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徴徴4−2(例規)
昭和42年3月20日

国税局長 殿

国税庁長官

商法等の一部改正に伴う徴収事務の取扱いについて

 商法(明治32年法律第48号)および有限会社法(昭和13年法律第74号)の一部改正に伴う滞納処分等については、下記により取り扱われたい。
(理由)
 商法の一部を改正する法律(昭和41年法律第83号)により、商法および有限会社法の一部が改正されたことに伴う徴収事務の取扱いを定めたものである。

1 株式の譲渡制限と徴収事務

 株式会社(以下「会社」という。)は、株式の譲渡(相続その他の一般承継による株式の移転を除く。以下同じ。)について、取締役会の承認を要する旨の制限を設けることができるが((注)参照)、この譲渡制限は、滞納処分による株券の差押えおよび換価の支障とはならない(商法204条の5参照)。
 なお、国税徴収法(昭和34年法律第147号。以下「徴収法」という。)第35条(同族会社の第二次納税義務)第1項第2号の「株式の譲渡につき定款に制限がある」場合には該当しない。

(注) 株式の譲渡制限の定めは、株主総会の決議(商法348条)に基づいて定款に記載され(同法204条1項)、同法第350条(株券の提供)第1項の公告期間満了の時において、その効力を生ずる(同条2項)。
 また、この定めは、株券の記載事項(同法225条8号)および登記事項(同法188条。商業登記法86条の2参照)とされている。

2 譲渡制限のある株式の差押え

(1) 商法第350条第1項の規定によれば、株主総会で株式について譲渡制限の定めを設ける旨の決議をしたときは、会社は、一定の事項を一定期間公告するが、この公告期間内に会社に提出されなかつた既発行の株券は無効となるから、株券を差し押さえた場合には、すみやかに、株式の譲渡制限の有無および公告期間が経過している株券かどうかについて調査すること。

(2) 差し押さえた株券が、商法第350条第1項の公告期間経過により無効となつたものである場合には、その差押解除の手続をとるとともに、滞納者が株券交付請求権を有しているときは、会社を第三債務者としてその請求権を差し押さえること。この場合において、株券の交付を受けるために必要があるときは、無効となつている既発行の株券を徴収法第65条(債権証書の取上げ)の規定により取り上げるものとする。

(3) 株券の差押え中に、商法第350条第1項の規定による公告があつた場合には、公告期間内に、差押え中の株券を会社に提出し、譲渡制限の記載がある株券の交付を受けること。この場合においては、その株券について滞納処分の続行ができるものとするが、滞納者および徴収法第55条(質権者等に対する差押の通知)に規定する者に対して、その旨を通知することとする。

(4) 譲渡制限がある場合の株券の差押え中に、その制限が廃止または縮小された場合には(1の(注)参照)、株券を会社に提出し、株券上の株式の譲渡制限の記載のまつ消または訂正を受けること。

3 譲渡制限のある株式の換価

(1) 株式の換価にあたつては、譲渡制限の有無、譲渡制限の廃止の有無等について必ず確認すること(2の(1)、(4)参照)。

(2) 公売公告に、定款で株式の譲渡制限の定めがある旨を記載すること(徴収法95条1項9号)。

(3) 公売財産の買受人の資格を、会社が指定した者に制限することは、特に必要がある場合を除き、行なわないこと。

(注) 公売財産の買受人の資格を制限する必要がある場合には、その旨を公売公告に記載すること(徴収法95条1項7号)。

(4) 譲渡制限がある場合の株式を公売により取得した者は、商法第204条の5(競売、公売による取得者の場合)の規定により、会社に対して、その取得を承認しないときは株式を買い受けるべき者を指定すべきことを請求することができるが、この場合における請求の便宜のために、売却決定通知書を、公売による買受人に交付する取扱いとする。
 なお、商法第204条の5の「公売」には、随意契約による売却(徴収法5章3節3款)が含まれることに留意すること。

(5) 譲渡制限がある場合の株式(日本航空株式会社その他の特別の法律により設立された会社の株式を除く。)は、証券取引所に上場しないこととされているから(東京証券取引所の有価証券上場規程4条の規定による株券上場審査基準4条1項9号等)、徴収法第109条(随意契約による売却)第1項第2号の規定に該当することはない。

