徴徴4−3
徴管2−42
直資4−13
間酒1−20
間消1−33
昭和54年7月2日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、別紙のとおり定めたから、下記に留意の上、これにより取扱われたい。
 (理由) 仮登記担保契約に関する法律(昭和53年法律第78号。以下「仮登記担保法」という。)が制定されたことに伴い、滞納処分の取扱いを定めたものである。

1 担保のための仮登記(仮登記担保法第1条《趣旨》に規定する仮登記担保契約に基づく仮登記又は仮登録をいう。以下同じ。)がされた財産に対する滞納処分又は国税のための担保権の設定に当つては、当該仮登記の権利者の保護、国税への充足見込み等を十分考慮して、行うこととされたい。

2 既往の取扱いでこの通達に定めるところと抵触するものについては、これによることとされたい。

3 別紙の第3の4の(1)のロ《裁判所に対する照会》については、最高裁判所(事務総局民事局)と協議済であるので念のため申添える。

4 別紙の第2の1の(5)のロのなお書及び2の(2)の後段《消滅する仮登記のまつ消》については、法務省(民事局)と協議中であるので、個別事案の取扱いについては国税庁徴収部徴収課あて照会の上処理することとされたい。
 なお、法務省(民事局)と協議が整い次第、その旨通達する予定である。

【別紙】

仮登記担保契約に関する法律の制定に伴う滞納処分の取扱い

第1 国税と担保のための仮登記によつて担保される債権との優先関係

 国税と担保のための仮登記によつて担保される債権との優先関係は、次による。
 なお、仮登記担保契約で消滅すべき金銭債務がその契約の時に特定されていないものに基づく仮登記又は仮登録(以下「根担保目的の仮登記」という。)は、強制換価手続においてはその効力を有しないこととされている(国税徴収法(昭和34年法律第147号。以下「徴収法」という。)23条4項、仮登記担保法14条等)から、滞納処分手続においては、担保のための仮登記によつて担保される債権が存在しないものとしてその手続を進めること。

(注)

1 「仮登記担保契約」とは、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者(以下「債務者等」という。)に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記(仮登録を含む。以下同じ。)のできるものをいい(仮登記担保法1条)、現実に仮登記がされているか否かを問わない。

2 この通達で「担保のための仮登記」とは、上記1の仮登記担保契約について、現実に仮登記がされているものをいう(徴収法23条1項参照)。

3 昭和53年6月20日現在に存する根担保目的の仮登記で、昭和54年4月1日までに仮登記担保契約に基づき消滅すべき債務が特定されたときは、その契約の時にその債務が消滅すべきものと定められていたものとみなされることに留意する(仮登記担保法附則3条、仮登記担保契約に関する法律の施行期日等を定める政令(昭和53年政令第299号))。

1 国税の法定納期限等以前にされた担保のための仮登記によつて担保される債権の優先
 国税の法定納期限等以前に納税者の財産につき、その者を登記義務者(登録義務者を含む。以下同じ。)として担保のための仮登記がされているときは、その国税は、その換価代金からその担保のための仮登記によつて担保される債権に次いで徴収する(徴収法23条1項)。

2 譲受け前にされた担保のための仮登記によつて担保される債権の優先
 納税者が担保のための仮登記がされている財産を譲受けたときは、その国税は、その換価代金からその担保のための仮登記によつて担保される債権に次いで徴収する(徴収法23条3項、17条1項)。

3 担保のための仮登記がされた財産が譲渡された場合の国税の徴収

(1) 納税者が他に国税に充てるべき十分な財産がない場合において、その者がその国税の法定納期限等後に担保のための仮登記をした財産を譲渡したときは、納税者の財産につき滞納処分を執行してもなおその国税に不足すると認められるときに限り、その国税は、その仮登記担保権者(担保のための仮登記に係る権利を有する者をいう。以下同じ。)がその財産の強制換価手続において配当を受けるべき金額(その担保のための仮登記によつて担保される債権につき配当を受けるものに限る。以下(2)において同じ。)のうちから徴収することができる(徴収法23条3項、22条1項)。

(2) (1)により徴収することのできる金額は、その仮登記担保権者がその財産の強制換価手続において配当を受けるべき金額から、その財産を納税者の財産とみなし、その財産の換価代金についてその国税の交付要求があつたものとした場合にその仮登記担保権者が配当を受けるべき金額を控除した額を超えることができない(徴収法23条3項、22条2項)。

(3) (1)により国税を徴収しようとするときは、その旨をその仮登記担保権者に通知するとともに、その強制換価手続の執行機関に対し交付要求をしなければならない(徴収法23条3項、22条4項、5項)。
 なお、この場合には、仮登記担保権者の氏名及び住所又は居所並びに徴収法第23条3項において準用する同法第22条第5項の規定により交付要求する旨を交付要求書に記載して、交付要求しなければならない(国税徴収法施行令(昭和34年政令第329号。以下「徴収令」という。)6条3項)。

