直審3−17
昭和52年2月5日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、建設省計画局長から別紙2のとおり照会があり、これに対し直税部長名をもって別紙1のとおり回答したから了知されたい。
 なお、地方公共団体等が行ういわゆる日照補償についても、その補償基準が昭和51年2月23日付建設省計用発第4号「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」建設省通達に定める基準に準拠していると認められるものについては、これに準じて取扱って差支えない。


別紙1

直審 3−16
昭和52年2月5日

建設省計画局長 殿

国税庁直税部長

 昭和51年2月23日付建設省計用発第4号「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」建設省通達に定めるところにより支払われる損害等をてん補する費用に係る所得税については、貴見のとおり所得税法施行令第30条に規定する慰謝料に類するものとして課税しないことにします。
 なお、上記通達に定める損害等をてん補する費用の算定方式その他の支払基準を変更する場合には、事前に当庁と協議してください。


別紙2

建設省計用発第4号
昭和52年1月17日

国税庁長官 殿

建設省計画局長

 近年、建築物による日照阻害をめぐる紛争が発生しているが、道路等の公共施設による日照阻害の事例も生じ、公共事業を円滑に推進してゆくためには、その適正な処理が重要な課題となってきた。
 そこで、建設省においても、昭和37年6月29日閣議了解の「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」第3((事業施行に伴う損害等の賠償について))の趣旨にのっとり、建築物による日照阻害の判決例等を参考にして、公共施設の設置に伴う日陰の増加により社会生活上受忍すべき範囲を超える損害等が生ずると認められる住宅の居住者に対し、昭和51年2月23日付け建設省計用発第4号建設事務次官通達「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」(別添)に基づき、下記のとおり当該損害等をてん補することとし、昭和51年度から実施している。
 ついては、当該損害等をてん補する費用負担は、社会生活上受忍すべき範囲を超えると認められる場合に支払うものであるから、所得税法施行令第30条((非課税とされる保険金、損害賠償金等))に規定する損害賠償金、慰謝料その他これらに類するものに該当するものと解されるが、貴庁の見解を承りたく照会する。

1. 費用負担の対象者

 費用負担の対象者は、次のいずれにも該当する個人とする。

  • イ 公共施設の設置に係る工事の完了以前から、次表(い)欄に掲げる地域又は区域内にある住宅に居住している者であること。
  • ロ 公共施設の設置により、冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時まで(北海道の区域にあっては、午前9時から午後3時まで)の間における居室の開口部の中央の日陰時間が、次表(は)欄に掲げる時間を超えることとなった住宅の居住者であること。
  • ハ 公共施設の設置に係る工事の完了の日から1年を経過した日までに費用負担の請求をした者であること(通達施行の際、現に協議中の者を含む。)。

地域又は区域(い) 階(ろ) 日陰時間(は)
北海道以外の区域 北海道の区域
(1) 第一種住居専用地域 1階 4時間 3時間
(2) 第二種住居専用地域 2階 4時間 3時間
(3) 住居地域又は近隣商業地域若しくは準工業地域のうち土地利用の状況が住居地域における土地利用の状況と類似していると認められる地域 2階 5時間 4時間
(4) 用途地域の指定のない地域のうち土地利用の状況が(1)から(3)までに掲げる地域又は区域における土地利用の状況と類似していると認められる区域 地域の状況に応じて(1)から(3)までに準じて取り扱う。

(備考)

  1. (1) (い)欄の第1種住居専用地域、第2種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域又は用途地域は、それぞれ都市計画法第8条第1項第1号に掲げる第1種住居専用地域、第2種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域又は用途地域をいう。
  2. (2) (は)欄に掲げる日陰時間は、開口部が真南に面する居室に係るものである。
  3. (3) (ろ)欄に掲げる階以外の階に係る(は)欄の日陰時間は、(は)欄に掲げる日陰時間を基準とし、公共施設の高さ、公共施設と住宅との位置関係等の状況を勘案して定めるものである。

2. 費用負担額の基準 (具体的には、別添通達の付録の算式による。)

  1. (1) てん補の対象となる費用は、次に掲げるものとする。
    1. イ 暖房費
    2. ロ 照明費
    3. ハ 乾燥費
    4. ニ 諸経費
  2. (2) 支払額は、次の期間に対応する(1)の費用で、日陰により増加することとなる部分の合計額を年6%の利率で計算した現在価値に相当する金額とする。
    1. イ 自家自用 おおむね30年
    2. ロ 借家人 おおむね10年
    3. ハ 借間人 おおむね5年

3.支払者

 国(建設省地方建設局等)とする。


〔別添〕

建設省計用発第4号
昭和51年2月23日

北海道開発局長 あて
沖縄総合事務局長 あて
建設省各地方建設局長 あて

建設事務次官

 公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について(昭和37年6月29日閣議了解)第3に定める日陰により生ずる損害等に係る事前賠償については、下記により取り扱うこととしたので、通知する。

1 費用負担の要件

建設省の直轄の公共事業の施行に係る公共施設の設置により生じた日陰により、別表(い)欄に掲げる地域又は区域内にある住宅の居住者(当該公共施設の設置に係る工事の完了以前から居住していた者に限る。)に社会生活上受忍すべき範囲を超える損害等が生ずると認められる場合においては、当該損害等をてん補するために必要な最小限度の費用を負担することができるものとする。

