直法1―6
直所1―3
昭和35年1月20日

国税局長 殿

国税庁長官

 標題については、その取扱を下記のとおり定めたから、今後処理するものから、これによられたい。

(趣旨) この通達は昭和34年9月23日の次官会議において、電力会社が電力の需要者である法人および個人(以下これらを「需要者」という。)の配電設備の受電能力を3キロボルトから6キロボルトに昇圧する工事(以下「昇圧工事」という。)を行うに当り支出する費用について課税上の特例措置を講ずることに方針が定められたので、その取扱を具体的に定めたものである。

第1 法人

(電力会社が支出した昇圧工事費等の取扱)

一 電力会社が昇圧工事に伴い要した費用のうち、次に掲げる費用の額は、法人税法施行規則第21条の8に規定する繰延費用として資産に計上し、その効果の及ぶ期間を15年とする。

1 需要者の配電設備を改造するために支出した費用の額および需要者が施設した6キロボルト、3キロボルト両用受電設備に対する価格差補償金として支出した費用の額

(注) 価格差補償金とは、需要者が将来の高圧に備え、6キロボルト、3キロボルト両用受電設備を設置した場合に、当該設備の価格と、それと同性能、同容量の3キロボルト用受電設備(昇圧計画区域内においては6キロボルト用受電設備)の価格との差額として支払われる金額である。

2 需要者の配電設備について取替をする場合において、取替のため需要者に譲渡する配電設備の譲渡直前の帳簿価額(配電設備の譲渡に当りその配電設備の受電能力が低下するため需要者に対し交付した補償金があるときは、その金額を加算した金額)から、取替により取得した配電設備の取替の日における価額(配電設備の取替に当り需要者から取得した金銭等があるときは、その金銭等の額を加算した金額)を控除した金額

3 配電設備の取替により取得した配電設備について、取りこわしまたは譲渡等により損失が生じた場合においては、その損失の額(電力会社がその配電設備を自己の電力供給設備として使用した後において生じた損失の額を除く。)

4 所轄通商産業局長の承認を得て、連絡変圧器および変電に必要な設備を需要者に無償譲渡した場合の当該設備の譲渡直前の帳簿価額

(需要者の昇圧工事費等の取扱)

二 需要者たる法人が電力会社の行う昇圧工事に関連して自己の配電設備について改造または取替を受けた場合においては、次により取り扱う。

1 配電設備について改造を受けた場合においては、その改造に要した費用の額は益金に算入するとともにその金額を修繕費として損金に算入すること。したがつて、これにより課税関係は生じないから留意すること。

2 配電設備について取替を受けた場合においては、その取替により取得した配電設備(以下「取得資産」という。)につき、その取替により譲渡した配電設備(以下「譲渡資産」という。)の譲渡直前の帳簿価額を下らない金額をその取得資産の帳簿価額とすることができること。

3 配電設備について取替を受けた場合において、需要者が取替による譲渡資産の価額と取得資産の価額との差額に相当する金額を支出しているときまたは配電設備の受電能力の増加等があるために支出した金額があるときは、その取得資産の帳簿価額は、2により付すべき帳簿価額にその支出した金額を加算したものによること。

4 配電設備について取替を受けた場合において、取替による取得資産の受電能力が減少したことにより需要者が電力会社から補償金を取得したときは、その取得資産の帳簿価額は、2により付すべき帳簿価額に次の割合を乗じて計算した金額を下らない金額とし、その補償金の額は益金に算入すること。

(算式)
取得資産の価値÷取得資産の価値+補助金の額

(需要者が取得した価格差補償金の取扱)

二の二 需要者たる法人が電力会社の行う昇圧工事に関連して交付を受けた価格差補償金については、次により取り扱う。

1 価格差補償金は、その交付が確定した日を含む事業年度の益金に算入するとともに、当該事業年度において、当該価格差補償金の交付の対象となつた受電設備の帳簿価額につき、価格差補償金に相当する金額以下の金額を減額して損金に算入することができるものとすること。この場合において、当該事業年度の前事業年度までに受電設備を取得して減価償却を行つているときは、帳簿価額を減額することができる金額は、次の算式によつて計算した金額以下の金額とすること。

