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マイレージサービスに代表されるポイント制に係る税務上の取扱い
−法人税・消費税の取扱いを中心に−

 
高安 滿

税務大学校
研究部教授


要約

1 研究の目的

 流通や航空業界での利用度が高いポイント制のすそ野が広がっており、交換して発行企業以外でも使用できるなど「疑似通貨」の機能を持つポイントも出てきている。
家電量販店のポイントシステムや航空会社のマイレージサービスなど種類は多種多様に及んでおり、ポイントとマイルの相互交換もでき、貯まったポイントは商品代金の値引きや景品・商品券・電子マネーとの交換に利用できる。
このようなポイントについて、平成19年1月直近決算期における未使用ポイントの負債総額は上場企業で3,200億円超と報じられており、また、経済産業省も平成19年7月2日に「『企業ポイントのさらなる発展と活用に向けて』(企業ポイント研究会取りまとめ)について」を発表したが、今回はガイドラインなど新たなルール作りは見送られたところである。
さらに、平成19年7月25日付新聞報道によると、欧州など世界約100ヶ国で利用されている国際会計基準を作る専門家組織の国際会計基準理事会は、顧客が利用するまでポイントに相当する金額を売上から除外し、負債として計上するという、「ポイント」の会計処理として初の統一指針をまとめたと報じられている。
そのような状況ではあるが、我が国法人税法上、ポイントについて明確な規定や取扱いを明らかにしているものがないのが現状である。
そこで、ポイント制について、各種情報を収集するとともに研究し、ポイントの発生、交換(売買)、利用に係る法人税・消費税の取扱いを考察するものである。

2 研究の概要等

(1) ポイントシステムの歴史
ポイントシステムの原形は、スタンプカードである。それは、各店舗が独自に発行するスタンプカードに、買上げ金額や利用回数に応じたスタンプを押印し、スタンプカードがすべて埋まれば、金券や景品と交換できるシステムである。これらは、顧客にとっては貯める楽しみと景品交換に期待を持つことができ、店舗側にとっても、顧客の固定化と販促効果を得られる仕組みとなっている。
このような中、一社だけのカードではスタンプが溜まり難いとか、景品が魅力的でないという利用者からの意見により、グリーンスタンプやブルーチップのような共通スタンプサービスが発足した。
その後、1980年代のPOSシステム(Point of Sales system)の普及に伴い、デジタル式の「ポイントカード」の普及が始まり、PVCカード(代表はクレジットカード)やPETカード(代表はテレホンカード)で作成したカードを顧客に配付し、会員コード毎にポイントをカウントしていく現状のシステムが普及していくこととなった。
流通業界で最も早く現在のポイントカードシステムを導入したのは、カメラ量販店のヨドバシカメラ(1989年導入)であったとされており、その後、競合する家電量販店などに広がっていったとされている。
現在、他企業にも大きな影響を与えているマイレージ(マイル)に関しては、1983年にJAL(日本航空)が、1986年にANA(全日本空輸)が、アメリカ路線限定で導入し、1993年に両社とも国際線全体にサービスを拡大し、1997年には両社国内線にもサービスを拡大している。また、1997年には、JALがマイレージサービスの異業種間提携を開始し、その後グループなどでの共通ポイントサービスの提供が加速した。
特に、2000年以降、他企業とのポイント交換サービスが広く取り入れられたことにより、ポイントの擬似通貨化が進んでおり、その動きは更に加速しつつ状況にある。

(2) ポイントカード発行の目的
マーケティングのなかの販売・顧客管理では、「20:80のパレートの法則」が働くと言われている。つまり、企業の売上の80%は顧客数の20%によりもたらされているという定説である。したがって、企業の収益性(利益)向上に貢献する優良顧客を識別し、愛顧に対してより多く還元することで顧客維持や買上額を高めるという、よい循環をつくることが、企業の収益性向上につながることとなる。そのようなマーケティング手法の一つに、FSP(Frequent Shoppers Program)及びFFP(Frequent Flyers Program:多利用搭乗客向けプログラム)というプログラムがある。これはポイントカードやサービス提供カードといった顧客カードを発行して顧客一人一人の購買データを捉えながら顧客を購入金額や来店頻度によって選別し、セグメント別にサービスや特典を変えることによって個々の顧客に最も適したサービスを提供し、かつ効果的な販売戦略を展開して、優良固定客の維持・拡大を図る手法である。
よって、ポイントカード発行のメリットとしては、第一に、カード発行の宣伝効果とディスカウント(ポイント還元)による顧客流出の防止があり、第二に、顧客データを収集し、データ分析後の効果的なマーケティング活動による優良顧客の囲い込みというメリットがある。
しかしながら、ポイントカードシステムは、競合他社が導入すれば、競って導入するという傾向が続き、カードの発行自体が目的となってしまった状況も見受けられ、ディスカウントによる販促目的のカードとなり、その結果、ポイントカード発行の最大のメリットである「顧客データの管理・分析による効果的なマーケティングの実施及び優良顧客の囲い込み」が出来ず、ディスカウント合戦により利益を圧迫するケースも見受けられる。

