(法第66条第4項の規定の趣旨)

12 法第66条第4項の規定は、持分の定めのない法人(持分の定めのある法人で持分を有する者がないものを含む。以下同じ。)に対する財産の贈与又は当該法人を設立するための財産の提供(以下「贈与等」という。)により贈与等をした者又はこれらの者の親族その他これらの者と法第64条第1項に規定する特別の関係がある者が当該法人の施設又は余裕金を私的に利用するなど当該法人から特別の利益を受けているような場合には、実質的には、当該贈与等をした者が当該贈与等に係る財産を有し、又は特別の利益を受ける者に当該特別の利益を贈与したのと同じこととなり、したがって当該贈与等をした者について相続が開始した場合には、当該財産は遺産となって相続税が課され、又は特別の利益を受ける者に対し贈与税が課されるのにかかわらず、法人に対し財産の贈与等をすることによりこれらの課税を免れることとなることに顧み、当該法人に対する財産の贈与等があった際に当該法人に贈与税を課することとしているものであることに留意する。

(持分の定めのない法人)

13 法第66条第4項に規定する「持分の定めのない法人」とは、例えば、次に掲げる法人をいうことに留意する。

(1) 定款、寄附行為若しくは規則(これらに準ずるものを含む。以下13において「定款等」という。)又は法令の定めにより、当該法人の社員、構成員(当該法人へ出資している者に限る。以下13において「社員等」という。)が当該法人の出資に係る残余財産の分配請求権又は払戻請求権を行使することができない法人

(2) 定款等に、社員等が当該法人の出資に係る残余財産の分配請求権又は払戻請求権を行使することができる旨の定めはあるが、そのような社員等が存在しない法人

(注) 持分の定めがある法人(持分を有する者がないものを除く。)に対する財産の贈与等があったときは、当該法人の出資者等について法第9条の規定を適用すべき場合があることに留意する。

(相続税等の負担の不当減少についての判定)

14 法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」かどうかの判定は、次に掲げる持分の定めのない法人の区分に応じ、それぞれに定めるところにより行うものとする。

(1) (2)に掲げる持分の定めのない法人以外の持分の定めのない法人 原則として、贈与等を受けた法人が法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たしているかどうかにより行うものとする。
 ただし、当該法人の社員、役員等(法施行令第32条に規定する役員等をいう。以下同じ。)及び当該法人の職員のうちに、その財産を贈与した者若しくは当該法人の設立に当たり財産を提供した者又はこれらの者と親族その他法施行令第33条第3項第1号に規定する特殊の関係がある者が含まれていない事実があり、かつ、これらの者が、当該法人の財産の運用及び事業の運営に関して私的に支配している事実がなく、将来も私的に支配する可能性がないと認められる場合には、同号の要件を満たさないときであっても、同項第2号から第4号までの要件を満たしているときは、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」に該当しないものとして取り扱う。

(2) 持分の定めのない法人のうち法施行令第33条第3項に規定する一般社団法人等(以下18までにおいて「一般社団法人等」という。)に該当するもの 次に掲げるところによる。

イ 贈与等を受けた一般社団法人等が同条第4項各号に掲げる要件のいずれかを満たさない場合には、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」に該当する。

ロ 贈与等を受けた一般社団法人等が法施行令第33条第4項各号に掲げる要件の全てを満たす場合には、原則として、当該一般社団法人等が同条第3項各号に掲げる要件を満たしているかどうかにより行う。

(注) 一般社団法人等については、同条第3項第1号の要件を満たさない場合には上記イに該当することから、上記(1)のただし書の取扱いはされないことに留意する。

(その運営組織が適正であるかどうかの判定)

15 法施行令第33条第3項第1号に規定する「その運営組織が適正である」かどうかの判定は、財産の贈与等を受けた法人について、次に掲げる事実が認められるかどうかにより行うものとして取り扱う。

(1) 次に掲げる法人の態様に応じ、定款、寄附行為又は規則(これらに準ずるものを含む。以下同じ。)において、それぞれ次に掲げる事項が定められていること。

イ 一般社団法人

(イ) 理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること。

(ロ) 理事会を設置すること。

(ハ) 理事会の決議は、次の(ホ)に該当する場合を除き、理事会において理事総数(理事現在数)の過半数の決議を必要とすること。

(ニ) 社員総会の決議は、法令に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、その出席した社員の議決権の過半数の決議を必要とすること。

