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課酒4−15
課法4−42
平成18年8月31日
最終改正 平成29年3月31日 課酒1-7

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

「酒類に関する公正な取引のための指針」の制定について(事務運営指針)

標題のことについては、別紙のとおり定めたから了知の上、酒類業者に的確かつ積極的に周知して公正取引の重要性を啓発し、公正取引委員会地方事務所等との緊密な連携を図りつつ、適切に酒類の取引状況等実態調査を実施して関係酒類業者に対する改善指導等を行い、酒類業者における公正取引の確保に向けた自主的な取組を促進されたい。

(理由等)

すべての酒類業者が自主的に尊重すべき酒類に関する公正な取引の在り方について当庁の考え方を提示するとともに、公正取引委員会との連携方法等を明らかにすることにより、公正取引の確保に向けた自主的な取組を促進し、酒税の確保及び酒類の取引の安定を図るためである。このことは、酒類業の健全な発達にも資するものである。
なお、別紙は、国税庁、国税局、税務署において行政指導に用いることから行政指導指針に該当する。

(別紙)

平成18年8月31日
国税庁
(平成29年3月31日改定)

酒類に関する公正な取引のための指針

(はじめに)

近年の酒類市場は、人口減少・高齢化社会の到来、健康や安全性に対する国民の意識の高まり、生活様式の多様化など経営環境に大きな変化が見られる。酒類小売業の業態は、消費者の購買行動の変化を踏まえ、一般酒販店のほかコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア等と多様化しており、業務用市場においては全国にチェーン展開する料理飲食店が出現し、事業者間で取扱数量や取引価格に格差も生じてきている。
このような中、今後、酒類全体では数量ベースでの国内市場の拡大を期待することは難しく、酒類業が健全に発達していくためには、「量から質への転換」を図っていく必要がある。製造業者は的確な経営戦略に基づき高品質・高付加価値の酒類を適正規模で製造し、卸売業者は小売業者へそうした酒類を適正に供給し、小売業者は個性ある品揃えなどの多様なサービスの提供等によって差別化を図りつつ未成年者飲酒防止などの社会的要請に対応するため販売管理に取り組んでいくことが求められる。料理飲食店では、未成年者飲酒防止に配意することはもちろん、品質を損なうことなく酒類を提供していくことが期待されている。他方、単に酒類業界が高利益な酒類の提供等により高いマージンを確保することや販売管理に伴う過剰な負担を安易に消費者へ求めることも適切ではない。常に「消費者の視点」を意識し、酒類の供給者(業界)と実需者(消費者)の利益が最大化するようにすべきである。
国税庁は、酒類業組合の会合などあらゆる機会を通じて、「酒類に関する公正な取引のための指針(平成18年8月)」(以下「指針」という。)及び公正取引委員会の「酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について(平成21年11月)」等の周知・啓発を図ってきた。さらに、公正取引委員会との連携の下、取引状況の実態調査を実施し、指針のルールに則していない取引が認められた場合には、その不合理さを指摘して合理的な取引が行われるよう改善指導し、公正取引についての自主的な取組を促してきた。しかしながら、指針のルールに則していない不合理な取引が見受けられる状況は現在も継続している。
こうした状況の下、酒税の保全及び酒類の取引の円滑な運行を図るため、平成28年法律第57号により、「酒税法」(昭和28年法律第6号)及び「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」(昭和28年法律第7号。以下「酒類業組合法」という。)が改正された。
また、改正された酒類業組合法に基づき、「酒類の公正な取引に関する基準(平成29年国税庁告示第2号。以下「取引基準」という。)」を定めた。
こうしたことから、国税庁は、酒類業組合法第86条の3《公正な取引の基準》第4項及び第86条の4《公正な取引の基準に関する命令》の適用の可能性を踏まえつつ、酒類業界の実情に即した酒類に関する公正な取引の在り方を提示する。また、併せて、公正取引委員会との連携方法等を明らかにすることにより、一層、公正取引の確保に向けた自主的な取組を促進し、酒税の確保及び酒類の取引の安定を図ることとする。このことは、酒類業の健全な発達にも資するものである。

