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ホーム税について調べる文書回答事例譲渡・山林所得定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取扱いについて定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取扱いについて(照会)>前払賃料について定めた定期借地権設定契約書の書式例

別添

前払賃料について定めた定期借地権設定契約書の書式例

(書式)契約期間にわたる賃料の一部を一括前払いし、賃料の残額月払いと併用する場合

(前払賃料)

第X条 乙は、本件土地の賃料の前払い(以下「前払賃料」という)として○○○円を、本契約が成立したときに甲が指定する金融機関口座に振り込むことにより、甲に対して一括して支払わなければならない。

2 前払賃料は、○条に定める契約期間(○○年)にわたる賃料の一部に均等に充てるものとし、その毎月の充当額(以下「前払賃料の月額換算額」という)は○○○円(前払賃料÷契約期間(ヶ月))とする。

3 甲と乙は、契約期間満了時において、前払賃料として一時金の支払いがあったことを根拠とする借地権の消滅の対価に相当する金銭の授受は行わない。

4 本件借地権の存続期間の満了前に本契約を解除する場合において、甲は、前払賃料のうち契約期間の残余の期間に充当されるべき前払賃料の月額換算額の合計額を、乙に返還しなければならない。この場合において、返還すべき金員は日割り計算によるものとし、利息を附さないものとする。

(賃料)

第Y条 本件土地の賃料は、月額○○○円とする。ただし、1ヶ月未満の期間については、日割り計算によるものとする。

2 乙は、賃料の額から前払賃料の月額換算額を減じた残余の額(当初においては○○○円)を、毎月○○日までに、その翌月分を甲が指定する金融機関口座に振り込むことにより、甲に対して支払わなければならない。

3 甲又は乙は、○年毎に、以下に掲げる方式により算定した額に賃料を改定することを請求することができる。(算式省略)ただし、当該方式により算定された額にかかわらず、賃料の額は前払賃料の月額換算額を下回らないものとする。

(注1)甲…土地所有者(借地権設定者)、乙…借地人(借地権者)

【解説】

(1) 定期借地権の設定に当たって、借地権者が借地権設定者に対して契約期間にわたる賃料の一部を一括して前払いする場合においては、賃料の残額月払いと区別して、これを前払賃料として明確にする必要がある。
 この書式例に準拠した契約に基づき支払われる前払賃料の税法上の取扱いは、原則として、借地権者である法人又は個人は、前払賃料を「前払費用」として計上し、当該事業年度又は当該年分の賃料に相当する金額を損金の額又は必要経費の額に算入することとなる。
 一方で、借地権設定者である法人又は個人は、前払賃料を「前受収益」として計上し、当該事業年度又は当該年分の賃料に相当する金額を益金の額又は収入金額に算入することとなる。
 なお、前払賃料は、消費税法上非課税となる土地の貸付けの対価の前受金に該当し、当該借地権設定者である消費税の課税事業者は、仕入控除税額の計算に当たり、当該事業年度又は当該年分の賃料に相当する金額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある(借地権者においては、仕入税額控除の対象とはならない。)。

(2) このような税務上の取扱いがされるためには、第X条第2項の規定のように授受される一時金が前払賃料であり、契約期間にわたって賃料の一部に均等に充当されることを明確にする必要がある。
 本契約の契約期間満了時において、契約期間にわたる賃料の一部として支払われた前払賃料の未経過分に相当する金額は零円であるから、当該一時金を根拠とする金銭の授受を行うことはない。このため、第X条第3項にあるように、契約期間満了時に、前払賃料として支払われた一時金を根拠とする借地権の消滅の対価に相当すると認められるような金銭の授受は行わないことを明らかにしておく必要がある。
 また、本契約を中途解約する場合において、契約期間にわたる賃料の一部として支払われた前払賃料の未経過分に相当する金額は残存している。このため、第X条第4項にあるように、「本件借地権の存続期間の満了前に本契約を解除する場合において、借地権設定者は、既に支払われた前払賃料のうち未経過分に相当する金額を、借地権者に返還しなければならない」旨を取り決めるなど、前払賃料であることが明らかになるような規定が必要である。

(3) 本契約を中途解約する場合において、前払賃料の未経過分の返還とは別に、違約金等の取り決めを行うことは可能である。ただし、違約金等の算定方法等において、中途解約時に、既に支払われた一時金(前払賃料)のうち未経過分に相当する金額の全部又は一部を、違約金等とみなして借地権者に返還しないこととしている場合は、前払賃料としての一時金とその他の一時金(権利金、保証金等)(注2)との区別ができなくなることから、その一時金は、前払賃料として取り扱われない。このため、中途解約時の違約金等を定める場合には、前払賃料の返還に関する取り決めとは別に、第X条第4項を逸脱することのないよう違約金等の算定方法等を明確にしておくことが望ましい。