(注) (1) により国税を徴収しようとする場合には、納税者の国税を徴収するため、仮登記担保権者に代位して仮登記担保権(担保のための仮登記に係る権利をいう。以下同じ。)の実行をすることはできないことに留意する(徴収法23条3項、22条3項参照)。

第2 担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分

1 仮登記担保法の適用がある担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分
 仮登記担保法の適用がある担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分については、次による。
 なお、債務不履行を停止条件とする代物弁済契約に基づく権利移転請求権保全の仮登記、代物弁済の予約に基づく権利移転請求権保全の仮登記、債務不履行を停止条件とする賃借権、地上権等の設定請求権保全の仮登記等実質的な意味で金銭債権担保の機能を果している仮登記は、担保のための仮登記に当るものとして取扱うこと。

(注) 「仮登記担保の適用がある担保のための仮登記」とは、仮登記担保契約において昭和54年4月1日以降に土地等(土地又は建物をいう。以下同じ。)の所有権又はその所有権以外の権利(先取特権、質権、抵当権及び企業担保権を除く。以下同じ。)を取得するものとされている日(例えば、停止条件付代物弁済契約における停止条件成就の日、代物弁済予約における予約完結の意思表示をした日等)が到来するその契約に基づく担保のための仮登記をいう(仮登記担保法附則2条、5条1項)。

(1)  差押え

イ 次の場合には、担保のための仮登記がされた財産に対する差押えを行うことができる。

(注) 仮登記担保権の実行の通知(仮登記担保法2条1項《債務者等に対する通知》の規定による通知をいう。以下同じ。)がされた場合においても、物上代位権者に対する通知(仮登記担保法5条1項《物上代位権者に対する通知》の規定による通知をいう。以下同じ。)又は登記上利害関係を有する者に対する通知(仮登記担保法5条2項《登記上利害関係を有する者に対する通知》の規定による通知をいう。)は、担保のための仮登記がされた財産について滞納処分による差押え、国税のための抵当権の設定等の登記(登録を含む。以下同じ。)をしていない限り、租税官庁に対してはされないことに留意する。

(イ) 清算期間(仮登記担保法2条1項《債務者等に対する通知》に規定する期間をいう。以下同じ。)が経過する前。
 なお、清算期間の経過前に、担保のための仮登記に基づく本登記(本登録を含む。以下同じ。)がされていても、その本登記は無効であるから、滞納者に代位して、その本登記をまつ消した上で差押えることができる(仮登記担保法2条1項及び3条3項参照)。

(注) 清算期間を経過しなければ、担保のための仮登記がされた財産の仮登記担保権の実行による権利移転の効果は生じない(仮登記担保法2条1項、20条)から、清算期間の経過前においては、清算金(仮登記担保法3条1項《清算金》に規定する清算金をいう。以下同じ。)の支払がされても、その財産の差押えができることに留意する。

(ロ) 清算期間経過後であつても、担保のための仮登記に基づく本登記がされるまでの間。ただし、清算金の支払又は供託後(清算金がないときは、清算期間の経過後)の差押えは、仮登記担保権者に対抗することができないことに留意する(徴収法52条の2、仮登記担保法15条2項、20条)。

(注) 仮登記担保権者が、清算金の支払又は供託をもつて、差押債権者に対抗するためには、正当な清算金の支払又は供託でなければならないから、仮登記担保権者が支払又は供託をした清算金の額が正当な清算金の額に不足すると認められる場合には、その清算金に係る担保のための仮登記がされた財産の差押えができることに留意する。
 なお、正当な清算金の基礎となる清算期間が経過する時の財産の価額については、昭和31年1月8日付徴徴2−3ほか2課共同「公売財産の見積価格評定基準について」通達によつて算定して差支えない。

ロ 担保のための仮登記がされた財産に対する差押えは、清算期間経過後において、正当な清算金の支払又は供託がされた後は、行うことができない(徴収法52条の2、仮登記担保法15条2項、20条)から徴収職員は担保のための仮登記がされた財産の差押えに当つては、清算金の支払又は供託の有無、支払又は供託された清算金の額等の事実を確認することとし、その場合にはできるだけ聴取書その他その事実を証するための資料の収集に努めること。

ハ 担保のための仮登記がされた財産を差押えた場合には、仮登記担保権者に対して書面により徴収法第55条第2号《仮登記担保権者に対する通知》の通知をすること。この場合における徴収令第22条第1項第3号の規定による記載は、例えば「あなたがこの差押財産に有している昭和○○年○月○日付の仮登記は担保のための仮登記であると認められます。」とする。

