課酒3−22
平成16年12月2日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官
(官印省略)

 新潟県中越地震により、被災地域において著しい被害を受けた酒類製造場、酒類蔵置場及び酒類販売場に係る酒類製造免許等の取扱いについては、当分の間、下記のとおり取り扱うこととしたので、遺漏のないように取り扱われたい。
(理由)
 新潟県中越地震により、被災地域において、酒税の保全、酒類業者の事務負担の軽減、消費者利便を図る等の措置を講じる必要があるためである。

第一章 総則

1 用語の意義

1 「法」とは、「酒税法」(昭和28年法律第6号)をいう。

2 「令」とは、「酒税法施行令」(昭和37年政令第97号)をいう。

3 「酒類業組合法」とは、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」(昭和28年法律第7号)をいう。

4 「法令解釈通達」とは、「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達(法令解釈通達)」(平成11年6月25日課酒1-36ほか4課共同)をいう。

5 「被災地域」とは、平成16年11月4日付国税庁告示第24号「新潟県の一部の地域における国税に関する申告期限等を延長する件」により指定した地域をいう。

6 「酒類製造場」とは、酒類の製造免許を受けている場所をいう。

7 「酒類販売場」とは、酒類の販売業免許を受けている場所をいう。

8 「酒類蔵置場」とは、許可を受けた未納税酒類の貯蔵場所をいう。

9 「酒類蔵置所」とは、届け出た課税済酒類の貯蔵場所をいう。

2 通達の適用範囲等
 本通達の取扱いについては、次に掲げる場合に限り適用する。

1 新潟県中越地震により酒類製造場、酒類蔵置場又は酒類蔵置所の全部又は一部が被災したことにより、酒類の製造又は製造した酒類の貯蔵等の全部又は一部ができなくなった場合

2 新潟県中越地震により酒類販売場又は酒類蔵置所の全部又は一部が被災したことにより、酒類販売業の全部又は一部ができなくなった場合

3 新潟県中越地震により被災する前に酒類の製造免許又は販売業免許の申請がある場合

4 酒類製造者が、1に該当する酒類製造者と直接取引にある場合

第ニ章 酒類製造者に対する取扱い

第1 酒類製造場に対する取扱い
 酒類製造場の全部又は一部が被災したことにより、酒類の製造ができなくなったことから、酒類の製造を他の場所において行おうとする場合については、次により取り扱う。

1 酒類製造場の移転の取扱い
 酒類製造場の全部又は一部が被災したことにより、酒類の製造ができなくなり、一時的に他の場所に当該製造場の全部又は一部を移転することにより酒類の製造を継続しようとする場合(以下第二章において「仮移転」という。)については、原則として、移転を許可する。
 また、仮移転によらず、他の場所に製造場を設置することにより酒類の製造を継続しようとする場合についても同様とする。

2 移転の手続
 1により酒類製造場を移転する場合において、「酒類製造場移転許可申請書」提出時の添付書類については、「移転後の酒類製造場の所在地を明らかにすることのできる書類」があれば足りることとし、「酒類等の製造免許申請書等の添付書類一覧表」に規定するその他の添付書類については、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。
 なお、仮移転の場合には、復旧に要すると見込まれる期間を「酒類製造場移転許可申請書」の「移転の理由」欄に記載させる。

2 酒類蔵置場に対する取扱い
 酒類製造場又は酒類蔵置場(以下「酒類製造場等」という。)の全部又は一部が被災したことにより、酒類の貯蔵又は容器詰等ができなくなったため、一時的に他の場所において、酒類の貯蔵又は容器詰等を行う場合については、次により取り扱う。

1 酒類の貯蔵のための酒類蔵置場の設置の取扱い
 酒類製造場等の全部又は一部が被災したことにより、酒類の貯蔵ができなくなった場合又は契約により酒類の製造を委託している者(以下「委託製造者」という。)の酒類製造場等が被災したことにより酒類が引き取られず、酒類の製造を受託している者(以下「受託製造者」という。)の酒類製造場等が狭あいとなった場合に、当該被災に係る酒類製造場等の設置者又は受託製造者が、酒類蔵置場を設置しようとする場合は、法令解釈通達第28条第1項関係の1(蔵置場の態様)の(6)に規定する「製造場狭あいのための蔵置場」を設置する場合の取扱いに準じ、期限を付して設置を認める。
 なお、この場合、酒類製造場等が狭あいであるかどうかの客観的基準については、現に酒類が貯蔵できるかどうかによることとし、他に「製造場狭あいのための蔵置場」を有している場合であっても許可することとして差し支えない。
 許可に当たっては、設置する期間及び蔵置する酒類の範囲について条件を付すこととするが、当該期間は、原則として、1年以内の期間とし(ただし、必要に応じて延長可。)、当該範囲は、蔵置場を設置する者が免許を受けている種類・品目と同一の酒類に限るものとする(2において同じ。)。

