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税を考える週間特集 毎日新聞紙上座談会より

東日本大震災の復興に用いる財源論議や消費税の引上げなど、税の公平負担や使途を巡って世間の関心が高まっている。11日に始まった「税を考える週間」(17日まで)に合わせ、計量機器メーカー「イシダ」(京都市)の石田隆一(いしだりゅういち)会長、関西学院大法学部の一高龍司(いちたかりょうじ)教授、フリーキャスターの八木早希(やぎさき)さん、大阪国税局の菅野良三(かんのりょうぞう)局長に納税の意義や税務行政の課題について意見を交わしてもらった。【司会・白神潤一毎日新聞社会部長】

座談会写真

【座談会出席者(敬称略)】
「イシダ」会長石田 隆一
関西学院大法学部教授一高 龍司
フリーキャスター八木 早希
大阪国税局長菅野 良三

暮らしを支える“会費”使われ方にも関心を

「e-Tax」で手軽に

――まず、税を考える週間についてご説明ください。

菅野 国民に税の役割や税務行政の現状について理解してもらい、納税義務を履行していただくため、様々な施策を実施しています。今年のテーマは「税の役割と税務署の仕事」。国税局の取組を紹介し、税務行政への意見や要望をいただく機会を設けています。日本は申告納税制度を採用しており、納税者自らが税務署に申告することで税額を確定させます。この制度を支えるために「納税者サービスの充実」と「適正・公平な税務行政の推進」を二つの柱にしています。

――IT(情報技術)を活用した納税者サービスの取組は。

菅野 国税庁のホームページ(HP)では、納税者が自分で申告書を作成する際の参考として様々な税務情報を提供しています。財産評価の資料となる「路線価図」を見ることができ、税に関する質問への回答なども「タックスアンサー」で調べることができます。電子申告「e-Tax」(イータックス)では、自宅やオフィスからインターネットを利用して申告や納税ができます。税務署や金融機関に出掛ける必要がなくなり、医療費の領収書などの提出も省略できます。還付金の処理も通常期間の半分となる3週間程度に短縮されます。

――これについて、石田会長のご意見は。

石田 隆一さん

石田 私は典型的なアナログ人間で、パソコンはできません。ですが会社にできる人はたくさんおり、社会におけるデジタル化の流れは避けられません。IT化は企業にとっても必要で、(ITを扱う能力に)年代の格差はありますが、時が解決していくと思います。

――ブログなどを活用されている八木さんから見たHPへのご意見は。

八木 今回初めて見てみましたが、内容が細分化されていてとても分かりやすく、驚きました。(インターネットで解説する)「Web-TAX-TV」も面白かったです。ただ、必要に迫られないと国税庁のHPに触れる機会はないかもしれません。若者がネットサーフィンをする中で、まず第一歩として訪れてもらうきっかけ作りが必要かもしれません。

租税回避、厳正に対処

――経済の国際化に伴う国税局の対応を教えてください。

菅野 海外で受け取った収入を隠す、利益を得ているにも関わらず各国の税制や租税条約の違いを利用してどこにも税金を納めないといった国際的租税回避行為が問題となっています。最近では大企業だけでなく、中小企業や個人の富裕層にも広がっており、厳正に対処する必要があります。今年9月現在、日本は52の租税条約を発効していますが、条約に情報交換規定を新たに設けるといった枠組みの整備を図っています。

――一高教授は国際租税法の専門家としてどう思われますか。

一高 龍司さん

一高 国際課税の目的は我が国の経済の活性化を図りながら、きちんと課税権を確保していくことです。税金を逃れるためだけの取引にはきちんと課税をしていかなければならない。それには取引の全容を把握するための情報収集が何より重要です。いわゆる軽課税国といったタックスヘイブンの問題では、最近は相手の税制度そのものを疑問視するよりも、どう情報公開をさせていくかに重きが置かれています。日本の国税職員が現地へ調査に赴けない以上、どういう財産が隠されているのか、情報を渡してもらえるよう相手に求めていく必要があります。自国、相手とも税務調査の水準を上げていかなければなりません。