(注)

1 根担保目的の仮登記がされた財産を差押えた場合においても、その仮登記の権利者に対して徴収令第 55条第2号の通知をすることに留意する。ただし、この通知には、徴収令第22条第1項第3号の規定による記載は要しない。

2 上記の仮登記担保権者に対する通知は、行政処分ではないから、不服申立ての対象とはならないことに留意する。ただし、仮登記の権利者から、当該仮登記が担保のための仮登記でないことを理由として異議申立て等があつたときは、その事実について調査して確認する。

(2) 交付要求

イ (1)のイにより、担保のための仮登記がされた財産に対する差押えができる場合において、既にその財産に対する強制換価手続が開始されているときは、その強制換価手続の執行機関に対して交付要求を行うこと。この場合において、その強制換価手続が強制執行又は競売法による競売であり、二重差押えができるときは、併せて二重差押えも行うこと(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律29条等)。
 なお、上記の交付要求を参加差押えの方法により行うときの仮登記担保権者に対する通知については、(1)のハに準じること(徴収令38条後段)。

ロ 担保のための仮登記がされた財産に対する差押えができない場合(昭和41年8月22日付徴徴4−13ほか5課共同「国税徴収法基本通達の全文改正について」通達(以下「徴基通」という。)第86条関係4参照)であつても、既にその財産に対する強制換価手続が開始されているとき(仮登記担保権者が清算金の支払又は供託をしたことをもつて差押債権者に対抗できるとき(仮登記担保法15条2項参照)を除く。)は、その強制換価手続の執行機関に対して交付要求(参加差押えを除く。)を行うこと。
 なお、この場合において、先行する強制換価手続が取消しその他の事由により存在しなくなつたときは、清算金に対して滞納処分を行うこととなるので、必要があるときは、清算金の支払請求権に対する差押えも併せて行うこと。

(3) 換価

イ 担保のための仮登記がされた財産の換価の制限
 担保のための仮登記がされた財産を差押え、仮登記担保権者に徴収法第55条第2号の通知をした場合において、その差押えについて訴えの提起がされたときは、その差押財産の換価は行うことができない(徴収法90条3項)。

(注) 上記の換価制限は、徴収法第55条第2号の通知に、徴収令第22条第1項第3号による記載をしなかつた場合においても、当該仮登記が実質的に担保のための仮登記であるときは適用があることに留意する。

ロ 担保のための仮登記によつて担保される債権額の確認
 担保のための仮登記がされた財産を換価する場合における、その担保のための仮登記によつて担保される債権額の確認は、次による。

(注) 根担保目的の仮登記は滞納処分手続においてはその効力を有しない(徴収法23条4項)から、根担保目的の仮登記によつて担保される債権は、仮に債権現在額申立書に債権額が記載されている場合であつても、その債権額が存在しないものとされる。ただし、根担保目的の仮登記が根抵当権等と併用されているときは、根抵当権等によつて担保される債権につき、その順位に応じて配当を受けることができることに留意する。

(イ) 債権現在額申立書が提出された場合
 提出された債権現在額申立書を形式審査して行うこと。ただし、担保のための仮登記によつて担保される債権で国税に優先するものがあるときは、その債権の存否、金額、順位等について実質審査を行い、これを確認すること(徴基通第130条関係4参照)。

(ロ) 債権現在額申立書が提出されない場合
 その債権の存否、金額、順位等について実質審査を行い、これを確認すること。ただし、担保のための仮登記のうち国税に優先しないものについては、その仮登記が同一債権を担保するため抵当権等と併用されているときはその抵当権等について形式審査し、また、抵当権等と併用されていないときは契約書の記載等により、それぞれ確認して差支えない(徴基通第130条関係5参照)。

(4) 配当
 換価財産上に担保のための仮登記がされている場合におけるその仮登記によつて担保される債権に対する配当については、次による(徴収法129条4項、5項、仮登記担保法13条、20条)。

イ 配当順位
 その担保のための仮登記に係る権利を抵当権とみなし、その仮登記がされた時に抵当権の設定の登記がされたものとみなして、他の配当を受けるべき債権との順位を決定する。
 なお、同一債権を担保するため、担保のための仮登記と抵当権等が併用されている場合において、抵当権等の登記が担保のための仮登記より先にされているときは抵当権等の順位で配当することとし、抵当権等の登記が担保のための仮登記の後にされているときは仮登記の順位で配当することに取扱う。

ロ 配当すべき金額
 配当すべき金額については、元本のほか、1仮登記担保権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となつた最後の2年分についてのみ配当し、2仮登記担保権者が債務の不履行によつて生じた損害の賠償を請求する権利を有するときは、その最後の2年分についてのみ配当する。
 ただし、1及び2を通算して2年を超えることはできない。

