課所4-5
課資3-2
課審3-23
課審5-3
平成7年4月6日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについては、下記のとおり定めたから、これによられたい。
 なお、この通達による取扱いについては、個々の納税者の実情に応じ、懇切かつ具体的に指導するよう万全を期することとされたい。

(用語の意義)

1 この通達において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。

(1)災害 阪神・淡路大震災をいう。

(2)震災特例法 阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成7年法律第11号)をいう。

(3)事業等所得 事業所得又は不動産所得を生ずべき事業に係る所得及び山林所得をいう。

(4)被災事業資産 個人の有する棚卸資産及びその事業の用に供する固定資産(契約により賃借人が修繕等を行うこととされている場合のこれらの資産を除く。)、賃借をしている資産又は販売等をした資産につき契約により当該個人が修繕等を行うこととされている場合のこれらの資産並びに山林で災害により被害を受けたものをいう。

(5)確定申告書 所得税法第2条第1項第37号((確定申告書))に規程する確定申告書をいう。

(災害損失特別勘定への繰入額の必要経費算入)

2 個人が、被災事業資産の修繕等のために要する費用の見積額として、災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる次に掲げる費用(以下これらの費用を「修繕費用等」という。)の見積額(平成8年1月1日以後に支出すると見込まれるものに限る。)の合計額(保険金、損害賠償金その他これらに類するもの(以下「保険金等」という。)により補てんされる金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)以下の金額を平成7年において災害損失特別勘定に繰り入れたときは、その繰り入れた金額に相当する金額を平成7年分の事業等所得の金額の計算上必要経費に算入する。
 この場合、平成7年分の確定申告書に災害損失特別勘定の必要経費算入に関する明細書(別紙様式1)を添付するものとする。

(1) 被災事業資産の取壊し又は除去のために要する費用

(2) 土砂その他の障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用

(3) 被災事業資産の原状回復のための修繕費(8((復旧費用))に定める修繕費を含む。)

(4) 被災事業資産の損壊又は価値の減少を防止するために要する費用

(注)

1 法令の規定、地方公共団体の定めた復興計画等により、一定期間修繕等の工事に着手できないこととされている場合には、その工事に着手できることとなる日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる修繕費用等の見積額につき、上記により災害損失特別勘定の繰入れの対象とすることができる。

2 所得税基本通達51-2の2((有姿除却))の適用を受けた資産については、上記(1)及び(2)に掲げる費用に限り災害損失特別勘定の繰入れの対象とすることができることに留意する。

3 震災特例法第4条第1項、第2項又は第3項((被災事業用資産の損失の必要経費算入に関する特例))の規定の適用を受けて、平成6年分の事業等所得の金額の計算上必要経費に算入したものは、災害損失特別勘定の繰入れの対象とすることができないことに留意する。

(被災事業資産の修繕費用等の見積りの方法)

3 2 ((災害損失特別勘定への繰入額の必要経費算入))の修繕費用等の見積額は、その修繕等を行うことが確実な被災事業資産につき、例えば、建設業者等による当該被災事業資産に係る修繕費用等の見積額又は相当部分につき損壊等をした当該被災事業資産の再取得価額若しくは建設省建築統計年報の建築価額等を基礎としてその取得の時から平成7年12月31日まで償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額から同日における当該被災事業資産の価額を控除した金額を基に計算するなど合理的に見積もるものとする。

(災害損失特別勘定の総収入金額算入)

4 個人が、被災事業資産に係る修繕費用等として、平成8年分の事業等所得の金額の計算上必要経費に算入した金額があるときは、当該必要経費に算入した金額(保険金等により補てんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)に相当する災害損失特別勘定の金額を取り崩し、当該金額を平成8年分の事業等所得の金額の計算上総収入金額に算入する。また、平成8年12月31日において災害損失特別勘定の残額(災害損失勘定へ繰入額から同日までに総収入金額に算入した金額を控除した残額をいう。以下同じ。)がある場合には、当該残額を事業等所得の金額の計算上総収入金額に算入するものとする。
 この場合、平成8年分の確定申告書には、災害損失特別勘定の総収入金額算入に関する明細書(別紙様式2)を添付するものとする。

(修繕等が遅れた場合の災害損失特別勘定の総収入金額算入の特例)

5 被災事業資産に係る修繕等がやむを得ない事情により平成8年12月31日までに完了しなかったため、同日において災害損失特別勘定の残額を有している場合において、平成9年1月6日までに災害損失特別勘定の総収入金額算入年分の延長確認申請書(別紙様式3)を所轄税務署長に提出し、その修繕等が完了すると見込まれる日の属する年分(以下「最終取崩年分」という。)及び平成9年1月1日から当該最終取崩年分の年末までに支出することが見込まれる修繕費用等の金額の合計額(保険金等により補てんされる金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、災害損失特別勘定の残額を限度とする。以下「修繕費用等の見込額」という。)の確認を受けたときは、4((災害損失特別勘定の総収入金額算入))の取扱いにかかわらず、当該最終取崩年分において、当該最終取崩年分の年末における災害損失特別勘定の残額を総収入金額に算入することができるものとする。この場合、平成9年分から当該最終取崩年分までの各年分の確定申告書には、災害損失特別勘定の総収入金額算入に関する明細書(別紙様式2)を添付するものとする。

(注)