(注2)権利金は、定期借地権設定の対価そのものなどとして収受し、返還を要しない一時金を言い、保証金は、地代不払いや建物撤去不履行の際の担保などとして収受し、原則返還を要する一時金を言うこととする。

(4) 前払賃料の授受がある場合でも、その他の一時金(権利金、保証金等)を別に授受することは可能である。ただし、複数の一時金を併用する場合は、それぞれの一時金の性格及び額等を予め明確に定めておく必要があり、その取引の実態もそれに沿うものであることを前提に、それぞれの一時金の性格に即した税務上の取扱いがされることとなる。

(5) 本書式例に代えて、契約期間にわたる賃料の全部を前払賃料として一括して前払いすることも可能である。この場合、第Y条第2項に定める「賃料の額から前払賃料の月額換算額を減じた残余の額」は、零円となり、賃料の残額月払いは行われない。

(6) 第X条第2項に定める「前払賃料を設定する期間」について、本書式例に代えて、最初の○○ヶ月(例えば120ヶ月)分に限って一括して前払賃料を支払うことを取り決めることも可能である。ただし、この場合、賃料の残額月払いとの併用期間を明らかにするとともに、前払賃料を設定した期間が終了した後の賃料についても明確にしておく必要がある。この前払賃料の税務上の取扱いは、設定した期間に応じて期間損益に反映させることとなる。

(7) 賃料の一部又は全部を一括して前払いする場合であっても、第Y条第1項に定める賃料の額が、前払い方式によらない賃料水準に照らして逸脱するような水準となることは適当でないと解される。

(8) 第Y条第3項に定める賃料の改定について、本書式例に代えて、改訂後の賃料の額が前払賃料の月額換算額を下回ることを許容する定めとすることも可能である。ただし、この場合、既に支払われた前払賃料のうち未経過分に相当する金額と、改訂された賃料に基づいて算定された未経過分に相当する前払賃料の金額との差額の取扱いについても予め定めておく必要がある。

(9) 第Y条第2項に定める「賃料の額から前払賃料の月額換算額を減じた残余の額」については、例えば、一定の定めに基づき、固定資産税等の月額分に応じて定めることも考えられる。

(10) 契約期間中に、借地権者が定期借地権を譲渡する場合に、借地権を譲り渡した者(旧借地権者)と新たに借地権を譲り受けた者(新借地権者)との間で、既に支払われた前払賃料のうち未経過分に係る返還債権を直接引き継ぐ場合については、次の二通りの方法が考えられる。

1 新借地権者が、前払賃料の未経過分に相当する金額を旧借地権者に支払う。

2 前払賃料の未経過分に係る返還債権を含む定期借地権の譲渡に係る対価としての売買代金を設定し、前払賃料の未経過分の授受は行わない。

 この場合、旧借地権者と新借地権者の税務上の取扱いは、それぞれの方法について、次のようになると解される。
 1の場合、新借地権者は、旧借地権者に対して支払った前払賃料の未経過分に相当する金額を前払費用として計上する。なお、定期借地権の譲渡に係る対価としての売買代金が別途授受される場合には、定期借地権の譲渡に係る対価の額は、新借地権者にあっては定期借地権の取得価額に相当し、旧借地権者にあっては益金又は譲渡所得の総収入金額として取り扱われる。また、旧借地権者が新借地権者から支払いを受ける前払賃料の未経過分に相当する金額については、旧借地権者が借地権設定者に対して有する金銭債権の譲渡対価に該当することから、旧借地権者が消費税の課税事業者である場合には、仕入控除税額の計算に当たり、その借地権の譲渡に係る対価の額及び前払賃料の未経過分に相当する金額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある。
 2の場合、定期借地権の譲渡に係る対価の額は、売買代金の額から前払賃料の未経過分に係る返還債権の額を差し引いた金額となる。その対価の額は、新借地権者にあっては定期借地権の取得価額に相当し、旧借地権者にあっては益金又は譲渡所得の総収入金額として取り扱われる。また、売買代金の額に含まれる前払賃料の未経過分に係る返還債権の額については、旧借地権者が借地権設定者に対して有する金銭債権の譲渡対価に該当することから、旧借地権者が消費税の課税事業者である場合には、仕入控除税額の計算に当たり、その借地権の譲渡に係る対価の額及び前払賃料の未経過分に係る返還債権の額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある。なお、新借地権者は、前払賃料の未経過分に相当する金額を前払費用として計上する。