(5) 換価に伴う担保のための仮登記等に係る権利の消滅及びその仮登記等のまつ消

イ 仮登記等に係る権利の消滅
 換価財産上に担保のための仮登記に係る権利又は担保のための仮登記に基づく本登記でその財産の差押え後にされたものに係る権利があるときは、その権利は、買受人が買受代金を納付したときに消滅する(徴収法124条)。

(注) 滞納処分による換価によつて消滅する権利には、根担保目的の仮登記に係る権利の含まれることに留意する(徴基通第125条関係2参照)。

ロ 消滅する権利に係る仮登記等のまつ消
 イにより消滅する権利に係る担保のための仮登記又は担保のための仮登記基づく本登記については、そのまつ消を関係機関に嘱託する。このまつ消の登記の嘱託は、配当計算書の謄本を添付して行えば足り、徴収令第22条第1項《質権者等に対する差押通知書》に規定する書面の謄本を添付する必要はない(徴収令46条及び不動産登記法29条参照)。
 なお、次の場合にはそれぞれに揚げるところによる。

(イ) 同一債権を担保するため、担保のための仮登記と抵当権等が併用されている場合 その仮登記又は抵当権のうちいずれか先順位のものについて配当がされたときは、後順位の仮登記又は抵当権等については、配当計算書の「備考」欄に、例えば「何番抵当権(又は仮登記)と併用」と記載してその仮登記又は抵当権等のまつ消を嘱託する。

(ロ) 滞納処分手続において効力を有しないこととされる根担保目的の仮登記がされている場合 配当計算書の「備考」欄に、例えば「根担保目的のため配当なし」と記載してその仮登記のまつ消を嘱託する。

2 仮登記担保法の適用がない担保のための仮登記がさ れた財産に対する滞納処分
 仮登記担保法の適用がない担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分については、次による。

(注) 「仮登記担保法の適用がない担保のための仮登記」とは、仮登記担保契約において昭和54年3月31日以前に土地等の所有権又はその所有権以外の権利を取得するものとされている日(例えば、停止条件付代物弁済契約における停止条件成就の日、代物弁済予約における予約完結の意思表示をした日等)が到来するその契約に基づく担保のための仮登記をいう(仮登記担保法附則2条、5条1項)。

(1) 担保のための仮登記が納税者を登記義務者として国税の法定納期限等後にされている場合
 従前の例による。

(2) (1)以外の担保のための仮登記がされている場合
 担保のための仮登記に基づく本登記がされていない限りその財産に対する差押えができることとする。その差押えに基づいてする換価、配当等の手続については、1《仮登記担保法の適用がある担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分》に準ずる。

(注) 昭和38年7月24日付徴徴4−26「差押財産につき取もどし請求等があつた場合の差押解除の取扱について」通達により、差押えの解除を要する場合があることに留意する。

第3 清算金等に対する滞納処分

1 清算金の支払請求権に対する滞納処分
 清算金の支払請求権に対する滞納処分については、次による。
 なお、清算金の支払請求権について差押え又は交付要求をした場合において、既にその清算金の支払請求権に対する物上代位権の行使(仮登記担保法4条1項又は2項《物上代位》に規定する権利の行使をいう。以下同じ。)による差押えをした者があるときは、その者に対して書面により徴収法第55条又は同法第82条第3項《質権者等に対する差押え又は交付要求の通知》の通知をすること。

(1) 仮登記担保権者が仮登記担保権の実行の通知をした後清算金の支払又は供託をするまでの間は、債務者等が仮登記担保権者に対して有する清算金の支払請求権に対する滞納処分を行うことができる。
 なお、担保のための仮登記がされた財産に対する滞納処分ができる場合には、清算金の支払請求権に対する滞納処分によって確実に滞納国税の全額を徴収できると認められるなど、特に担保のための仮登記がされた財産を差押えることについて、その必要性がないと認められる場合以外は、その財産を差押えること。

(注)

1 上記の清算金の支払請求権を差押える場合の債権差押通知書に記載する差押債権の表示は、例えば、次に掲げる記載例のように表示する。

[記載例]
滞納処分の記載例

2 清算金の支払請求権を有する者は、担保のための仮登記がされた財産が譲渡された場合においても、仮登記担保契約の相手方である債務者等であることに留意する(仮登記担保法3条1項、20条)。

(2) 上記(1)により債務者等が仮登記担保権者に対して有する清算金の支払請求権を差押えたときは、遅滞なく、その清算金の支払請求権に対する物上代位権の行使をし得る者の有無を登記簿等により確認すること。

