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電子商取引における国際的租税回避の可能性
−資本所得・法人居住地の可動性と租税回避否認についての考察−

 
崎 昇

税務大学校
研究部教育官


第1章 序説

 この研究は、高度情報化と経済のグローバル化の同時進行により発展しつつある電子商取引における、国際的租税回避の可能性の問題を究明しようとしている。
この間題に関して、OEDC租税委員会の作成した「電子商取引:課税の基本的枠組」報告書(1)は、各国の課税主権の維持と電子商取引から生じる課税ベースの各国間での公平な配分が必要であると述べ、国際間の二重課税や意図せざる課税の空白を回避する必要があると指摘している。これは、本稿の課題についての一般的なアプローチを示したものといえる(2)
本研究では、国家間の税収配分よりも、むしろわが国の課税主権の維持という観点から、次のような方法で研究を進めることとした。まず、電子商取引を利用して国際取引を行なった場合に生じる「課税の空白(double non−taxation)」について考察し、その対応策を検討する。具体的には次の2つの課税の空白を論点とする。ひとつは、居住者がポートフォリオ投資をインターネットを通じて直接行った場合に、海外で発生した投資に係る資本所得が課税繰延べとなる、という課税の空白の問題である。もうひとつは、法人は一般的にその設立地が居住地国とされるが、居住者がインターネットを利用してタックス・へイブンに法人を設立した場合には、その法人の実質的な居住地国においては、その稼得する国外所得が課税されないことになる、という課税の空白の問題である。
次に、その延長線上の問題として、国際取引の容易性・低コスト化とネット情報の普及がもたらすかもしれない国際的な「租税回避」について、その否認の方法について考察する。

〔注〕

(1) Electronic Commerce:Taxation Framework Conditions,A Report by the Committee on Fiscal Affairs,OECD(http://www.oecd.org/daf/fa/E-COM/framewke.pdf)
1998年10月のOECDオタワ閣僚級会議において公表されている。この報告書は、現時点における電子商取引に関する基本的な考え方と今後の課題についてまとめたもので、電子商取引に適用される5つの一般課税原則として、1中立性、2効率性、3確実性及び簡素性、4実効性及び公平性、5柔軟性、を明記し、電子商取引にも伝統的課税原則が適用されるべきであるとしている。これを解説したものに、渡辺智之「電子商取引に関するOECD租税委員会報告書について」租税研究98・12、88〜100頁、同「電子商取引に関する課税問題について−OECD租税委員会報告書の解説−」国際税務Vol.18.No.12.10〜16頁。本文に戻る

(2) OECDオタワ閣僚級会議以前の電子商取引に関する国際的議論をまとめたものとして、増井良啓「電子商取引と国際課税」租税研究98・9、80〜90頁。本文に戻る

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論叢本文(PDF)・・・・・・1.85MB