直法1―10
昭和27年1月18日

国税局長 殿

国税庁長官

石炭鉱業における坑道の減価償却について現行の取扱によれば、各事業年度の償却額が逓増する等の不合理があるので、これが是正のため現行の生産高比例法による減価償却については、別途検討の必要があるが、当分の間その取扱を左によることとしたから、これにより扱われたい。

1 石炭鉱業における坑道の生産高比例法による償却は左によるものとする。

(1) 新たに鉱業法第63条に規定する施業案(以下「施業案」という。)の認可を受けて坑口を設けた場合において、その事業年度の採掘量が当該施業案で採掘権に係るものにおいて定められた採掘量に達するに至つた事業年度末までに掘さくされた本卸坑道(人道を含む。以下同じ。)及びこれに付属する添卸坑道並びにこれらの坑道の延長部分の掘さくに要した金額はすべて資本支出とし、当該金額は、当該坑道を利用して採掘される炭量で当該金額を除して計算した金額を1単位当りの償却金額として償却するものとする。

(2) 採掘場所の深部移行に伴い、本卸坑道及びこれに付属する添卸坑道を延長した場合((4)に該当する場合を除く。)の延長部分の掘さくに要した金額は、採掘の進行に伴い次の採掘準備として採掘されるもので生産を維持するために最少限必要と認められ、且つ、その延長された部分の本卸坑道に付属する片盤坑道によつて採掘される炭量を採掘する期間が明らかに当該本卸坑道の掘さく後2年以内であると認められる部分の掘さくに要した金額については、支出の都度損金に算入し、その他の金額については資本支出とし、当該金額は当該延長された部分の坑道に付属する片盤坑道によつて採掘される炭量で当該金額を除して計算した金額を1単位当りの償却金額として償却するものとする。

(3) 前号のその延長された部分の本卸坑道に付属する片盤坑道によつて採掘される炭量を採掘する期間が本卸坑道の掘さく後2年以内であるかどうかは、延長された本卸坑道の長さ、これに付属する片盤坑道によつて採掘されるものと見積られる炭量、切羽の数及び状況、当該片盤坑道による毎月の出炭計画並びに既往における当該本卸坑道に付属する片盤坑道の使用期間の実績等を勘案して判定するものとする。

(4) 一定の増産計画に基き出炭量を増加するため本卸坑道の増設、延長又は拡大等をした場合(増産計画に基かないで本卸坑道の増設、延長又は拡大等を行い、これにより事実上の増産が行われた場合を含む。)のその増設、延長又は拡大等のために要した金額は資本支出とし、当該金額は当該増設、延長又は拡大等にかかる坑道を利用して採掘される炭量で当該金額を除して計算した金額を1単位当りの償却金額として償却するものとする。但し、その事実上の増産が炭丈の増加等自然条件の良化、選炭機の改良等による選炭歩留の向上その他生産力の増加(たとえば、坑内施設の増設及び機械化、労務者の増加等)に関係のない原因だけによつていると認められる場合においては、本卸坑道の延長又は拡大等のために要した金額については、(2)の取扱によるものとする。

(5) 運搬の便宜を図るための運搬坑道の掘さくに要した金額(既設の片盤坑道を利用し、これを拡大又は延長する等の工事を行い運搬坑道とした場合のその拡大又は延長等のために要した金額を含む。)は資本支出とし、当該金額は、当該運搬坑道を利用して採掘される炭量で当該金額を除して計算した金額を1単位当りの償却金額として償却するものとする。但し、運搬坑道の計画又は予定延長がおおむね100米(メートル)に満たないものについては、掘さくの都度損金に算入するもさしつかえないものとする。

(6) 前号の運搬坑道を利用して採掘される炭量には、更にその深部に運搬坑道の掘さくを要する場合の当該深部の運搬坑道を利用して採掘される炭量は含まないが、当初の運搬坑道を利用して採掘される炭量が僅少にして、当該運搬坑道の掘さくは明らかに深部の採炭のため掘さくされたものと認められる場合は、深部の運搬坑道を利用して採掘される炭量をも含むものとする。