第1 酒類に関する公正な取引の在り方

国税庁は、酒税の確保及び酒類の取引の安定を図るため、全ての酒類業者が自主的に尊重すべき酒類に関する公正な取引の在り方を以下のとおり提示する。
  • (注)本取引の在り方に抵触すると思料される個々の行為は、必ずしも取引基準第2項《公正な取引の基準》に違反する行為や、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第2条《定義》第9項に規定する不公正な取引方法に該当するというものではなく、個別具体的な事案において、行為の意図・目的、取引価格、取引条件、取引形態、酒類事業に与える影響、市場における競争秩序に与える影響等を総合的に勘案し、取引基準違反に該当するかどうかは国税庁、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当するかどうかは公正取引委員会において、それぞれ判断されるものである。

1 合理的な価格の設定

  • 1 酒類の価格に関しては、取引基準において、(1)正当な理由なく、酒類を当該酒類に係る売上原価の額と販売費及び一般管理費の額との合計額を下回る価格で継続して販売すること、(2)自己又は他の酒類業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引をすること、のいずれにも該当する行為を行ってはならないこととしている。
    酒類の価格は、一般的には仕入価格(製造原価)、販売費及び一般管理費等の費用に利潤を加えたものになることが短期的にも中長期的にも合理的である。
    一般に商品価格は、市場における事業者の公正かつ自由な競争を通じて形成されるものであるが、酒類は財政上重要な物品であり、また、アルコール飲料として社会的配慮を必要とし、更には代表的な嗜好品として国民生活に深い関わりを持っていることから、酒類の価格については、こうした酒類の特殊性から生じる多様な要請に応え得る合理的かつ妥当なものであることが必要である。
    酒類の合理的な価格設定は、酒類に関する公正な取引の在り方の根幹をなすものであり、取引基準に違反する行為には該当しない場合であっても、合理性を欠く価格設定については改善していく必要がある。
  • 2 酒類は国の財政上重要な物品であること、致酔性・習慣性を有する社会的に配慮を要する財であること等その特殊性に鑑みれば、顧客誘引のための「おとり商品」として使用することは不適正な取引慣行であり改善していくべきである。
    また、多種類の商品を取り扱っている小売業者が、酒類の供給に要する費用を下回る価格、言い換えれば他の商品の販売による利益その他の資金を投入しなければ困難な低価格を継続的に設定することによって競争事業者の顧客を獲得するという手段は、酒類販売による直接的な損失があっても来店客数、店舗全体の売上高の増加によって全体の利益を図ることのできる販売方法であるが、酒税の適正な転嫁の観点や上記のような酒類の特殊性に鑑みても、他の商品と比べてそのような販売方法での弊害が大きいと考えられ、そのような不公正な取引慣行については改善していくべきである。
    • (注)今後、酒類全体における数量ベースでの国内市場の拡大が困難であることから、全事業者が独自の判断の下、的確な需給見通しに基づき、適正生産を行うことが必要である。酒類の著しい供給過剰は、取引の安定を阻害するおそれがある。
      酒類業者が経営基盤の安定を図りつつ消費者ニーズに応じた酒類を的確に供給していくためには、企業努力による物流等の業務効率化を反映した競争をしつつ、個別の取引において適正な利潤を確保していくことが望まれる。

2 取引先等の公正な取扱い

酒類の価格は、取引数量の多寡、決済条件、配送条件等の相違を反映して差が設けられることもあるが、その差は、取引数量の相違等正当なコスト差に基づく合理的なものであるべきである。同様に、合理的な理由がないにもかかわらず取引先又は販売地域によって取引条件に差異を設けることは、公正な取扱いとはならない。
取引価格やその他の取引条件について、合理的な理由なく差別的な取扱いをすることは、酒類の価格形成を歪める大きな一因となると考えられ、そのような取扱いについては改善していくべきである。