(ホ) 次に掲げるC及びD以外の事項の決議は、社員総会の決議を必要とすること。
 この場合において次のE、F及びG(事業の一部の譲渡を除く。)以外の事項については、あらかじめ理事会における理事総数(理事現在数)の3分の2以上の決議を必要とすること。
 なお、贈与等に係る財産が贈与等をした者又はその者の親族が法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第15号((定義))に規定する役員(以下「会社役員」という。)となっている会社の株式又は出資である場合には、その株式又は出資に係る議決権の行使に当たっては、あらかじめ理事会において理事総数(理事現在数)の3分の2以上の承認を得ることを必要とすること。

A  収支予算(事業計画を含む。)

B  決算

C  重要な財産の処分及び譲受け

D  借入金(その事業年度内の収入をもって償還する短期の借入金を除く。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄

E  定款の変更

F  解散

G  合併、事業の全部又は一部の譲渡

(注) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第15条第2項第2号((設立時役員等の選任))に規定する会計監査人設置一般社団法人で、同法第127条((会計監査人設置一般社団法人の特則))の規定により同法第126条第2項((計算書類等の定時社員総会への提出等))の規定の適用がない場合にあっては、上記Bの決算について、社員総会の決議を要しないことに留意する。

(ヘ) 役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等(所得税法(昭和40年法律第33号)第28条第1項((給与所得))に規定する「給与等」をいう。以下同じ。)を支給しないこと。

(ト) 監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及びその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。

(注)1 一般社団法人とは、次の(1)又は(2)の法人をいう。

(1) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第22条の規定により設立された一般社団法人

(2) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)(以下「整備法」という。)第40条第1項((社団法人及び財団法人の存続))の規定により存続する一般社団法人で、同法第121条第1項((認定に関する規定の準用))の規定において読み替えて準用する同法第106条第1項((移行の登記))の移行の登記をした当該一般社団法人(同法第131条第1項((認可の取消し))の規定により同法第45条((通常の一般社団法人又は一般財団法人への移行))の認可を取り消されたものを除く。)

 2 上記(イ)から(ト)までに掲げるほか、法施行令第33条第3項第1号に定める親族その他特殊の関係にある者に関する規定及び同項第3号に定める残余財産の帰属に関する規定が定款に定められていなければならないことに留意する。

 3 社員総会における社員の議決権は各1個とし、社員総会において行使できる議決権の数、議決権を行使することができる事項、議決権の行使の条件その他の社員の議決権に関する事項(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第50条((議決権の代理行使))から第52条((電磁的方法による議決権の行使))までに規定する事項を除く。)について、定款の定めがある場合には、たとえ上記(イ)から(ト)までに掲げる事項の定めがあるときであっても上記15の(1)に該当しないものとして取り扱う。

ロ 一般財団法人

(イ) 理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上、評議員の定数は6人以上であること。

(ロ) 評議員の定数は、理事の定数と同数以上であること。

(ハ) 評議員の選任は、例えば、評議員の選任のために設置された委員会の議決により選任されるなどその地位にあることが適当と認められる者が公正に選任されること。

(ニ) 理事会の決議は、次の(ヘ)に該当する場合を除き、理事会において理事総数(理事現在数)の過半数の決議を必要とすること。

(ホ) 評議員会の決議は、法令に別段の定めがある場合を除き、評議員会において評議員総数(評議員現在数)の過半数の決議を必要とすること。

(ヘ) 次に掲げるC及びD以外の事項の決議は、評議員会の決議を必要とすること。
 この場合において次のE及びF(事業の一部の譲渡を除く。)以外の事項については、あらかじめ理事会における理事総数(理事現在数)の3分の2以上の決議を必要とすること。
 なお、贈与等に係る財産が贈与等をした者又はその者の親族が会社役員となっている会社の株式又は出資である場合には、その株式又は出資に係る議決権の行使に当たっては、あらかじめ理事会において理事総数(理事現在数)の3分の2以上の承認を得ることを必要とすること。

A  収支予算(事業計画を含む。)