(3) ポイントの性格等
ポイントの種類は大きく2つに分けられる。1購入のたびに購入金額に応じてポイントが蓄積され一定ポイントに達した時点で初めて商品の値引き等のサービスが受けられる又は金券等を受領できるタイプ(蓄積型ポイント)と、2ポイントが付与された時点ですぐそのポイントを使用してサービスが受けられるタイプ(即時使用可能型ポイント)の2つである。
また、企業が付与するポイントについても1自社発行型、2共同発行型、3他社買取発行型などがあり、ポイントが企業間で売買されているものもあるようである。
さらに、消費者側のポイントの利用も、値引き(割引)、景品交換、商品券交換、電子マネー交換、キャッシュバック、更には公共料金の支払と多種多様である。
このようなポイントとは一体何かとなると、平成15年4月23日衆議院経済産業委員会において、民主党中山義活代議士の、「ポイントカードは景品か、値引きなのか明らかにしていただきたい。」という質問に対し、公正取引委員会竹島委員長は、「公取としては、これは値引きである、景品ではない、値引きであるという扱いをさせていただいております。また、その旨も世の中に明らかにさせていただいているところでございます。」と答弁している。
しかしながら、現状の利用のされ方をみると、ポイントの性格は、1売上値引、2売上割引、3おまけ景品(販売促進費)、4民法でいう予約に似たもの、5売上前受金、6企業通貨などが考えられ、その価値の認識と測定において、各々が混在していて一つに特定することはできないのではないかと思われる。

(4) 企業通貨
企業通貨とは、企業が独自に発行するポイントプログラム(名称としては○○ポイントやマイル)で、発行企業以外の商品やサービスと交換できるものや電子マネー(例としてEdyやSuica)などである。一般的には「有償契約に基づいて発行される電磁的記録であって、契約に基づく範囲内で金銭債務を弁済する効力を有する情報」と定義されている。
したがって企業通貨は、流通通貨として国家などによって価値が保証された「通貨」ではなく、サービスを提供する会社による私製通貨(代用通貨など)の一種である。そして、企業通貨が質量ともに急速に発達しているため、立法による本格的な手当てが不可避であるとの認識が高まってきている(現在、商品券やプリペイドカードを保護規制する法律としては、「前払式証票の規制に関する法律(通称プリカ法)がある。)。
なお、企業通貨の類似概念として、電子決済、地域通貨、電子債権などがある。

(5) 会計処理について
自社発行のポイントサービスでは、ポイント発行時ではなく特典還元時に実コストが発生する仕組みとなっている。ポイント発行時に数%のポイントを付与しても、期限切れによるポイント失効やカードの紛失などの要因により、実際の値引き発生額や実コストは大幅に減少するのが現実となっている。そのため、特典還元時に販売促進費等として会計処理する方法が一般的に用いられてきたが、発行してから特典還元されるまでに会計年度をまたぐことも多く、特典還元時に計上する方法は一種の隠れ債務を生むこととなる。
そのため近年では、会計の透明性を高めるべく、「企業会計原則」等に従い、大手企業を中心に発行ポイントに応じた引当処理が一般的に行われるようになっている。
ポイント発行企業は、決算時のポイント発行残高に、想定される使用率を乗じた金額を負債として引当てている。なお、引当率は30%〜100%のようである。
この場合の引当金の計上については、企業会計原則注解(注18)「引当金について」で、「将来の特定の費用又は損失であって、1その発生が当期以前の事象に起因し、2発生の可能性が高く、かつ、3その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。」と規定されており、具体的には、製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
なお、前述の国際会計基準理事会によるポイントの会計処理統一指針では、「顧客が利用するまでポイントに相当する金額を売上から除外し、負債として計上する。また、未使用のポイントについては、一定期間が過ぎて顧客が利用する可能性がないと判断されればその時点で売上への計上を認める。」としているが、日本では、ポイントを付与する企業と実際にそのポイントを使ってサービスを提供する企業が異なることも多く、このため顧客が将来利用するポイントを正確に見積もることが難しく、企業は一般に過去の実績を参考に引当て処理をしているところである。
仮に、新指針を適用すれば会計処理が煩雑になるとの指摘もあるが、国際会計基準との共通化作業を進めている日本の会計基準づくりがどのように対応するかは未定である。

