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第52条関係 果実に対する差押えの効力

天然果実に対する差押えの効力

(天然果実の意義)

1 法第51条第1項の「天然果実」とは、元物の用法に従い収取する産出物をいい(民法第88条第1項)、例えば、果実、野菜、牛乳、鶏卵、羊毛、動物の子又は石山から採取される石材等がある。

(天然果実に及ぶ)

2 法第52条第1項の「天然果実に及ぶ」とは、元物を差し押さえた場合には、新たな差押手続をすることなく、その差押えの効力が天然果実に及ぶことをいう。したがって、元物の差押えに基づきその天然果実の収取手続ができる。

(差押えの効力と果実の帰属)

3 天然果実に対して差押えの効力が及ぶのは、その果実が滞納者に帰属する場合に限られる。したがって、法律又は契約の定めるところに従って、その果実が滞納者以外の第三者に帰属する場合には、差押えの効力は及ばない。例えば、第三者が永小作権、賃借権等正当な権原により滞納者の土地を利用して収得する果実、野菜等の天然果実、不動産質権者が民法第356条《使用収益権》の規定により使用及び収益をすることができる場合の天然果実等には、差押えの効力は及ばない。

(差押時期との関係)

4 天然果実に対する差押えの効力は、差押え時における未分離の果実及び差押え時以後において生ずる果実に対して及ぶが、既に差押え時において分離されている果実に対しては及ばない。
 なお、差押え時に既に分離されている天然果実は、元物とは別個の動産として差し押さえることができる(民法第89条第1項参照)。

(譲渡又は差押えのあった果実)

5 差押え時における未分離の天然果実には、次に掲げる場合には、差押えの効力が及ばない。

(1) 天然果実が差押え時に既に動産として譲渡され、明認方法によりその対抗要件を備えている場合

(2) 天然果実が差押え時に既に動産として差し押さえられ、明認方法によりその対抗要件を備えている場合

(差押財産を使用収益できる場合)

6 法第52条第1項の「滞納者又は第三者が差押財産の使用又は収益をすることができる場合」とは、次に掲げる場合をいう。

(1) 滞納者又は使用若しくは収益をする権利を有する第三者が、法第61条第1項又は第2項《差し押さえた動産の使用収益》の規定により、差押動産の使用又は収益を許可された場合

(2) 滞納者又は使用若しくは収益をする権利を有する第三者が、法第69条第1項及び第2項《差押不動産の使用収益》の規定により、差押不動産につき使用又は収益をすることができる場合

(3) 動産の引渡命令を受けた第三者(動産の引渡しを拒まなかった第三者を含む。)で、使用又は収益をする権利を有する者が、法第59条第2項《引渡命令を受けた第三者の使用収益権》又は第4項《引渡しを拒まなかった第三者の権利の保護》の規定により、差押動産につき使用又は収益をすることができる場合

(換価財産の権利移転の時)

7 法第52条第1項の「その財産の換価による権利の移転の時」とは、換価財産の買受人が買受代金の全額を納付し換価財産を取得したときをいう(法第116条第1項、第116条関係2)。

(明認方法)

8 天然果実を収取する場合において、明認方法による対抗要件を必要とするもの(例えば、みかん及び桑葉等)については、立札、縄張その他適当な方法をもって明認方法を施すものとする。

(収取を必要としない場合)

9 天然果実を生ずる財産を差し押さえる場合で、元物だけで徴収すべき滞納国税を確保できると認められるとき、天然果実の収取が困難であると認められるときその他徴収上天然果実の収取の必要がないと認められるときは、天然果実に対して差押えの効力を及ぼさないことができる(昭和32.6.4前橋地判参照)。
 なお、天然果実に対し差押えの効力を及ぼさないこととする場合は、その旨を差押調書に明記するものとする。

(収取の方法)

