直審(法)98(例規)
直審(所)58
昭和43年12月27日

国税局長 殿

国税庁長官

 標題について下記のとおりその取扱いを定めたから、今後処理するものからこれにより取り扱われたい。

(趣旨)
内航海運企業の合理化、近代化を図るための船腹調整措置として、内航海運組合法(昭和32年法律第162号)第12条第1項の規定に基づく日本内航海運組合総連合会船腹調整規程(昭和42年12月15日運輸大臣認可。以下「船腹調整規程」という。)により、内航船舶の解撤等については船腹調整交付金が交付され、建造等については船腹調整納付金の納付を要するものとされているので、これについての解釈を明らかにするとともに、当該船腹調整規程の制定前において行なわれていた内航船舶の解撤等による代替船の建造等の権利の譲渡等について、その解釈を明らかにし、処理の統一を図ったものである。

第1 法人税関係

(内航船舶の解撤等により交付を受ける船腹調整交付金等)

1 法人の所有する内航船舶(内航海運業法(昭和27年法律第151号)第2条第2項に規定する内航海運業の用に供する船舶をいう。以下同じ。)の解撤、沈没、海外売船または外航運送の用への転用(以下これらを「解撤等」という。)に伴い、当該法人が船腹調整規程に基づき財団法人内航海運安定基金(以下「安定基金」という。)から交付を受ける船腹調整交付金については、船舶の譲渡にかかる対価に該当しないものとする。したがって、当該船腹調整交付金については、租税特別措置法第65条の4の規定の適用がないことに留意する。 
 法人が昭和42年12月15日前に当該内航船舶の解撤等による代替船の建造等の権利を他へ譲渡した場合の当該譲渡の対価についても、同様とする。

(内航船舶の建造等にあたり納付する船腹調整納付金等)

2 法人が船舶の建造、改造または外航運送の用からの転用(以下これらを「建造等」という。)によって当該船舶を内航海運業の用に供するにあたり、船腹調整規程に基づき安定基金に納付する船腹調整納付金については、営業権の取得の対価とする。
法人が昭和42年12月15日前に内航船舶の建造等のため既存の内航船舶の解撤等による代替船の建造等の権利を他から取得した場合のその取得の対価についても、同様とする。

(船腹調整交付金と船腹調整納付金とがある場合の処理)

3 法人がその所有する内航船舶の解撤等により代替船の建造等をする場合において、その解撤等により交付を受ける船腹調整交付金とその建造等に伴い納付する船腹調整納付金とがあるときは、その相殺残額について1または2の取扱いを適用する。

(船腹調整納付金等の額を船舶の取得価額に算入している場合の区分計算)

4 法人が、内航船舶の建造等にあたり納付する船腹調整納付金の額(当該船舶の建造等のため既存の内航船舶の解撤等をしたことに伴い船腹調整交付金の交付を受けている場合には、その相殺後の船腹調整納付金の額とし、内航船舶の解撤等による代替船の建造等の権利を他から取得している場合のその取得の対価の額を含む。以下「船腹調整納付金等の額」という。)をその建造等にかかる船舶の取得価額に算入している場合において、当該船舶の帳簿価額のうち当該船腹調整納付金等の額の未償却残額に相当する金額を営業権として区分経理したときは、これを認める。

(船腹調整納付金等の額の損金算入を否認している場合の処理)

5 法人が船腹調整納付金等の額をその建造等にかかる船舶の取得価額に算入していないため、当該船腹調整納付金等の額の全部または一部に相当する金額を当該船舶にかかる減価償却超過額として否認している場合には、当該減価償却超過額(既往の事業年度において損金の額に算入されたものを除く。)に相当する金額をこの通達の日付の日の属する事業年度において損金の額に算入するものとする。

第2 所得税関係

(船腹調整交付金等の所得区分)

6 個人の所有する内航船舶の解撤等により安定基金から交付を受ける船腹調整交付金の額(当該船舶の解撤等により代替船の建造等をする場合に納付する船腹調整納付金の額があるときは、その相殺後の船腹調整交付金の額とする。)については、営業権の譲渡の対価とする。
個人が昭和42年12月15日前において、当該船舶の解撤等による代替船の建造等の権利を他へ譲渡した場合の当該譲渡の対価についても、同様とする。

(法人税の取扱いの準用)

7 2から4までの取扱いは、所得税について準用する。この場合において、2から4まで中「法人」とあるのは「個人」と読み替えるものとする。

(区分経理をした場合の未償却残額の償却)

8 個人が4により船舶の帳簿価額のうち船腹調整納付金等の額の未償却残額に相当する金額を営業権として区分経理した場合においては、当該区分経理をした日の属する年分以後の各年分の所得の金額の計算上必要経費に算入すべき当該営業権の償却費の額は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれその掲げる金額とする。

(1) 営業権の償却の方法につき所得税法施行令(以下「令」という。)第120条第1項第5号イに掲げる方法を選定している場合または当該区分経理をした日の翌年の3月15日までに営業権につき令第124条第2項による償却の方法の変更(令第120条第1項第5号イに掲げる方法への変更に限る。)の申請書を提出した場合 当該未償却残額に相当する金額を基礎として同号イに準じて計算した金額

(2) (1)以外の場合 当該未償却残額の5分の1に相当する金額

(船舶の取得価額に算入していない場合の償却)

9 個人が、船腹調整納付金等の額をその建造等にかかる船舶の取得価額に算入していない場合または船舶以外の資産(営業権を除く。)として計上している場合には、その未償却残額に相当する金額を昭和44年において4による区分経理をしたものとみなして8に準じて各年分の所得の金額の計算上必要経費に算入すべき償却費の額を計算するものとする。