2 容器詰等の委託に係る酒類蔵置場の設置の取扱い
 酒類製造場の一部が被災したことにより、酒類の容器詰等ができなくなった場合の酒類蔵置場の設置については、法令解釈通達第28条第1項関係の1(蔵置場の態様)の(2)に規定する「容器詰等のための蔵置場」を設置する場合の取扱いに準じ、期限を付して設置を認める。

3 設置の手続
 1又は2により酒類蔵置場を設置しようとする場合において、「酒類蔵置場設置許可申請書」提出時の添付書類については、「酒類蔵置場の所在地を明らかにすることのできる書類」があれば足りることとし、「酒類蔵置場設置許可申請書の添付書類一覧表」に規定するその他の添付書類については、必要に応じて提出させることとし、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。
 また、設置しようとする場所が、現に他の酒類製造者の酒類製造場若しくは酒類蔵置場又は酒類販売場(以下「蔵置場等」という。)である場合は、法令解釈通達第28条第1項関係の2(蔵置場の設置許可の要件)の(1)のニの規定にかかわらず、設置しようとする場所を当該蔵置場等から除外することとして、当該蔵置場等の異動申告書を提出する等指導する。

4 許可等事務の取扱官庁
 1又は2に規定する酒類蔵置場について、被災を受けた酒類製造場等の所在地を管轄する税務署の管轄区域外に設置する場合又は2以上の酒類蔵置場を設置しようとする場合については、法令解釈通達第28条第1項関係の9(許可等事務の取扱官庁)の規定にかかわらず、税務署長限りで処理しても差し支えない。その際、当該酒類蔵置場を設置する酒類製造者の酒類製造場が被災したかどうかについては、関東信越国税局酒税課に確認の上処理する。

第3 酒類の未納税移出の取扱い

1 委託製造者の酒類製造場等が被災したことにより酒類が引き取られず、酒類の製造又は貯蔵に支障を来たすこととなる受託製造者が、当該酒類の貯蔵を他の製造者に委託するため、当該酒類を当該他の製造者の酒類製造場等に移出しようとする場合は、当該移出しようとする酒類の移出元である受託製造者の酒類製造場又は被災した委託製造者の酒類製造場等に更に移出することが明らかな場合に限り、法第28条《未納税移出》第1項第4号の規定による未納税移出の承認を与えることとして差し支えない。

2 1により移出した酒類の移入者が、当該移入した酒類を移出元である受託製造者の酒類製造場又は被災した委託製造者の酒類製造場等に移出する場合も同様に未納税移出の承認を与えることとして差し支えない。

第三章 酒類販売業者に対する取扱い

第1 酒類販売場に対する取扱い
 酒類販売場の全部又は一部が被災したことにより、酒類の販売ができなくなったことから、酒類の販売を他の場所において行おうとする場合については、次により取り扱う。

1 酒類販売場の移転の取扱い

(1) 酒類販売場の全部又は一部が被災したことにより、酒類の販売ができなくなり、一時的に他の場所に販売場を設置することにより酒類の販売を継続しようとする場合(以下第三章において「仮移転」という。)については、期限付免許を付与する。この場合、仮移転先は、原則として、同一小売販売地域又は同一卸売販売地域(以下「同一小売販売地域等」という。)内に限るものとし、やむを得ない理由がある場合に限り、被災地域内及びこれに隣接する市町村に仮移転する場合の期限付免許を付与することとして差し支えない。
 なお、免許に付する期限については、原則として、1年以内とし、必要に応じて元の酒類販売場において酒類の販売が再開できるまでの間として1年以内の期間に限り延長を認めることとして差し支えない。
 おって、期限付免許については、「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」(平成15年法律第34号)第3条に規定する緊急調整地域に指定されている地域内においても、付与することとして差し支えない。

(2) 仮移転によらず、同一小売販売地域等内の他の場所に販売場を設置することにより酒類の販売を継続しようとする場合については、原則として、移転を許可する。
 なお、同一小売販売地域等以外の場所への移転については、法令解釈通達の定めに従い取り扱うことに留意する。

2 移転の手続
 1により酒類販売場を仮移転する場合については、原則として、次により取り扱う。

(1) 1の(1)により仮移転する場合において、「酒類販売業免許申請書」提出時の添付書類については、「酒類販売場の所在地を明らかにすることのできる書類」があれば足りることとし、「酒類販売業免許申請等の添付書類一覧表」に規定するその他の添付書類については、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。
 なお、仮移転前の販売場の所在地を「酒類販売業免許申請書」の「申請の理由」欄に、復旧に要すると見込まれる期間を「臨時販売場の開設期間」欄にそれぞれ記載させる。

