徴徴4−29(例規)
昭和36年7月31日

国税局長 殿

国税庁長官 原 純夫

 全国銀行協会連合会から照会があった集合物譲渡担保差入証書(以下「担保差入証書」という。)に関する有価証券にかかる譲渡担保については、下記により取り扱うものとされたい。
 なお、全国銀行協会連合会から照会があった事項(別紙「集合物譲渡担保差入証書について(照会)」参照)は、有価証券に限定されているので、その他の財産はこの通達においては取り扱わないものであるから念のため申し添える。

第一 担保有価証券の同一性等について

一 譲渡担保財産が有価証券である場合において、その譲渡担保権の設定後その有価証券につき、有価証券による担保の差換えをしたときは、その差し換えた有価証券については、譲渡担保としての同一性があるかぎり、当初の譲渡担保設定のための譲渡の時期をもって、その有価証券の譲渡担保財産となった時として、国税徴収法第24条第6項の規定を適用する取扱とする(昭和35年1月27日徴徴4−5外9課合同「国税徴収法基本通達の制定について」通達二十四条関係五十九)。

二 譲渡担保財産が株券(出資証券を含む。以下同じ。)である場合において、その譲渡担保権の設定後その株券につき、他の株券、国債証券、地方債証券、または社債券(以下「株券等」という。)による担保の差換えをしたときは、差換え時において、その価額(時価)が同一である限り、一の同一性があるものとする。
 なお、株券等以外の有価証券による担保の差換えをしたときは、たとえその価額(時価)が同一であっても、一の同一性がないものとする。

三 株券等以外の有価証券が譲渡担保財産であるときは、同一価額(時価)の同一種類の有価証券により担保の差換えが行われた場合(たとえば、譲渡担保財産が倉庫証券であって、担保の差換えに使用した有価証券が倉庫証券である場合)においても、その差換えに使用した有価証券は、一の同一性がないものとする。

四 株券等と株券等以外の有価証券とを混合して担保物として差し入れている場合には、株券等グループの譲渡担保権の設定と株券等以外の有価証券についてその有価証券1枚ごとの譲渡担保権の設定とが、それぞれされたものとする。

五 担保の差換えが行われた場合において、その差換え時の差換えに使用した株券等の価額(時価)が差し換えられた株券等の価額(時価)をこえるときは、そのこえる部分の金額に相当する株券等は、特約がない限り譲渡担保の目的物とはならないが、担保差入証書によるものであると認められるときは、その差換え時に新たな譲渡担保権を設定したものと認めるものとし、そのこえない部分の金額に相当する株券等は、一の同一性があるものと認めるものとする。ただし、差換えに使用した株券等がそのこえる部分またはこえない部分に分離できない場合には、その分離できない株券等の譲渡は、新たな譲渡担保権を設定するために譲渡されたものとして取り扱う。

(注)

1 たとえば、差換え時の株券が時価15千円のもの30枚であった場合において、差換えに使用した株券が時価13千円のもの35枚であるときは、上記のこえる部分に相当する金額は5千円である。しかし、5千円に相当する株券はこの場合にはないので(こえる部分とこえない部分とに分離ができないので)、時価13千円の株券1枚については新たな譲渡担保権を設定するために譲渡したものと認めることになる。

2 分離できない株券等の判定にあたっては、そのこえる部分に相当する株券等(分離できない株券等を含む。)の価額(時価)とそのこえる部分に相当する金額との差額が最も少なくなるようにするものとする。


第二 担保差入証書の約定について

一 有価証券を担保とする担保権設定契約書(担保差入証書参照)のなかにおいて譲渡担保権を設定するためのものであることが明確に記載されていないため、譲渡担保権の設定か質権の設定か不明な場合には、すべて質権を設定したものとして取り扱う。ただし、本年10月31日までに契約されているものについては、契約当事者につき譲渡担保権か質権かを確認し、その確認した結果により取り扱うこととしてさしつかえない。

二 譲渡担保財産が同一の有価証券である場合において、その被担保債権が変動しているときは、担保差入証書の「有価証券(時価何円)」が根質等の場合に定めた極度額と同様なものとして取り扱うものとする。

(注)

1 第一において「同一性があるものとして認める有価証券」は、上記の「同一の有価証券」には該当しないのであるから留意すること。

2 第一に定める取扱により同一性があるものとして認められる範囲内において担保物である有価証券が変動している場合で、担保差入証書に「有価証券(時価何円)」と記載され、その譲渡担保の被担保債権が変動している場合、すなわち担保物も被担保債権もともに変動している場合の取扱については、当分の間国税庁長官に上申するものとする。

三 担保差入証書第3条の約定に基き、不足額に相当する有価証券を差し入れた場合のその有価証券は、その差入れをした時において新たな譲渡担保権を設定するために譲渡したものとする。


別紙

昭35外業第208号
昭和35年9月8日

国税庁長官 原 純夫 殿

全国銀行協会連合会

事務局長 安原 米四郎  印

 本年1月に出されました国税徴収法基本通達によりますと国税徴収法第24条関係(譲渡担保権者の物的納税責任)の譲渡担保権の効力について「常に変動のあることが予想されるべき企業用動産等の財産の集団を一括して譲渡担保の目的としている場合には、集合物としての同一性がある限り、担保権設定後にその集合物に加えられた財産にも、その譲渡担保権の効力が、原則として、及ぶこと」ならびに「譲渡担保財産が有価証券である場合において、その担保権設定後その有証証券につき、有価証券による担保の差換えをしたときは、その差し換えた有価証券については、譲渡担保としての同一性がある限り、当初の譲渡担保設定のための譲渡の時期をもって、その財産の譲渡担保財産となった時として、この条第6項の規定を適用する取扱とする」となっております。
 つきましては、有価証券を譲渡担保とする場合の担保差入証として別紙担保差入証書を使用した場合、これに基づく担保が上記の「集合物としての同一性がある」ものとお認めいただけますかどうかご回答をいただきたくご照会申し上げます。

以上

注 銀行によって1冊の担保通帳を使用するところと2冊の担保通帳を使用するところがあるが、別紙担保品差入票および担保品受戻請求書は、1冊の通帳を使用する場合に用い、担保品の受渡しを明確にするものであり、(この場合通帳は担保差入人が所持する。)2冊の通帳を使用する場合には、別紙担保品差入票および担保品受戻請求書を使用せず、担保品差入受戻のつど通帳にこれを表示の上授受を明らかにし、差入人およぶ担保権者が相互にその1冊を所持しているものである。

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