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第2章 モデル事業推進に向けて

1. 自分のため、そして皆のため

 「事業は誰のために行うのか」という目的をはっきりさせなくてはならない。もちろん顧客のために展開するのであり、顧客のために自店は存在し続けなくてはならないが、結局、自店のためなのである。
 自ら単独で、競争に勝ち抜き、収益を維持成長させていけるのであれば、共同・連鎖化事業は不要かもしれない。しかし現実は、大資本の組織小売業との競争にさらされ、急展開しているIT化の流れについていけず、売上不振、収益悪化に陥っているのではないだろうか。
 同業者が力を出し合い、相乗効果を追求して、価値を創り出していくしかない。価値を分配活用することで、参加各店が元気を取り戻し、更に一層共同事業への参加意欲を高める。この好循環が、大きな価値を生み出していく。
 業界を守ることは重要だが、まずは自分のビジネスをしっかりと考えなくてはならない。発想のスタートをそこに置けば、必ず前向きにやらざるを得なくなる。起点を「皆のため」とすると、目的が希薄になってしまう。
 「まず自分が大切」。胸を張って主張しよう。

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2. 参加者の得意技を伸ばす

 共同事業で重要なのは、各自が強みを持ち合うことである。弱い者が、弱い武器を持って集まっても、何も変わらず弱いだけである。各自が、自分の持つ強みや特技を出し合いながら、強いビジネスを構築していくのである。
 ビジネスでは価値を創造する過程において、仕事を分担することが必要である。それぞれの職務は、当該分野を得意とする者に請け負ってもらうことが重要である。
 中小酒類小売業の経営者は、商売のあらゆる機能を果たさなくてはならないため、一芸を極めていくことができない。事業には様々な要素が存在しており、下記のような得意分野を持つ者を発掘し、適材適所の考えで人材を配置していかなくては、良好な成果を上げられない。

  • 商品開発が得意
  • 商品発掘が得意
  • 仕入交渉が得意
  • セール企画が得意
  • イベント企画が得意
  • 計数管理が得意
  • デザイン制作が得意
  • IT関連が得意
  • 調査企画が得意
  • 会議進行が得意
  • 宣伝が得意

 まだまだ力を発揮すべき領域は、存在している。展開活動に併せて自らの能力を最大限に発揮できる部分を担当し、成果を上げていかなくてはならない。誰かがやればいいという発想からは、成功は生まれない。楽しむつもりで担当しよう。

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3. 固定観念を捨てる

 「中小酒類小売業者はこうあるべきである」、そんな過去の観念は捨てたほうが良い。10年前の常識は、現在の非常識であることが多い。時代の変化に縛られることなく、自らの提案で新世界を切り開いていこう。
 酒が中小酒類小売業者にしかなかった状態と、数多くの小売店で売っている状態とは、まったく異質のものである。前者の中で長年過していた中小酒類小売業者が、その既成観念で行動しては、新しいものは生まれてこない。ゼロベース発想で取組むべきである。
 「酒」をテーマに共同事業を行う者もいる。「食材」をテーマに共同事業を行う者もいる。飲食以外をテーマにすることも行われている。
 「やりたいこと」に取組もう。法令順守さえできていれば、自由であることを再確認しよう。自店の経営は、自分の裁量で展開できる。共同事業は仲間と決めたことを自分たちの采配で運営できるのである。あてがい扶ちではない自由がある。
 「自由な発想」で新しい事業を展開できる機会を喜ぼう。

4. すべては自らが源

 ギブ&テイクは、共同事業の基本理念の一つである。自分だけ楽をしたり、得したりと言うことは成立しない。共同事業を自分のビジネスの売り先として捉える例が散見されるが、成功した試しがない。損を覚悟で提供を続け、結果最後に巡り巡って、利益が返ってくるようにしなくてはならない。「先に得したい。その後は還元するね。」と言うのであれば、テイク&ギブである。
 自分から一歩進んで貢献しよう。その発想や行動が、周囲にエネルギーを与え、求心力を創り出していくのである。
 まず自分が始める。続いて仲間とグループで始める。次に組合で始める。そして県で始める。最後に連合会で始める。徐々に広がる輪には勢いがある。
 気持ちが縮んでしまいがちな環境では、大きく拡張していく心を持って取組みたい。待っていても、何も始まらない。
 “千里の道も一歩から”
 あなた個人の力強い一歩で、大きな組織を動かしていこう。やるべき時期に来ていることは間違いない。

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