2 清算金が供託された場合の滞納処分
 仮登記担保権者が仮登記担保法第7条第1項《清算金の供託》(同法20条において準用する場合を含む。)又は民事訴訟法第621条第1項《配当要求を受けた場合の供託》の規定により清算金を供託した場合においては、次に掲げる区分に応じそれぞれに掲げる時まで、債務者等が有する供託金の還付請求権に対する滞納処分を行うことができる。
 なお、この場合においても、1《清算金の支払請求権に対する滞納処分》のなお書の通知を要する。

(1) 滞納処分による差押えがあつたことにより供託がされた場合 差押債権者がその供託金の払渡しを受ける時

(2) 物上代位権の行使による差押え又は強制執行による差押え(以下「物上代位権の行使等による差押え」という。)があつたことにより供託された場合 差押債権者がその供託金を取立ててその旨を執行裁判所に届出る時(民事訴訟法620条1項)

(3) 物上代位権の行使等による差押えに対して配当要求があつた場合(これらの差押えが2以上競合した場合を含む。) 供託をした者又は供託所から裁判所へその事情を届出る時

(4) 供託の原因となつた滞納処分による差押え又は物上代位権の行使等による差押えが取消しその他の事由により存在しなくなつた場合 債務者等がその供託金の還付を受ける時

(注)

1 清算金の支払請求権に対して強制執行等の競合があつたときは、民事訴訟法第621条第1項の規定による供託をすることができるが、供託実務においては、供託書に、その根拠として、民事訴訟法第621条第1項及び仮登記担保法第7条第1項の規定の双方を記載することとされている(昭和54年6月11日付法務省民四第3367号「仮登記担保契約に関する法律の施行に伴う供託事務の取扱いについて」法務省民事局長通達(以下「供託通達」という。)の記の第一の二の(一)の2参照)。

2 債務者等が清算金の受領を拒む等の理由により民法第494条《弁済供託》の規定による供託がされた場合は、債務者等がその供託金の還付を受ける時まで、債務者等が有する供託金の還付請求権の差押えができる。
 なお、この供託金について滞納処分による差押え又は強制執行による差押えがされた場合においても、(1)〜(4)に掲げる時まで、滞納処分を行うことができることに留意する。

3 清算金の支払請求権に対し、滞納処分による差押えのみがされている場合又は滞納処分による差押えが物上代位権の行使等による差押えよりも先にされている場合においても、仮登記担保権者は、清算期間が経過した後、仮登記担保法第7条第1項(同法20条において準用する場合を含む。)の規定により、清算金を供託することができることに留意する。

3 清算金の支払請求権に対する差押えの効力等

(1) 差押えを行うことができる清算金の支払請求権の範囲
 差押えを行うことができる清算金の支払請求権(供託金の還付請求権を含む。以下3において同じ。)は、仮登記担保権者が仮登記担保権の実行の通知により通知した清算金の見積額の範囲内に限られない。従つて、通知した清算金の見積額が過少であると認められるときは、正当な清算金の額に達するまで差押えることができる。

(注) 仮登記担保権者が、仮登記担保権の実行の通知に基づいてその財産を取得する場合においては、仮登記担保法第13条第2項及び第3項《優先債権の範囲》(同法20条において準用する場合を含む。)は適用されないから、正当な清算金の算定に当たつては、最後の2年分の利息等に限られないことに留意する。

(2) 清算金の支払請求権に対して物上代位権を行使した担保権により担保される債権と国税との関係
 担保のための仮登記がされた財産について、その仮登記の後に登記(仮登記を含む。)がされた先取特権、質権、抵当権又は担保のための仮登記に係る権利を有する者が、清算金の支払請求権に対して物上代位権の行使をした場合におけるその物上代位権の行使に係る債権と国税との優先関係は、次による(徴収法23条2項)。

イ 清算金の支払請求権に対して物上代位権の行使をした徴収法第19条第1項各号《不動産保存の先取特権等の優先》に掲げる先取特権によつて担保される債権は、清算金に係る換価代金につき、常に国税に優先する。

ロ 清算金の支払請求権に対して物上代位権の行使をした徴収法第20条第1項各号《法定納期限等以前にある不動産賃貸の先取特権等の優先》に掲げる先取特権の登記(仮登記を含む。)が国税の法定納期限等以前にされているときは、その先取特権によつて担保される債権は、清算金に係る換価代金につき、国税に優先する。

ハ 清算金の支払請求権に対して物上代位権の行使をした質権、抵当権の登記(仮登記を含む。)又は担保のための仮登記が国税の法定納期限等以前にされているときは、その質権、抵当権又は担保のための仮登記によつて担保される債権は、清算金に係る換価代金につき、国税に優先する。

(注)

