直所2―57
昭和35年6月28日
国税局長 殿
国税庁長官
標題について、○○○○船員組合組合長から別紙1のような照会があり、これに対し所得税課長から別紙2のように回答させたから通知する。
別紙1
昭和35年4月28日
国税庁直税部所得税課長 殿
○○船員組合組合長
○○○○
数年来海外へ出漁する遠洋漁船が増加の一途にありますが、その出漁期間は1年以上に及び場合によっては2年以上経過することが往々あります。
これらの漁船に乗組む船員の賃金は歩合制のものが多く船員法第58条による一定額の最低補償給の外は出漁全期間中の水揚金額より航海経費を差引いた残額を対象とした歩合賃金が支払われて居ります。従って最終的な賃金は帰国後水揚金額及び航海経費を一括集計した上でないと判然としません。
そのため賃金に対する課税方法が一定せず支払者の判断によって日割り或は月割りにして課税するものもあり極端な場合、たとえば昭和33年10月海外へ出漁した漁船が同35年4月帰国し、その船員に支払われた賃金総額が50万円とした際、昭和35年の4ケ月間の賃金として取扱われ極めて過大な税額が賦課されたこともありました。
こうした主観的な課税方法は税法上、明確な規制がないことによって惹起されるものと思料されます。
つきましてはかかる場合の妥当な課税方法を明示される様御願い致します。
因みに当地関係の海外出漁船は約60隻、出漁船員数は二千名以上であります。
別紙2
直所2―56
昭和35年6月28日
○○船員組合組合長
○○○○ 殿
国税庁直税部所得税課長
○○○○
標題については、船員就業規則とか給与規程等の個々の内容によっても事情が相違してくることとは思いますが、毎月一定日には船員法第58条に規定する最低補償給のような固定給だけが支払われ、歩合給については一定期間ごと(たとえば3月間ごと、半年間ごとまたは1年間ごと)に支払額が確定することになっているような場合にはその固定給についてはそれぞれの月分の給与とし、歩合給についてはたとえ出漁全期間中のものが帰国後に一度に支払われる場合であっても、それぞれ一定期間ごとの確定時の賞与として所得税法第38条の規定による源泉徴収を行うことになります。