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酒類業の活性化支援の取組
酒類卸売業者の経営改善への取組み効果に関する調査報告書
(4) 新商品開発・販売戦略事業
第2章 相談事例に見る経営基盤強化事業実施上の問題点と対応方向等
1. 事業種類別の問題・課題と対応方向
(4) 新商品開発・販売戦略事業
具体的事業の内容
新商品開発・販売戦略分野に関して、酒類卸売業者が実施する具体的事業としては、以下の7つがある。
1) 酒類等の消費動向・販売動向に関する情報を収集・分析・加工・評価し、商品戦略、販売戦略に活用する。
2) 1)に基づき、次の項目等を重点的に、自ら利益商材を発掘・開発・研究する。売れ筋商品の中で、利益率の高い商品を研究・発掘する。
メーカー、小売業者及び飲料業者等と連携し、研究開発を行う。
同業他社と共同開発を行う。
商品開発等、新規事業の事例を研究する。
酒類等の開発輸入を研究する。
利益商材の試作、検討、テストマーケティングを行う。
3) ネットワークを活用して、得意先に対する売れ筋商品等の情報提供を行う。
4) 得意先との連鎖化を研究・実施する。
5) 同業他社あるいは取引先企業(メーカー及び小売業)と、共同マーケティング等を実施・展開する。地域別・季節別に商品を発掘・開発する。
6) 公正取引委員会から示された『酒類ガイドライン』に基づき、リベート供与基準(合理的な社内基準)を整備する。
7) 利益管理システムを研究・導入する。商品別・担当者別等、粗利益をリアルタイムに把握し、利益管理を徹底するために、コントロールできるシステムを研究・導入する。
事業の効果
新商品開発・販売戦略分野における事業の効果としては以下の5つが確認できた。
1) オリジナル商品を開発することで、他社と品揃え面で差別化することができた。
2) 売上高が増加した。
観光地における地酒販売等が、売上増に大きく寄与した。
焼酎ブームに乗った新商品の開発・展開により、売上増を実現した。一般消費者からの注文もこうした流れを加速させた。
3) 高い利益率が実現した。
新商品であるため、酒類ディスカウンター等で扱われることもなく、高い利益率が確保できた。
4) ブランドエクイティの強化につながった。
オリジナル商品の開発により、自社の知名度が向上。地元の観光物産施設での取扱いも開始した。
5) 小売業者・酒類メーカーに対する発言力が強化した。
新商品開発をキーに、地域内に同業者間での交流が促進され、小売業者、酒類メーカーに対する発言力が高まり、利益率が向上した。
コストに基づいてリベートを決めたので、交渉力が付いた。
実施上の問題点/実施しない理由
新商品開発・販売戦略分野を実施する際の問題点、及び実施しなかった理由としては、以下の6つが確認できた。
1) 採算に見合う需要が期待できないこと。
オリジナル商品を拡販していくには、商圏が狭小であり、また取引先小売店が中小零細性を有している。
焼酎ブーム等は依然として続いているが、こうしたブームがいつまで続くか分からない。人口も減少するなか、長期的に見た安定需要が期待できにくい。
メーカーの新商品開発や顧客の嗜好の変化が激しく、全種類にわたり商品ライフサイクルが短縮化しつつある。安定的な需要が見込めない。
売行きの見込み数量の把握が難しく(需要予測が難しい)、取組みが消極的になってしまう。
2) 在庫管理の難しさ。
地酒や焼酎は、地方のこだわりある酒類メーカーと新規口座開設を積極的に進めているが、計画量が未達の場合が多く、また継続的に量を確保するのが困難である。
3) 組織面における問題。
新商品開発・販売戦略事業を行ううえでの、各部署の役割と責任が明確でない。
4) 大手量販店における販売動向に左右されやすい。
人気商材に関しては、取引先の一般酒販店が扱う商品を、大手量販店がすぐ扱うようになる。
大手量販店との取引では、カット商品(売上げ不振等により、小売業で販売しなくなった商品)の返品も多い。
5) 支払いリベートに関する問題。
支払いリベートについては、競合他社の内容が把握困難であり、自社の水準が適正なものであるかどうか判断が付かない。
6) 企業戦略の欠如
企業戦略そのものが立てられておらず、新商品開発の重要性が理解されていないため、担当者任せになっている。
対応の方向
新商品開発・販売戦略分野に関する対応の方向としては、以下のような事項が必要である。
1) 新商品の開発・発掘
新商品開発の目的の一つは、酒類ディスカウンターや大手量販店との差別化である。これらの店のマーチャンダイジングを理解し、取り扱っていない商品を発掘する必要がある。また、消費者にどのような商品が望まれているか、消費者ニーズを収集・把握することも重要である。例えばPOSデータ、特売データ、顧客データに加え、家計調査等の統計資料等も活用する必要がある。
また、新商品の開発・発掘に際しては自社のみでは限界があるため、同業他社、得意先、酒類メーカー、さらには地元商工業団体や行政との連携を積極的に図っていく。なお、得意先等の他社と共同で商品開発することは売れなかった場合のリスクを小さくする効果もある。
さらに、NHKの大河ドラマ等に関連した商品開発・販売等、ブームの活用や酒だけでなく、地域産品等の食品を組み合わせたオリジナルギフト商材の開発等も考えられる。
2) 販売数量の確保
新商品が利益をもたらすためには一定の数量が販売できることが必要である。小売業者が行う、新商品に関する試飲会の開催やDMの展開、店頭におけるプロモーション(POP、エンド、マネキン販売等)に対し、サポートするとともに、現在の商圏では限界がある場合は観光物産施設における拡販、ネット販売の活用等を検討する。特に売れ筋情報の収集・発信にはIT活用が最適であるため、ホームページやメーリングリスト等を今以上に活用するための研究プロジェクトを立ち上げる。
3) 自社の戦略・体制の整備
このような新商品開発を行うに当たっては、自社の戦略における新商品開発・販売戦略事業の位置づけを明確にするとともに、必要な体制の整備を行わなければならない。
4) 支払いリベートの再設計
支払いリベートの認定基準としては、a.売上貢献度 b.利益貢献度 c.業務貢献度等を考慮することが必要である。そのためには取引先別のコストがどうなっているか等の実態把握を検討したい。リベートは取引の機微に触れるものなので他社の正確な状況は把握しづらいため、業界団体等が中心となった実態把握を行うことも考えられる。
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