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平成29年6月
大阪国税局

平成28年度 査察の概要

査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。

昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化により、脱税の手段・方法が複雑・巧妙化している中で、査察は、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者の告発に努めています。

1 査察調査の概要

【平成28年度の取組】

平成28年度においては、消費税の輸出免税制度を利用した大口の不正還付事案を告発するなど、消費税事案に積極的に取り組み、過去5年間で最も多くの告発を行いました。

また、国外取引を利用した不正を行い得た資金を国外で留保していた事案など、国際事案にも積極的に取り組みました。

さらに、急速に市場が拡大している太陽光発電関連事案など経済社会情勢に即した事案にも積極的に取り組み、これらの事案も告発しました。

【平成28年度の査察事績】

  • ○ 着手・処理・告発件数、告発率
     平成28年度において査察調査に着手した件数は、41件でした。
     平成28年度以前に調査着手した査察事案について、平成28年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は41件、そのうち検察庁に告発した件数は30件であり、告発率は73.2%でした。
  • ○ 脱税額
     平成28年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で50億円、そのうち告発分は48億円でした。
     告発した事案1件当たりの脱税額は1億5,900万円でした。
  • ○ 業種
     平成28年度に告発した査察事案で多かった業種は、「建設業」が6件、「時計卸売」が3件でした。

【査察事件の一審判決の状況】

平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は28件であり、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が4人に出されました。

2 社会的波及効果の高い事案への取組

平成28年度においては、現下の経済社会情勢を踏まえて、特に、消費税事案、国際事案、近年の経済情勢に即した事案等の社会的波及効果の高い事案に積極的に取り組みました。

(1) 消費税事案

消費税事案については、国民の関心が極めて高いこと、また、受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、積極的に取り組みました。
 平成28年度の消費税事案の告発件数は7件であり、うち受還付事案は6件でした。
 また、平成23年度に創設された消費税受還付未遂犯を適用した事案も1件ありました。

年度 平成        
24 25 26 27 28
告発件数 内- 内- 内1 内5 内6
2 3 3 6 7

(注)件数欄の内書きは、受還付事案の件数である。

【平成28年度告発事例(消費税の輸出免税制度を利用して不正に還付を受けていたもの)】

A社・B社・C社は、高級腕時計の輸出販売を行う会社ですが、3社のグループの基幹会社D社の在庫商品である高級腕時計を利用し、高級腕時計を国内仕入と仮装して架空の課税仕入を計上するとともに、当該高級腕時計をD社の国外の関係会社に持ち込み架空の輸出免税売上に仮装して申告を行うことにより、不正に消費税の還付を受けていました。この不正取引において、3社は、D社の在庫商品である高級腕時計を何度も国内と国外で循環させていました。
 本事例では、デジタルフォレンジックツールを使用し、削除されたデータを復元することにより、不正取引を解明することができました。

平成28年度告発事例 消費税の輸出免税制度を利用しての不正還付の状況を表した図

(2) 国際事案

国税庁では、国際課税への取組を重要な課題と位置付けており、査察においても、国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案に積極的に取り組みました。
 平成28年度の国際事案の告発件数は9件でした。

年度 平成        
24 25 26 27 28
告発件数          
2 6 2 7 9

【平成28年度告発事例(国外取引を利用した不正を行い得た資金を国外留保していたもの)】

E社は、外資系生命保険会社の保険代理を行う会社ですが、実質経営者が国外に設立した会社に対して架空の支払手数料を計上する方法により所得を秘匿して多額の法人税を免れ、不正資金を国外に開設した実質経営者名義の預金で留保するほか、実質経営者の国外のコンドミニアムの取得費用に充てていました。
 本事例では、国外預金の解明のために、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換制度を活用しました。

平成28年度告発事例 国外取引を利用した不正を行い得た資金を国外留保していたものの状況を表した図

(3) 近年の経済社会情勢に即した事案

近年の経済社会情勢に即し、急速に市場が拡大する分野において、悪質な脱税が多数みられ、それらの事案に対して積極的に取り組みました。

  • ○ 太陽光発電関連事案
     再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入により、太陽光発電事業の市場が急速に拡大しており、それに伴う取引に係る脱税も増加しています。
     平成28年度の太陽光発電関連事案の告発件数は4件でした。
年度 平成        
24 25 26 27 28
告発件数                
- - - 1 4

【平成28年度告発事例1

F及びFが実質的に経営するG社は、太陽光発電設備の販売設置等を行う会社の株式を高値で売却することで多額の譲渡益を得ていましたが、外国株式の架空の譲渡損を計上することでその利益を圧縮し、それぞれ所得税と法人税を免れ、不正資金をFの自宅取得や株式投資などに充てていました。この架空の譲渡損失の計上に当たっては、Fは弁護士を含む脱税請負人グループに脱税工作を依頼しており、彼らは共謀して実際には行われていない外国株式の取引をねつ造していました。