(6) 法人税法上の取扱い
企業会計上は数多くの引当金が認められているが、現行の法人税法上の引当金は、貸倒引当金(法52)と返品調整引当金(法53)の2つである(平成10年の税制改正で課税ベースの拡大の観点から、賞与引当金、特別修繕引当金、製品保証等引当金が廃止となり、平成14年の税制改正で連結納税制度の採用に伴う法人税収の減少を緩和するため、退職給与引当金が廃止となっている。)。なお、租税特別措置法において、特定の政策目的のために準備金の積み立てが規定されている。
以上の引当金、準備金の状況からポイント累積残高の金額が多額であるからといって、税法上新たな引当金の創設は困難であると判断される。
次にポイントの損金計上については、原則として法人税基本通達9-7-2《金品引換券付販売に要する費用》により、「その引き換えた日の属する事業年度の損金の額に算入する。」こととなるが、例外として同基本通達9-7-3《金品引換費用の未払金計上》の、「販売の日の属する事業年度において損金経理により未払金に計上することができる。」旨の取扱いがある。
この例外的取扱いは、引換券1枚だけの呈示を受けてもその引換えに応じることとしているものである場合には、期末においてその引換えに要する費用を合理的に算定することが可能であり、また、その性質上一種の確定債務ともいえることから、その引換えに要する費用について未払金計上を認めることとされたものであり、これは費用収益対応の原則及び債務の確定からの取扱いと考えられる。

(7) 消費税法上の取扱い
消費税法における支払手段とは、外国為替及び外国貿易管理法6条1項7号に規定されており、銀行券、政府紙幣、小切手、手形そして電子マネーをいう。なお、電子マネーとは、証票、電子機器その他の物に電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により入力されている財産的価値であって、不特定又は多数の者相互間で支払のために使用することができるもので、その使用の状況が通貨のそれに近似しているものに限るものである。
また、物品切手等とは、商品券その他名称のいかんを問わず、物品の給付請求権を表彰する証書及び役務提供又は物品の貸付けに係る請求権を表彰する証書をいい、この場合の「請求権を表彰する証書」とは、その証書の所持人に対してその作成者又は給付義務者がこれと引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供をすることを約する証書をいい、記名式であるかどうか、又はその証書の作成者と給付義務者とが同一であるかどうかを問わない。
そして、いわゆるプリペイドカードは物品切手等に該当する。

3 結論

 当初のポイントは、顧客囲い込みのためのマーケティングツールとして活用され、古くはスタンプ等で自社の商品やサービスに充当できるものであり、現在でも多々存在している。その場合のポイントは、景品引換券又は次回割引券のようなものに過ぎないものである。
しかし、発行企業以外でも利用でき流通性を持った企業通貨としてのポイントは、今後、消費者保護や企業提携を踏まえて、なお一層の発展が予想され、その性格はまさに擬似貨幣と考えられる。
よって、企業通貨としてのポイントについては以下のような取扱いとすべきであると考える。

(1) 法人税法上の取扱いについて
デジタル化された現在のポイントは、いつ、どこで、どのような付与理由によって発生したものかを時系列で把握しており、そのデータは異業種間でのポイントの交換でも引き継がれているようである。また、ポイントの使用に当たっては、先入れ先出しにより発生消滅し、残高が管理されている。その残高に対する企業会計の処理は上記で述べたとおりである。
法人税法上のポイント累積残高に係る引当金の計上は、現在はもとより将来においても困難であると考えられる。
しかしながら、ポイントの性格等から、法人税基本通達9-7-3《金品引換費用の未払金計上》の取扱いを解釈して、企業通貨としての「即時使用可能型ポイント」については、発生、利用状況、残高管理、費用の合理的見積が呈示できるのであれば、未払金計上を認めて差し支えないのではないかと考える。

(2) 消費税法上の取扱いについて
現在のポイントは色々な性格が混在しているため、その発生、流通、利用等の各取引時点における対価性(無償取引)の有無とその取引の性格から、ポイントの課否判定すべきと考える。そして、擬似貨幣と考えられる企業通貨としてのポイントを、そのある位置(形態)から検討すると、次のような取扱いが相当と考えられる。

1 ポイントの発生、発行、付与時は不課税

2 ポイントの流通(企業間、消費者間、消費者と媒介業者間)では、交換、売買ともに非課税(企業間での新規発行は1の不課税と同取扱い)

3 ポイントの利用(消費者と発行企業(提携企業を含む)間)では、

・景品交換は不課税(景品の仕入れは課税取引)

・商品券交換は不課税(商品券利用時は課税取引)

・電子マネー交換は不課税(電子マネー利用時は課税取引)

・現金交換(キャッシュバック)は課税(対価の返還) (提携企業の場合は不課税)

・値引割引(支払代金の控除相殺)は不課税(差額支払金額の対価が課税取引)

4 ポイント利用に係る提携企業からの請求等は、

・支払側は課税(販売促進費)

・入金側は不課税

5 ポイントの期末残高は対象外

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