(7) 坑道の延長が長くなつたため若返りの工事として既設の坑道に直結する新たな本卸坑道又は添卸坑道を掘さくした場合の当該本卸坑道又は添卸坑道の掘さくに要した金額は資本支出とし、当該金額は当該坑道の掘さく後採掘される炭量で当該金額を除して計算した金額を1単位当りの償却金額として償却するものとする。この場合において旧本卸坑道又はこれに付属する添卸坑道が本来の機能を喪失したときは、当該坑道の未償却残高の金額は、その機能を喪失したときの損金に算入するものとする。

(8) 片盤坑道及び切羽の掘進に要した金額は、支出の都度損金に算入するものとする。

2 前項の償却は、それぞれ坑道の種類又は性質別に、且つ、部分的に計算すべきものであるから、個々の償却範囲額は通算しないのであるから留意する。

3 従来の取扱により資産として処理されていた坑道については、今後も従来の取扱により償却すべきことはもちろんであるが、法人が次により償却額を計算したときは、これを認めるものとする。但し、(1)、(3)及び(5)の坑道で資産再評価法による第2次再評価が行われているもののうち、昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日において、それぞれその坑道によつて採掘される炭量が採掘済となつているものについては、当該坑道の第2次再評価直前の帳簿価額(減価償却否認金等を含む。)までその帳簿価額を減額(再評価額の更正を含む。)し、当該減額した価額に応ずる再評価積立金を減額したものについてのみ次による償却額の計算を認めることとし、減額しないものについては、従来の取扱によるものとする。

(1) 着炭後延長された本卸坑道及びこれに付属する添卸坑道のうち昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日において、これに付属する片盤坑道によつて採掘される炭量が既に採掘済となつているものについては、当該坑道の未償却残高の金額は、同日以後に終了する各事業年度において当該未償却残高の金額に当該事業年度の月数を乗じてこれを60で除して計算した金額以内の金額の償却ができるものとする。

(2) 着炭後延長された本卸坑道及びこれに付属する添卸坑道のうち昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日においてこれに付属する片盤坑道によつて現に採炭中のもの又はまだ採炭に着手していないものについては、当該坑道の未償却残高の金額は、当該坑道が第1項(2)本文に該当するものであるときは、同日を含む事業年度の損金に算入することができるものとし、同号但書に該当するものであるときは、当該但書により取り扱うものとする。この場合において当該但書の「採掘される炭量」には、同日前に採掘された炭量は含まないものとする。

(3) 第1項(5)の運搬坑道のうち同号に定める当該運搬坑道を利用して採掘される炭量が昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日までに既に採掘済となつているものについては、当該運搬坑道の未償却残高の金額は、同日以後に終了する各事業年度において当該未償却残高の金額に当該事業年度の月数を乗じてこれを60で除して計算した金額以内の金額の償却ができるものとする。

(4) 第1項(5)の運搬坑道のうち昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日において既に当該運搬坑道を利用して採炭中のもの又はまだ採炭に着手していないものについては、当該運搬坑道の未償却残高の金額は、同号により取り扱うことができるものとする。この場合において同号の「採掘される炭量」には、同日前に採掘された炭量は含まないものとし、同号但書の概ね100米(メートル)に満たない運搬坑道については、同日を含む事業年度の損金に算入するものとする。

(5) 片盤坑道及び切羽の掘進に要した金額で、昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日において資産として処理されているものについては、同日以後において終了する各事業年度において、当該資産として処理されている金額に当該事業年度の月数を乗じてこれを60で除して計算した金額以内の金額の償却ができるものとする。

4 この取扱は昭和25年4月1日以後終了する事業年度分から適用するものとするが、同日以後終了した事業年度であつても既に経過した事業年度分については、昭和27年3月末日までにこの取扱による減価償却額の計算に関する明細書を添付して、申告書の修正を申し出ないものについては、従前の取扱によるものとする。但し、この取扱による減価償却額の計算を今後終了する事業年度分から行う法人については、前項各号の「昭和25年4月1日を含む事業年度開始の日」とあるのは「当該事業年度開始の日」と読み替えるものとする。