直所4−1(例規)
直審(所) 6
昭和43年1月30日
(改正 昭和45年12月23日 直所 4−9
昭和50年12月3日 直所 5−7)

国税局長 殿

国税庁長官

 農業経営者が事業の用に供する耕地の土地改良事業のために支出する受益者負担金の必要経費算入の取扱いを下記のとおり定め、昭和42年1月1日以後に支出するものからこれによることとしたから遺憾のないようにされたい。
 なお、昭和32年2月1日付直所4-4「土地改良費の取扱について」通達(一部改正 昭33.2.19付直所4-3、昭39.2.13付直所4-4・直審(所)16および昭41.12.16付直所4-15・直審(所)46)は廃止するから了知されたい。

(注) この通達にいう土地改良事業とは、特別の定めのある場合を除き、土地改良法の規定に基づかない土地改良事業を含むものとする。

(理由) 従前の通達は昭和32年に定められたものであるが、1永久資産取得費と減価償却資産取得費の区分に問題があったこと、2その後法制化された繰延資産の償却費の必要経費算入の規定を織りこんだ取扱いとする必要があったことおよび3従前の取り扱いは事務的に非常な手数を要するのでその簡素化を図る必要があったことなどのため、所要の改正を行うこととしたものである。

1 受益者負担金の必要経費算入の通則 

 土地改良事業に要する費用で、受益者が負担すべき金額(以下「受益者負担金」という。)のうち、1永久資産(公道その他一般の用に供される道水路を除く。)取得費対応部分は必要経費不算入とし、2減価償却資産および公道その他一般の用に供される道水路の取得費対応部分は繰延資産に該当するものとしてその償却額を必要経費に算入し、3毎年の維持管理費に相当する金額は支出する年分の必要経費に算入する。

(注) 土地改良事業の工事費用を借入金で支弁している場合における当該借入金の利子金額に対応する受益者負担金は、維持管理費に該当するものであるから留意する。

2 永久資産の取得費の範囲 

 必要経費に算入しない永久資産の取得費対応部分の金額は、土地改良事業の工事費のうち、土地改良施設の敷地等の土地の取得費および農用地(けい畔を含む。)の整地・造成に要した部分の金額とする。

(注)

(1) 従来永久資産の取得費とされていた水路・ため池の掘さく費用、公道・農道の盛土(整地を含む。)費およびこれらの工事のための測量費は繰延資産に該当するのであるから留意する。

(2) 農用地の整地・造成に伴って構築したけい畔をコンクリートけい畔とした場合の当該けい畔の築造費は永久資産に該当しないのであるから留意する。

3 繰延資産の償却額の必要経費算入方法

(1) 受益者負担金のうち繰延資産にかかる資産の取得費対応部分の金額の償却は、原則として、当該資産の取得の時から当該資産の取得に充てた費用の支出効果の及ぶ期間(その施設または工作物が賦課金を支出した者にもっぱら利用される場合は、通常その施設または工作物の耐用年数の70%に相当する年数)にわたり毎年均分償却を行なうのであるが、土地改良法(昭和24年法律第195号)の規定に基づいて土地改良区、国、都道府県、市町村および農業協同組合(以下「土地改良区等」という。)が行なう土地改良事業の受益者負担金については、毎年受益者が支出する賦課金のうち、繰延資産対応部分をその年分の償却額として、各受益者の当該支出した年分の所得計算上必要経費に算入してもさしつかえない。

(注) 毎年支出する賦課金のうち、繰延資産対応部分をその支出した年分の必要経費に算入することとしたのは、次の理由によるものである。

イ 一般的に土地改良事業の賦課金の賦課期間は、10年から20年のものが多く、従前の取扱いにおいて減価償却資産について総合した耐用年数により償却する場合の最長の耐用年数とされている20年の70%相当年数(14年)とおおむね一致する期間であること。

ロ 土地改良事業の工事費に対応する賦課金は、多くの場合、各年の金額に大きな開差がみられないこと。

(2) 上記の賦課金のうち、繰延資産対応部分の金額は、各受益者のその年の賦課金から維持管理費相当部分の金額を控除した金額に、当該土地改良事業の永久資産取得費と繰延資産にかかる資産の取得費との合計額に対する繰延資産にかかる資産の取得費の割合を乗じて計算する。
 この場合の永久資産または繰延資産にかかる資産の取得費の計算に当たっては、国または地方公共団体等から補助金の交付を受けている場合には、1当該補助金により取得すべき資産を指定されているときは当該指定資産の取得費の計算上、また、2当該補助金により取得すべき資産を指定されていないときは、当該土地改良事業の永久資産と繰延資産にかかる資産の取得費に比例して当該補助金の交付を受けたものとして、それぞれの資産の取得費の計算上当該補助金または補助金相当額をそれぞれ控除した金額により計算する。

(注) 農用地の整地等に要する費用について、その費用の支出の受益の範囲が一つの土地改良事業の受益者のうち、特定の受益者にかぎられるため当該整地等に要する費用に対応する賦課金を当該特定の受益者だけに賦課している場合においては、当該賦課金は一般の賦課金と区分し、当該賦課金につき、上記により繰延資産にかかる資産の取得費相当額の計算を行なうものとする。

4 賦課金の必要経費算入額の区分計算の省略(省略計算) 

 各年の受益面積の単位当たり賦課金の金額が少額の場合(土地改良事業ごとの賦課金が10アール当たり10,000円未満のときとする。)においては、上記の区分計算を省略し、受益者が支出した賦課金の全額をその年の必要経費に算入してもさしつかえない。
 なお、10アール当たり賦課金が10,000円以上の場合であっても1から3により計算される必要経費に算入すべき額が10アール当たり10,000円未満であるときには、10アール当たり10,000円を必要経費に算入しても妨げないものとする。

(注) 10アール当たり10,000円未満であるかどうかは、同一の耕地について2以上の土地改良区等からの賦課金がある場合には、その合計額によるのではなく、一つの土地改良事業を1単位として判定するのであるから留意する。

(編集注) 区分計算の省略限度額については、13,000円から5,000円(45.12.23直所 4-9)、25,000円から10,000円(50.12.3 直所5-7)にそれぞれ引き上げられている。

5 従前の取扱いとの調整 

 従前の取扱いの簡易計算の場合の是認基準額が、10アール当たり4,000円を超えるため42年分以後に繰り越されている金額および原則計算の場合の減価償却資産対応部分の負担金で42年分以後に繰り越されている金額があるときの当該金額は、142年分の必要経費に算入するか、または、242年以後2ないし3年間に均分した額をそれぞれ年分の必要経費に算入することとし、いずれの方法によるかは納税者の選択によることとする。

6 その他

(1) 部落その他相当数の者が共同して行なう土地改良事業で、その受益者から負担金を徴し、長期間(おおむね10年以上)にわたって工事費を償還するものにかかる当該負担金に対する取扱いについては、上記3および4に準ずるものとする。

(2) 個人または数人が共同して行う土地改良事業にかかる支出金額については、上記1から5までの計算とは別に、一般の例により必要経費となるべき額を計算するのであるが、この場合における永久資産取得費の範囲については、上記2に準ずるものとする。