4 株式の譲渡を会社が承認しなかつた場合における滞納処分

 譲渡制限がある場合の株式を譲渡しようとする者(以下「譲渡人」という。)が商法第204条の2(株式の譲渡制限)第1項の規定による請求を会社にした場合において、会社が譲渡を承認せず、他に譲渡の相手方を指定(指定された者を、以下「被指定者」という。)したときにおける滞納処分については、次に留意すること。

(1) 被指定者が、商法第204条の3(指定された者の先買権)第1項の規定による請求を譲渡人に対してする場合には、一定の金額(同条2項参照)を供託することになるから、譲渡人の滞納処分として供託金の還付請求権を差し押えることができる。
 なお、供託額が売買価格(商法204条の4参照)をこえている場合または売買契約が解除された場合には、被指定者の滞納処分として、供託金の取りもどし請求権を差し押えることができる。

(2) (1)の供託金の還付または取りもどしを請求することができる時期は、売買価格が確定した時(売買価格につき協議が調つたときはその時、裁判所が売買価格を決定したときはその決定が確定した時、商法204条の4第3項の規定により供託額が売買価格とされたときは同条1項の期間経過の時)である(別紙昭和41年6月22日付民事甲第1787号民事局長通達(以下「別紙通達」という。)一の(3)の(ロ)参照)。

(3) (1)の供託金の還付または取りもどしの請求をする場合には、払渡請求書に記載すべき払渡しの事由は「売買価格確定」とし、供託規則第24条(還付請求の添附書類)第2号または第25条(取戻請求の添附書類)第2号の書面として売買価格につき協議がととのつたことを証する当事者の作成した協議書、売買価格決定に関する裁判所の謄本または売買価格決定のなかつたことを証する書面等の添附を要する(別紙通達一の(3)の(ニ)参照)。

(4) 譲渡人が商法第204条の3第4項の規定により株券を供託したときは、被指定者の滞納処分として、供託株券の還付請求権を差し押えることができる。
 なお、売買契約が解除された場合には、譲渡人の滞納処分として、供託株券の取もどし請求権を差し押えることができる。

(注) 譲渡人が商法第204条の3第4項の規定によつて株券の供託をするまでは、譲渡人の滞納処分として、その株券を差し押さえることができる。
 なお、上記による株券の差押えと(1)の本文による供託金の還付請求権の差押えとがある場合には、株券の差押えを解除して供託させる等、事情に応じて、いずれか一方の差押えを解除するものとする。

(5) (4)の供託株券の還付を請求することができる時期は、被指定者が株式の代金を支払つた時(売買価格が供託金額をこえないときは売買価格が確定した時、売買価格が供託金額をこえるときはその差額を支払つた時)である(別紙通達一の(3)の(ハ)参照)。

(6) (4)の供託株券の還付を請求する場合には、払渡請求書に記載すべき払渡しの事由は「売買価格確定」とし、供託規則第24条第2号の書面として(3)に揚げる書面のほか、売買代金が供託金額をこえるときはその差額を支払つたことを証する書面の添付を要する(別紙通達の一の(3)の(ホ)参照)。

5 記名株式を換価した場合の権利移転手続

 記名株式を換価した場合の権利移転手続は、株券の交付のみでよいから(商法205条参照)、徴収法第120条(有価証券の裏書等)に規定する手続は必要でないことを留意すること。

6 株券不発行および株券寄託の場合の滞納処分等

 記名株式については、株主が株券の所持を欲しない旨を会社に申し出たときは、会社は、自己の選択により、株券の発行をしない旨を株主名簿に記載し、または株券を銀行もしくは信託会社に寄託することになつたが、この場合の滞納処分については、次に留意すること。

(1) 株券不発行の場合には、株主である滞納者が会社に対して有する株券の交付請求権を差し押さえることができる。

(注) 上記の場合において、株券の交付に要する費用(商法226条の2第5項参照)は、徴収法第136条(滞納処分費の範囲)の「債権の取立てに要する費用」にあたる。

(2) 株券の交付請求権を差し押さえた場合には、それを、直接、換価することなく、株券を取り立てたうえで、その株券を換価するものとする。

(注) 上記の場合において、会社が株券の交付をしないときの処理については、昭和40年12月3日付徴徴4−10「株式会社が株券を発行しない場合における国のとりうべき手段について」通達参照。