10 天然果実を収取する場合には、徴収職員が自ら収取を行うこともでき、又は滞納者若しくは第三者をして収取させることもできる。この場合において、みかん等の果実は、成熟した後等通常の取引に適するようになってから収取するものとする(法第90条第1項、執行規則第112条参照)。
 なお、天然果実を収取して搬出する場合の手続については、差押動産の搬出をする場合の手続と同様である(令第26条の2参照)。

(捜索、出入禁止及び質問検査)

11 天然果実の収取行為は、差押えに付随する行為であるから、質問及び検査並びに捜索等をする場合には、法第5章第6節第2款《財産の調査》の規定が適用される。

(収取に伴う費用)

12 収取行為に伴う必要な費用は、財産の差押えに関する費用であるから、法第136条《滞納処分費の範囲》の規定により滞納処分費として徴収することができる。

(未分離果実の換価)

13 未分離の天然果実は、元物とともに、又は元物とは別に換価することができる。ただし、みかん等の果実が元物から分離していない場合には、その果実が未成熟等通常の取引に適しない間は、法第90条第1項《換価の制限》の規定によりこれらの天然果実だけを換価することができないが、元物から分離した天然果実は、それだけを元物とは別に換価することができる。

法定果実に対する差押えの効力

(法定果実の意義)

14 法第52条第2項の「法定果実」とは、元物の使用の対価として収取される金銭その他の物、例えば、家賃、地代、小作料、利息等をいう(民法第88条第2項)。

(利息)

15 法第52条第2項の「利息」とは、一定の元本債権から付随的に生ずる所得であって、元本債権に対する一定の利率をもって定期的に計算される金銭等をいい、元本の弁済期以後における遅延利息等利息の性質を有するものはこれに含まれるが、終身定期金(民法第689条)等はこれには含まれない。

(利息に対する差押えの効力)

16 元本債権の差押えの効力は、その差押え後に生ずる利息債権にも及ぶが(法第52条第2項ただし書)、差押え時までに発生した利息債権は、別に差し押さえない限り差押えの効力は及ばない(大正5.3.8大判参照)。したがって、利息支払時期前に差押えをした場合における利息債権に対する差押えの効力は、差押え後に発生する部分についてだけ効力が及ぶ(民法第89条第2項)。

(法定果実に対する差押え)

17 差押えの効力は、差押財産(債権を除く。)から生ずる法定果実に及ばないから、元物の差押えとは別に債権差押えの方法により法定果実の差押えを行う必要がある(法第52条第2項参照)。

(利息制限法による利息の制限)

18 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が一定の利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分は無効となるから(利息制限法第1条)、その部分の支払を請求することはできない。
 なお、契約成立の際に第三債務者が利息として上記の超過部分の金額を前払しても元本に充てたものとみなされ(同法第2条)、また、第三債務者から超過分の任意の支払を受けたときは、その超過部分は、残存元本に充当(民法第491条)され、元本充当の結果、計算上元利合計を超える部分の金額については、第三債務者は、民法の規定するところにより、債権者(滞納者)に対し、不当利得の返還を請求することができる(昭和38.11.18最高判、昭和43.11.13最高判、昭和44.11.25最高判参照)。

(注)

1 金銭を目的とする消費貸借に関し、債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他何らの名義をもってするを問わず、上記の「利息」に含まれる(利息制限法第3条)。

2 利息制限法所定の制限を超える利息の定めのある金銭消費貸借において、遅延損害金について特約がないときのその利率は、同法第1条《利息の最高限》所定の利率にまで減縮される(昭和43.7.17最高判、昭和50.2.25最高判参照)。

3 「任意の支払」とは、第三債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、第三債務者において、その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていること、又は当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しない(平成2.1.22最高判)。また、期限の利益喪失特約の下で、第三債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、特段の事情のない限り、第三債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない(平成18.1.13最高判参照)。

4 数個の債務がある場合における法定利息超過部分については、順次に利息及び元本に充当される(民法第491条第1項)。

(利息の取立て手続)

19 元物である債権を差し押さえ、利息の取立てもしようとする場合は、第三債務者に送付する債権差押通知書に、利息もあわせて国に支払うべき旨を記載するものとする。