3 公正な取引条件の設定

  • 1 大きな販売力を有する百貨店、スーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストア、料理飲食店等(コンビニエンスストア本部等のフランチャイズチェーンの形態をとる事業者を含む。)が、その購買力を背景に取引上優越した地位にある場合に、自己の都合による返品、商品購入後における納入価格の値引き、特売用商品の著しい低価納入、プライベート・ブランド商品の発注後の受領拒否、中元・歳暮などの押し付け販売、従業員等の派遣、不透明又は過大な協賛金やセンターフィー、カタログ製作費等の負担、自己が負担すべき費用のつけ回し、多頻度小口配送等の要求を一方的に行う場合、若しくはこれらの要求に応じないことを理由として不利益な取扱いをする場合、又はコスト上昇分の価格転嫁の必要性を背景とした取引条件の見直しの申入れ等を一方的に拒否する場合には、公正な取引条件の設定が妨げられる。例えば、一方的な都合による返品や従業員等の派遣を強要した場合には、納入業者に経済上の不利益を及ぼすことになり、更に、納入業者の経営を悪化させたときには、製造業者の代金回収にも影響を及ぼし酒税の保全上の問題が生じるおそれもある。したがって、こうした不利益な取扱いについては、改善していくべきである。
  • 2 製造業者等が市場調査、販売促進、宣伝等の市場活動等を通じて経済上の利益を供与する又は経済上の不利益を課すことにより、流通業者の取引条件等に不当に関与し影響を及ぼす場合には、流通業者の事業活動を制限することになるばかりでなく、消費者利益を損なうこともある。例えば、流通業者の販売価格、取扱商品、販売地域、取引先などに不当な影響を及ぼす場合には、流通業者間の競争を減少させ、流通業者の自由な事業活動を妨げ、消費者の商品選択を狭めることにもつながる。したがって、製造業者等はこうした不当な影響が生じないように十分に配慮する必要がある。

4 透明かつ合理的なリベート類

リベート類は、仕切価格の修正としての性格を持つもの、販売促進を目的としたもの、業務効率化への寄与度等に応じて支払われるもの等その態様は様々であるが、いかなる形態であれ透明性及び合理性が必要である。
リベート類の透明性が確保されているとは、その支払基準及び支払時期等が明確にされているとともに、それらが取引の当事者間において事前に共有されていることをいう。合理性が確保されているとは、支払基準が取引数量に基づく場合には輸送コストの逓減効果等によって決められるなど合理的に説明し得ることをいう。例えば、支払基準が事前に明確に示されていないもの、取引の一方の当事者の認識がないまま取引の当事者以外の者から他方の当事者に支払われるもの、支払基準が著しく累進的であり取引先の公正な取扱いとならないものなどは、透明性及び合理性を欠くリベート類に該当する。
透明性及び合理性を欠くリベート類は廃止していく必要があるが、リベート類を支払う酒類業者が、こうした点を踏まえた自主基準を策定することは、酒類の公正な取引環境の整備を進める観点から有効である。

第2 取引状況等実態調査の実施及び公正取引委員会との連携等

国税庁は、酒類取引の実態把握に努め、公正取引委員会と連携して酒類の公正な取引が図られるよう
以下のとおり対応することとする。

1 効果的な取引状況等実態調査の実施等

  • (1) 市場に影響を与える取引を行っている酒類業者に対する重点的な取引状況等実態調査の実施
    取引状況等実態調査は、過去における取引状況等実態調査の事績、各種資料情報等を検討した結果、酒類に関する公正な取引の在り方に照らして問題があると疑われ、かつ、市場に影響を与える取引を行っていると認められる酒類業者に対して重点的に実施する。
    なお、関連する事業場が広範にある酒類業者に対する調査は、関係国税局が連携して実施する。
    また、調査の結果、改善すべき事項が調査を受けた酒類業者の全部又は大部分の事業場に及ぶ場合は、本店に対して総括的な指導を行い、公正取引に向けた全社的な取組を促す。
    • (注)取引状況等実態調査の実施に当たっては、事前通知を行い、調査の趣旨について「酒類業組合法第86条の3に基づく酒類の公正な取引に関する基準の内容を含む酒類に関する公正な取引の在り方が遵守されているかどうかを判断するために同法第91条の質問検査権を行使して実施するものである。」旨を説明する。
  • (2) フォローアップ調査の実施
    個別に改善指導等を行った酒類業者については、フォローアップ調査を実施する。相当期間経過後においても改善が認められない場合は、必要に応じ調査対象者への酒類納入業者に対し臨場するなど、更に深度ある調査を実施して、改善できなかった理由の解明等を行い、改善に向けた更なる指導等必要な措置を講ずる。
  • (3) 取引状況等実態調査の実施状況の公表
    取引状況等実態調査によって把握した問題取引とその指導事績については、可能な限り具体的に公表し、他の酒類業者において同様の取引が行われないよう啓発する。