2 日陰時間

前項の規定による費用の負担は、当分の間、同項の住宅の居室について、当該公共施設の設置後の日陰時間(冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時まで(道の区域内にあっては、午前9時から午後3時まで)の間において、居室の開口部の中央が日陰となる時間をいう。以下同じ。)が別表(は)欄に掲げる時間を超える場合に限り、行うことができるものとする。

3 費用負担額の算定

第1項の規定により負担する費用は、同項の損害等のてん補のための暖房、照明等に要する費用とし、付録の式によって算定するものとする。

4 費用負担の請求期間

第1項の規定による費用の負担は、同項の住宅の居住者から当該公共施設の設置に係る工事の完了の日から1年を経過した日までに請求があった場合に限り、行うことができるものとする。

5 費用負担の方法

第1項の規定による費用の負担は、金銭をもってするものとし、この場合においては、渡し切りとするものとする。

6 経過措置

公共施設の設置により生じた日陰による損害等でその費用負担について現に協議中のものについては、第4項の規定にかかわらず、第1項から第3項まで及び第5項の定めるところにより、費用を負担することができるものとする。

別表


地域又は区域(い) 階(ろ) 日陰時間(は)
道以外の区域 道の区域
(1) 第1種住居専用地域 1階 4時間 3時間
(2) 第2種住居専用地域 2階 4時間 3時間
(3) 住居地域又は近隣商業地域若しくは準工業地域のうち土地利用の状況が住居地域における土地利用の状況と類似していると認められる区域 2階 5時間 4時間
(4) 用途地域の指定のない地域のうち土地利用の状況が(1)から(3)までに掲げる地域又は区域における土地利用の状況と類似していると認められる区域 地域の状況に応じて(1)から(3)までに準じて取り扱う。

 

備考

  1. 1 (い)欄の第1種住居専用地域、第2種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域又は用途地域は、それぞれ都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に掲げる第1種住居専用地域、第2種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域又は用途地域をいう。
  2. 2 (は)欄に掲げる日陰時間は、開口部が真南に面する居室に係る日陰時間であり、その他の居室については、当該居室の開口部の面する方位に応じて補正するものとする。
  3. 3 (ろ)欄に掲げる階以外の階に係る(は)欄の日陰時間は、(は)欄に掲げる日陰時間を基準とし、公共施設の高さ、公共施設と住宅との位置関係等の状況を勘案して定めるものとする。

付録

 費用負担額=暖房費+照明費+乾燥費+諸経費

  1. 1 暖房費は、居室ごとに次により算定した額の合計額とする。
    暖房費=T1×D1×S×C1×(1+γ)N乗-1÷γ(1+γ)N乗
    T1は、1日当たりの費用負担の対象となる時間
    1. (1) 公共施設の設置前の日陰時間が別表(は)欄に掲げる時間以下である居室の場合公共施設の設置後の日陰時間から別表(は)欄に掲げる時間を控除した時間
    2. (2) 公共施設の設置前の日陰時間が別表(は)欄に掲げる時間を超える居室の場合公共施設の設置後の日陰時間から公共施設の設置前の日陰時間を控除した時間
    • D1は、年間の費用負担の対象となる日数。当該住宅の存する地域における午前9時の外気の平均気温が摂氏10度以下になる期間のうちの平均晴天日数とする。
    • Sは、費用負担の対象となる居室(居室の数が世帯人員数を超える住宅にあっては、世帯人員数に相当する数の居室に限る。)の床面積。ただし、居室の床面積が当該居室の開口部の面積に比べて著しく大きい場合においては、適正に補正するものとする。
    • C1は、単位面積・単位時間当たりの暖房費。公共施設の設置により生じた日陰により失われる熱量相当分を石油ストーブの使用によって確保するために必要な灯油代並びに石油ストーブの償却費及び保守費から求めるものとする。
    • nは、費用負担の対象となる年数。当該住宅の居住者が当該住宅の所有者である場合においてはおおむね30年、居住者が借家人である場合においてはおおむね10年、居住者が間借人である場合においてはおおむね5年を限度とする。
    • γは、年利率。6パーセントとする。
  2. 2 照明費は、居室ごとに次により算定した額の合計額とする。
    照明費=T2×D2×S×C2×(1+γ)N乗-1÷γ(1+γ)N乗
    • T2は、照明費についての1日当たりの費用負担の対象となる時間。暖房費におけるT1を基準として、費用負担の対象となる日における1日当たりの平均の費用負担の対象となる時間を求めるものとする。
    • D2は、年間の費用負担の対象となる日数。当該住宅の存する地域における年間の平均晴天日数とする。
    • C2は、単位面積・単位時間当たりの照明費。公共施設の設置により生じた日陰により失われる室内照度を照明器具の使用によって回復するために必要な電気代並びに照明器具の償却費及び保守費から求めるものとする。
    • S,n及びγは、暖房費におけるS,n及びγの例による。
  3. 3 乾燥費は、次により算定した額の合計額とする。
    乾燥費=(C3+C4)×(1+γ)N乗-1÷γ(1+γ)N乗
    • C3は、年間の乾燥機(通常の洗たく物を乾燥させるためのものをいう。)の償却費及び保守費
    • C4は、年間の乾燥機を使用するための電気代
    • n及びγは、暖房費におけるn及びγの例による。
  4. 4 諸経費は、公共施設の設置により生じた日陰によるその他の不利益をてん補するために必要な経費とする。