直所6−37(例規)
直法1−180
昭和29年10月4日

国税局長 殿

国税庁長官

 標題について、別紙のとおり、東京国税局長から上申があつたが、これについては、左記のとおり取り扱われたい。

  1. 青色申告に係る所得を更正する場合には、所得税法(昭和22年法律第27号)第45条《更正又は決定のための調査》第1項但書または法人税法(昭和22年法律第28号)第31条の4《更正又は決定のための調査》第1項但書に規定する場合を除き、その青色申告者(青色申告書を提出した個人または法人をいう。以下同じ。)の帳簿書類を調査することを要することはもち論であるが、これらの項本文の「帳簿書類の調査」とは、その青色申告者の有する帳簿および伝票、契約書、送状その他の書類について証ひよう突合、帳簿突合、計算突合または勘定分析等を行うことばかりでなく、たな卸資産その他の資産について存否、品質、現況等を実査し、または取引先について取引の有無、数量、金額等を確かめる等、青色申告の基礎となつている帳簿に記載された売上その他の収入金額または総益金ならびに仕入その他の必要経費または総損金が真実かつ正確であるかどうかを確かめるための調査をも含むものであるから、たとえば、青色申告者の帳簿書類についての証ひよう突合、計算突合等の際には所得の計算に誤のあることが判明しなかつたが、取引先についてのいわゆる裏付調査によつて所得の計算に誤があることが判明した場合にも、これらの項本文に規定する「その調査に因り、所得に誤があると認められる場合」または「その調査により課税標準又は欠損金額の計算に誤があると認められる場合」に該当するものであること。
  2. 青色申告に係る所得以外の所得については、所得税法第45条第3項または法人税法第31条の4第2項に掲げる間接的事実の1つ、たとえば、従業員数等の事業の規模だけから直ちに所得金額または欠損金額を推計し、その推計した金額によつて更正または決定をすることができ、それに対しては、内容の当否は争い得ても更正または決定自体は適法の手続として許容されるのであるが、青色申告に係る所得については、そのような間接的事実の1つから推計されるところのものも有力な資料ではあるが、それだけで所得金額を推計して直ちに更正することは手続的に許されないのであつて、帳簿書類などから個別的には握された記帳除外の収入金額もしくは総益金、過大計上の必要経費もしくは総損金、または仕入金額と差益率、原材料消費量と歩留率などから総体的に推算される収入金額もしくは総益金または必要経費もしくは総損金、財産の増減、生計費の額、事業の規模その他各種の資料を合理的に総合勘案して認定されるところによつて更正することができるものであること。

     なお、青色申告にかかる所得に対する更正についての解釈は、以上のとおりであるが、努めて青色申告を育成助長しようとする基本方針にも顧み、今後処理するものについては、当分の間、計画的に収入を除外し、または経費を過大に計上しているなど、全体として帳簿書類の記載事項に信を措き難いことの明らかなものを除いては、原則として、個別的には握された記帳除外の収入金額または過大計上の必要経費の額を加算する方法により更正を行うことに取り扱われたい。

  3. 個人の提出した青色申告につき更正をする場合においても、その承認の取消をするかどうかは、昭和29年7月30日付直所6−29「所得税の青色申告の取消について」通達によるものとすること。

別紙

重要所得
直所審第91号
昭和28年2月2日

国税庁長官 殿

東京国税局長

 標題のことについては従来基本通達626から632までの趣旨により取り扱つていましたが昭和27年分の確定申告および更正決定の時期を目前に控え下記の諸点について疑義がありますので至急御指示を得たく上申いたします。

  1. 基本通達627の「青色申告者の取引先その他の調査に因つて青色申告者の帳簿書類に脱漏等があることを推察又は発見し」て更正する場合には
    1. (1) 取引先その他の調査に因つて判明した脱漏額についてのみ否認し得るのか
    2. (2) 取引先その他の調査に因つて取引金額の何割かは故意に脱漏していることが推察される場合には脱漏と推定される金額を加算して否認してよいのか
    3. (3) 取引先その他の調査に因つて青色申告者の帳簿がかなり杜ずさんなものと思われる場合に帳簿を基として推定し更正してよいのか
  2. 1の「推察」の意義および範囲についてできる限り具体的に御教示願いたい。
     なお、現在、裁判所に係属中の青色申告者の更正に関する事件に関して法務省および裁判所の見解では、所得税法第46条の2第1項の解釈としては青色申告者の備付帳簿自体から所得の計算に誤りがあることを発見した場合、その誤りについてのみ更正ができると解しているようである。
  3. 青色申告者に対する更正は、青色申告の奨励という趣旨からつとめてさけるべきだと考えるが、上記1の(2)または(3)の場合には青色申告の承認を取消したうえで推計による更正(法第46条の2第3項)を行うべきか。または青色申告者として更正すべきか。