2 取引基準との関係

取引状況等実態調査を実施した結果、第1の「酒類に関する公正な取引の在り方」に則していないと認められる取引を把握した場合には、改善指導を実施する。
さらに、当該取引が取引基準を遵守していないと思料される場合には、「酒類の公正な取引に関する基準の取扱いについて(法令解釈通達)」を踏まえ、所要の調査を実施する。
当該調査の結果、取引基準を遵守していないと認められる場合には、酒類業組合法第86条の3《公正な取引の基準》第4項の規定に基づく指示を検討するものとする。

3 独占禁止法違反等への対応

  • (1) 国税局長による公正取引委員会への報告
    国税局(沖縄国税事務所を含む。以下同じ。)の長は、取引状況等実態調査の実施等により、酒類業者の取引に関し、独占禁止法の規定に違反する事実があると思料したときは、公正取引委員会(地方事務所等を含む。以下同じ。)に対し、酒類業組合法第94条《公正取引委員会との関係》第4項の規定に基づく報告を行い、適当な措置をとるべきことを求める。
  • (2) 酒類業者、業界団体、消費者団体等からの通報への対応
    • イ 酒類の取引に関し、酒類業者、業界団体、消費者団体等から、酒類取引の在り方に則していない疑いのある事例、又は取引基準を遵守していない疑いのある事例について通報があった場合は、取引状況等実態調査を実施するなど適切に対応する。
    • ロ 酒類業者、業界団体、消費者団体等から、独占禁止法に違反する疑いのある事例について、例えば、「独占禁止法の不当廉売に該当するのではないか。」と相談があった場合は、必要に応じ、同法第45条《違反事実の報告・探知》に基づく公正取引委員会への報告手続について説明する。
      • (注)独占禁止法に違反する疑いのある事例に係る相談のうち、独占禁止法違反被疑事実に関係する事業者に雇用されている労働者(当該事業者を派遣先とする派遣労働者を含む。)からのものである場合は、必要に応じ、公正取引委員会の「公益通報者保護法」(平成16年法律第122号)の通報受付窓口を教示する。
  • (3) 排除措置命令等を受けた者への対応
    排除措置命令又は警告など酒類業者に係る独占禁止法違反等の事実が公正取引委員会から公表された場合において、その違反等の行為が酒類取引の在り方に則していないと認められるときは、必要に応じ酒税保全の観点から関係酒類業者に対し酒類取引の在り方に則した取引を行うよう的確に指導するほか、取引基準を遵守していないと認められるときは、酒類業組合法第86条の3《公正な取引の基準》第4項の規定に基づく指示を行うなど適切に対応する。

4 質問検査権

取引状況等実態調査の実施に関し、酒類業者(調査対象者以外の酒類業者を含む。)及び当該酒類業者の持株会社や取引のある金融機関、運送業者、料理飲食店など、その事業に関して関係のある事業者に対して、酒類業組合法第91条《質問検査権》の規定に基づき、必要な事項について報告を求めるなど、適切に対応する。

5 公正取引委員会との連携等

国税庁は、公正取引委員会とあらゆる機会を通じて、酒類市場における流通上・取引慣行上の諸問題について協議・情報共有を行う。
また、国税局と公正取引委員会においては、それぞれ連絡担当者を設けて相互の連絡体制を確保し、緊密な連携を図る。この場合、国税局においては、酒類市場における流通上・取引慣行上の諸問題についての情報を一元的に管理する「公正取引担当者」を配置するものとし、公正取引委員会との連携強化及び取引状況等実態調査の充実を図る。