B  決算

C  重要な財産の処分及び譲受け

D  借入金(その事業年度内の収入をもって償還する短期の借入金を除く。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄

E  定款の変更

F  合併、事業の全部又は一部の譲渡

(注)  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条第1項第7号((定款の記載又は記録事項))に規定する会計監査人設置一般財団法人で、同法第199条の規定において読み替えて準用する同法第127条の規定により同法第126条第2項の規定の適用がない場合にあっては、上記ロ(ヘ)のBの決算について、評議員会の決議を要しないことに留意する。

(ト) 役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと。

(チ) 監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及び評議員(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)並びにその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。

(注)1 一般財団法人とは、次の(1)又は(2)の法人をいう。

(1) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第163条((一般財団法人の成立))の規定により設立された一般財団法人

(2) 整備法第40条第1項の規定により存続する一般財団法人で、同法第121条第1項の規定において読み替えて準用する同法第106条第1項の移行の登記をした当該一般財団法人(同法第131条第1項の規定により同法第45条の認可を取り消されたものを除く。)

 2 上記ロの(イ)から(チ)までに掲げるほか、法施行令第33条第3項第1号に定める親族その他特殊の関係にある者に関する規定及び同項第3号に定める残余財産の帰属に関する規定が定款に定められていなければならないことに留意する。

ハ 学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人その他の持分の定めのない法人

(イ) その法人に社員総会又はこれに準ずる議決機関がある法人

A  理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること。

B  理事及び監事の選任は、例えば、社員総会における社員の選挙により選出されるなどその地位にあることが適当と認められる者が公正に選任されること。

C  理事会の議事の決定は、次のEに該当する場合を除き、原則として、理事会において理事総数(理事現在数)の過半数の議決を必要とすること。

D  社員総会の議事の決定は、法令に別段の定めがある場合を除き、社員総数の過半数が出席し、その出席社員の過半数の議決を必要とすること。

E  次に掲げる事項(次のFにより評議員会などに委任されている事項を除く。)の決定は、社員総会の議決を必要とすること。
 この場合において、次の(E)及び(F)以外の事項については、あらかじめ理事会における理事総数(理事現在数)の3分の2以上の議決を必要とすること。

(A) 収支予算(事業計画を含む。)

(B) 収支決算(事業報告を含む。)

(C) 基本財産の処分

(D) 借入金(その会計年度内の収入をもって償還する短期借入金を除く。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄

(E) 定款の変更

(F) 解散及び合併

(G) 当該法人の主たる目的とする事業以外の事業に関する重要な事項

F  社員総会のほかに事業の管理運営に関する事項を審議するため評議員会などの制度が設けられ、上記(E)及び(F)以外の事項の決定がこれらの機関に委任されている場合におけるこれらの機関の構成員の定数及び選任並びに議事の決定については次によること。

(A) 構成員の定数は、理事の定数の2倍を超えていること。

(B) 構成員の選任については、上記ハ(イ)のBに準じて定められていること。

(C) 議事の決定については、原則として、構成員総数の過半数の議決を必要とすること。

G  上記ハ(イ)のCからFまでの議事の表決を行う場合には、あらかじめ通知された事項について書面をもって意思を表示した者は、出席者とみなすことができるが、他の者を代理人として表決を委任することはできないこと。

H  役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと。

I  監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及び評議員(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)並びにその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。

(ロ) 上記ハの(イ)以外の法人

A  理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること。

B  事業の管理運営に関する事項を審議するため評議員会の制度が設けられており、評議員の定数は、理事の定数の2倍を超えていること。ただし、理事と評議員との兼任禁止規定が定められている場合には、評議員の定数は、理事の定数と同数以上であること。

C  理事、監事及び評議員の選任は、例えば、理事及び監事は評議員会の議決により、評議員は理事会の議決により選出されるなどその地位にあることが適当と認められる者が公正に選任されること。