1 物上代位権の行使に係る担保権によつて担保される債権が弁済を受けることのできる金額の範囲は、担保のための仮登記がされた財産の換価代金から配当を受け得る場合と同様に、元本のほか最後の2年分の利息又は損害賠償債権等の金額に限られる(仮登記担保法4条3項、20条、民法374条等)。

2 物上代位権の行使に係る担保権によつて担保される債権の弁済期が未到来の場合には、その物上代位権の行使は仮差押えによつて行われることもあることに留意する。

(3) 債務者等の受戻権の行使と清算金の支払請求権に対する滞納処分との関係
 債務者等の有する清算金の支払請求権を差押えた場合において、仮登記担保権者が清算期間経過後清算金を差押債権者に支払い又は供託する以前に債務者等が債務等の額(債権が消滅しなかつたものとすれば、債務者が支払うべき債権等の額をいう。)に相当する金銭を仮登記担保権者に提供して、担保のための仮登記がされた財産の受戻権を行使したとき(仮登記担保法11条本書)は、清算金の支払請求権に対する差押えの効力は失われる。

(注) この場合には、債務者等が受戻しをした財産に対する滞納処分を行うことができる。

4 差し押さえた清算金の取立て等に伴う手続

(1) 滞納処分による差押えのみがされている場合又は滞納処分による差押えが物上代位権の行使等による差押えをよりも先にされている場合

イ 清算期間が経過した後、滞納処分による差押えに基づいて清算金を取立てる場合又は供託金の払渡しを受ける場合には、物上代位権の行使による差押えの有無、差押債権者名、債権額及び差押年月日(以下「物上代位権の行使による差押えの有無等」という。)を仮登記担保権者又は物上代位権の行使をし得る者につき調査すること。

ロ 仮登記担保権者から清算金を取立てる場合において、イの調査によつても物上代位権の行使による差押えの有無等が判明しないときは、物上代位権の行使についての管轄裁判所に対し、電話で、滞納処分による差押え以降にされた物上代位権の行使による差押えの有無等を照会し、電話による回答方を要請すること。

ハ 供託金の払渡しの請求は、昭和44年12月11日付微徴2−30ほか1課共同「滞納処分による供託手続等について」通達の3《還付を受ける手続》により行うこと。この場合において、担保のための仮登記がされた財産の所有権移転登記等が反対給付となつているときは、その仮登記に基づく本登記がされた登記簿謄本等を供託物払渡請求書に添付して請求することに留意する(仮登記担保法3条2項、20条、供託規則24条3号、供託通達の記の第二の一の(一))。

(注) 担保のための仮登記がされた財産の所有権移転登記等が反対給付の内容となつているときは、供託書にその旨の記載が必要とされているので、それによつて確認することができる(供託規則13条2項8号、供託通達の第一のニの(ニ)参照)。

ニ 清算金を取立てた場合又は供託金の払渡しを受けた場合において、その清算金又は供託金の上に物上代位権の行使による差押えがあるときは、その物上代位権の行使に係る抵当権等によつて担保される債権に対し、取立てた清算金又は払渡を受けた供託金に係る換価代金等から、3の(2)《清算金の支払請求権に対して物上代位権を行使した担保権により担保される債権と国税との関係》の順位に従つて配当する。
 なお、この場合における債権額の確認は、清算金の取立て又は供託金の払渡しの日までに債権現在額申立書を提出させることとするほか、第2の1の(3)のロ《被担保債権額の確認》に準じて行うこと。

(注) 供託金の払渡しを受ける場合において、その供託金の額が税務署長等(税務署長並びに国税局長及び沖縄国税事務所長をいう。以下同じ。)が配当すべき額よりも多額であるときは、支障のない限り、その配当すべき額の範囲で払渡しを受けることに留意する。

(2) 物上代位権の行使等による差押えが先にされている場合
 滞納処分による差押えを行う前に物上代位権の行使等による差押えがされているときは、その執行機関に対して、交付要求を行うこと。この場合においては、併せて二重差押えも行うこと。
 なお、この場合には、先順位の物上代位権の行使等による差押えがある間は、滞納処分による二重差押えに基づいて換価(取立を含む。)を行うことができないことに留意する(昭和43年1月23日付微徴4−2「債権に対する二重差押えの取扱いについて」通達の記の1の(3)参照)。

第4 国税のための担保と仮登記担保権の実行との関係

1 納税の猶予等の担保として徴取している場合
 納税の猶予(国税通則法(昭和37年法律第66号。以下「通則法」という。)46条)、換価の猶予(徴収法151条)、延納(相続税法38条等)、措置法の納税猶予(租税特別措置法70条の4及び70条の6に規定する納税猶予をいい、昭和50年法律第16号による改正前の同法70条の4に規定する納期限の延長を含む。以下同じ。)又は納期限の延長(酒税法30条の6等)の担保として徴取した財産に担保のための仮登記がされている場合において、その納税の猶予、換価の猶予、延納、措置法の納税猶予に係る期限及び延長された納期限前に仮登記担保権者から物上代位権者に対する通知を受けたときは、次により処理する。