(算式)
価額差額保証金の金額×帳簿価額を減額する時の直前の受電設備の帳簿価額/受電設備の取得価額

2 1によつて帳簿価額の減額をした受電設備を昇圧工事の完了前に撤去し、または3キロボルト用受電設備に取り替えたため、先に交付を受けた価格差補償金を電力会社に返還したときは、その返還した日を含む事業年度において、次の算式により計算した金額を下らない金額を、当該撤去し、または取替えのため取りはずした受電設備の帳簿価額に加算すること。したがつて、返還した価格差補償金の金額と当該帳簿価額に加算すべき金額との差額に相当する金額は、その返還した日を含む事業年度の損金に算入されること。

(算式)
返還した価格差補償金の金額×変換または取替の時の直前に受電設備の帳簿価額÷1による圧縮記帳直後の受電設備の帳簿価額

(経過事業年度の需要者配電設備の記帳価額の修正)

三 需要者たる法人がこの通達の日付の日までに終了した事業年度において、既に昇圧工事を終り、昇圧工事の対象となつた配電設備についてこの取扱により付すべき価額(以下「記帳価額」という。)と異なる帳簿価額を付している場合には、次によること。

1 帳簿価額が記帳価額を下廻つている法人については、なるべく修正申告をするように指導すること。

2 帳簿価額が記帳価額をこえている法人については、その法人がこの通達の日付の日を含む事業年度において帳簿価額を修正したときは、これを認めること。

(価格差補償金の経過的取扱)

三の二 需要者たる法人が昭和37年10月13日を含む事業年度前の事業年度において既に価格差補償金の交付を受けていたが、記帳価額と異なる帳簿価額を付している場合には、昭和37年10月13日を含む事業年度において二の二の1の計算に準じて帳簿価額を修正することができるものとする。

第2 個人

 需要者たる個人が電力会社の行う昇圧工事に関連して自己の配電設備について改造もしくは取替を受けた場合または価格差補償金の交付を受けた場合の所得金額の計算についても、次に掲げる事項を除くほか、第1の法人の取扱に準じて取り扱うこと。

一 配電設備について取替を受けた場合に、第1のニの2により取替による取得資産に付すべき価額は、その取替による譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額によること。

二 配電設備について取替を受けた場合において、取替による取得資産の受電能力が減少したことにより需要者が電力会社から補償金を取得したときは、その補償金の額は譲渡所得の収入金額に算入するとともに、その取得資産の帳簿価額は、次の算式により求めた金額によること。

(算式)
譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額×取得資産の価額÷取得資産の価額+補助金の額

三 電力会社の行う昇圧工事に関連して交付を受けた価格差補償金については、次により取り扱うこと。

1 価格差補償金は、これを総収入金額に算入しないこととするとともに、当該価格差補償金の交付の対象となつた受電設備に付すべき価額は、当該受電設備の取得価額から価格差補償金に相当する金額を減額した金額によるものとすること。この場合において、価格差補償金の交付が確定した日の属する年の前年以前に受電設備を取得しているときは、当該受電設備の帳簿価額から減額すべき金額は、次の算式によつて計算した金額によるものとすること。

(算式)
価格差補償金の金額×交付を受けた日の属する念の年初における受電設備の帳簿価額÷受電設備の取得価額

2 1によつて帳簿価額の減額をした受電設備を昇圧工事の完了前に撤去し、または3キロボルト用受電設備に取り替えたため、先に交付を受けた価格差補償金を電力会社に返還したときは、当該返還した金額は必要経費に算入せず、次の算式により計算した金額を当該撤去し、または取り替えた受電設備の帳簿価額に加算すること。

(算式)
返還した価額さ補償金の金額×返還または取替の時の直前の受電設備の帳簿価額÷1による減額直後の受電設備の帳簿価額