得したパソコン技能を生かして、取引先へのツール(販促用POP広告など)の提供、更には、棚割ソフトを駆使して合理的な売場提案を行うなど、リテールサポートの面でも効果が出ている。また、事務処理全般においてパソコン利用の効率化が図られている。  社員研修において、業務の推進に不可欠なパソコン教育には積極的に取り組む半面、長期的な視点からの人材育成は十分には推進されていないと思われる。それが、結果的に、全体的な管理者及び一般社員の意識と技能の向上に影響を与えていることが懸念される。
 国税局主催の酒類卸売業者対象の講習会に社長が受講している。しかし、従業員対象の研修会の参加や自社独自の研修会などは開催していない。  講習会のテキストを社員にも回覧しているが、理論としては理解しても現実的に実現が難しく、具体的な効果は上げていない。  人員が不足しており、募集しても採用までには至っていない。そのため、昼食の休憩時間も十分に取らずに仕事をしているような状況なので、研修を受ける時間的な余裕がない。
 社員一斉の階層別教育はしていないが、参加者を指名した単発での営業研修、国内外の視察研修などをしてきた(清酒メーカー主催の酒造り研修、商工団体主催の計数管理や財務管理等の講習会など)。  小売の現場の理解に繋がるなど、仕事の理解、動機付けになった。  教育体系、教育メニューやプログラム、予算など体系的な教育・訓練制度を有していない。また、教育・訓練の効果測定や評価の仕組みがない。
 新人研修に関しては3日かけて社長が業界情報や商品知識などを中心に座学を行い、配送ルートなど現場の事は現場長がOJTで指導する。さらにフォークリフトの運転研修を4日間実施する。また製造工程を学ぶために造り酒屋に派遣して視察研修を行っている。  製造工程の現場を視察体験する事で、その苦労がわかり、安易な値引き販売を防止することに役立っている。  
 営業担当者に簿記3級、販売士等の資格を取得させた。  顧客のバランスシートを読めるようになり、与信管理、資金回収に活用している。  組合主催の研修に適当な事業がなかった。また酒類メーカーの教育、研修会は、ここ5年開催されなかった。
 酒類メーカーが、人材育成、教育の面で定期的に(年2回)フォローをしてくれている。テーマは、リテールサポートの方法、在庫管理などであり、年によってテーマが変わり、具体的な管理手法などの内容も含んでいる。現在は、ほぼ全社員が受講している。  具体的な管理方法などについては、営業などの担当ごとに意識の高揚は見られる。  研修によるモチベーションの向上が、一過性のものになってしまう面も強い。
 平成17年度・18年度の2年間、半年に1回の割合で酒類メーカーから講師を派遣してもらい、営業研修を社員全員が受講した(研修費用はメーカーの全額負担)。主な研修内容は棚割りや債権確保であった。土日で一泊二日、一日あたり10時から17時までの7時間の研修である。  実際に現場で起きている問題点を抽出して、討議していることで従業員個々が気づきを感じはじめた。  研修は続けなければならないが、得意先の都合で翻弄されることが多い。
 社内での会議・打ち合わせについては随時実施しており、メーカーとの情報交換も欠かさない。
 外部機関を利用しての研修には随時参加しているが、主に本社スタッフの参加が多い。会社法の改正や人事労務に関する研修会へ参加している。
 経営体力に見合った組織の規模やバランスを意識して維持していくことで、内部的にも組織としての意思統一に繋がっている。  本社及び支店ともに全社的にコスト意識を徹底して教育していくことが今後の課題である。
 社員の研修受講としては、平成15年に、「経営分析方法」に2名、「EXCELによる資金繰表作成」に参加した。  研修受講社員の意識改革が見られた。資金繰表については現在もこの時の方法により作成し利用している。  研修については、自社単独では実施が困難であり、外部主催の研修に派遣したいが、適当なものがなかなか見つからない。特に最近はメーカー主催の研修がほとんど子会社に対するものになり、特約店向け研修が無くなったので、受講の機会が無くなってきている。

(2)人事・組織管理

事業の実施状況

事業の効果

事業実施上の問題点

 年度別達成目標を定めた給与体系改革の実施など、酒類卸売業としてのコスト管理の徹底の観点からの人事・組織・業務の見直しは体系的に実施されているとは言えない。ただし、業務改善の視点から、目標値を設けた組織簡素化、総人員削減のための業務見直し、合理化を実施している。具体的には、人員抑制や正社員からパート・アルバイト従業員への切り替えによる人件費の抑制、及び合理化による一般管理費の抑制を実行した。  業務改善の視点からの組織簡素化、総人員削減のための業務見直し、合理化においては一定の成果は達成されていると考えられる。固定費全般の低減が実現している。  業務改善の視点からの組織簡素化、総人員削減のための業務見直し、合理化は進んでいるが、依然として営業損益段階ではマイナス基調が続くなど、経営成果面では業務改善の効果は十分現れていない。また、人事評価においては経営者の判断に依存する面が強いこと、賃金制度では成果給ではなく固定的な制度となっているなど、人事制度の硬直化傾向もうかがわれる。
 経営の合理化を進めるため、人員を減らし、社員の給料を引き下げるなどの組織体制のスリム化を図った。社員の給料は10〜15%の引下げを行った。  人員が削減されたことにより、他の社員の担当地域の仕事にも積極的に手伝い、協力し合うなど、社内が一体となって仕事に取り組む姿勢が顕著となった。  人員が不足しており、昼食の休憩時間も十分にとらず仕事をしている状況にある。
 これまで営業部員4人の体制できたが、18年9月より3人に、さらに19年1月からは2人体制にするリストラを断行した。各営業マンが担当する取引先を定期訪問する営業活動を見直し、受注と配送両面で効率の上がる取引先訪問を行うようにした。  人件費の削減とともに、無駄な営業活動を改め戦略的な営業活動を展開するようになってきている。小売店に対するリテールサポートに注力するよう変化してきている。  現在の営業マンは40歳代のベテランである。これまでの成功経験の延長線上での営業活動では、今日の経営環境に対応できないという意識改革の不十分さがある。また、当企業の取引先120のうち10軒ほどしか前向きな小売店がない。これら以外の消極的な小売店等の取引先のヤル気と反応のなさが、営業マンの意識改革を阻害している。
 コスト管理については売上の低下に伴い、毎年人員バランスを主に見直している。人件費は、退職者不補充、役員賞与ゼロ、給与・退職金の引下げ、販管費、物流費などの諸経費を中心に削減している。  販管費を平成17年度は前年と比べて1,500万円削減することができた。  営業マンの若手が39才であり、これまでの経験から営業スタイルは個人流になりがちであるが、業績の悪化に伴い、新入社員はここ10年以上採用していない。
事業所環境は3S(整理・整頓・清潔)が行き届き快適な職場環境を形成している。さらに、社員の接客、応対にも気をつけている。  社員の接客、応対は、来訪者に心地よい印象を与え、顧客満足度の観点からも評価は高い。