(1) その担保を提供した者に対して、担保の変更その他担保を確保するため必要な行為をすべきことを命ずること。

(2) 担保を提供した者が(1)の命令に従わないときは、その担保の提供に係る納税の猶予、換価の猶予、若しくは延納を取消し又は措置法の納税の納税猶予の期限若しくは延長された納期限を繰上げた上で、その担保として徴取した財産を滞納処分の例により処分すること。
 なお、清算金(仮登記担保権の実行の通知により通知された清算金の見積額を限度とする。以下第4において同じ。)に対する物上代位権の行使によつて、その担保に係る国税の全額を徴収できると認められるときは、その清算金に対し滞納処分の例により処分を行つて差支えない。
 この場合において、この滞納処分の例による処分と他の物上代位権の行使等による差押えとが競合しているときの処理については、第3の4《差押えた清算金の取立て等に伴う手続》に準ずる。

(注) 納税者の財産について、その者を登記義務者として担保のための仮登記がされている場合において、仮登記担保権者から納税者に対して仮登記担保権の実行の通知がされたときは、その通知は繰上請求事由に該当する(通則法38条1項1号)ので、納税の猶予又は換価の猶予を取消すことができる(通則法49条1項1号、徴収法152号)。

2 保全担保として徴取している場合
 保全担保(徴収法158条等)として徴取した財産に担保のための仮登記がされている場合において、仮登記担保権者から物上代位権者に対する通知を受けたときは、原則として、その担保を提供した者に対して、担保の変更その他担保を確保するため必要な行為をすべきことを命じ、その命令に応じない場合その他その担保として提供した財産を処分する必要がある場合には、その保全担保に係る国税の納期限の到来をまつて、その保全担保として徴取した財産を滞納処分の例により処分すること。ただし、保全担保に係る国税の納期限をまつていては国税の徴収確保ができないと認められるときは、繰上請求又は繰上保全差押え(通則法38条1項又は3項)の措置を採ること。
 なお、清算金に対する物上代位権の行使によつて、その担保に係る国税の全額を徴収できると認められるときは、その清算金に対し滞納処分の例により処分を行つて差支えない。
 この場合において、この滞納処分の例による処分と他の物上代位権の行使等による差押えとが競合しているときの処理については、第3の4に準ずる。

3 保全差押え又は繰上保全差押えの担保として徴取している場合
 保全差押え又は繰上保全差押えの担保(徴収法159条4項、通則法38条4項)として徴取した財産に担保のための仮登記がされている場合において、仮登記担保権者から物上代位権者に対する通知を受けたときの処理については、1《納税の猶予等の担保として徴取している場合》に準ずる。
 なお、この場合において担保として徴取した財産の滞納処分の例による換価は、その担保の提供に係る国税について納付すべき税額が確定した後において行うこと。

4 差押えの猶予の担保として徴取している場合
 差押えの猶予(通則法105条3項、6項)の担保として徴取した財産に担保のための仮登記がされている場合において、仮登記担保権者から物上代位権者に対する通知を受けたときの処理については、1に準ずる。
 なお、この場合において、担保として徴取した財産の滞納処分の例による換価は、その不服申立てが係属する間は行わないこと。

第5 仮登記抵当権等によつて担保される債権に対する換価代金等の配当等

 滞納処分又は滞納処分の例により換価する財産上に、仮登記がされた質権、抵当権若しくは先取特権(以下「仮登記抵当権等」という。)がある場合における、その仮登記抵当権等によつて担保される債権に対する配当手続等については、次による。

(注) この取扱いは、昭和54年4月1日以降に債権現在額申立書の提出期限が到来する場合における換価代金等の交付について適用があることに留意する(仮登記担保法附則5条2項参照)。

1 仮登記抵当権等によつて担保される債権額の確認

(1) 債権現在額申立書が提出された場合
 提出された債権現在額申立書を形式審査して行うこと。ただし、仮登記抵当権等によつて担保される債権で国税に優先するものがあるときは、その債権の存否、金額、順位等について実質審査を行い、これを確認すること(徴基通第130条関係4参照)。

(2) 債権現在額申立書が提出されない場合
 その債権の存否、金額、順位等について実質審査を行い、これを確認すること。ただし、仮登記抵当権等によつて担保される債権のうち国税に優先しないものについては、登記事項を形式審査して、これを確認して差支えない(徴基通第130条関係5参照)。