――グローバルな事業展開をされている石田会長のご意見は。

石田 当社で海外の連結決算対象になる会社は19社あり、世界100か国に輸出しています。税金は取られると思うのでなく、国民としての会費と思って払わなければならないでしょう。世界に進出する会社であれば、税法が違うといっても現地でもうけさせてもらっているのだから、そこで税金を納めるという意識が大切です。租税条約を世界的に結んでいくことも重要です。私にとって企業経営の理念は「夢で始まり、ロマンで発展させ、責任感で成功する」です。これまで一度も赤字になったことがなく税金を納めてきました。だからこそ白昼堂々と歩くことができるとも言えます。

「公平性」の見直しを

――適正、公平な課税に向けた国税局の取組について教えてください。

菅野 限られた人員をバランスよく配置し、大口で悪質な不正には組織力を生かした調査を行い、簡単な申告誤りなどの是正は簡易に調べるなどメリハリある運営を心掛けています。査察制度は、反社会的行為に対して刑事責任を追及するためにあります。犯罪捜査に準ずる方法で強制的に調査し、検察官に告発します。10年度に査察部は46件を処理し、うち33件を告発しました。1件当たりの脱税額は平均1億2400万円です。不正資金の多くは有価証券の他、不動産の購入にも充てられ、車のフロアマットの下に資金を隠していた事例もありました。査察官は摘発のため努力しています。

――納税協会の会長も務められた石田会長はどう考えますか。

石田 国税局は税務行政の執行を十分にやっていると思います。ただ国内の税制には言いたいことが多いのも実情です。国際的にみても法人税、所得税といった直接税の税率が高く、消費税などの間接税が安い。企業は円高、電力使用の削減要請などに直面しており、このままでは海外に逃げかねない現実があります。政治の問題になりますが、公平性や国際性の観点からもう一度税制を見直さなければならないと思います。

子供への教育が大切

――一高教授のご見解は。

一高 課税の公平は税制の基本原則です。カナダでは70年代に再分配などを巡る議論が浮上し、相続税の制度そのものを廃止しました。日本の税制も制度が複雑で、通達で変わっていきます。意見公募手続などを活用し、国民的な関与を高める工夫が必要でしょう。納税者の活動が容易に国境を越えていく時代です。国内の税制も競争環境を整えるため魅力的なものにする必要があります。一方、法律に従わない納税者は刑事罰の対象にもなります。税を逃れる人たちに対する厳しい目を社会で培っていかねばなりません。それには子供の頃からの教育が大切です。出張講義で高校生に税法について話すことも多いですが、大切な問題だと分かってもらえます。

――納税者の立場から見た税の在り方について、ご意見をいただけますか。

八木 早希さん

八木 アメリカで9年、韓国で3年暮らしましたが、日本人は税の使い道にあまり関心を持たず、税金は取られるという意識が強いように思います。私も今春に会社を退職してから初めて税について真剣に考えました。義務だから仕方なく納税するのではなく、社会に役立つ税、暮らしを支える税として納める意識が必要なのではないでしょうか。主婦たちは5円、10円を節約するために走り回っています。ですが、なぜ世の中に税金が存在するのか。税金がなくなればどうなるのか。そういったことを考えるきっかけが大切です。映画「マルサの女」だけでなく、最近は国税局を題材にしたドラマも増えています。税制は専門用語が多いですが、分かりやすい言葉でなければなかなか伝わりません。国際化が進む中、日本の税体系を英語でHPに載せることもできるのではないでしょうか。そういった工夫や教育を通じて、子供たちが税についてもっと知ってほしいと思います。

一高 私も同感です。インターナショナルスクールには小学校低学年向けに税の本があります。ですが、日本語ではそういったものはありません。教育には改善の余地があると思います。また、石田会長がおっしゃるように税金はいわば会費です。会費を納める当事者としての意識を育てていくことが重要ではないでしょうか。

石田 今の日本は経済的な格差が開いてきています。しかし、それぞれの立場で納税のための意識をしっかりと持たなくてはいけないと思います。

被災者へホームページを活用し広報

菅野 良三さん

――最後に、菅野局長にまとめていただきましょう。

菅野 国税局は納税者が納税義務を円滑に果たすための環境を提供する機関であり、これからも環境の変化に対応しながら適正、公平な税務行政を着実に果たしていきます。東日本大震災や台風12号などで被災した納税者に対してはHPなどを活用して広報しています。今後も皆様の立場に立って親切、丁寧な対応を行ってまいります。今日のご意見、ご要望は今後の税務行政に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。