直審3−91
直所3−19
直法6−6
昭和52年8月22日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、関東信越国税局長から別紙2のとおり上申があり、これに対して別紙1のとおり指示したから了知されたい。


別紙1

直審3−90
直所3−18
直法6−5
昭和52年8月22日

関東信越国税局長 殿

国税庁長官

 標題のことについては、貴局の見解のとおりで差支えない。


別紙2

関局直所7−7
関局直法4−17
昭和52年7月12

国税庁長官 殿

関東信越国税局長

 会社の株主総会で適法に決議された配当金について、下記1に掲げる事情により、その受領を辞退した場合における所得税法第64条第1項の規定の適用上、「回収することができないこととなった金額」をどのように解すべきかにつき下記2のような疑義がありますので、何分の御指示を頂きたく、当局の意見を付して上申いたします。

1 事実関係

(1) 甲社は、昭和47.6.1から昭和48.5.31までの事業年度に係る利益配当金として1億円の支払決議を行い、甲社の代表取締役である株主乙は、当該配当金(全額)の収入があったとして、昭和48年分所得税の確定申告を行っていた。

(2) 前記(1)の配当金は、その支払が確定した日(昭和48.7.27)から1年を経過した日までに支払が行われず、かつ、甲社は、当該配当金に係る源泉所得税を法定納期限(昭和49.8.10)までに納付しなかったので、所轄税務署長は昭和49.8.26これについての納税告知を行い、その滞納税額は甲社の法人税に係る過誤納金によって充当納付された。

(3) 甲社は、前記(1)の配当支払決議後業況が悪化し、会社整理の状態に陥った。

(4) 甲社の債権者集会の協議決定により債務の切捨てが行われ、代表取締役乙は、一般債権者の損失を軽減するため、その立場上やむなく同人が甲社から支払を受けるべき配当金の受領を辞退した。

2 問題点

 事実関係(4)記載のとおり株主乙は、(1)により甲社から支払を受けるべき配当金の金額を受領辞退したが、所得税法第64条第1項の規定の適用上、その「回収できないこととなった金額」は、当該配当金の全額1億円であるのか、あるいは当該配当金に係る源泉所得税1,500万円を控除した残額8,500万円とみるべきかという点について疑義がある。

3 当局の見解

 配当支払会社は、潜在的にはその支払配当金の全額について株主乙に対して支払債務を負うものである。
 しかし、所得税法等の規定により配当金の源泉所得税に係る納税義務は、その支払(所得税法第181条第2項に規定するみなし支払を含む。)の時において成立、確定するものであり、配当支払会社によって当該源泉所得税額が徴収、納付されることにより、株主乙に対する当該税額に相当する配当支払債務は消滅することになる。
 この点を株主乙からみれば、配当支払会社に対して具体的に配当金の支払請求ができるのは当該配当金の全額から配当支払会社によって徴収納付された源泉所得税相当額を控除した残額であり、「回収できないこととなった金額」は、当該残額に限られるものと解される。

(注) 株主乙の昭和48年分配当所得は、1,500万円となり、所得税額の計算に当っては、配当所得1,500万円に対応する配当控除を行い、更に配当所得に係る源泉所得税として1,500万円を控除することとなる。