(3) (1)の場合において、指定した期限までに会社が株券を交付しないときは、徴収法第35条第1項第2号の「株券の発行がないため譲渡するにつき支障がある」場合に該当する。

(4) 株券信託の場合には、株主である滞納者の滞納処分として、寄託された株券を、直接、差し押えることができる。この場合においては、徴収法第58条(第三者が占有する動産等の差押手続)の規定が適用される。
 なお、上記の場合には、徴収法第35条第1項第2号の「株券の発行がないため譲渡するにつき支障がある」場合に該当しないことに留意すること。

7 新株引受権証書の滞納処分

 商法第280条の6の2(新株引受権証書の発行と方式)の規定により発行された新株引受権証書は、徴収法第56条(差押の手続および効力発生時期等)第1項の「有価証券」に該当する(商法280条の6の3等参照)。
 なお、新株引受権証書が発行されている場合の株式の申込は、新株引受権証書によつて申込期日までにしないと失権するから、新株引受権証書の滞納処分にあたつては特に留意すること。

8 有限会社の社員の持分の滞納処分

 有限会社の社員の持分を、社員でない者に譲渡する場合には、すべて社員総会の承認を要するが、このことは滞納処分による持分の差押えおよび換価の支障とはならない(有限会社法19条5項参照)。
 なお、社員の持分の換価等については、3((1)および(5)を除く。)および4(株券の供託に関する部分を除く。)に準ずること。

【別紙】

 商法の一部を改正する法律の施行に伴う供託事務の取扱いについて(昭和41年6月22日付民事甲第1787号民事局長通達)

一 商法第204条ノ3の規定による供託

(1) 供託原因(略)

(2) 供託手続

(イ) 商法第204条ノ3第2項(被指定者の株券の帳簿価額に相当する金額の供託)の規定による供託の申請手続(略)

(ロ) 商法第204条ノ3第4項(譲渡人の株券の供託)の規定による供託の申請手続(略)

(ハ) (イ)および(ロ)の供託期日(略)

(3) 供託物の払渡

(イ) (2)の(イ)の供託金については、売買価格が供託金額以上であるときは、株主は、供託金全額の還付を、供託金が売買価格を超えるときは、株主は、供託金のうち売買価格に相当する部分の還付を、買主は、その残額の取戻を請求することができる。

(ロ) 右の還付または取戻を請求することができる時期は、株式の売買価格が確定した時、すなわち、売買価格につき協議がととのつた時はその時、裁判所が売買価格を決定したときはその決定が確定した時、新法第204条ノ4第3項の規定により供託額が売買価格とされたときは、同条第1項の期間経過の時である。

(ハ) (2)の(ロ)の供託株券については、被供託者は、株式の代金を支払つた時、すなわち、売買価格が供託金額を超えないときは、売買価格が確定した時、売買価格が供託金額を超えるときは、その差額を支払つた時から、還付を請求することができる。

(ニ) (イ)の供託金の還付または取戻の請求をする場合には、払渡請求書に記載すべき払渡の事由としては「売買価格確定」とし、供託規則第24条第2号または第25条第2号の書面として売買価格につき協議がととのつたことを証する当事者の作成した協議書、売買価格決定に関する裁判所の謄本または売買価格決定のなかつたことを証する書面等の添付を要する。

(ホ) (ロ)の供託株券の還付の請求をする場合には、払渡請求書に記載すべき払渡の事由としては「売買価格確定」とし、供託規則第24条第2号の書面として(ニ)に揚げる書面のほか、売買代金が供託金額を超えるときは、その差額を支払つたことを証する書面の添付を要する。

(4) 利息
 (3)の(イ)の供託金の利息については、被供託者が還付を受けるべき金額に対する株式の売買価格が確定した時以後の利息は、被供託者に払い渡し、その他の供託金利息は、供託者に払い渡す。

(5) 統計上の処理(略)

二 株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある場合の株券の供託
 株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある場合において、その株式の譲渡契約の履行のため株券を供託するときは、譲渡につき取締役会の承認があることを要するが、その承認があつたことを証する書面の添付は要しない。

三 記名株券の譲渡の方式の改正
 記名株式の譲渡は、株券の交付によるものとされ、(新法第205条)、裏書または譲渡証書の添付は要しないこととされた。この改正は、昭和42年4月1日から施行されるので、供託規則等について改正が行なわれる予定である。