直法1―176
昭和26年12月28日

国税局長 殿

国税庁長官

 標記のことについて、日本鉄鋼連盟会長と別紙のとおり照覆したから参考に供されたい。
 なお、非鉄金属(銅、アルミニウム、電線等)圧延用ロールについては、通常耐用年数1年以上であるのが実状であるから留意されたい。
 右通知する。


別紙

直法1―176
昭和26年12月28日

日本鉄鋼連盟会長 殿

国税庁長官

 昭和26年8月31日及び10月25日付をもつて御照会があつた標記のことについては、左記のとおり回答致します。

1 耐用年数について

 圧延機に取り付けるロールは、通常予備を有しこれを交互に使用するのが実状であるから、これが耐用年数はその保有するロールの全部の廃棄が一循環する期間とすべきであります。(他の資産についても通常予備を有するものについては、その有する予備を含めたところで耐用年数が定められております。)これを実際に算定するには、圧延機の異なるごとに、過去の実績を基準として算定することとなります。

2 経理について

 鉄鋼圧延用ロールは、税法上次のように処理することを適当としますから御留意下さい。

(1) 1により算定した耐用年数が1年以上のものについては、従前のとおり当然これを固定資産に計上し減価償却を行うこと。

(2) 1により算定した耐用年数が1年未満のものについて、その金額が多額である場合においては、各事業年度末日における未廃棄分について一定の方法により棚卸を行うことが会計理論上も適当であると認められること。この場合において、これが評価は一定の方法を選定し各事業年度継続して適正に行うこと。

(3) 耐用年数が1年以上であるかあるいは1年未満であるかについては、法人が自らこれを判定し、その判定の基礎を明かにすること。

3 法人税法施行細則第7条の6の指定について

 鉄鋼圧延用ロールが、法人税法施行細則第7条の6の規定により、減価償却に代え損耗率等により減価の価額を計算することを適当とする資産であるか否かについては、現在研究中であります。

照会

昭和26年8月31日

国税庁長官 殿

日本鉄鋼連盟会長

 ロールに就ては、今回始めて固定資産として耐用年数5年と定められましたが、鉄鋼会社は2、3社を除いた殆ど全部は固定資産として経理致して居りません。
 その経理方法は棚卸資産として計上する会社が大部分であります。
 右は要するに別表資料に示す如く、極めて短期間に消耗されてしまう性質のものである観念を期せずして鉄鋼会社が有していることを証明しているのであります。
 又、別の観点から申上げますと、現在の法人税法に於ては、耐用年数1年未満の固定資産、又は取得価格、若しくは製作価格が1万円未満の場合は、固定資産として財産目録に計上しなくてもよい事になつて居り(施行細則第4条)、更に税法と平行して、証券取引委員会規則第18号第16条に有形固定資産に属すべきものとして、工具器具及び備品については、耐用年数1年以上のものに限るとあります。企業会計と税務会計の一致を見ることは極めて困難な問題であるに不拘、前記の如く大多数の鉄鋼会社が現在経理している方法は完全に企業会計を税務会計に一致せしめているものと言へます。
 よつて、本連盟は鉄鋼業界の総意として、税法上より圧延用ロールについては、本質上固定資産の範囲に属せざるものとして御了承を願いたいのであります。
 尚、特殊な事情のため、御庁の御見解により耐用年数1年を超ゆるものありと認定せられるものにして、実際その通りである分については固定資産の取扱をなすのは当然のことと存ずるのであります。
 然しその時でもロールの本質は変ることなく、既に申述べたるが如く、消耗度の極めて激しいものでありますから耐用年数により償却を行うのではなく、法人税法施行細則第7条の6の減耗率等によつて減額するのを企業の経理上実情に添う償却方法と考へられますので同条の規定による長官殿の御指定を賜はり度、併せて御願申上げる次第であります。

別紙資料 (省略)



昭和26年10月25日

国税庁長官 殿

日本鉄鋼連盟会長

 鉄鋼業に於ける圧延ロールは本質的には消耗度が激しく、今般定められた耐用年数を5年という1本の率で償却を強要されることは実際とは著るしく隔絶し、ひいては企業経理の上に及ぼす影響も甚大であると考えられます。この旨は既に去る8月31日付貴官宛書面を以て立証資料を添え鉄鋼業界の意見として開陳致したところであります。
 其後貴庁におかれては係官を工場に派し、実地についても御調査相成り、当方の意のあるところは充分御理解願つたものと存ぜられます。
 よつてロールの税法上の取扱については、左記の如く御認定賜はります様此段陳情申上げる次第であります。

 予備ロール保有数量の多寡、圧延機械の僅少、其他特殊の事情のため当該ロールの耐用が1年を超える場合の資産の評価に法人税法施行細則第7条の6の適用を受けたきこと。
 但し、ロールは質、型体、用途等各工場により、或は一決算期毎に夫々異なり一定の率を算出、指定を受けることは不可能と思はれるから、各会社の申請に基き個別に定められたきこと。