平成28年度告発事例1の状況を表した図

【平成28年度告発事例2

H社は、建設工事を行う会社ですが、自社に太陽光発電設備を設置する際に、その工事費を水増し計上していました。更に、H社は、売電が決算日前に開始されたかのように偽装工作することにより、この設備が決算日前に稼働していたように見せかけた上で、法人税の優遇制度を不適切に利用して設備の取得費全額を即時償却し、不正に減価償却費を計上していました。H社は、これらの方法により、多額の法人税を免れており、工事費の水増しで捻出した不正資金は代表者が自宅において現金で保有していました。

平成28年度告発事例2の状況を表した図

3 不正資金の留保状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金、有価証券、FX取引の証拠金として留保されていたほか、居宅や高級外車、高級腕時計の取得費用、生命保険、ギャンブル等の遊興費などに充てられていた事例もみられました。
 また、不正資金の一部が、国外の預金口座で留保されるほか、国外のコンドミニアムの取得費用に充てられていた事例がありました。
 脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、

  • ○ 居宅敷地内の蔵の段ボール箱の中
  • ○ 居宅のタンスの中及びタンスの前に存在したボストンバッグの中
  • ○ 居宅の鏡台椅子内に存在したバックの中

に現金等を隠していた事例などがありました。

4 査察事件の一審判決の状況

平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は28件であり、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が4人に出されました。

5 査察の今後の取組

平成29年度においては、査察制度の一罰百戒の効果が最大限に発揮できるよう、現下の経済社会情勢を踏まえ、特に、

  • ○ 消費税受還付事案
  • ○ 無申告ほ脱事案
  • ○ 国際事案

のほか、社会的関心が高く、近年の経済社会情勢に即した分野で、悪質な脱税が伏在する可能性の高い事案など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案の積極的な着手・処理に取り組むこととします。

6 参考計表

(1) 着手・処理・告発件数、告発率の状況

年度 平成        
項目 24 25 26 27 28
着手件数
45 45 43 40 41
処理件数(A) 43 45 43 40 41
  告発件数(B) 28 32 26 24 30
告発率(B/A)
65.1 71.1 60.5 60.0 73.2

(2) 脱税額の状況

年度 平成        
項目 24 25 26 27 28


総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
3,126 2,615 3,536 3,400 4,991
同上1件
当たり
73 58 82 85 122
告発分 2,768 2,468 2,983 2,566 4,776
同上1件
当たり
99 77 115 107 159

(注) 脱税額には加算税額を含む。

(3) 税目別告発事案の推移

イ 税目別の告発件数

年度 平成24 25 26 27 28
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
4 14 6 19 4 15 1 4 10 33
法人税 19 68 19 60 18 69 14 59 12 40
相続税 1 4 2 6 1 4 1 4 1 3
消費税 内0   内0   内1   内5   内6  
2 7 3 9 3 12 6 25 7 24
源泉所得税 2 7 2 6 - - 2 8 - -
合計 28 100 32 100 26 100 24 100 30 100

(注) 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の告発件数である。

ロ 税目別の脱税額

年度 平成24 25 26 27 28
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
443 16 527 21 565 19 198 8 800 17
法人税 1,718 62 1,265 51 1,969 66 986 39 1,113 23
相続税 114 4 377 15 332 11 491 19 244 5
消費税 内-   内-   内24   内651   内2,583  
236 9 140 6 117 4 703 27 2,619 55
源泉所得税 257 9 159 7 - - 188 7 - -
合計 2,768 100 2,468 100 2,983 100 2,566 100 4,776 100

(注1) 脱税額には加算税額を含む。

(注2) 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の脱税額である。

(4) 告発の多かった業種

平成26 平成27 平成28
業種 者数 業種 者数 業種 者数
不動産業 7 建設業 3 建設業 6
建設業 3 金属製品製造 3 時計卸売 3
物品・貴金属小売 2 クラブ・バー 2 不動産業 2
- - 古物小売 2 金属製品製造 2
- - 電子機器小売 2 商品、株式取引 2
- - 時計小売 2 - -

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。

(5) 査察事件の一審判決の状況

項目 1判決件数 2有罪件数 有罪率(12) 実刑判決人数 31件当たり犯則税額 41人当たり懲役月数 51人(社)当たり罰金額
年度
平成 百万円 百万円
26 内2 内2          
18 17 94.4 1 57 14.7 17
27 内2 内2   内1      
28 28 100.0 1 70 14.4 18
28 内1 内1   内3      
28 28 100.0 4 44 12.4 11

(注1) 表中の内書は他の犯罪との併合事件を示している。

(注2) 3から5は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。