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我が国における納税者サービスの検討
−米加豪との比較を通じて−

 
菅 哲人

税務大学校
研究部教授


導入

 現在、多くの先進国において、行政サービスの向上が要請されている。その背景としては、行政改革の動き、具体的には、肥大化した行政の役割の見直しが行われ、これまで行政が担当していた分野のうち、民間セクターに任せるべきものは、民営化又はアウトソーシングすることとし、更に、行政に残る分野についても、エージェンシー化や行政施策の指標化等を通じ民間と同等の効率性を求める動きがある(1)。更に、インターネットをはじめとする急速な情報技術の進展・普及は、民間部門のみならず公的部門のサービス の実施方法にも多大な影響を与えてきている。
税務当局が納税者等に対して提供するサービスも、こうした行政サービス向上の動きの例外ではない。近年、米、加、豪では納税者サービス、特に納税者の大部分を占める個人及び小規模事業者に対する所得税に関するサービスの向上が要請されている。しかしながら、日本を含めた各国の税務当局は、従来から、税務行政の目標をコンプライアンスの向上に置きつつ、ともすれば、その実現手段としては税務調査、徴収等、執行活動(公権力の行使)に重点をかけ、広報、相談等のサービスは補完的に実施してきたのが実情ではないだろうか。しかしながら上記の行政サービスー般についての昨今の状況に鑑みれば、今後、税務当局は納税者サービスにどのように取り組むべきか、そもそも納税者サービスがコンプライアンスの向上につながるのか、そうだとしても執行活動とのバランスはどのようにとるべきか、という点が検討されるべきである。
納税者サービスの向上に関しては、90年代の米国Internal Revenue Service(IRS)の動きが興味深い。まず、1993年のGovernment Performance and Result Actは、政府機関の行政活動についてその成果の指標化による説明を義務付け、続く1996年のInformation Technology Management Reform Actは、政府機関の情報技術の運用・活用を義務付けている。更に職員の権限乱用や情報化投資の失敗に対する批判に端を発する1998年7月のIRS改革法を受け、IRSは機構改革等に加え、そのミッションステートメントを変更し納税者サービスを前面に掲げる組織への衣替えを目指している。具体的な施策としては、電話相談サービス、インターネットによる情報提供、電子申告等を拡充している。またカナダRevenue Cahada(RC)、‘オーストラリアAustralianTax Office(ATO)においても、背景に多少の違いがあるものの、同様の納税者サービス向上への取組みが行われている。
翻って我が国の状況をみると、中央省庁改革法等が、米国と同様、指標化による施策評価や説明責任の考え方を採用しており、将来的には、税務行政の在り方にも影響を与えるものと考えられる。そこで、今後の国税庁の納税者サービスの在り方を考える上で、納税者サービスの向上が要請されている背景、実施に関する方針及び具体的な施策をこれら3か国と比較することが有益であると考えられる。
本論文の目的は次のとおりである。
まず、納税者サービスの意義及びその効果を明らかにする。次に納税者サービスの向上が求められる背景について、米国における経緯及び我が国における動向を紹介する。最後に、日米加豪の各国税務当局の納税者サービス向 上のための方針及び具体的施策の比較を通じて、我が国における納税者サービスの意義及び今後の方向性について若干の考察をする。


(1) 例えば中央省庁等改革基本法 「中央省庁等改革の基本方針」参照。本文に戻る

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