ここから本文です。

ホーム大阪国税局大阪国税局からのお知らせ毎日新聞紙上座談会(平成28年11月10日付毎日新聞朝刊「税を考える週間 座談会」より)

毎日新聞紙上座談会(平成28年11月10日付毎日新聞朝刊「税を考える週間 座談会」より)

マイナンバー本格スタート

来年から確定申告などの手続きでマイナンバーの利用が本格化するのに伴い、税への関心が一段と高まっている。11月11から17日の「税を考える週間」に合わせ、ロート製薬(大阪市生野区)の山田邦雄会長、政府税制調査会特別委員の諸富徹・京大大学院教授、タレントの武田訓佳(くにか)さん、大阪国税局の藤田博一局長の4人に税務行政の課題について意見交換をしてもらった。【司会・亀井正明毎日新聞社会部長】

座談会写真
【座談会出席者(敬称略)】 
ロート製薬株式会社 代表取締役会長兼CEO  山田 邦雄
京都大学大学院経済学研究科 教授  諸富 徹
タレント  武田 訓佳
大阪国税局長  藤田 博一

国民の利便性、行政効率化に

――税を考える週間について教えてください。

藤田 国民の皆様に自発的で適正な納税義務を果たしていただくため、集中的な広報施策を実施しています。「くらしを支える税」が今年のテーマで、大学生らを対象に講演会を開いたり、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の周知・広報に努めたりしています。

――マイナンバー制度はどのようなものですか。

藤田 公平な社会保障制度と税制の基盤であるとともに、情報社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政の効率化につながるものです。所得税の申告では、来年2月から3月の確定申告の時期から番号の記載が始まります。公平・公正な社会の実現を目的とした制度ですので、国民一人一人には当事者として制度をより深く理解していただきたいと思います。

――マイナンバー制度へのご意見をお願いします。

山田 邦雄さん

山田 邦雄さん

諸富 個人や企業がどれぐらい所得や資産を持っているのかを把握できる制度で、より公平な課税や社会保障の給付のためには重要なインフラです。ただ、個人情報の漏出を防ぐために、セキュリティー対策をしっかりしないといけません。

山田 一元的に税務、社会保障に関する情報が統合された方が合理的だし、あるべき姿だと思います。導入して良かったと実感できるようになってほしいです。我が社でも、社員の副業を認めることを打ち出しました。これからは企業の従業員でもいろいろな場で収入を得る時代がやって来るわけで、時代を先取りした制度だと思います。

武田 多くの人はまだマイナンバーを使っておらず、「使ってみたい、知ってみたい」と思うような広報をしていただきたいです。一部の人だけではなく、幅広い世代の人が使える安心で身近な制度になってほしいと期待しています。

電子申告でスイスイ

――納税者サービスの充実についてうかがいますが、国税当局としてはどんな取り組みがありますか。

藤田 国税庁のホームページ(HP)では申告・納税の手続きの情報提供に加え、税の取り扱いについて一問一答形式のコーナー「タックスアンサー」を設けるなどしています。「Web−TAX−TV」では、調査・徴収をはじめとした国税職員の仕事をドラマ仕立ての動画で分かりやすく紹介しています。
 他にも、電子申告「e-Tax」では所得税や法人税などの申告をインターネットを通じて行えます。対応ソフトを使えば、会計処理や申告などのデータ作成から提出までの一連の作業を電子的にできます。国税庁HPでは所得金額や税額が自動計算されるコーナーもあります。

――国税庁のHPをご覧になった印象は。

武田 たくさんの情報が掲載されていることに驚きましたが、普段から税になじみがない人には、文章で説明されても理解しづらいと感じました。ただ、「Web−TAX−TV」は申告書の作成方法や税金に関する説明が動画や図を使っていて分かりやすく、査察官や徴収官などの仕事を紹介する動画は楽しく拝見しました。若い世代に税金を知ってもらう良いきっかけになるのではないでしょうか。

――e-Taxについて、会社や自身の取り組みを踏まえて、ご意見をお願いします。

山田 当社でも数年前からe-Taxを活用しています。企業としては書類の保存が大変でしたが、ペーパーレス化が進むメリットは大きく、使いやすいシステムの整備をこれからも進めてほしいです。