2 配当の順位
 仮登記抵当権等によつて担保される債権に対する換価代金等の配当順位については、その仮登記がされた時にその抵当権等の本登記がされたものとして、他の配当を受けるべき債権との順位を決定する。

3 配当すべき金額
 仮登記抵当権等によつて担保される債権に対して配当すべき金額については、第2の1の(4)のロ《配当すべき金額》と同様とする。

4 換価代金等の交付
 仮登記抵当権等の権利者に対して配当すべき金額は、原則として供託すること(徴収法133条3項、徴収令50条4項)。ただし、配当を受けるべき仮登記抵当権等の権利者が、換価代金等の交付期日までに、本登記をするために必要な条件を具備したことを証する書面を提出した場合又はこれを呈示するとともにその写しを提出した場合には、仮登記抵当権等の権利者に対して配当すべき金額を交付すること。この場合においては、仮登記抵当権等の権利者に配当計算書の謄本を提出させること。

(注) 「本登記をするために必要な条件を具備したことを証する書面」とは、例えば、判決、和解調書、登記義務者の承諾書(印鑑証明書の添付されたものに限る。)等真正に本登記をするために必要な条件を具備したことを証する書面をいう。

5 仮登記抵当権等の権利者が供託金の還付を受けるための手続

(1) 仮登記抵当権等の権利者が上記4により供託された換価代金等の還付を受けるためには、その権利者から、供託をした税務署長等に対し、本登記をするために必要な条件を具備したことを証する書面を提出させ又はこれを呈示させるとともにその写しを提出させること。

(2) 上記(1)により、配当を受けるべき仮登記抵当権等の権利者から本登記をするために必要な条件を具備したことを証する書面の提出又はこの書面の呈示とともにその写しの提出を受けた税務署長等は、その仮登記抵当権等の権利者に配当額支払証を交付するとともに、支払委託書に供託書正本を添付して供託所に送付する。
 なお、この場合の手続については、「換価事務提要」に定める手続によること(換価事務提要第8章第4節131)。

【参考】

最高裁民2第389号
昭和54年4月10日

国税庁長官 殿

最高裁判所事務総局民事局長 西山俊彦

標記の調査については、貴見のとおり取り扱われて差し支えないものと考えます。
なお、右の調査に関する事務処理については、地方裁判所長あて通達しましたから、申し添えます。

最高裁民2第387号(訴い−2)
昭和54年4月10日

地方裁判所長 殿

最高裁判所事務総局民事局長 西山俊彦

 国税庁長官の別紙第1の依頼に対し、別紙第2のとおり回答しました。
 ついては、仮登記担保契約に関する法律(昭和53年法律第78号)第3条の清算金債権に対し滞納処分による差押えをした税務署長等から、同債権に対する同法第4条の物上代位権者による差押えの有無等につき照会(別紙第1の記2に記載の照会)があつた場合には、執務に支障のない限り、これに協力するようお取り計らいください。
 なお、簡易裁判所に対しては、所管の地方裁判所長から伝達してください。

【別紙第1】

微徴4−2
昭和54年3月30日

最高裁判所事務総局民事局長 殿

国税庁長官

 仮登記担保契約に関する法律(昭和53年法律第78号。以下「仮登記担保法」という。)の制定に伴い、税務署長等(税務署長並びに国税局長及び沖縄国税事務所長をいう。以下同じ。)が仮登記担保法第3条に規定する清算金(以下、単に「清算金」という。)に対して滞納処分を行う場合には、当該清算金に対して仮登記担保法第4条に規定する物上代位権(以下、単に「物上代位権」という。)の行使による差押えがあるか否か等を調査する必要がありますが、その場合の調査については、下記により取扱いたいと思います。
 つきましては、この取り扱いによつて差支えない場合には、貴管下関係機関の協力方について御配意願いたく依頼します。

1 滞納処分による差押えをした税務署長等が仮登記担保法第2条第2項に規定する清算期間が経過した後、仮登記担保権者から清算金を取立て、又は、仮登記担保法第7条第1項の規定により供託された清算金の払渡しを受ける場合には、物上代位権の行使による差押えの有無、差押債権者名、債権額及び差押年月日(以下「物上代位権の行使による差押えの有無等」という。)を、仮登記担保権者又は物上代位権の行使をし得る者につき調査すること。

2 税務署長等が仮登記担保権者から清算金を取立てる場合において、上記1の調査によつても物上代位権の行使による差押えの有無等が判明しないときは、物上代位権の行使についての管轄裁判所に対し、電話で、滞納処分による差押え以降にされた物上代位権の行使による差押えの有無等を照会し、電話による回答方を要請すること。

(別紙第2)
省略(回答文に同じ。)