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国際化における資料情報制度及び情報交換制度の課題

 
永井 博

研究科第34期
研究員


はじめに

経済取引の国際化が進展・拡大する中、平成10年4月の改正外為法の施行を初めとする、いわゆる日本版ビックバン(1)により、国境を越えた取引が一層活発化し、金融商品、金融サービス等の国際化・多様化が進展してきている。また、インターネットに象徴される情報通信技術の発達(2)は、取引における物理的、空間的な制約を大幅に除去し、クロスボーダー取引を容易にする。さらに、今後の電子商取引(electronic commerce)の急速な普及も、一層の経済取引の国際化をもたらすと予想されている。
このような状況の下、租税を取り巻く環境もまた大きく変化してきており、所得源泉地の変更、所得の性質の変更等への対応といった実定法上の問題のほかに、税務行政における執行の困難性が問題となってきている。適正・公平な課税を命題とする税務行政にとっては、現在、これらへの対応が大きな課題となってきている。
国際取引はそもそも国内取引と比べて租税回避の機会が多い上、取引事実の把握が困難であるなどの問題があり、さらに外為法改正や情報通信技術の発達等による一層の国際化が進展する中、国際取引から生じる所得の的確な把握のために新たな対応が求められることとなる。このような問題を解決する上で、国内にある資料情報(課税資料)はもちろん、国外にある資料情報(課税資料)を税務当局が入手できるかどうかが税務執行上、重要な要素となる。経済取引が国際化・複雑化する中、資料情報制度の整備・充実を図るとともに、情報交換制度を実効あるものとすることが必要となってきている。
また、OECDにおいても、近年、資料情報制度や情報交換制度に関して、さまざまな議論が行われてきており、税の競争における有害税制に対する対抗措置としても資料情報制度及び情報交換制度に大きな期待が寄せられているなど、今までにないほど注目されている。
そこで、本稿においては、経済取引の国際化における資料情報制度の意義及び機能について考察するとともに、諸外国における資料情報制度をクロスボーダー取引について中心に検討し、情報交換の現状及びOECD等における議論の状況を踏まえ、我が国における資料情報制度及び情報交換制度の課題につい て検討することとする。
本稿の構成は、まず第1章では、経済取引の国際化の進展や外為法改正・情報通信技術の発達等により新たに生じる執行上及び制度上の問題を通して、資料情報制度の意義及び資料情報制度の整備・充実の必要性について考察する。
第2章では、我が国の資料情報制度の現状を法定資料を中心に検討するとともに、アメリカを初め、フランス、イギリス、ドイツにおける資料情報制度をクロスボーダー取引に係る資料情報制度を中心に検討する。そして、これらの検討の結果を踏まえて、我が国の資料情報制度について国際比較を行う。
第3章では、国際化における資料情報制度を考える上で、欠かすことのできない情報交換制度について検討する。検討に当たっては、情報交換を含む国外資料の収集の方法について検討し、その後、現在のOECDモデル条約における情報交換規定について法的側面から検討する。
第4章では、OECD租税委員会報告書「OECD加盟国間の課税情報の交換」(Tax Information Exchange Between OECD Member Countries)を通して、情報交換制度に関する実務上の問題点について考察する。そして、さらに、情報交換についてのOECDにおける最近の議論の状況を概括する。
第5章においては、それまでの検討の結果を踏まえ、国際化の観点から、我が国における資料情報制度及び情報交換制度の課題についての考察を行うこととする。そして、さらに、これらが実効あるものとなるための環境整備についてあわせて検討したい。

〔注〕

(1) "Free"(市場原理が働く自由な市場に)、"Fair"(透明で信頼できる市場に)、 "Global"(国際的で時代を先取りする市場に)の3原則に則り、2001年までに我が国の金融市場をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場として再生することを目指し、金融システム改革、いわゆる「日本版ビックバン」が進められている。本文に戻る

(2) 1980年代以降のコンピュータの発達は、その高性能化、低価格化、ダウン・サイジング化、ネットワーク化へと変化をもたらし、情報通信技術の発達や通信業界の規制緩和により、情報通信のコストは大幅に低下し、国内と国外の距離は格段に短くなった。本文に戻る

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