D  理事会の議事の決定は、法令に別段の定めがある場合を除き、次によること。

(A) 重要事項の決定
 次のaからgまでに掲げる事項の決定は、理事会における理事総数(理事現在数)の3分の2以上の議決を必要とするとともに、原則として評議員会の同意を必要とすること。
 なお、贈与等に係る財産が贈与等をした者又はその者の親族が会社役員となっている会社の株式又は出資である場合には、その株式又は出資に係る議決権の行使に当たっては、あらかじめ理事会において理事総数(理事現在数)の3分の2以上の承認を得ることを必要とすること。

a  収支予算(事業計画を含む。)

b  収支決算(事業報告を含む。)

c  基本財産の処分

d  借入金(その会計年度内の収入をもって償還する短期借入金を除く。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄

e  寄附行為の変更

f  解散及び合併

g  当該法人の主たる目的とする事業以外の事業に関する重要な事項

(B) その他の事項の決定
 上記ハ(ロ)Dの(A)に掲げる事項以外の事項の決定は、原則として、理事会において理事総数(理事現在数)の過半数の議決を必要とすること。

E  評議員会の議事の決定は、法令に別段の定めがある場合を除き、評議員会における評議員総数(評議員現在数)の過半数の議決を必要とすること。

F  上記ハ(ロ)のD及びEの議事の表決を行う場合には、あらかじめ通知された事項について書面をもって意思を表示した者は、出席者とみなすことができるが、他の者を代理人として表決を委任することはできないこと。

G  役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと。

H  監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及び評議員(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)並びにその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。

I  贈与等を受けた法人が、学生若しくは生徒(以下「学生等」という。)に対して学資の支給若しくは貸与をし、又は科学技術その他の学術に関する研究を行う者に対して助成金を支給する事業その他これらに類する事業を行うものである場合には、学資の支給若しくは貸与の対象となる者又は助成金の支給の対象となる者等を選考するため、理事会において選出される教育関係者又は学識経験者等により組織される選考委員会を設けること。

(注)1 上記ハの(イ)及び(ロ)に掲げるほか、法施行令第33条第3項第1号に定める親族その他特殊の関係にある者に関する規定及び同項第3号に定める残余財産の帰属に関する規定が定款、寄附行為又は規則に定められていなければならないことに留意する。

 2 上記ハの法人の定款、寄附行為又は規則が、標準的な定款、寄附行為又は規則(租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第40条((国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税))の規定の適用に関し通達の定めによる標準的な定款、寄附行為又は規則をいう。)に従って定められている場合には、上記15の(1)に該当するものとして取り扱うことに留意する。

(注)1 特例社団法人又は特例財団法人(整備法第40条第1項の規定により存続する一般社団法人又は一般財団法人であって同法第106条第1項(同法第121条第1項において読み替えて準用する場合を含む。)の移行の登記をしていない法人又は同法第131条第1項の規定により同法第45条の認可を取り消された法人をいう。)については、法令に別段の定めがある場合を除き、上記ハに準じて取り扱うことに留意する。

 2 公益社団法人(整備法第40条第1項に規定する一般社団法人で同法第106条第1項による移行の登記をした法人を含む。)及び公益財団法人(同法第40条第1項に規定する一般財団法人で同法第106条第1項による移行の登記をした法人を含む。)については、原則として、上記15の(1)に該当するものとして取り扱う。なお、この場合においては、次に掲げる事項が定款に定められていなければならないことに留意する。

(1) 法施行令第33条第3項第1号に定める親族その他特殊の関係にある者に関する規定及び同項第3号に定める残余財産の帰属に関する規定

(2) 贈与等に係る財産が贈与等をした者又はこれらの者の親族が会社役員となっている会社の株式又は出資である場合には、その株式又は出資に係る議決権の行使に当たっては、あらかじめ理事会において理事総数(理事現在数)の3分の2以上の承認を得ることを必要とすること。

(2) 贈与等を受けた法人の事業の運営及び役員等の選任等が、法令及び定款、寄附行為又は規則に基づき適正に行われていること。

(注) 他の一の法人(当該他の一の法人と法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第4条第2項((同族関係者の範囲))に定める特殊の関係がある法人を含む。)又は団体の役員及び職員の数が当該法人のそれぞれの役員等のうちに占める割合が3分の1を超えている場合には、当該法人の役員等の選任は、適正に行われていないものとして取り扱う。

(3) 贈与等を受けた法人が行う事業が、原則として、その事業の内容に応じ、その事業を行う地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有していること。この場合において、例えば、次のイからヌまでに掲げる事業がその法人の主たる目的として営まれているときは、当該事業は、社会的存在として認識される程度の規模を有しているものとして取り扱う。

