カルバミン酸エチルは、酒類を含む発酵食品に天然に存在する物質です。
 国際がん研究機関(IARC)において、平成19年に(おそらく発がん性があるとされるグループ)に分類された物質で、食品の成分等に関する国際規格を定めているコーデックス委員会等で近年、酒類、特に核果(注)を原料とした蒸留酒(核果蒸留酒)中のカルバミン酸エチルについて議論されています。
 コーデックス委員会においては規制値を定めるとの結論には至っておらず、我が国においても食品衛生法上の規制値はありませんが、酒類の安全性を所管する国税庁として、実態の調査等対応しているところです。

(注)さくらんぼ、もも、すもも、あんず等。

1 カルバミン酸エチルに関する最近の議論

年度 議論の内容
平成17年

 第64回FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が、カルバミン酸エチルのリスク評価を実施し、一般食品由来のリスクは少ないものの、ある種のアルコール飲料については低減化の努力をする必要がある旨の評価。

平成19年

 欧州食品安全機関(EFSA)がカルバミン酸エチルのリスク評価を実施し、特に核果を原料としたブランデーについて低減策が必要であり、前駆物質(カルバミン酸エチルが生成される化学反応の元となる物質)であるシアン化物も規制対象とする必要があるとの結論。

平成21年

 第3回コーデックス食品汚染物質部会において、核果蒸留酒中のカルバミン酸エチル低減のための実施規範策定のための新規作業開始について合意。

平成23年

 第34回コーデックス総会において、「核果蒸留酒中のカルバミン酸エチル汚染防止・低減のための実施規範」を採択。

2 国税庁の取組み

 国税庁では上のような議論も踏まえ、消費者の方に安心して酒類を飲用いただけるよう、次のような施策を行っています。

  1. (1) 酒類中のカルバミン酸エチルを減らすための技術について、独立行政法人酒類総合研究所で研究・開発しています。
  2. (2) 開発された技術は、国税局鑑定官室が実施する技術指導や講習会を通じて、酒類製造者の皆様に広くお伝えしています。

 酒類製造者が実施することのできる酒類中のカルバミン酸エチルを減らすために有効な対策については、以下のとおり取りまとめています。

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  1. ・ 核果蒸留酒のカルバミン酸エチルを減らすための方法について(PDF/149KB)
  2. ・ 清酒のカルバミン酸エチルを減らすための方法について(PDF/112KB)
  3. ・ 梅酒のカルバミン酸エチルを減らすための方法について(PDF/108KB)
  1. (3) 市販酒類中のカルバミン酸エチルについて調査を行います。なお、これまでの調査結果は以下のとおりです。
国産市販酒類中のカルバミン酸エチルの調査結果(国税庁調査)
品目等(注1) 調査点数 平均値(mg/L)(注2) 実施年度
核果蒸留酒 13 0.1 平成21年
清酒 100 0.06 平成24年
単式蒸留焼酎 47 0.01 平成22年
(参考)諸外国で実施された酒類中のカルバミン酸エチルの調査結果
品目等 調査点数 平均値(mg/kg)(注5) 実施年度(実施機関)
核果蒸留酒 3244 0.85 平成19年(EFSA)
清酒(注3) 90 0.073 平成17年(JECFA)
2 0.122
蒸留酒(ウイスキー)(注3)(注4) 205 0.029
30 0.032
  1. (注1)酒類中のカルバミン酸エチルについては、諸外国で様々な品目の酒類について調査が行われている一方で、我が国特有の酒類である清酒や単式蒸留焼酎についてはデータが不足していることから、今後の国際的な議論において適切に対応するため、これらについて体系的な調査を行うこととしたものです。
  2. (注2)カルバミン酸エチルについては規制値が存在しないことから、平均値を比較しています。
  3. (注3)複数の国等からデータを収集しているため、区分して表記されています。
  4. (注4)平成17年のJECFAのデータには単式蒸留焼酎のものが無いため、蒸留酒として唯一単独で区分集計されているウイスキーのデータを引用しました。
  5. (注5)JECFAの調査結果の単位は「mg/kg」と表記されておりますが、酒類においては「mg/L」とほぼ同一のものと考えて差し支えありません。