(2) 1の(2)により酒類販売場を移転する場合において、「酒類販売場移転許可申請書」提出時の添付書類については、「移転後の酒類販売場の所在地を明らかにすることのできる書類」があれば足りることとし、「酒類販売業免許申請等の添付書類一覧表」に規定するその他の添付書類については、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。

第2 平成16免許年度に係る一般酒類小売業免許申請等の取扱い
 平成16免許年度において申請書又は申立書(以下「申請書等」という。)が提出されており、平成16年10月23日までに免許の付与若しくは条件緩和又は移転(以下「付与等」という。)を行っていない者について、設置しようとする酒類販売場の状況が申請書等に記載のものと異なることとなる場合には、設置しようとする酒類販売場の現況に基づいて審査を行うこととなるが、当該申請書等の補正は、申請者又は申立者の被災状況を斟酌のうえ、当該申請者又は申立者に対して過度の負担となることのないよう配慮する。

3 酒類販売管理研修等の取扱い

1 酒類販売管理者の選任届について
 第1の1により期限付免許の付与を受けた者において酒類販売管理者に変更がない場合には、改めて酒類業組合法第86条の9《酒類販売管理者》第4項に規定する選任届出書を提出する必要はないこととして取扱うものとする。
ただし、新たに酒類販売管理者を選任した場合には、選任届出書の提出する必要があるが、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。

2 酒類販売管理研修の受講について
 第1の1により期限付免許の付与又は移転の許可を受けた者が、新たに酒類販売管理者を選任した場合において、震災の状況等により酒類販売管理研修を受けさせることが困難であると認められる場合には、酒類業組合法第86条の9《酒類販売管理者》第5項に規定に係わらず、3ヶ月を超えて受けさせることを認めることとして差し支えない。
 また、平成16免許年度において申請書等を提出し、免許の付与等を受けた者が、新たに酒類販売管理者を選任した場合においても、同様に取扱うこととして差し支えない。
 なお、第1の1により期限付免許の付与を受けた者において、酒類販売管理者に変更がない場合には、改めて研修を受けさせる必要はないこととして取扱うものとする。

第四章 雑則

1 被災による休業について
 酒類製造場又は酒類販売場が被災したことにより、酒類の製造又は販売ができなくなった場合の休業に関する取扱いについては、次の点に留意する。

1 酒類製造場の取扱い
 休業した酒類製造場のうち、復旧後の製造の再開が明らかな者又は既に再開した者が、被災したことによる休業期間を含めると、法第12条《酒類の製造免許の取消》第3号(法第13条《酒母等の製造免許の取消》により同号の規定を準用する場合を含む。)又は第4号本文に該当することとなる場合、これをもって製造免許を取り消すことのないよう留意する。

2 酒類販売場の取扱い
 休業した酒類販売業者のうち、復旧後の販売の再開が明らかな者又は既に再開した者が、被災したことによる休業期間を含めると、法第14条《酒類の販売業免許》第3号に該当することとなる場合、これをもって販売業免許を取り消すことのないよう留意する。

2 酒類蔵置所の取扱い
 既存の酒類蔵置所が被災したことにより、酒類の貯蔵ができなくなった場合又は酒類製造場若しくは販売場が被災したことにより、酒類の貯蔵ができなくなった場合において、新たに酒類蔵置所を設置しようとする場合は、「酒類蔵置所設置・廃止報告書」を提出させることとするが、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。

3 「酒類の販売数量等報告書」の取扱い
 「酒類の販売数量等報告書」については、酒類販売業者の被災状況等を十分に把握した上で報告を求めることとし、帳簿書類等が滅失等したことにより数量等の把握が困難な場合には、前年度実績等に基づいて当該数量等を推計することを認めることとして差し支えない。

4 亡失等に伴う立会検査等の取扱い
 法第50条の2《届出義務》第2項に基づく亡失等の届出については、被災状況等の実情に応じて、原則として1ヶ月以内に提出させる等弾力的に取り扱う。
 なお、同項第2号及び第3号に規定する事実により酒類等を製造場外に移出して処理する場合には、産業廃棄物処理事業者その他の事業者が作成した廃棄を証明する書類を保存する場合に限り、当該廃棄は製造場内において廃棄されたものとして取り扱うことし、原則として、同条第3項に規定する処分禁止の命令は行わないこととして差し支えない。