イ 学校教育法第1条に規定する学校を設置運営する事業

ロ 社会福祉法第2条第2項各号及び第3項各号に規定する事業

ハ 更生保護事業法第2条第1項に規定する更生保護事業

ニ 宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業

ホ 博物館法(昭和26年法律第285号)第2条第1項((定義))に規定する博物館を設置運営する事業

(注) 上記の博物館は、博物館法第11条((登録))の規定による博物館としての登録を受けたものに限られているのであるから留意する。

ヘ 図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項((定義))に規定する図書館を設置運営する事業

ト 30人以上の学生等に対して学資の支給若しくは貸与をし、又はこれらの者の修学を援助するため寄宿舎を設置運営する事業(学資の支給若しくは貸与の対象となる者又は寄宿舎の貸与の対象となる者が都道府県の範囲よりも狭い一定の地域内に住所を有する学生等若しくは当該一定の地域内に所在する学校の学生等に限定されているものを除く。)

チ 科学技術その他の学術に関する研究を行うための施設(以下「研究施設」という。)を設置運営する事業又は当該学術に関する研究を行う者(以下「研究者」という。)に対して助成金を支給する事業(助成金の支給の対象となる者が都道府県の範囲よりも狭い一定の地域内に住所を有する研究者又は当該一定の地域内に所在する研究施設の研究者に限定されているものを除く。)

リ 学校教育法第124条((専修学校))に規定する専修学校又は同法第134条第1項((各種学校))に規定する各種学校を設置運営する事業で、次に掲げる要件を満たすもの

(イ) 同時に授業を受ける生徒定数は、原則として80人以上であること。

(ロ) 法人税法施行規則(昭和40年大蔵省令第12号)第7条第1号及び第2号((学校において行う技芸の教授のうち収益事業に該当しないものの範囲))に定める要件

ヌ 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2第2項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で、その事業が次の(イ)及び(ロ)の要件又は(ハ)の要件を満たすもの

(イ) 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の35の3第1項第1号ニ及び第2号((社会医療法人の認定要件))に定める要件

(ロ) その開設する医療提供施設のうち1以上のものが、その所在地の都道府県が定める医療法第30条の4第1項に規定する医療計画において同条第2項第2号に規定する医療連携体制に係る医療提供施設として記載及び公示されていること。

(ハ) その法人が租税特別措置法施行令第39条の25第1項第1号((特定の医療法人の法人税率の特例))に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすもの

(特別の利益を与えること)

16 法施行令第33条第3項第2号の規定による特別の利益を与えることとは、具体的には、例えば、次の(1)又は(2)に該当すると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。

(1) 贈与等を受けた法人の定款、寄附行為若しくは規則又は贈与契約書等において、次に掲げる者に対して、当該法人の財産を無償で利用させ、又は与えるなどの特別の利益を与える旨の記載がある場合

イ 贈与等をした者

ロ 当該法人の設立者、社員若しくは役員等

ハ 贈与等をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等(以下16において「贈与等をした者等」という。)の親族

ニ 贈与等をした者等と次に掲げる特殊の関係がある者(次の(2)において「特殊の関係がある者」という。)

(イ) 贈与等をした者等とまだ婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

(ロ) 贈与等をした者等の使用人及び使用人以外の者で贈与等をした者等から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの

(ハ) 上記(イ)又は(ロ)に掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

(ニ) 贈与等をした者等が会社役員となっている他の会社

(ホ) 贈与等をした者等、その親族、上記(イ)から(ハ)までに掲げる者並びにこれらの者と法人税法第2条第10号に規定する政令で定める特殊の関係のある法人を判定の基礎とした場合に同号に規定する同族会社に該当する他の法人

(ヘ) 上記(ニ)又は(ホ)に掲げる法人の会社役員又は使用人

(2) 贈与等を受けた法人が、贈与等をした者等又はその親族その他特殊の関係がある者に対して、次に掲げるいずれかの行為をし、又は行為をすると認められる場合

イ 当該法人の所有する財産をこれらの者に居住、担保その他の私事に利用させること。

ロ 当該法人の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。

ハ 当該法人の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付をすること。

ニ 当該法人の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること。

ホ これらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けること。

ヘ これらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けること、又はこれらの者から当該法人の事業目的の用に供するとは認められない財産を取得すること。