1 修繕費用等の見込額が平成8年12月31日における災害損失特別勘定の残額に満たない場合には、その満たない金額に相当する災害損失特別勘定の金額については、この取扱いの適用はないことに留意する。

2 当該最終取崩年分前の各年分において、被災事業資産に係る修繕費用等として事業等所得の金額の計算上必要経費に算入した金額があるときは、当該必要経費に算入した金額(保険金等により補てんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)に相当する災害損失特別勘定の金額を取り崩し、当該金額を当該年分の事業等所得の金額の計算上総収入金額に算入することに留意する。

(災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲)

6 災害損失特別勘定に繰り入れた金額は、平成7年分の所得税法第70条第3項((被災事業用資産の損失の金額の範囲))に規定する災害による損失の金額(以下「被災事業用資産の損失の金額等」という。)に含めるものとする。

(修繕費用等の支出がある場合の被災事業用資産の損失の金額の計算)

7 災害損失特別勘定の繰入れをした個人が、平成8年分以後の各年分において被災事業資産に係る修繕費用等として、事業等所得の金額の計算上必要経費に算入した金額があるときは、当該修繕費用等の金額で所定の要件を満たすものは被災事業用資産の損失の金額等に該当することとなるのであるが、その年分の1月1日において災害損失特別勘定の金額があるときは、当該必要経費に算入した修繕費用等の金額(保険金等により補てんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、被災事業用資産の損失の金額等に該当する部分の金額に限る。)の合計額からその年分の1月1日における災害損失特別勘定の金額を控除した残額をもって当該年分における被災事業用資産の損失の金額等とする。

(復旧費用)

8 個人が、被災事業資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用の額(所得税基本通達51-3により資本的支出とされる部分の金額を除く。)について、修繕費として事業用所得の金額の計算上必要経費に算入しているときは、所得税基本通達37-12から37-14の2まで((資本的支出と修繕費の区分))の取り扱いに関わらず、これを認める。
 個人が、被災事業資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設(被災事業資産の被災前の効用を維持するためのものを除く。)を設置する場合の当該資産の取得又は特別の施設の設置は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は、これらの資産の取得の対価及び付随費用となるのであるから、これらの資産の取得価額に含めることに留意する。

(繰延資産の基因となった資産について損壊等の被害があった場合)

9 2から8まで((災害損失特別勘定への繰入額の必要経費算入等))の取扱いは、災害により所得税法施行令第140条((固定資産に準ずる資産の範囲))に規定する繰延資産につき、当該繰延資産の基因となる固定資産について損壊等の被害があった場合について準用する。

(損壊した賃借資産等に係る補修費)

10 個人が、賃借資産(賃借をしている土地、建物、機械装置等をいう。以下同じ。)につき修繕等の補修義務がない場合においても、当該賃借資産が災害により被害を受けたため、当該個人が、当該賃借資産の原状回復のための補修を行い、その補修のために要した費用を修繕費として、事業等所得の金額の計算上必要経費に算入しているときは、これを認める。
 個人が修繕等の補修義務がない販売又は賃貸をした資産につき補修のための費用を支出した場合においても、同様とする。

(注)

1 この取扱いにより修繕費として取り扱う費用は、災害損失特別勘定の繰入れの対象とはならないことに留意する。

2 当該個人が、その修繕費に相当する金額につき支払を受けた場合には、実際に支払を受けた日の属する年分の事業等所得の金額の計算上総収入金額に算入するものとする。

3 個人が賃借しているいわゆるファイナンスリース資産が災害により被害を受けたため、契約に基づき支払うこととなる規定損害金(免除される金額を除く。)については、平成7年12月31日までに実際に支払っていない場合でも、平成7年分において未払金として計上し、必要経費に算入することができることに留意する。

(従業員に対する災害見舞金)

11 個人が、災害を受けた自己の使用人に対して災害見舞金(物品を含む。以下この項において同じ。)を支給し、これを福利厚生費として必要経費に算入した場合において、当該災害見舞金が一定の基準に従って支給され、かつ、その金額が災害見舞金として社会通念上相当であるときは、これを認める。

(災害復旧費用等の原価外処理)

12 個人が、災害により被害を受けた製造設備に係る修繕費用等及び災害を受けたことにより操業停止をしたことに伴う損失につき適正な原価計算に基づいて原価外処理をしたときは、これを認める。

(災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等)

13 個人が、その所属する協会、連盟その他の同業団体等(以下「同業団体等」という。)の構成員の有する業務の用に供されている資産について災害による損失が生じた場合に、その損失の補てんを目的とする構成員相互の扶助等に係る規約等(災害の発生を機に新たに定めたものを含む。)に基づき合理的な基準に従って当該同業団体等から賦課され、拠出した分担金等は、必要経費として取り扱う。

(注) 既に拠出した災害見舞金の全部又は一部が新たに定めた当該規約等に適合する場合には、その適合する範囲内の災害見舞金については、必要経費として取り扱う。

(居住の用に供していた賃借建物が損壊した場合の権利金の取扱い)

14 災害により、権利金を支払って賃借していた住宅が損壊したため、賃借権を放棄した場合における当該権利金の被災時現在の未償却残額に相当する部分の金額については、雑損控除の対象となる損失額に含まれるものとする。

(注) 当該権利金の被災時現在の未償却残額に相当する部分とは、その権利金を繰延費用とみなして事業所得の金額の計算の例により償却することとした場合に被災時現在において残存する部分をいう。

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