諸富 e-Taxは、自宅ですべての作業ができるので便利です。ただ、分からなくなった時の電話での問い合わせ時間を延長するなど、多くの人をサポートできる仕組みを充実してもらえるといいですね。

学んでチェック、議論を

――国民が高い納税意識を持つために大切なのは租税教育です。大学で教える立場から諸富教授のご意見をお願いします。

諸富 日本人にとって、税金は「お上から取られるもの」というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、税金は社会サービスを支えるものです。少子高齢化が進み、社会保障の負担が増えていく中、自分たちが社会サービスを受けるための権利として税を支払うといった考え方に変えられないかと思います。そして、税金がきちんと使われているのかをチェックし、議論することが必要です。

諸富 徹さん

諸富 徹さん

――武田さんはいかがでしょうか。

武田 自分は子どものころ、学校の建物や信号、道路が税金でできていることを教わりました。(租税教育を受けることは)自分たちも消費者であり、社会の一員だと実感できるいい機会です。税金だけではなく、お金の大切さを学ぶこともできると思います。

――国税局は租税教育にどう取り組んでいますか。

藤田 小学生から高校生までを対象とした租税教室は昨年度、近畿6府県で約2900回に上りました。国税庁ホームページに「税の学習コーナー」を設け、遊びながら学べるゲームも掲載しています。

税逃れ、厳しく

――次に適正・公平な税務行政の推進についてです。まず、国税局の取り組みを説明してください。

藤田  国税庁では、不正に税金の負担を逃れようとする悪質な納税者に対して厳正な調査をしています。中でも、海外で受け取った収入を申告しない、あるいは、各国の税制の違いを巧みに利用してどこの国にも税金を納めないといった国際的な租税回避が問題となり、今年4月には租税回避地(タックスヘイブン)を使った不明朗な取引を指摘した「パナマ文書」が大きく報じられました。国際取引の解明については、各国との効果的な情報交換に努めていきます。また、滞納の未然防止や整理にも取り組んでいます。

武田 訓佳さん

武田 訓佳さん

武田  真面目に申告・納税している人が損だと感じるような「正直者がばかを見る」といったことにならないよう、脱税する人や税金を滞納する人には厳しく対応すべきです。

山田 当社もグローバルな活動をしていますが、世界的な企業がタックスヘイブンを利用し、巨額の税金を回避している実態を聞くと、不利な中で戦っているんだと感じます。昨今、各国の税務当局が連携を強化する動きが出ているのは当然です。健全なルールの中で国際競争を公平に戦っていくためにも、国際間の税制の仕組みを整えていくことをお願いしたいです。

諸富 企業活動がグローバル化する一方で、課税権は国境を越えられず、所得の移動を十分に捕捉できないのが問題です。課税を逃れる仕組みを利用した企業が、低い納税額で済んでしまう。これでは国に税収が入らず、例えば消費税という形で広く負担を求めることになり、税負担の公平性が問われます。こうした問題は国際的にも認識が深まり、海外で暮らす人の金融口座情報を各国と交換する仕組みが出来上がりました。海外で得た所得も課税できるようになったのは大きな進歩で、より正確な情報把握を進めてほしいと思います。

若者、考えるきっかけに

――最後に税務行政への意見や、要望をお願いします。

武田 若い世代の方たちには「税を考える週間」を良いきっかけにして、私たちの暮らしを支える税金について考えてもらえたらと思います。そういった方たちのためにも、国税職員の皆さんには分かりやすく伝えていってほしいです。

藤田 博一さん

藤田 博一さん

山田 国税庁は、税務に関してコーポレートガバナンス(企業統治)が充実している企業に対し、税務調査の間隔を広げる方針を打ち出しています。自主的に税金を納めると共に、納めやすい環境を整えていただくのは好ましく感じます。いずれにせよ、企業のトップとしては税務コンプライアンスの向上を念頭に活動していきたいです。

諸富 私たち国民は、税金を納めるのは社会サービスや政府活動を支えるためだと理解することが重要です。一方で、税逃れを考える悪質な納税者には厳正な対応をしていただく。公平な税務行政を進めるには、納税者と課税当局が共に協力していく必要があります。

藤田 これからも質の高い税務行政を進め、皆様の信頼に応え、更に揺るぎないものにしていきたいと考えています。