 なお、上記二通りの方法とは別に、旧借地権者が、借地権設定者から前払賃料の未経過分の返還を受けた後、新借地権者が、借地権設定者との間で契約期間の残期間を前提とした新たな契約を締結して前払賃料を支払う方法も考えられる。この場合の取扱いは、旧借地権者が、借地権設定者から前払賃料の未経過分の返還を受けるに際しては、契約を中途解約した場合の取扱いと同様である。なお、旧借地権者と新借地権者との間で定期借地権の譲渡に係る対価の授受が別になされたときは、土地の上に存する権利の譲渡となり、その対価の額は、新借地権者にあっては定期借地権の取得価額に相当し、旧借地権者にあっては益金又は譲渡所得の総収入金額として取り扱われるとともに、旧借地権者が消費税の課税事業者である場合には、仕入控除税額の計算に当たり、その対価の額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある。

(11) 契約期間中に、借地権設定者が定期借地権が設定された土地を譲渡する場合に、当該土地を譲り渡した者(旧借地権設定者)と新たに土地を譲り受けた者(新借地権設定者)との間で、既に受け取られた前受賃料のうち未経過分に係る返還債務を直接引き継ぐ場合については、次の二通りの方法が考えられる。

1 土地の譲渡に係る対価としての売買代金の授受とは別に、旧借地権設定者が、その収受していた前受賃料の未経過分を新借地権設定者に支払う。

2 前受賃料の未経過分に係る返還債務を含む土地に関する権利の譲渡に係る対価としての売買代金を設定し、前受賃料の未経過分の授受は行わない。 この場合、旧借地権設定者と新借地権設定者の税務上の取扱いは、それぞれの方法について、次のようになると解される。

 1の場合、土地の譲渡に係る対価の額は、新借地権設定者にあっては土地の取得価額に相当し、旧借地権設定者にあっては益金又は譲渡所得の総収入金額として取り扱われるとともに、旧借地権設定者が消費税の課税事業者である場合には、仕入控除税額の計算に当たり、その対価の額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある。なお、新借地権設定者は、旧借地権設定者から別途収受した前受賃料の未経過分に相当する金額を前受収益として計上する。
 2の場合、土地の譲渡に係る対価の額は、旧借地権設定者に支払った売買代金の額と同者から引き継いだ前受賃料の未経過分に係る返還債務の額の合計額(新借地権設定者から収受した売買代金の額と前受賃料の未経過分に係る返還債務の消滅による利益相当額との合計額)となる。その対価の額は、新借地権設定者にあっては土地の取得価額に相当し、旧借地権設定者にあっては益金又は譲渡所得の総収入金額として取り扱われるとともに、旧借地権設定者が消費税の課税事業者である場合には、仕入控除税額の計算に当たり、その対価の額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行う必要がある。なお、新借地権設定者は、前受賃料の未経過分に相当する金額を前受収益として計上する。

(12) この他、定期借地権設定契約書全体に係る標準約款としては、「事業用借地標準約款」(平成14年2月公表、事業用借地権制度研究会・委員長:稲本洋之助東京大学名誉教授)、「定期借地権設定契約書(戸建住宅、集合住宅)」(平成7年4月公表、定期借地制度研究会・座長:稲本洋之助東京大学名誉教授)を参照されたい。

(参考)

1.「事業用借地標準約款」

(契約の目的)

第1条 甲は、専ら○○の事業のように供する別紙「物件の表示」(以下「物件表示」という。)記載の建物(以下「本件建物」という。)の所有を目的として、物件表示記載の土地(以下「本件土地」という。)に、乙のために、法第24条第1項に規定する借地権(以下「事業用借地権」という。)を設定する。

第2条 本契約により甲が乙のために設定する事業用借地権(以下「本件借地権」という。)は賃借権とする。

第3条 本件借地権には、法第3条から第8条まで、第13条及び第18条並びに民法第619条第1項の規定は適用されない。

(以下略)

2.「定期借地権設定契約書(戸建住宅、集合住宅)」

(前文) 賃貸人○○○(以下「甲」という。)と賃借人△△△(以下「乙」という。)は、甲が所有する物件表示記載の土地(以下「本件土地」という。)について、借地借家法(以下「法」という。)第22条に定める定期借地権の設定契約を以下の条項に従って締結した(以下、本契約によって設定される借地権を「本件借地権」という。)。

(契約の目的)

第1条 甲は、本件土地上に建築する物件表示記載の建物(以下「本件建物」という。)の所有を目的として乙に本件土地を賃貸し、乙はこれを賃借する。

第2条 本件借地権については、更新の請求及び土地の使用の継続による契約の更新並びに建物の築造による存続期間の延長がなく、また、乙は、法第13条の規定による本件土地上の建物の買取りを請求することができない。

(以下略)