課個5−3
平成18年1月12日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについては、下記のとおり定めたから、これにより取り扱われたい。
 なお、昭和43年10月3日付直所4−10「農業を営む青色申告者の取引に関する記載事項等の特例について」(法令解釈通達)及び昭和59年7月13日付直所5−4「農業を営む白色申告者の取引に関する記載方法等について」(法令解釈通達)は、廃止する。

(趣旨)
農業所得の計算上、これまで申告手続きの便宜を図るため、「目安」として農業所得標準を作成し、開示してきたところであるが、農業所得の計算は、他の事業所得の計算と同様に収支実額計算をすることが原則であり、また、個々の農家の実態に応じた適正な課税を図る必要があるため、所要の整備を図るものである。

1 青色申告者の場合

(1) 農産物を収穫した場合の収入金額等の計上時期、計算及び記帳の方法等について

 農産物(所得税法施行令第88条(農産物の範囲)に規定するものをいう。)を収穫した場合の収入金額の計上時期及び当該計算については、同法第41条(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)第1項に規定するいわゆる収穫基準による(同法第67条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)に規定するいわゆる現金主義を選択した場合を除く。)。また、この場合の記帳の方法等については、正規の簿記の方法によるときには同法施行規則第58条(取引に関する帳簿及び記載事項)による大蔵省告示(昭和42年8月大蔵省告示第112号)別表第一(青色申告者の帳簿の記載事項)の「一事業所得の部」の「(ロ)農業の部」(以下、「農業の告示」という。)の第一欄により、簡易簿記の方法によるときには農業の告示の第二欄により、それぞれ記帳するとともに、棚卸資産については、同法施行規則第60条(決算)の規定により棚卸表に記載することとされており、さらに、現金主義を選択したときについては、農業の告示の第三欄により記載することとされているが、農産物の収入に関する事項及び棚卸資産の記帳に当たって、農産物の数量、単価、金額の記載については、次に掲げる農産物の別によりそれぞれ次の方法によっても差し支えない。
 なお、家事消費等の金額は、収穫年次の異なるごとにその収穫した時における当該農産物の価額の平均額又は販売価額(市場等に対する出荷価格をいう。)の平均額によって計算しても差し支えない。

  米麦等の穀類 野菜等の生鮮な農産物 その他の農産物
収穫時の記載 数量のみ記載し、単価、金額は記載を省略する。 記載を省略する。
販売時の記載 数量、単価、金額を記載する。 数量、単価、金額を記載する。
ただし、数量、単価について明らかでない場合は記載を省略する。
家事消費等の記載 年末に一括して、数量、単価、金額を記載する。 年末に一括して金額のみを記載する。 年末に一括して、数量、単価、金額を記載する。
棚卸表の記載 数量、単価、金額を記載する。 記載を省略する。 数量、単価、金額を記載する。ただし、その数量が僅少なものは省略する。
摘要
  1. イ 野菜等の生鮮な農産物及びその他の農産物の区分はおおむね次による。
    1. (イ) 「野菜等の生鮮な農産物」とは、1すべての野菜類及び2果実等のうち収穫時から販売又は消費等が終了するまでの期間が比較的短いものをいい、例えば、ぶどう、もも、なし、びわなどがこれに含まれる。
    2. (ロ) 「その他の農作物」とは、果物のうち収穫時から販売又は消費等が終了するまでの期間が比較的長いもの及びいも類(甘しょ、馬れいしょ)等の農産物をいい、この種の果物には例えば、みかん、りんご、くりなどが含まれる。
  2. ロ 棚卸表に記載する価額は、収穫時の価額によるものとする。

