直審5-6
昭和52年2月7日

国税局長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、広島国税局長から別紙2のとおり上申があり、別紙1のとおり指示したから了知されたい。


別紙1

直審5-5
昭和52年2月7日

広島国税局長 殿

国税庁長官

 標題の上申事案に係る○○及び○○新幹線工事局が支払う減価損害費に対する賠償金については、所得税法施行令第30条第2号の規定に該当するものとして取扱って差支えない。


別紙2

広局直資第244号
昭和51年8月20日

国税庁長官 殿
(直税部審理課)

広島国税局長

 標題の所得区分については、種々の見解があり、当局としては下記甲説が妥当と考えますが、なお疑義がありますので何分の御指示をお願いします。
添付書類(省略)

1 事実関係

 ○○及び○○新幹線工事局は、新幹線工事を施行したことに伴い、数年後に周辺の田の農業用水の枯渇が著しく、耕作が不能となり、その田の価値が減少したことについてその減価部分に対して補償金を支払った。

(1) 補償の内容
 農業用水の枯渇により田としての収益が得られず山林としての収益しか得られないものと判断されるため、被害田から年々得られるのであろう収益を永久資本還元(還元率0.05)した土地の価格と、山林としての土地価格との減価分を補償する。

(2) 補償額の算定

イ 土地の価格
((収穫量×米価)+副産物-生産費)/還元率=収益価格

ロ 山林の価格
市町村役場にて固定資産の評価額を調査し、田の固定資産税評価額に対する比率を考慮の上、査定する。
田の固定資産税評価額(A)、山林の固定資産税評価額(B),
比率=(1-B/A)

ハ 補償額
 田の収益価格×比率=補償額

2 所得区分に対する考え方

(1)甲説 特例適用のない分離譲渡所得とする。

(理由) 元来、収用等における損失補償は、起業者としては収用時点において明確な損失について事前補償をするのが建前であるが、この事例においては、1渇水による損失を事前に予測しがたい2予測し得たとしても、その程度が不明確である。このような状況の場合には、事後にその損失が明確になったとき補償するのが通例とされている。従って、当該事例にみられるような減価補償金は、所得税法施行令第95条の規定の「資産の価値の減少に伴う事業で、その価値の減少に対する補償を約して行うものの遂行により、譲渡所得の基因となるべき資産の価値減少につき一時に受ける補償金‥‥‥」には該当しないが、同条の規定に準じて、特例適用のない分離譲渡所得として取扱う。

(2)乙説 補償額が土地の価格の2分の1以上であれば、特例適用のある対価補償金とし、2分の1未満であれば不動産所得とする。

(理由) 甲説に記載の状況にあるため、借地権課税の取扱いに準じて補償金の額が土地の価格の2分の1以上であれば対価補償金として取扱う。

(3)丙説 非課税所得とする。

(理由) 不法行為、その他突発的な事故により加えられた損失補償として所得税法施行令第30条第1項第2号の規定により非課税所得とする。

(4)丁説 事業所得とする。

(理由) 補償金の算定根基から判断し、農業について減少することとなる収益の補てんに充てるための補償金と考えられるため事業所得として取扱う。