ト これらの者に対して、当該法人の役員等の地位にあることのみに基づき給与等を支払い、又は当該法人の他の従業員に比し過大な給与等を支払うこと。

チ これらの者の債務に関して、保証、弁済、免除又は引受け(当該法人の設立のための財産の提供に伴う債務の引受けを除く。)をすること。

リ 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること。

ヌ 事業の遂行により供与する利益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えること。

(判定の時期等)

17 法第66条第4項の規定を適用すべきかどうかの判定は、法施行令第33条第4項の規定に該当するかどうかの判定を除き、贈与等の時を基準としてその後に生じた事実関係をも勘案して行うのであるが、贈与等により財産を取得した法人が、財産を取得した時には同条第3項各号に掲げる要件を満たしていない場合においても、当該財産に係る贈与税の申告書の提出期限又は更正若しくは決定の時までに、当該法人の組織、定款、寄附行為又は規則を変更すること等により同項各号に掲げる要件を満たすこととなったときは、当該贈与等については法第66条第4項の規定を適用しないこととして取り扱う。

(法施行令第33条第4項の判定)

17の2 一般社団法人等について法施行令第33条第4項の規定の適用の判定を行う場合には、次によることに留意する。

(1) 同項第1号又は第2号の要件は、一般社団法人等への贈与等の時における当該一般社団法人等の定款の定めに基づき判定するのであるから、その贈与等の後にこれらの要件を満たすものに定款の定めを変更したとしても、同項の規定により、当該贈与等については法第66条第4項の規定が適用される。

(2) 贈与等を受けた一般社団法人等が法施行令第33条第3項第2号に規定する贈与者等に対し同条第4項第2号に規定する特別利益を与えたかどうかの判定は「16」(2)に、当該一般社団法人等の定款において当該贈与者等に対し特別利益を与える旨の定めがないかどうかの判定は「16」(1)に、それぞれ準じて行う。

(社会一般の寄附金程度の贈与等についての不適用)

18 法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たしていないと認められる法人に対して財産の贈与等があつた場合においても、当該財産の多寡等からみて、それが社会一般においてされている寄附と同程度のものであると認められるときは、法第66条第4項の規定を適用しないものとして取り扱う。

(持分の定めのない法人に対する贈与税課税の猶予等)

19 法令及びこの通達により判断して法第66条第4項の規定を適用すべき場合においては、贈与等をした者の譲渡所得について租税特別措置法第40条の規定による承認申請書が提出された場合においても、課税の猶予をしないことに留意する。

(注) 法施行令第33条第3項の規定により、一般社団法人等からは法施行令第34条第4項各号に掲げる法人が除かれていることから、一般社団法人等への財産の贈与等については、租税特別措置法第40条の規定の適用はないことに留意する。

(贈与等をした者以外の者に特別の利益を与える場合)

20 持分の定めのない法人が、当該法人に対する財産の贈与等に関して、当該贈与等をした者及びその者の親族その他これらの者と法第64条第1項に規定する特別の関係がある者以外の者で当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族その他これらの者と法第64条第1項に規定する特別の関係がある者に対し特別の利益を与えると認められる場合には、法施行令第33条第4項の規定に該当するときを除き、法第66条第4項の規定の適用はないが、当該特別の利益を受ける者に対して法第65条の規定が適用されることに留意する。
 この場合において、贈与等に関して特別の利益を与えると認められる場合とは、「16」の(1)及び(2)に掲げる場合をいうものとして取り扱う。

(持分の定めのない法人から受ける利益の価額)

21 「20」の場合において、法第65条第1項に規定する「贈与により受ける利益の価額」とは、贈与等によって法人が取得した財産の価額によるのではなく、当該法人に対する当該財産の贈与に関して当該法人から特別の利益を受けたと認められる者が当該法人から受けた当該特別の利益の実態により評価するのであるから留意する。

(附則)

(経過的取扱い)

 この法令解釈通達による改正後の取扱いは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行の日(平成20年12月1日)以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用し、同日前に贈与により取得した財産に係る贈与税については、なお従前の例による。


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