(2) 未成育の牛馬等又は未成熟の果樹等に要した費用の年末整理の方法等について

  1. イ  未成育の牛馬等又は未成熟の果樹等に要した費用は、農業の告示では年末において整理することとされているが、当該費用の額については、種付費、種苗費等の取得費及び明らかに区分できる苗木の定植に要した労務費のほか、おおむね次に掲げるものに限定して差し支えない。
    1. (イ) 牛馬等・・・飼料費
    2. (ロ) 果樹等・・・肥料費、薬剤費
  2. ロ 未成熟の果樹等から生じた果実の収入金額がある場合には、原則として、これを当該未成熟の果樹等の取得価額から控除するのであるが、毎年継続して同一の方法によることを前提として、当該収入金額を総収入金額に算入しても差し支えない。
     また、未成熟の果樹等から生じた収入金額を、当該未成熟の果樹等の取得価額から控除する方法をとる場合には、その年分の果実等の収入金額がその年分の未成熟の果樹等の取得費の額及び当該果樹等に係る前年分以前の取得費の額を基として計算した減価償却費の額の合計額を超えることとなるときでも当該果樹等の樹令がその地域における当該果樹等の一般的な成熟樹令に達するまでの期間については、その年分の取得費の額を超過する金額を前年分以前の取得費の額から減額して整理することができるものとする。

    (注) 未成熟の果樹等から生じた果実等の収入金額を毎年継続して総収入金額に算入する方法をとっている場合又は納税者がその果樹等が収支相償う樹令に達したとしてその果実等の収入金額を総収入金額に算入した場合には、その地域における当該果樹等の一般的な成熟樹令に達する以前においても収支相償うこととなったと認められる果樹等については、その減価償却を行うことができるのであるから留意する。

(3) 未収穫農産物に要した費用の年末整理の方法及びその省略について

 未収穫農産物である幼麦、野菜等に要した費用については、農業の告示の第一欄及び第二欄とも年末において整理することとされているが、当該費用については次の方法によるものとする。

  1. イ 毎年同程度の規模で作付等をする未収穫農産物については、その整理を省略し、当該費用の額をその年分の必要経費に算入しても差し支えない。
  2. ロ イ以外の未収穫農産物については、当該費用の額はおおむね種苗費、肥料費及び薬剤費に限定して差し支えない。

(4) 収穫物及び未収穫農産物以外の資産の棚卸しの省略について

 棚卸資産の棚卸しについては、正規の簿記の方法による場合及び簡易簿記の方法による場合にあっては、所得税法施行規則第60条(決算)の規定により、棚卸資産の種類、品質、型などの異なるものの別に、数量、単価、金額を記載した棚卸表を作成することとされているのであるが、収穫物及び(3)の未収穫農産物以外の棚卸資産については、毎年同程度の数量を翌年へ繰り越す場合には、その棚卸しを省略しても差し支えない。

2 青色申告者以外の場合

(1) 農産物の家事消費等の金額の計算及び記載の方法等について

  1. イ 農産物の家事消費等について年末に一括して記載する方法を採る場合は、所得税法施行規則第102条(事業所得等に係る取引に関する帳簿の記録の方法及び帳簿書類の保存)による大蔵省告示(昭和59年3月大蔵省告示第37号)別表の「一事業所得の部」の「(ロ)農業の部」により、その消費等をしたものの種類別に、その合計数量及び合計金額を記載することとされているが、「野菜等の生鮮な農産物」(上記1(1)の表の摘要イ(イ)に定める農産物をいう。以下同じ。)については、その合計金額のみを記載することとして差し支えない。
  2. ロ 農産物の家事消費等の金額については、収穫年次の異なるごとにその収穫した時における当該農産物の価額の平均額又は販売価額(市場等に対する出荷価格をいう。)の平均額によって計算することとして差し支えない。

(2) 農産物の棚卸しについて

  1. イ 農産物の棚卸価額は、当該農産物の収穫時の価額によるものとする。
  2. ロ 「野菜等の生鮮な農産物」については、棚卸しを省略して差し支えない。
  3. ハ 「その他の農産物」(上記1(1)の表の摘要イ(ロ)に定める農産物をいう。)については、数量が僅少なものは棚卸しを省略して差し支えない。

(3) 未成育の牛馬等又は未成熟の果樹等に要した費用の年末整理の方法等について

 上記1(2)の取扱いを準用する。

(4) 未収穫農産物に要した費用の年末整理の方法及びその省略について

 上記1(3)の取扱いを準用する。

(5) 収穫物及び未収穫農産物以外の資産の棚卸しの省略について

 上記1(4)の取扱いを準用する。